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剣の章
♠12 救いの女神
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「悠真君、起きて……」
「ん、うん……」
悠真は聞き覚えのある女性の声に導かれるようにして、ゆっくりと覚醒していく。
「あ、かり……?」
街灯の明かりが眩しい。逆光で顔は良く見えないが、視線の先に居るのは……間違いない。心配そうな表情でこちらを見下ろしている、幼馴染の紅莉だった。
「あ、てて……ここは?」
どれだけの間、気絶していたのだろうか。
すっかり日は落ち、空は真っ暗になっていた。
クラクラする頭を抑えながら、上半身を起き上がらせる。
視界には、砂場やゾウの遊具などがあった。どうやらここは公園のようだ。それに、どれも見覚えもある。
「第一公園か……」
学校の帰り道の途中にある公園だ。そこにあるベンチで、自分は寝かされていたようだった。
それも、紅莉の膝の上で。
「大丈夫? どこか痛む?」
「え? あ、いや大丈夫。ありがとう」
紅莉はベンチに腰掛けたまま、隣りでぼうっとしている悠真の頭を撫でた。
その手は子供をあやす母のように、優しい。
不意に訪れた安心感に思わず目を細める悠真だったが、急にサッと青褪めた。自身に起こったことを思い出したのだ。
「そ、そうだ。アイツはどこに行った……!?」
「落ち着いて、悠真君!」
「居たんだよ! あの、得体のしれない女が! アイツ、俺のことを捕まえて……」
悠真はベンチから立ち上がると、怯えたようにキョロキョロと周りを見渡す。
「アイツ、本を寄越せって言ったんだ……」
あの女が見せた、何の光の灯っていない、深淵のような黒い瞳で覗き込まれた記憶が脳裏に甦る。
何が目的なのかも分からず、逃げることもできず。
ただ蛇に睨まれた蛙のように、捕食されるのをただ待つしかできなかったあのシーンが、何度もフラッシュバックするのだ。
悠真は耐え切れず、その場で頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
ここに紅莉が居てくれなければ、とうに彼は発狂していたかもしれない。
「大丈夫だよ、悠真君。ソレ、たぶんもう来ないと思うから」
「紅莉……あの女を知っているのか!?」
悠真が紅莉の方を見上げると、彼女はこくりと頷いた。
「なんなんだ、アイツは? なんだかまるで、口裂け女みたいな奴だったぞ!!」
「――ッ。っぷ、ぷふふふっ」
通り魔の目撃情報かと思いきや、悠真の口から出てきた『口裂け女』に紅莉は噴き出してしまった。
笑う場面ではないのだが、笑ってはいけないと思うほど、沸々と笑いがこみ上げてくるのだ。
その様子を見て、悠真は自分がいかに突拍子もないことを言ったのか気付いて赤面する。
「あぁ、いや。ゴメンね悠真君。そうだよね、まるで都市伝説か怪談みたいだもんね……」
「た、頼むよ紅莉。どういうことなのか、説明してくれ……」
もういっぱいいっぱいになってしまった悠真は、潤んだ目で懇願する。
それは、すっかり弱り切った想い人の姿だ。
紅莉は身悶えしそうな快感に必死で耐えながら、事情について話し始めた。
「ん、うん……」
悠真は聞き覚えのある女性の声に導かれるようにして、ゆっくりと覚醒していく。
「あ、かり……?」
街灯の明かりが眩しい。逆光で顔は良く見えないが、視線の先に居るのは……間違いない。心配そうな表情でこちらを見下ろしている、幼馴染の紅莉だった。
「あ、てて……ここは?」
どれだけの間、気絶していたのだろうか。
すっかり日は落ち、空は真っ暗になっていた。
クラクラする頭を抑えながら、上半身を起き上がらせる。
視界には、砂場やゾウの遊具などがあった。どうやらここは公園のようだ。それに、どれも見覚えもある。
「第一公園か……」
学校の帰り道の途中にある公園だ。そこにあるベンチで、自分は寝かされていたようだった。
それも、紅莉の膝の上で。
「大丈夫? どこか痛む?」
「え? あ、いや大丈夫。ありがとう」
紅莉はベンチに腰掛けたまま、隣りでぼうっとしている悠真の頭を撫でた。
その手は子供をあやす母のように、優しい。
不意に訪れた安心感に思わず目を細める悠真だったが、急にサッと青褪めた。自身に起こったことを思い出したのだ。
「そ、そうだ。アイツはどこに行った……!?」
「落ち着いて、悠真君!」
「居たんだよ! あの、得体のしれない女が! アイツ、俺のことを捕まえて……」
悠真はベンチから立ち上がると、怯えたようにキョロキョロと周りを見渡す。
「アイツ、本を寄越せって言ったんだ……」
あの女が見せた、何の光の灯っていない、深淵のような黒い瞳で覗き込まれた記憶が脳裏に甦る。
何が目的なのかも分からず、逃げることもできず。
ただ蛇に睨まれた蛙のように、捕食されるのをただ待つしかできなかったあのシーンが、何度もフラッシュバックするのだ。
悠真は耐え切れず、その場で頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
ここに紅莉が居てくれなければ、とうに彼は発狂していたかもしれない。
「大丈夫だよ、悠真君。ソレ、たぶんもう来ないと思うから」
「紅莉……あの女を知っているのか!?」
悠真が紅莉の方を見上げると、彼女はこくりと頷いた。
「なんなんだ、アイツは? なんだかまるで、口裂け女みたいな奴だったぞ!!」
「――ッ。っぷ、ぷふふふっ」
通り魔の目撃情報かと思いきや、悠真の口から出てきた『口裂け女』に紅莉は噴き出してしまった。
笑う場面ではないのだが、笑ってはいけないと思うほど、沸々と笑いがこみ上げてくるのだ。
その様子を見て、悠真は自分がいかに突拍子もないことを言ったのか気付いて赤面する。
「あぁ、いや。ゴメンね悠真君。そうだよね、まるで都市伝説か怪談みたいだもんね……」
「た、頼むよ紅莉。どういうことなのか、説明してくれ……」
もういっぱいいっぱいになってしまった悠真は、潤んだ目で懇願する。
それは、すっかり弱り切った想い人の姿だ。
紅莉は身悶えしそうな快感に必死で耐えながら、事情について話し始めた。
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