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剣の章
♠22 白薔薇の少女
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部屋に入ってすぐ、悠真は驚いた。
ここだけ和風の部屋だったのだ。
床には畳が敷き詰められており、壁は土壁、窓には紙の障子が嵌められている。
さっきまで寝ていたのか、壁の近くの床には布団が出しっぱなしだ。
洋の部分と言えば、そこら中に大量の縫いぐるみが置いてあるくらいだろうか。
他の部屋を全て覗いたわけではないが、なんだかここだけ国が違っているような気分になる。
とは言っても、日本から出たことの無い悠真はこちらの方が落ち着けるのだが。
部屋の主は客人を招き入れると、適当なクッション――これも何かのキャラクターなのか可愛らしい――を床に置いた。そして自身は寝床の上に座り、掛布団にくるんと包まった。
汐音を一言で表すのなら、それは『日本人形』という言葉がぴったりだな、と悠真は思った。もしくは座敷童だ。
彼女は七五三で着るような着物を見に纏い、赤い薔薇のかんざしを頭に挿している。
生気を感じられないような、不健康なほどに真っ白な肌。言い方はあれだが、痛々しい火傷が残る彼女の兄とは違い、汐音の顔には一切の瑕疵が無い。おそらく、日の光を全く浴びていないのが原因なのだろう。
花壇を舞う蝶のように、手で捕まえてしまえば簡単に傷付けてしまいそうな、そんな儚さを感じていた。
「……紅莉ちゃんのお友達、ですか?」
不躾にジロジロと眺めていると、人を品定めするかのような視線を返されてしまった。年下とはいえ、初対面の女の子に失礼なことをやってしまったと悠真は罰の悪さを感じた。
「そうだよ。紅莉とは同じクラスで……」
「ほら、汐音ちゃん。前に話したことのある悠真君だよ!」
「あぁ、そうなんですね……そう、この人が」
「カッコいいでしょ? 学校でも人気者で――」
悠真は自己紹介さえさせてもらえず、紅莉と汐音の間で会話が始まってしまった。
しかも内容が内容過ぎて、途中から会話に入りづらい。
「(紅莉、学校の外には友達が居たんだな)」
仕方なく、悠真は別のことに思考を向けることにした。
おそらく汐音は中学生なのだろう。しかし洋一の口ぶりとこの生活の様子を鑑みると、学校には行っていない気がする。……その理由は分からないが。
だがまぁ、初対面の悠真でも二人の仲が良いのだろうと言うのは分かった。
汐音が発していた警戒心が、紅莉に対してはあまり感じられない。
楽しそうに話している二人の姿は、テンションの差はあれど、学校で普段よく見るような女友達と同じ光景だった。
それよりも、悠真は汐音の手元が気になった。
先ほどは綺麗な肌だと思っていたが、なぜか薄手の白い手袋をしている。
和装とも合うには合うのだが、記憶違いでなければ、そういった手袋は屋外で使うものだったはず。
よくよく観察してみれば、手首には幾つもの傷痕がある。視線を少し上げれば、首元にも黒ずんだ痕が――
「うん、それでね! 今日は汐音ちゃんにお願いがあって――」
「お願い?」
「うん。実は禍星の子に関して、洋一さんに協力をして貰いたくって……」
悠真がボーっとしているうちに世間話が終わったのか、紅莉が別の話題に入っていた。
もしかしたら紅莉が彼女に会いに来たのは、汐音に協力をお願いすることが目的だったのかもしれない。そうとなれば悠真も他人事ではない。胡坐から正座へと姿勢を正した。
だが、ここでもそうは上手くいかなかったようだ。
それまでニコニコと聞いていた汐音が突然、剣呑な顔つきになって立ち上がった。
「――お断りです!!」
ここだけ和風の部屋だったのだ。
床には畳が敷き詰められており、壁は土壁、窓には紙の障子が嵌められている。
さっきまで寝ていたのか、壁の近くの床には布団が出しっぱなしだ。
洋の部分と言えば、そこら中に大量の縫いぐるみが置いてあるくらいだろうか。
他の部屋を全て覗いたわけではないが、なんだかここだけ国が違っているような気分になる。
とは言っても、日本から出たことの無い悠真はこちらの方が落ち着けるのだが。
部屋の主は客人を招き入れると、適当なクッション――これも何かのキャラクターなのか可愛らしい――を床に置いた。そして自身は寝床の上に座り、掛布団にくるんと包まった。
汐音を一言で表すのなら、それは『日本人形』という言葉がぴったりだな、と悠真は思った。もしくは座敷童だ。
彼女は七五三で着るような着物を見に纏い、赤い薔薇のかんざしを頭に挿している。
生気を感じられないような、不健康なほどに真っ白な肌。言い方はあれだが、痛々しい火傷が残る彼女の兄とは違い、汐音の顔には一切の瑕疵が無い。おそらく、日の光を全く浴びていないのが原因なのだろう。
花壇を舞う蝶のように、手で捕まえてしまえば簡単に傷付けてしまいそうな、そんな儚さを感じていた。
「……紅莉ちゃんのお友達、ですか?」
不躾にジロジロと眺めていると、人を品定めするかのような視線を返されてしまった。年下とはいえ、初対面の女の子に失礼なことをやってしまったと悠真は罰の悪さを感じた。
「そうだよ。紅莉とは同じクラスで……」
「ほら、汐音ちゃん。前に話したことのある悠真君だよ!」
「あぁ、そうなんですね……そう、この人が」
「カッコいいでしょ? 学校でも人気者で――」
悠真は自己紹介さえさせてもらえず、紅莉と汐音の間で会話が始まってしまった。
しかも内容が内容過ぎて、途中から会話に入りづらい。
「(紅莉、学校の外には友達が居たんだな)」
仕方なく、悠真は別のことに思考を向けることにした。
おそらく汐音は中学生なのだろう。しかし洋一の口ぶりとこの生活の様子を鑑みると、学校には行っていない気がする。……その理由は分からないが。
だがまぁ、初対面の悠真でも二人の仲が良いのだろうと言うのは分かった。
汐音が発していた警戒心が、紅莉に対してはあまり感じられない。
楽しそうに話している二人の姿は、テンションの差はあれど、学校で普段よく見るような女友達と同じ光景だった。
それよりも、悠真は汐音の手元が気になった。
先ほどは綺麗な肌だと思っていたが、なぜか薄手の白い手袋をしている。
和装とも合うには合うのだが、記憶違いでなければ、そういった手袋は屋外で使うものだったはず。
よくよく観察してみれば、手首には幾つもの傷痕がある。視線を少し上げれば、首元にも黒ずんだ痕が――
「うん、それでね! 今日は汐音ちゃんにお願いがあって――」
「お願い?」
「うん。実は禍星の子に関して、洋一さんに協力をして貰いたくって……」
悠真がボーっとしているうちに世間話が終わったのか、紅莉が別の話題に入っていた。
もしかしたら紅莉が彼女に会いに来たのは、汐音に協力をお願いすることが目的だったのかもしれない。そうとなれば悠真も他人事ではない。胡坐から正座へと姿勢を正した。
だが、ここでもそうは上手くいかなかったようだ。
それまでニコニコと聞いていた汐音が突然、剣呑な顔つきになって立ち上がった。
「――お断りです!!」
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