透影の紅 ~悪魔が愛した少女と疑惑のアルカナ~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!

文字の大きさ
23 / 87
剣の章

♠23 複雑怪奇な乙女心

しおりを挟む

「え……?」

 突然立ち上がったかと思えば、大きな声で「お断りします」と拒絶されてしまった。


「どうして? 汐音しおんちゃんのお兄さんも本を持っているんだよ? 他の禍星まがぼしの子たちを探して協力をしないと……」
「お兄様は決してそんな意味不明な女なんかに負けない!!」
「いや、だからソイツは呪術の本を……」

 少し困り顔をした紅莉を見て、汐音はそれを言い訳と取った。彼女は態度を軟化させるどころか、更に声を張り上げて抗議した。


「そうやって理由を付けて、紅莉ちゃんもお兄様に近付こうとしているの!?」

 丁寧な言葉遣いは変わらないままだが、彼女は猛烈に怒っていた。
 さすが兄妹と言ったところだろうか。その姿はどこか、妹の為に怒る洋一に似ていた。


「ちょ、ちょっと待ってよ汐音ちゃん。それはどういうこと?」

 紅莉の言うことも尤もである。身に覚えが無さすぎて、否定よりもまず疑問が湧いた。
 近付く、ということはなにも、物理的な話ではないだろう。


「最近、お兄様に近付いてくる女が居るの。あの女もお兄様と同じ禍星の子だからって……」
「あ、あの……」
「しかも他人の癖にいちいち馴れ馴れしいし、私のことを娘か妹のように扱ってきて……あぁ、なんて目障りな女……!!」
「女……? いや、そうじゃなくて。私は――」

 汐音は独りで勝手にブツブツと喋り始めてしまった。
 紅莉はどう説明したらいいのか分からず、アタフタとしている。

 何故か鞄からさっき貰ったばかりのパイを取り出して渡そうとするも、ペシッと払い落とされてしまった。可哀想に、パイは畳に叩きつけられてバラバラに割れてしまっていた。

 その光景をただ茫然と見ていた悠真だったが、流石に放っておけないと判断した。なるべく彼女を刺激しないよう、なるべく穏やかな口調で話し掛けた。


「あのさ、汐音ちゃん。紅莉は透影とかげになった俺を助けようとして、ここへ来たんだ。コイツは他人の大事な人を奪うような奴じゃないからさ……」
「悠真さんが……透影?」
「そう。俺も紅莉や洋一さんと同じ、禍星の子なんだ」
「あっ、ちょっと悠真君!? それは言っちゃ駄目だよ!」
「え? どうしてだ?」


 せっかく良かれと思って勇気を出して口を挟んだのに。隣りに座る紅莉は悠真を叱るような台詞を吐いた。当然、悠真はその理由が分からない。


「もう、そんな大事な秘密を簡単に言っちゃ駄目! 例え相手がこんなか弱そうな女の子でも、禍星の子だってことは秘密にしなきゃ!」
「え、でも紅莉は俺にすぐカミングアウトしたじゃないか」
「私は悠真君だから言ったの! これは命が掛かっていることなんだからね!?」

 そんなことは分かっている、とは思ったがさすがにここは口をつぐんだ。

 彼女が言いたいのはきっと、そういうことじゃない。
 洋一が懸念していたことを思い出した。教えたことで彼女まで巻き込まれてしまったら、とてもじゃないが責任なんて取れないのだ。


 だがすでに時すでに遅しだ。
 言ってしまった言葉が戻ってくるはずもない。忘れてくれと言ったところで、そんなわけにもいかないだろう。


「もう! 悠真君はもう黙ってて! 汐音ちゃん、ちょっとこっちに」
「え? え、えぇ……」

 紅莉は座布団から立ち上がると、無理やり汐音ちゃんの腕を掴んで布団から引きずり出した。そして、部屋の隅に連れて行ってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

三分で読める一話完結型ショートホラー小説

ROOM
ホラー
一話完結型のショートショートです。 短いけれど印象に残るそんな小説を目指します。 毎日投稿して行く予定です。楽しんでもらえると嬉しいです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...