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剣の章
♠24 乙女協定
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「(な、なんだよ……俺は蚊帳の外か?)」
紅莉を庇おうと思った故の行動だったはずなのだが。
その本人に怒られただけではなく、のけ者にまでされてしまった。まさに踏んだり蹴ったりである。
悠真は紅莉へのせめてもの抵抗だと、バラバラになったパイを拾い、封を開ける。
それをパリポリと齧りながら、脳内で愚痴を吐いていた。
いや、しかし。
たしかに紅莉の言う通り、迂闊だったかもしれない。
そもそも、禍星の子を標的に襲われたのだってまだ昨日の話だ。
この界隈に関して無知に近い自分は、誰が味方で敵なのかも分かっていない。
命の期限だって、今も刻一刻と削られつつあるのだ。焦りはあったとはいえ、今度からは自分も言動には慎重になるべきだろう。
そうしてパイがすっかりなくなった頃。
女性陣たちの内緒話も終わり、こちらへと戻ってきた。
二人とも晴れ晴れとした笑顔を浮かべている。
どうやら円満に解決したようだ。
「私達は和解しました」
「汐音ちゃん、協力してくれるって!」
何をどう説得したのかは分からないが、取り敢えずは仲間を増やすことに成功したようだ。悠真はホッと胸をなでおろす。
「恋する乙女たちによる、不可侵条約です」
「不可侵条約……?」
「悠真君は気にしなくて大丈夫! あ、汐音ちゃん。連絡先教えてくれる!?」
「うん。最近ようやくパソコンを使って良いって、お兄様が許してくれたの。メールなら私もできると思うから」
再び蚊帳の外に追いやられてしまったのか、今度はガールズトークを始めてしまった。
「じゃ、またね。紅莉ちゃん、悠真さん」
「絶対にまた会いに来るからね!!」
「元気でね、汐音ちゃん」
部屋を出る二人を、汐音は満面の笑みで見送っていた。
本当に部屋から出ないんだなぁ、と思いつつ、悠真は「またね」と言えなかった自分が少し情けなかった。はたして、七日後に自分は生きているのだろうか。
「で? 洋一さんは説得できそうなのか?」
ようやく薔薇の洋館から抜け出すことに成功した。
悠真はふぅと一息ついた後、さっきは聞けずじまいだったことを紅莉に確認した。
「お兄さんをどうにか説得するから、三日は欲しいって!」
「三日か……あんまり余裕は無いよな」
なにしろ、あの女を探し出し、透影の呪いを解除させなければならないのだ。
できればあんな化け物女とは二度と会いたくはないのだが、そうも言っていられない。
まるで、鬼ごっこのようだ。
今度はこちらが鬼となって、捕まえに行くしかない。
「そうなんだよね。だから、私達でできることは全部やろう?」
「あぁ。……といっても、他に何か案があるのか?」
頼ってばかりで申し訳ないのだが、本当に分からないことだらけなのだ。
ネットで調べたところで何も出てこなかったのだから、こうして正直に聞くしかないのだ。
「まぁ、いちおうは……」
「小さなことでも、何か手掛かりがあるんだったら頼むよ。紅莉だけが頼りなんだ」
拝むように両手を合わせて頼み込む悠真。
「私だけが……頼り……!」
その姿を見て、紅莉は猛烈な優越感を感じたのだろう。
口裂け女も見ればビックリぐらい、口角を上げていた。
「え、えへへ。しょうがないなぁ。悠真君のためにも、一肌脱ごうじゃないの」
「できることなら何でもするからさ、どうにか頼む!」
「うんうん。私も悠真君の為なら何だってするからね!」
完全に調子に乗っている紅莉は、壊れた人形のようにコクコクと頭を上下させた。
取り敢えず、今日の所は一度家に帰って休むことにした。悠真の疲労がもう限界そうだったのだ。
バス停へと向かう道中、紅莉がふと「あ、そうだ」声を上げた。
「そういえば汐音ちゃん。お兄さんには隠していたけど、あの子も禍星の子だよ」
紅莉を庇おうと思った故の行動だったはずなのだが。
その本人に怒られただけではなく、のけ者にまでされてしまった。まさに踏んだり蹴ったりである。
悠真は紅莉へのせめてもの抵抗だと、バラバラになったパイを拾い、封を開ける。
それをパリポリと齧りながら、脳内で愚痴を吐いていた。
いや、しかし。
たしかに紅莉の言う通り、迂闊だったかもしれない。
そもそも、禍星の子を標的に襲われたのだってまだ昨日の話だ。
この界隈に関して無知に近い自分は、誰が味方で敵なのかも分かっていない。
命の期限だって、今も刻一刻と削られつつあるのだ。焦りはあったとはいえ、今度からは自分も言動には慎重になるべきだろう。
そうしてパイがすっかりなくなった頃。
女性陣たちの内緒話も終わり、こちらへと戻ってきた。
二人とも晴れ晴れとした笑顔を浮かべている。
どうやら円満に解決したようだ。
「私達は和解しました」
「汐音ちゃん、協力してくれるって!」
何をどう説得したのかは分からないが、取り敢えずは仲間を増やすことに成功したようだ。悠真はホッと胸をなでおろす。
「恋する乙女たちによる、不可侵条約です」
「不可侵条約……?」
「悠真君は気にしなくて大丈夫! あ、汐音ちゃん。連絡先教えてくれる!?」
「うん。最近ようやくパソコンを使って良いって、お兄様が許してくれたの。メールなら私もできると思うから」
再び蚊帳の外に追いやられてしまったのか、今度はガールズトークを始めてしまった。
「じゃ、またね。紅莉ちゃん、悠真さん」
「絶対にまた会いに来るからね!!」
「元気でね、汐音ちゃん」
部屋を出る二人を、汐音は満面の笑みで見送っていた。
本当に部屋から出ないんだなぁ、と思いつつ、悠真は「またね」と言えなかった自分が少し情けなかった。はたして、七日後に自分は生きているのだろうか。
「で? 洋一さんは説得できそうなのか?」
ようやく薔薇の洋館から抜け出すことに成功した。
悠真はふぅと一息ついた後、さっきは聞けずじまいだったことを紅莉に確認した。
「お兄さんをどうにか説得するから、三日は欲しいって!」
「三日か……あんまり余裕は無いよな」
なにしろ、あの女を探し出し、透影の呪いを解除させなければならないのだ。
できればあんな化け物女とは二度と会いたくはないのだが、そうも言っていられない。
まるで、鬼ごっこのようだ。
今度はこちらが鬼となって、捕まえに行くしかない。
「そうなんだよね。だから、私達でできることは全部やろう?」
「あぁ。……といっても、他に何か案があるのか?」
頼ってばかりで申し訳ないのだが、本当に分からないことだらけなのだ。
ネットで調べたところで何も出てこなかったのだから、こうして正直に聞くしかないのだ。
「まぁ、いちおうは……」
「小さなことでも、何か手掛かりがあるんだったら頼むよ。紅莉だけが頼りなんだ」
拝むように両手を合わせて頼み込む悠真。
「私だけが……頼り……!」
その姿を見て、紅莉は猛烈な優越感を感じたのだろう。
口裂け女も見ればビックリぐらい、口角を上げていた。
「え、えへへ。しょうがないなぁ。悠真君のためにも、一肌脱ごうじゃないの」
「できることなら何でもするからさ、どうにか頼む!」
「うんうん。私も悠真君の為なら何だってするからね!」
完全に調子に乗っている紅莉は、壊れた人形のようにコクコクと頭を上下させた。
取り敢えず、今日の所は一度家に帰って休むことにした。悠真の疲労がもう限界そうだったのだ。
バス停へと向かう道中、紅莉がふと「あ、そうだ」声を上げた。
「そういえば汐音ちゃん。お兄さんには隠していたけど、あの子も禍星の子だよ」
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