26 / 87
剣の章
♤26 生フランクフルト
しおりを挟む
「なんなのよぉ、知らないわよぉ……!!」
誰にも邪魔されることの無い、彼女だけの世界。そのはずだったのに、今では日々子という異物が紛れ込んでいる。
男を魅了するためのメイクは今、涙で歪んでしまっていた。
それもそうだろう、目の前に死神が立っているのだから。
部屋に充満していた甘ったるい香水とは別の刺激臭が漂い始める。
「占星術を纏めた本……貴女が持っていたのは知っているわ」
見た目や口調とは裏腹の、清涼な声。
日々子は顔を女に向けたまま、視線だけを部屋の壁へと移動させた。その先には占星術で使うホロスコープが飾られていた。
「う、あ……アレはもう私の手元には無いわよ!」
何かが思い当たったのか、女は焦ったように叫ぶ。
「どうして……?」
「売ったからよ! 中身はもう覚えたし、アプリがあれば占い自体はできんのよ! キャバの方が店に太客が来るし、お金はそっちのが儲かるし!!」
「ここに、無い……?」
誤魔化すつもりは、本当に無かったのだろう。
彼女にとって、その本とは大事なモノでは無かったのだ。日々子に言われるまで、すっかり忘れていたほどに。
あくまで占いは金稼ぎの道具。
他に代用できるツールがあるのなら、本に価値を感じられなかった。
「なに、お金が目的? 残念だったわね、高額で売れたけどもう使っちゃったわよ」
だが、あくまでもそれは彼女にとっての話だ。
本が無いと言えば、自分には用はないはずと踏んでの発言だった。
しかし、それはまったくの逆効果にしかならなかった。
目の前に居る異様な女にとっては、本を手放すというのは神を捨てる行為そのものだったのだから。
「どこに売ったの?」
「知らないわよ、ネットオークションで売ったんだもん! 相手のことなんて分かるわけないじゃない!」
女は日々子が怒っていることにも気付いていない。
「どっかのメンヘラが買ったんじゃないの」とか「もっとふっかけてやれば良かった」などとペラペラと聞いてもいない情報を喋り出していた。
「そう……じゃあ、別の方の用件を済ませちゃうわね」
「だからさっさと帰っ――え?」
「あなた、啓介と浮気してたわよね?」
「は? 啓介と浮気って……あ、アンタまさか……!」
そこでようやく、女は日々子の正体に気が付いた。
カレイドスコープ代表、槌金啓介。
女にとって彼は所属していた団体のトップであり、客のうちの一人だった。
彼女をこの業界に誘ったのも啓介だったし、親よりもよっぽど世話になった恩人でもある。
それは仕事を斡旋してもらったという意味でもそうだし、女の悦びを教えたという点でもそうだろう。男は身体さえ貸せば大金をもたらしてくれるというのは、彼女の中で一番の教えだった。
そんな啓介には、日々子という一番のお気に入りが居たようだった。
しかし根っからの遊び人である彼が、女ひとりで満足するわけがないというのは良く分かっていた。だから彼女も連絡も取り合っていたし、商売の女を紹介することもあった。
ただ、最近ではその頻度も減り、女も啓介のことを忘れかけていたところだった。
部屋に侵入してきた女は今「啓介と浮気」と言った。
つまり、この女が啓介を殺した犯人だ、ということである。
「あ、アタシを殺しに来たっていうの!?」
「うふふっ。別に私は、貴女に恨みなんか無いわよ?」
「じゃ、じゃあ助けてよっ……!」
「でもね、あの人に捧げるなら丁度いいかなって」
「……は?」
日々子は慈愛に満ちた顔で、肩にかけっぱなしだったトートバッグのファスナーを開いた。
そして何かが入ったコンビニ袋を取り出した。
その瞬間、部屋に新たな異臭が溢れ出す。
それは生ごみを三角コーナーで数日放置したような、酷い臭いだった。
「うえっ……な、なにをする気なのよ……」
日々子はビニール袋の中に手を突っ込み、何かを取り出した。
「ねぇ、貴女。お腹空いていないかしら? 私、フランクフルトを作ってみたの。うふふっ。そういうのお好きでしょう?」
「は? え、それ……なんなのよ、それは!?」
日々子が手に持っていたのは、割りばしのような木の串に刺さったどす黒いナニカ。
とてもじゃないが、フランクフルトとは思えない見た目をしている。
更には何かドロっとした液体がポタポタと滴っており、異臭もそこから漂っているようだ。
女は思わず腕で顔を覆いながら、ズルズルと後退った。
「逃げないでよぉ……」
「い、いや……お願い……」
ガツン、とベランダへ続く窓にぶつかる音がした。それ以上、逃げ場は無い。
女ができるのは、もはや命乞いだけだった。
もちろん、日々子はそんなものは受け入れない。
彼女は空いていた左手でバッグから黒い本を取り出すと、女の影を奪って拘束し始めた。
「ひっ!? う、ごけな……」
「はーい。あぁんして~」
「いや、やめて……」
「あぁんしなさいって言っているでしょうがぁああ!!!!」
涙をポロポロと流す女に近寄り、喉元を足で抑え込んだ。
そして無理やり女の口に啓介の肉片を突っ込むと、そのまま口内をグイグイと犯し始めた。
「ぐぇ、やめっ……あっあふっ、ごぁ」
「ほらほらほらァ~!!」
「あっ、ごほ。ぐぇ」
日々子の華奢な見た目からは想像もできない、非常に強い力では女も抵抗しようが無かった。
そして遂に、串の先端が女の喉元を突き裂いた。
「ふ、ふふ……」
そのまま女が動かなくなるまで、日々子は女を踏みつけたまま。
啓介の時のように、絶頂でしばらく身体を震わせていた。
誰にも邪魔されることの無い、彼女だけの世界。そのはずだったのに、今では日々子という異物が紛れ込んでいる。
男を魅了するためのメイクは今、涙で歪んでしまっていた。
それもそうだろう、目の前に死神が立っているのだから。
部屋に充満していた甘ったるい香水とは別の刺激臭が漂い始める。
「占星術を纏めた本……貴女が持っていたのは知っているわ」
見た目や口調とは裏腹の、清涼な声。
日々子は顔を女に向けたまま、視線だけを部屋の壁へと移動させた。その先には占星術で使うホロスコープが飾られていた。
「う、あ……アレはもう私の手元には無いわよ!」
何かが思い当たったのか、女は焦ったように叫ぶ。
「どうして……?」
「売ったからよ! 中身はもう覚えたし、アプリがあれば占い自体はできんのよ! キャバの方が店に太客が来るし、お金はそっちのが儲かるし!!」
「ここに、無い……?」
誤魔化すつもりは、本当に無かったのだろう。
彼女にとって、その本とは大事なモノでは無かったのだ。日々子に言われるまで、すっかり忘れていたほどに。
あくまで占いは金稼ぎの道具。
他に代用できるツールがあるのなら、本に価値を感じられなかった。
「なに、お金が目的? 残念だったわね、高額で売れたけどもう使っちゃったわよ」
だが、あくまでもそれは彼女にとっての話だ。
本が無いと言えば、自分には用はないはずと踏んでの発言だった。
しかし、それはまったくの逆効果にしかならなかった。
目の前に居る異様な女にとっては、本を手放すというのは神を捨てる行為そのものだったのだから。
「どこに売ったの?」
「知らないわよ、ネットオークションで売ったんだもん! 相手のことなんて分かるわけないじゃない!」
女は日々子が怒っていることにも気付いていない。
「どっかのメンヘラが買ったんじゃないの」とか「もっとふっかけてやれば良かった」などとペラペラと聞いてもいない情報を喋り出していた。
「そう……じゃあ、別の方の用件を済ませちゃうわね」
「だからさっさと帰っ――え?」
「あなた、啓介と浮気してたわよね?」
「は? 啓介と浮気って……あ、アンタまさか……!」
そこでようやく、女は日々子の正体に気が付いた。
カレイドスコープ代表、槌金啓介。
女にとって彼は所属していた団体のトップであり、客のうちの一人だった。
彼女をこの業界に誘ったのも啓介だったし、親よりもよっぽど世話になった恩人でもある。
それは仕事を斡旋してもらったという意味でもそうだし、女の悦びを教えたという点でもそうだろう。男は身体さえ貸せば大金をもたらしてくれるというのは、彼女の中で一番の教えだった。
そんな啓介には、日々子という一番のお気に入りが居たようだった。
しかし根っからの遊び人である彼が、女ひとりで満足するわけがないというのは良く分かっていた。だから彼女も連絡も取り合っていたし、商売の女を紹介することもあった。
ただ、最近ではその頻度も減り、女も啓介のことを忘れかけていたところだった。
部屋に侵入してきた女は今「啓介と浮気」と言った。
つまり、この女が啓介を殺した犯人だ、ということである。
「あ、アタシを殺しに来たっていうの!?」
「うふふっ。別に私は、貴女に恨みなんか無いわよ?」
「じゃ、じゃあ助けてよっ……!」
「でもね、あの人に捧げるなら丁度いいかなって」
「……は?」
日々子は慈愛に満ちた顔で、肩にかけっぱなしだったトートバッグのファスナーを開いた。
そして何かが入ったコンビニ袋を取り出した。
その瞬間、部屋に新たな異臭が溢れ出す。
それは生ごみを三角コーナーで数日放置したような、酷い臭いだった。
「うえっ……な、なにをする気なのよ……」
日々子はビニール袋の中に手を突っ込み、何かを取り出した。
「ねぇ、貴女。お腹空いていないかしら? 私、フランクフルトを作ってみたの。うふふっ。そういうのお好きでしょう?」
「は? え、それ……なんなのよ、それは!?」
日々子が手に持っていたのは、割りばしのような木の串に刺さったどす黒いナニカ。
とてもじゃないが、フランクフルトとは思えない見た目をしている。
更には何かドロっとした液体がポタポタと滴っており、異臭もそこから漂っているようだ。
女は思わず腕で顔を覆いながら、ズルズルと後退った。
「逃げないでよぉ……」
「い、いや……お願い……」
ガツン、とベランダへ続く窓にぶつかる音がした。それ以上、逃げ場は無い。
女ができるのは、もはや命乞いだけだった。
もちろん、日々子はそんなものは受け入れない。
彼女は空いていた左手でバッグから黒い本を取り出すと、女の影を奪って拘束し始めた。
「ひっ!? う、ごけな……」
「はーい。あぁんして~」
「いや、やめて……」
「あぁんしなさいって言っているでしょうがぁああ!!!!」
涙をポロポロと流す女に近寄り、喉元を足で抑え込んだ。
そして無理やり女の口に啓介の肉片を突っ込むと、そのまま口内をグイグイと犯し始めた。
「ぐぇ、やめっ……あっあふっ、ごぁ」
「ほらほらほらァ~!!」
「あっ、ごほ。ぐぇ」
日々子の華奢な見た目からは想像もできない、非常に強い力では女も抵抗しようが無かった。
そして遂に、串の先端が女の喉元を突き裂いた。
「ふ、ふふ……」
そのまま女が動かなくなるまで、日々子は女を踏みつけたまま。
啓介の時のように、絶頂でしばらく身体を震わせていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる