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杖の章
♣8 幼い紅莉
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「それはつまり、教会ごと燃やされたってこと?」
「そう。ひっどいよね~。教会は全焼。だけど運よく一つのページだけ燃え残ったんだ」
それは偶然だったのか、マルコの力だったのか。教会の外にある納屋に一枚の破片が入り込んだおかげで、存在が消えるのはどうにか免れたようだ。
「だけど、誰も廃墟になんか来てくれないしさぁ。そのまま朽ちて消えちゃうかと思ったんだ。……だけど、そんなボクを見つけてくれた人が現れたんだ」
マルコの視線の先には一人の少女が居た。
彼女は冷蔵庫の中にチーズタルトらしきお菓子があるのを見つけ、許可も得ずに食べ始めたところだった。
マルコはその一部始終を見て、クスクスと笑った。
「その時の紅莉はまだ小学生でさ。たしか……そう。自分のリコーダーを探しに来たとかって言っていたかな」
「え? リコーダーを!?」
「うん。教会に隠されちゃったんだってさ。心霊スポットになっていたからねぇ、ここは」
悠真の脳裏に、崩れかけた教会で泣きながらリコーダーを探す紅莉の姿が想像できた。
「ねぇ、悠真クン。紅莉、クラスメイトから虐められていたんだって?」
――彼は、怒っている。
自分の恩人が傷付けられていたからだろう。相当、キレている。
優しい声色だが、絶対にこれは、悠真に対してもキレているというアピールだ。
「……そんな事も知っているんですか」
「付き合いの年月で言ったら、ボクも負けていないからね」
悠真は否定も、肯定もしなかった。
たしかに幼い頃の紅莉は、クラスの女子に虐められていた。
無視をされたり、悪口を言われたりしていたのは同じクラスメイトだった自分も知っている。
「あはは、ゴメンね。キミを責めるつもりじゃなかったんだ。それに、悠真クンが救ってくれたって聞いたよ。さすがだね。まさにキミは、紅莉にとってのヒーローだ」
「いや、俺はそんな立派なもんじゃ……」
彼は紅莉から聞いたことを大げさに言っているのだろうが、こうして他人に言葉にして褒められると何だか照れ臭い。
そもそも、あの時は深く考えての行動ではなかったのだ。
友人がイジメに加担しているのが何となく気に入らなかっただとか、クラスの雰囲気が悪くなって皆と遊べなくなるのが嫌だったとか、そんな自分勝手な理由だったはず。
そう、紅莉を意識的に助けたいと思ったのではなく、ただ自分のための行動だった。
「それでも彼女は救われたんだから良いんだよ。ボクじゃできないことだ」
「う、恥ずかしいからそれ以上はやめてくれよ。それより、紅莉はそれからどうしたんだ?」
「おっと、そうだったね。彼女は十年を掛けて、その一ページから本を復元してくれたんだ。それも、独学でね」
ほとんど力を失っていたマルコは自分では何もすることができなかった。いわば、休眠状態に近かったという。
もちろん、今のように実態を持って何かをするのもできなかったし、紅莉に話し掛けることもできなかった。
それをどうやって紅莉は修復しようとしたかといえば。
「彼女はただ、そのページに書かれていたタロットの意味を調べようとしたみたいだ。そう、今のボクが描かれている、悪魔のカードの意味を」
まずは家にあった辞書で悪魔とタロットの意味について調べた。
そして学校の図書館にあった本でタロットの使い方を。
調べた結果を少しずつ、自分なりの言葉で一冊の自由帳に書いていったそうだ。
「成長するにつれて、どんどんと専門的なことも調べていたよ。歴史だとか、著名な占い師についても。図書館とか本屋に足しげく通っていたからね。そしていつしか、お小遣いで買ったタロットで占いをするようになった」
「紅莉がそんなことを……」
悠真の知らないところで、彼女はコツコツと占いについて勉強していた。
記憶を探ってみれば、たしかにクラスの女子の中で占いが異様に流行っていた時期があったことを思い出した。
あれはたしか、誰かが中心となってやっていたはずだ。顔は思い出せないが、やたら当たると評判で、隣のクラスメイトや一部の先生までその人物に占ってもらっていた。
「そう。ひっどいよね~。教会は全焼。だけど運よく一つのページだけ燃え残ったんだ」
それは偶然だったのか、マルコの力だったのか。教会の外にある納屋に一枚の破片が入り込んだおかげで、存在が消えるのはどうにか免れたようだ。
「だけど、誰も廃墟になんか来てくれないしさぁ。そのまま朽ちて消えちゃうかと思ったんだ。……だけど、そんなボクを見つけてくれた人が現れたんだ」
マルコの視線の先には一人の少女が居た。
彼女は冷蔵庫の中にチーズタルトらしきお菓子があるのを見つけ、許可も得ずに食べ始めたところだった。
マルコはその一部始終を見て、クスクスと笑った。
「その時の紅莉はまだ小学生でさ。たしか……そう。自分のリコーダーを探しに来たとかって言っていたかな」
「え? リコーダーを!?」
「うん。教会に隠されちゃったんだってさ。心霊スポットになっていたからねぇ、ここは」
悠真の脳裏に、崩れかけた教会で泣きながらリコーダーを探す紅莉の姿が想像できた。
「ねぇ、悠真クン。紅莉、クラスメイトから虐められていたんだって?」
――彼は、怒っている。
自分の恩人が傷付けられていたからだろう。相当、キレている。
優しい声色だが、絶対にこれは、悠真に対してもキレているというアピールだ。
「……そんな事も知っているんですか」
「付き合いの年月で言ったら、ボクも負けていないからね」
悠真は否定も、肯定もしなかった。
たしかに幼い頃の紅莉は、クラスの女子に虐められていた。
無視をされたり、悪口を言われたりしていたのは同じクラスメイトだった自分も知っている。
「あはは、ゴメンね。キミを責めるつもりじゃなかったんだ。それに、悠真クンが救ってくれたって聞いたよ。さすがだね。まさにキミは、紅莉にとってのヒーローだ」
「いや、俺はそんな立派なもんじゃ……」
彼は紅莉から聞いたことを大げさに言っているのだろうが、こうして他人に言葉にして褒められると何だか照れ臭い。
そもそも、あの時は深く考えての行動ではなかったのだ。
友人がイジメに加担しているのが何となく気に入らなかっただとか、クラスの雰囲気が悪くなって皆と遊べなくなるのが嫌だったとか、そんな自分勝手な理由だったはず。
そう、紅莉を意識的に助けたいと思ったのではなく、ただ自分のための行動だった。
「それでも彼女は救われたんだから良いんだよ。ボクじゃできないことだ」
「う、恥ずかしいからそれ以上はやめてくれよ。それより、紅莉はそれからどうしたんだ?」
「おっと、そうだったね。彼女は十年を掛けて、その一ページから本を復元してくれたんだ。それも、独学でね」
ほとんど力を失っていたマルコは自分では何もすることができなかった。いわば、休眠状態に近かったという。
もちろん、今のように実態を持って何かをするのもできなかったし、紅莉に話し掛けることもできなかった。
それをどうやって紅莉は修復しようとしたかといえば。
「彼女はただ、そのページに書かれていたタロットの意味を調べようとしたみたいだ。そう、今のボクが描かれている、悪魔のカードの意味を」
まずは家にあった辞書で悪魔とタロットの意味について調べた。
そして学校の図書館にあった本でタロットの使い方を。
調べた結果を少しずつ、自分なりの言葉で一冊の自由帳に書いていったそうだ。
「成長するにつれて、どんどんと専門的なことも調べていたよ。歴史だとか、著名な占い師についても。図書館とか本屋に足しげく通っていたからね。そしていつしか、お小遣いで買ったタロットで占いをするようになった」
「紅莉がそんなことを……」
悠真の知らないところで、彼女はコツコツと占いについて勉強していた。
記憶を探ってみれば、たしかにクラスの女子の中で占いが異様に流行っていた時期があったことを思い出した。
あれはたしか、誰かが中心となってやっていたはずだ。顔は思い出せないが、やたら当たると評判で、隣のクラスメイトや一部の先生までその人物に占ってもらっていた。
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