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杖の章
♣7 星廻の儀
しおりを挟む「占いは人を変える力がある。その使い方次第では、大きな災いをもたらすことだってあるんだ。それを忘れないために、ボクは『禍いの星』と付けたんだけど……残念ながら、力を悪い方向に使う子が現れてしまった」
悠真はあることに気付いてしまった。
マルコの口が動いていないのに、声だけがハッキリと聞こえるということに。
例えるなら、仮面を被ったまま喋っているように見えるのだ。
「マルコ、本性が出てるよ」
「――おっと、失礼。ボクとしたことが」
マルコは机の上のナプキンを手に取ると、顔の前に広げて顔を隠した。
そしてナプキンを降ろし、もう一度顔を出す。
さっきまでと同じニコニコとした美少年の顔に戻っていた。まるでマジックのように。
悠真の心の中で「いったい、今のは何だったんだろう」という疑問が湧いたが、敢えて触れないことにした。
「いやぁ、前回の星廻の儀がサイテーでさぁ」
マルコは表情筋をほぐすように両手の指でグニグニと捏ね回しながら、やや拗ねるように言った。
「星廻の儀……?」
「あぁ。六冊の本が集まり、禍星の子に祝福を授けることをそう言っているよ」
「ってことは、何回かその星廻の儀があったってことか」
「当然、人は死ぬからね。新たな禍星の子が生まれ、全員が揃った時にはやっていたんだよ。それで前回の時に偶然、とても欲深い奴が出てしまってね。いやぁ、参っちゃったよ」
前回の星廻の儀。
それは今から十七年ほどさかのぼる。悠真と紅莉の生まれる、約一年前の事だった。
「ある男がね。六冊の本を一つにして、自分だけのものにしようとしたんだ」
「本を……一つに!?」
「そう。前回の星廻の儀、つまり六冊の本と二十一人の禍星の子が揃った時だね。彼らは本を巡って、命懸けの争いを起こしたんだ」
ただでさえ、禍星の子は何かしらの祝福を授けられている。本を持っている人間はさらに大きな力を振るえるのだ。
それは悠真も身をもって体験している。
まさに今、影を奪われ、死の危機に瀕しているのだから。
一冊だけでも強悪なのに、全ての本を一人の人間が持ったりなんてしたら……。
「あれは酷い有り様でね……禍星の子は一人を残して全滅。関係者も大勢の人が死んだよ。それだけじゃない。最後の戦いがあった際に、ボクが宿っていたタロットの本が燃やされてしまったんだ」
「そんなことが……」
信じられない。気付けば悠真は口を大きく開けていた。
本の為に殺し合いをするだなんて。
それにいったい何のために、マルコの本体を燃やしたんだろう。そんなの、祝福を与えてくれた存在に恩を仇で返すようなものだ。
燃やされた当人も怒っているのか、目が座っている。
「そのせいでボクは今、本来の力を十全に使えなくなってしまったんだ。まぁソイツのおかげで、ボクは紅莉に出逢うことができたんだけどさ~」
「あの時のマルコは小さなノートの破片だったものね」
「紅莉だって、あの頃は小さくて可愛らしかったよ?」
あぁ、なるほど。ここで紅莉が出てくるのか。
自分の知らない紅莉をマルコは知っている。恋愛のような繋がりではないのは分かるけども、なんとなく心がモヤモヤする。
「ねぇ。悠真クンも知りたい? もちろん、聞きたいよね!? ボクと紅莉の運命的な出逢いをさ!」
「えぇ……? うーん、いや。まぁ、少しは?」
なんだか、知りたいような知りたくないような。
でもこの悪魔はどうしても喋りたいようである。駄目と言っても勝手に喋りそうだ。
紅莉はさっさと追加のお菓子を探して、奥にあるキッチンへ向かってしまった。
「十七年前の星廻の儀で、ボクの本は燃やされてしまった。それはこの教会も一緒だったんだ」
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