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杖の章
♧16 違和感のある家
しおりを挟む一度、最初に入ったリビングに戻ることにした。
ソファーにもたれ掛かり、直樹という男についてもう少し考えてみる。
四十代、独身の男。大学卒。
建築学や地理学に精通。風水を学び、カレイドスコープに籍を置く。
大学で学んだことや独自の考えをまとめ、何冊か本を出した。
こだわると突き詰めるタイプ。
神経質、もしくは潔癖症。機能性よりも表面を気にする……?
日々子はふとソファーに視線を落とすと、ソファーからコードが出ていることに気が付いた。コードの先にはリモコンがある。
どうやらこれは電動でリクライニングできるらしい。おまけにマッサージ機能もあるようだ。
ふぅん、と思い、試しにスイッチを入れてみる。
ういぃんという稼働音と主に、背もたれがゆっくりと後ろへ倒れて行った。
問題なく動いている。
振動するマッサージ機能も試してみるが、身体が揺らされるだけで気持ちが良いという感情は湧いてはこなかった。
そういえば啓介の部屋にも似たようなものがあった。自分が性欲処理をしたいと言って自分を抱いたのに、疲れたと言って行為が終わった後はそこで横になっていた。
嫌なことを思い出し、すぐにスイッチを切った。ついでに持っていた裁ち切り鋏を取り出して、それをソファーに思いっきり突き立ててやった。何度も、何度も。
「……ふぅ」
消し去りたい過去はさておき、こんな辺鄙な場所でも電気は通っているようだ。
ガワだけみれば豪邸のソレだし、慣れれば快適に住めるのかもしれない。
だが、直樹は本当にここに住んでいたのだろうか。
「……なるほど」
やっと違和感の謎が分かった。
あまりにもこの家は生活感が無さ過ぎたのだ。
家としてのガワは非常によくできている。風水を主軸とした設計もそうだし、照明や鏡の位置など、細かいインテリアも良く考えられていた。
だが、どれも新品のように綺麗過ぎた。
ソファもそうだ。啓介のソファーは何度も使っていたせいか、表面は皮脂で黒ずんでいた。
だが、ここにあるソファーは使った形跡がない。
そこへ直樹の人間性を加味した時。もしかすると彼は、ここに住んではいないのではないかという考えに行きついた。
ということは、だ。
ここにはもう用はない。直樹が居るとすれば、外しかないのだから。
敷地内には居るだろう。だとすれば、考えられるのはガレージ、納屋、水回りを寄せ集めた吹きさらしの小屋のいずれかだろう。
入って来た時と同じように窓から出た日々子は、先ずはガレージに向かう。
車の中を覗いてみるが、やはりいない。
他は冬場用のタイヤチェーンやジャッキ、その他の工具ぐらいしかなかった。
――次だ。
納屋は狭く、農具ぐらいしかない。仕方がないのでクワを拝借する。
引き篭もり生活だったので畑を耕したことはないが、今の身体なら多少は扱えるだろう。ただし、耕す予定なのは畑ではないが。
最後にやってきたのは、壁の無い小屋。
キャンプ場にあるような、蛇口のついた水場がある。他には猫脚のバスタブが置かれた浴室。角にはボットンのトイレもあった。トイレには蓋がされていたが、それでも何ともかぐわしい香りがする。そちらはあまり近付きたくないので、バスタブへ。
直樹がギミックが好きなのは、もう分かった。
今回は最初から何か隠されているだろうと思っていたので、簡単に見つけることができた。
それはバスタブを横へ移動させた床にあった。人ひとりが通れそうな、開閉式の床扉だ。
その扉を封印するかのように、扉にギッシリと札が貼られている。
日本語で書かれた札や、梵字や海外の文字もあった。日本語の物を見る限り、これらは浄化を促す札のようだ。
日々子はその札を見て鼻で笑った。馬鹿馬鹿しい。
床扉の取っ手を掴み、ギギギと上へと引き上げてやれば――そこには地下へと続く道が現れた。
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