透影の紅 ~悪魔が愛した少女と疑惑のアルカナ~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!

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金貨の章

♦4 巣立ち

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「もしもし?」
「あぁ、悠真君。今家?」
「うん。自分の部屋。紅莉は?」

 電話越しでも可愛い声だ。ていうか全部可愛い。

 ところで何か用でもできたんだろうか? 電話口では、車が通るような音がする。
 もうかなりの雨が降っているはずだけど、まだ外に居るのだろうか。


「今ね、荒川の土手沿いに居るの」
「え、荒川の? あー、もしかしてアレを?」
「そう。まぁアレは無事に処理できたから大丈夫。それで、これからのことなんだけど……」

 これからの話? 自分たちの交際について……ではないだろう。
 本探しについて何か進展があったのだろうか。


「壊す前に確認したんだけど……カズオのスマホにね、あるメールが着てたのよ」
「メール?」
「うん。カレイドスコープについての問い合わせなんだけどね。なんでも、運営側になるにはどうしたらいいのかって質問をしている人が居たの」
「運営に? 会員になる、とかじゃなく?」

 それはまた随分と自信家というか。売り込み方がアグレッシブな人がいたもんだ。

 会社で言えば、社員じゃなくていきなり役員をやらせてくれと言うようなものだろう。それほどまでに実力があるか、身の程を知らないかのどちらかだ。


「履歴書みたいなのも送られてきていてね。見てビックリ。その人、私達と同じ高校生だっていうのよ」
「はぁ!? 高校生!?」
「しかも女性だったんだよ。だからカズオがその子のことを根掘り葉掘り聞き出して、挙句の果てには会おうともしていたらしいの……」

 それを聞いた悠真は「あぁ、奴ならやりそうだな」と思った。
 なにしろ、紅莉が会いたいとメッセージを送ったら、数時間後には本当にやってくるような男だ。

 アイツ、根っからの女好きだったんだな……。

 そんなケダモノに紅莉を穢されそうになったことを思い出すと、怒りが再び沸々と湧いてくる。


「その子、山科やましな立夏りっかって名前らしいんだけど。彼女、有名なJK占い生配信者なんだって」
「JK……生配信?」
「それで最近、占星術の本を手に入れたらしいの。その伝手でカレイドスコープを知って、自分もそこに所属しようと思ったみたいなのよ」
「なるほど……それで、彼女の居場所は分かりそうなのか?」
「うん。都内だから近場だったよ。住所も書いてあったから、明日行こうと思うの。それでね、悠真君……」
「ん? どうした?」

 言葉に詰まってしまったのか、電話口の向こうで「あー」とか「えっと」と言う声が聞こえる。


「えっとね。たぶん警察の他にも、あの女が私達を追ってくるかもしれないの」
「あの女……って、あの化け物女が?」
「うん。一度は透影にしたカズオの所に来てトドメを刺しに来たでしょ? つまり……」
「俺達の所にも来る可能性があるってことか……」

 なぜ透影にしたあとにわざわざ殺しに来るかは分からない。
 いや、あの異常者が考えていることなんて分かるわけもないが。


「それでね、悠真君の所に来たら色々とマズいよね。だからさ、良かったらマルコの教会に避難しない?」
「教会に? あぁ、たしかに。家族まで狙われるわけにはいかないしな」

 自分だけならまだしも、無関係な家族まで襲われたら大変だ。

 一時的に非難するのは、悪くない考えだと思う。それに教会なら、人間には被害が及ばなさそうだ。迷惑そうな顔をする誰かさんが思い浮かんだが、それは敢えて気にしない。


「分かった。母さんには友達の家に泊まりに行くって言っておくよ。今から直接教会の方に向かえばいいかな?」
「うん。それでお願い。食事と寝る場所は、私からマルコにお願いするから大丈夫」
「……ありがとう。気を使ってくれて」
「えへへ。どういたしまして。それじゃ、向こうでね」

 紅莉はそう言って電話を切った。
 内容は深刻なものだったが、耳が幸せだ。


「っと、急がなきゃ。数日間は泊まることになるのか……母さん、なんて言うかな」

 どうにか誤魔化さなければならないが、仕方ない。
 取り敢えず、今日だけでも許しを得なければ。


 母はおそらく夕飯を作り始める頃合いだ。伝えるなら、早い方がいい。

 キッチンへ向かうためにベッドから起き上がる。そして持っていたスマホをポケットに入れようとしたところで、スマホが再び鳴った。


「……誰だ?」

 紅莉かとも思ったが、違う。
 画面に表示されていたのは、知らない番号だった。


 ――警察だったら嫌だな。


 悠真は電話には出ず、電源を切って部屋を出た。
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