61 / 87
金貨の章
♦4 巣立ち
しおりを挟む「もしもし?」
「あぁ、悠真君。今家?」
「うん。自分の部屋。紅莉は?」
電話越しでも可愛い声だ。ていうか全部可愛い。
ところで何か用でもできたんだろうか? 電話口では、車が通るような音がする。
もうかなりの雨が降っているはずだけど、まだ外に居るのだろうか。
「今ね、荒川の土手沿いに居るの」
「え、荒川の? あー、もしかしてアレを?」
「そう。まぁアレは無事に処理できたから大丈夫。それで、これからのことなんだけど……」
これからの話? 自分たちの交際について……ではないだろう。
本探しについて何か進展があったのだろうか。
「壊す前に確認したんだけど……カズオのスマホにね、あるメールが着てたのよ」
「メール?」
「うん。カレイドスコープについての問い合わせなんだけどね。なんでも、運営側になるにはどうしたらいいのかって質問をしている人が居たの」
「運営に? 会員になる、とかじゃなく?」
それはまた随分と自信家というか。売り込み方がアグレッシブな人がいたもんだ。
会社で言えば、社員じゃなくていきなり役員をやらせてくれと言うようなものだろう。それほどまでに実力があるか、身の程を知らないかのどちらかだ。
「履歴書みたいなのも送られてきていてね。見てビックリ。その人、私達と同じ高校生だっていうのよ」
「はぁ!? 高校生!?」
「しかも女性だったんだよ。だからカズオがその子のことを根掘り葉掘り聞き出して、挙句の果てには会おうともしていたらしいの……」
それを聞いた悠真は「あぁ、奴ならやりそうだな」と思った。
なにしろ、紅莉が会いたいとメッセージを送ったら、数時間後には本当にやってくるような男だ。
アイツ、根っからの女好きだったんだな……。
そんなケダモノに紅莉を穢されそうになったことを思い出すと、怒りが再び沸々と湧いてくる。
「その子、山科立夏って名前らしいんだけど。彼女、有名なJK占い生配信者なんだって」
「JK……生配信?」
「それで最近、占星術の本を手に入れたらしいの。その伝手でカレイドスコープを知って、自分もそこに所属しようと思ったみたいなのよ」
「なるほど……それで、彼女の居場所は分かりそうなのか?」
「うん。都内だから近場だったよ。住所も書いてあったから、明日行こうと思うの。それでね、悠真君……」
「ん? どうした?」
言葉に詰まってしまったのか、電話口の向こうで「あー」とか「えっと」と言う声が聞こえる。
「えっとね。たぶん警察の他にも、あの女が私達を追ってくるかもしれないの」
「あの女……って、あの化け物女が?」
「うん。一度は透影にしたカズオの所に来てトドメを刺しに来たでしょ? つまり……」
「俺達の所にも来る可能性があるってことか……」
なぜ透影にしたあとにわざわざ殺しに来るかは分からない。
いや、あの異常者が考えていることなんて分かるわけもないが。
「それでね、悠真君の所に来たら色々とマズいよね。だからさ、良かったらマルコの教会に避難しない?」
「教会に? あぁ、たしかに。家族まで狙われるわけにはいかないしな」
自分だけならまだしも、無関係な家族まで襲われたら大変だ。
一時的に非難するのは、悪くない考えだと思う。それに教会なら、人間には被害が及ばなさそうだ。迷惑そうな顔をする誰かさんが思い浮かんだが、それは敢えて気にしない。
「分かった。母さんには友達の家に泊まりに行くって言っておくよ。今から直接教会の方に向かえばいいかな?」
「うん。それでお願い。食事と寝る場所は、私からマルコにお願いするから大丈夫」
「……ありがとう。気を使ってくれて」
「えへへ。どういたしまして。それじゃ、向こうでね」
紅莉はそう言って電話を切った。
内容は深刻なものだったが、耳が幸せだ。
「っと、急がなきゃ。数日間は泊まることになるのか……母さん、なんて言うかな」
どうにか誤魔化さなければならないが、仕方ない。
取り敢えず、今日だけでも許しを得なければ。
母はおそらく夕飯を作り始める頃合いだ。伝えるなら、早い方がいい。
キッチンへ向かうためにベッドから起き上がる。そして持っていたスマホをポケットに入れようとしたところで、スマホが再び鳴った。
「……誰だ?」
紅莉かとも思ったが、違う。
画面に表示されていたのは、知らない番号だった。
――警察だったら嫌だな。
悠真は電話には出ず、電源を切って部屋を出た。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる