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金貨の章
♦6 洋一の秘密
しおりを挟む「俺は手掛かりを持っている奴の所へ行ってくる」
洋一も覚悟を決めた。この茨の洋館から一度出る必要がある。
紅莉たちとは直接協力はしないが、別口で事の解決を図ることにしよう。
同じ道を行くよりも、時間の無い今は違う道で目的地に進んだ方が解決の確率が上がると踏んだのだ。
もちろん、これが理由の全てでは無い。
彼女達が目の前で死ぬのを見たくない、という気持ちがあるのもたしかだ。
「どうして……あの女の所へ行くつもりなのですね? 私を置いて……」
「いや、アイツとは別に……それに、これはお前の為に……」
「嘘よ! 私よりも、あの女が良いって思ったんでしょ! あんな嘘で固められた女なんて! 私のことなんて、もうどうでも良くなったんだ!!」
「汐音!!」
ヒートアップしてきた汐音の口調が、ますます荒々しくなっていく。
汐音は余程、兄にその女と会って欲しくないようだ。
「それにね、私……お兄様の為なら、どうでも良い人間なんて殺せるもん」
「なにを言っているんだお前は……」
汐音は優しい子だ。誰も傷つけたくなくて、誰ともかかわらないようにしている。
そのくせ、自分には厳しく、いつも自分のことを傷付けてしまう悪癖がある。
洋一は彼女の手を見つめた。何かあるとすぐ手を見てしまうのは、手相師の職業病とも言って良いだろう。
だが、彼は妹の手相を見たことが無い。
本来なら必要のない手袋をして傷を隠しているからである。
本人はリストカットしていることを隠しているようだが、そんなもの兄にはお見通しである。首の痕だって、彼女が自分で首を絞めているのを知っている。
汐音は自分がこの火傷を負った原因が自分にあると思っているのだ。
――コイツが償うべき罰なんてあるはずもないのに。
「頼む、汐音。関係のないお前は、大人しくここで待っていてくれ」
どれだけ年上の人間にも頭を下げない洋一が、頭を下げた。
それほどまでに、彼にとって妹の無事は最優先事項なのだ。
だが、当の本人である汐音はケロっとした顔で、とんでもない切り札を切った。
「関係のない? それは違いますわ」
「なんだって!?」
「――私も禍星の子なんです。お兄様なら手相でバレてしまうと思って、隠しておりました。だから私も星に呪われた子。お兄様を護るためなら、人を殺すぐらい平気です」
「私、紅莉ちゃんから教えてもらう前から全部知っていました。禍星の子と星廻の儀について。それに……お兄様が本当に隠したがっていたことも」
「なんだって……?」
汐音が取り出したのは、この部屋に持って来ていた巨大なクマの縫いぐるみだった。
その背中にあるファスナーをジジと開け、綿の中から一冊の古びた本を取り出した。
「汐音……お前、どうしてその本を……!!」
それは洋一が大事にしていたはずの悪魔の愛読書だった。
誰にも見せたことも無い、自分だけの本。もちろん、汐音には存在すら教えていなかった。絶対に目に触れないよう、自室の隠し部屋で厳重に保管してたはずなのだ。
ただ、汐音に見られたくなかったのは自分がやっている家業のことではなかった。
彼の最大の秘密がそこにしまわれていた。
「この写真、見られたくなかったんですよね?」
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