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金貨の章
♦7 兄妹の過去
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「それは……っ!!」
汐音が本をペラペラと開くと、そのなかに栞のように数枚の写真が入っていた。
それはまだ洋一と汐音が出逢って間もない頃の写真。
汐音はまだ自分を傷付けることもしていなかったし、洋一も火傷なんてどこにもない。
「ねぇ、お兄様。お兄様って自分の手相、見てみませんか?」
「や、やめろ……!!」
「お兄様? ねぇ、お兄様は私のお義父様に何をしたんです? 私に――」
「もうやめてくれ――!!」
汐音が持つ写真の中には、小さな結婚式場で新郎新婦を囲う兄妹の姿があった。
◇
今から五年前。
洋一が成人したばかりの頃、父親が知らない女性と小さな女の子を連れてきた。
その女性は自分が教授としている大学の、事務員をしているそうだ。
そして何の前振りも無く、父はこの人と再婚する、と彼に告げた。
その女性――のちの義母が連れていた女の子こそ、当時まだ五歳になったばかりの汐音だった。
いわゆる連れ子同士の結婚。血の繋がりのない、紙面上での関係だったが、意外にもすぐに馴染むことができた。
年齢が十歳も離れている上に、二人の身長差は何十センチもあったので、どちらかといえば兄と妹というより親子のようだった。
洋一も彼女を猫可愛がりしており、汐音も彼にしょっちゅう甘えていた。
また、親同士の中も非常に良好だった。
父は休みの日には車を出して近くの市民プールに連れて行ったりと頻繁に家族サービスをしたし、義母も家事を頑張っていた。
義母は身体が弱いらしく、元々父の代わりに家のことをしていた洋一が彼女を手伝ってやると非常に喜んだ。
一見すると、彼らの家庭は上手くいっているように見えていた。
だが、それも最初の一年ほどだけだった。汐音が中学生になった辺りから、その関係性は次第に悪化していったのだ。
洋一の父親が、汐音のことを性的な目で見るようになったのである。
女として発育し始めた汐音は、中学生とは見えない妖艶さを放っていた。
発育と言っても、外面では無い。身体は幼いままであるのに、内面の成熟が著しかったのだ。
汐音の母も年の割には若く見えたし、非常に美しい女だった。だが日々進行していく老化にはどうしても抗えなかった。
洋一はある晩、自分の父親が隣りの部屋に向かうのを見てしまった。
その部屋は汐音が寝ている。こんな時間に何の用だ?と思った洋一は、こっそりと扉の隙間から中を覗いてしまった。
――自分の目で見ても、信じたくなかった。
大学の教授をしていた、あの厳格な父がである。まさかとは思ったが、自分の血の半分を引いている父だからこそ、有り得ないとは言い切れなかった。
そして汐音が悲鳴を上げ、抵抗し――全てが燃えてしまった。
何もかも。家も、父も、母も。
悲しかったが、洋一は汐音を責めなかった。
アイツは大事な家族なのだ。悪いのは父だ。そんな父を野放しにしている母も同罪だ。
汐音はショックで塞ぎがちになってしまった。
祖母の家を譲り受けることができたから、そこで療養しよう。
面倒は俺が全部見る。誰にも頼らない。他に家族は居ない。もう要らない。
俺が汐音を守らなければ。俺が――
その日、善良な少年は悪魔へと変貌した。
汐音が本をペラペラと開くと、そのなかに栞のように数枚の写真が入っていた。
それはまだ洋一と汐音が出逢って間もない頃の写真。
汐音はまだ自分を傷付けることもしていなかったし、洋一も火傷なんてどこにもない。
「ねぇ、お兄様。お兄様って自分の手相、見てみませんか?」
「や、やめろ……!!」
「お兄様? ねぇ、お兄様は私のお義父様に何をしたんです? 私に――」
「もうやめてくれ――!!」
汐音が持つ写真の中には、小さな結婚式場で新郎新婦を囲う兄妹の姿があった。
◇
今から五年前。
洋一が成人したばかりの頃、父親が知らない女性と小さな女の子を連れてきた。
その女性は自分が教授としている大学の、事務員をしているそうだ。
そして何の前振りも無く、父はこの人と再婚する、と彼に告げた。
その女性――のちの義母が連れていた女の子こそ、当時まだ五歳になったばかりの汐音だった。
いわゆる連れ子同士の結婚。血の繋がりのない、紙面上での関係だったが、意外にもすぐに馴染むことができた。
年齢が十歳も離れている上に、二人の身長差は何十センチもあったので、どちらかといえば兄と妹というより親子のようだった。
洋一も彼女を猫可愛がりしており、汐音も彼にしょっちゅう甘えていた。
また、親同士の中も非常に良好だった。
父は休みの日には車を出して近くの市民プールに連れて行ったりと頻繁に家族サービスをしたし、義母も家事を頑張っていた。
義母は身体が弱いらしく、元々父の代わりに家のことをしていた洋一が彼女を手伝ってやると非常に喜んだ。
一見すると、彼らの家庭は上手くいっているように見えていた。
だが、それも最初の一年ほどだけだった。汐音が中学生になった辺りから、その関係性は次第に悪化していったのだ。
洋一の父親が、汐音のことを性的な目で見るようになったのである。
女として発育し始めた汐音は、中学生とは見えない妖艶さを放っていた。
発育と言っても、外面では無い。身体は幼いままであるのに、内面の成熟が著しかったのだ。
汐音の母も年の割には若く見えたし、非常に美しい女だった。だが日々進行していく老化にはどうしても抗えなかった。
洋一はある晩、自分の父親が隣りの部屋に向かうのを見てしまった。
その部屋は汐音が寝ている。こんな時間に何の用だ?と思った洋一は、こっそりと扉の隙間から中を覗いてしまった。
――自分の目で見ても、信じたくなかった。
大学の教授をしていた、あの厳格な父がである。まさかとは思ったが、自分の血の半分を引いている父だからこそ、有り得ないとは言い切れなかった。
そして汐音が悲鳴を上げ、抵抗し――全てが燃えてしまった。
何もかも。家も、父も、母も。
悲しかったが、洋一は汐音を責めなかった。
アイツは大事な家族なのだ。悪いのは父だ。そんな父を野放しにしている母も同罪だ。
汐音はショックで塞ぎがちになってしまった。
祖母の家を譲り受けることができたから、そこで療養しよう。
面倒は俺が全部見る。誰にも頼らない。他に家族は居ない。もう要らない。
俺が汐音を守らなければ。俺が――
その日、善良な少年は悪魔へと変貌した。
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