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金貨の章
♦15 見えた光明
しおりを挟む「あはは、そう落ち込まないでよ。気持ちは有り難かったわ」
「じゃあ、あの……妹さんから本を取り上げたのは……?」
「妹の立夏が本を購入したのは本当に偶然よ。さすがの私もそれを知った時はかなり焦ったわ……でもまぁ、事前に対策が打てたのは僥倖だったかな」
こうして貴方たちと出逢えたしね、と花音はウインクまじりに笑った。
「あの、それで本のことなんですけど……」
「えぇ。こちらからも協力をお願いしたいわ。それに実は私、他にも本を持っている知り合いが居るの。彼と力を合わせれば、あのイカれた兎女に対抗できるはずよ!」
「本を持っている知り合いが居るんですか!?」
これは思わぬ収穫だった。まさか他に本を持っている人間の情報がここで手に入るとは。
「うん。ちょっと変わり者なんだけど、観月っていう男でね。付き合いは長いから信用はできると思うわ」
「え? 観月……?」
悠真はその名前を聞いて、最近知った人の中に思い当たる人物がいることに気が付いた。
「なぁんだ、洋一さんかぁ」
「えっ? もしかして、貴方たちも洋一を知っているの?」
「はい。実は最初にこの件で相談しに行ったのが洋一さんのところだったんですよ」
少しガッカリした様子の紅莉と、今度はビックリする側になった花音。
念の為に悠真が『洋一は火傷の痕が印象的な男性』だといえば、花音もまさにその人物だと言う。
どうやら花音と洋一は高校時代からの昔馴染みで、卒業後も何度か顔を合わせていたらしい。つまり付き合いの長さだけで言えば、紅莉よりも花音の方が長かったのである。
「なぁるほどねぇ。そんなことがあったの」
「はい……だけど、中々上手くはいかなくって」
「あはは。洋一も妹さんが絡むと頑固だからねぇ」
ここまでの事情を説明すると、花音は同情するかのような目を向けてきた。
本を持っている人物に会えてはいるのだが、未だ誰からも本を得られていないのだ。残りのタイムリミットは三日間しかないというのにもかかわらずだ。
「事情は分かったわ。洋一は私が何とか説得しましょう。元々明日会う予定だったから、貴方たちも来ると良いわ」
「良かった……!!」
「ありがとうございます、花音さん」
心強い協力者が現れてくれたことで、二人は心から胸を撫で下ろした。
これまで散々空振りばかりだったが、ここに来てやっと運が回ってきたようだ。
「それじゃあ、明日。洋一の館に集合しましょうか」
「よろしくお願いします!」
「二人とも、気を付けて帰ってね~」
そう言うと花音は立ち上がり、全員分の空き缶をスッと掴んで去っていった。
「素敵な女性だね、花音さんって」
「あぁ。立夏は口煩いって言っていたけど、理解もあるし優しいし、頼れる人だったわ」
デキる大人の女を見せつけられた二人は、すっかり彼女の虜になっていた。
最初に警戒をしていた分、余計に惚れ惚れとしてしまった。
「むぅ、随分と褒めるね」
「あはは。でも俺にとっては紅莉が一番だよ。さぁ、帰ろう」
可愛く口を窄める紅莉の手を取って、悠真たちも帰途につくことにする。
今思えば、最初から最後まで花音のペースだった。
主導権なんて何ひとつ無かった。自分たちがいかに子供で、考えが甘かったか思い知らされた。それこそ、敗北感すら覚えないほどに。
だが、病院をあとにする二人の表情は、とても晴れやかだった。
あれだけ重かった足取りも、今では随分と軽くなった。
親にも相談できず、味方らしい味方もおらず。
たった二人でどうにかここまでやってきたけれど、やはり限界だった。
まさか大人が一人居るだけで、ここまで安心感を得られるとは。
きっと、明日は良い日になる。
もしかしたら本集めに焦ったあの化け物女がやってきて、花音と洋一たちに返り討ちされるかもしれない。そうすれば見事、ハッピーエンドである。
「紅莉……」
「なぁに、悠真君」
「……いや。早く全部終わるといいな」
紅莉は「何を急に?」とキョトン、とする。しかしすぐに彼の言葉に込められた意味を理解したのか、悠真の腕にギュッと抱き着いた。
「えへ。そうだね。そうしたら、ずっと一緒に居ようね」
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