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聖杯の章
♡4 乙女たちの密約
しおりを挟む悠真たちを迎えたのは、ソファーの上で放心状態になっている洋一と、彼を背後から腕で抱汐音の姿だった。
最初に出逢った頃の、大人しくて引っ込み思案だった彼女の姿は、もはやどこにもない。
妖艶に微笑み、最愛の人を手に入れた悦びで満ち溢れていた。
「汐音ちゃん……」
「ありがとうございます、紅莉さん。貴女のお陰で、私は長年欲しかったものを手に入れることができました。そう、ずっと欲しかった……お兄様の心を……」
ブツブツと何かを呟く洋一の頬を優しくひと撫ですると、汐音はそっと口付けをした。
「これはいったい……それに、二人は兄妹だったんじゃ?」
汐音の恋心を知らない悠真はこの異様な雰囲気に呑まれそうになる。
五日前に会った時は兄想いの女の子だと思っていたのに、この変わりようだ。いったい何があったのかと慌てるのも当然だ。
「汐音ちゃんと洋一さんは、血は繋がっていないの。ご両親が再婚をしたから……」
「なっ!? それじゃあ二人は……」
「うふふっ。戸籍上の関係なんて、薄っぺらいだけでしょう? 私とお兄様はこの度、魂で繋がった本当の夫婦となりました。すべては、紅莉さんのアドバイスのお陰です……」
悠真は「いったい何を言ったんだ」という疑惑を込めた視線を、隣りにいる少女に送る。
芯の強そうな洋一をあそこまで廃人にするというのは、そう簡単じゃない。
だが紅莉は洋一のことには関心がないのか、彼の状態を心配する様子もない。
「汐音ちゃん。本はどうだったの?」
「うん。ちゃんとお兄様から……いえ、洋一さんから預かっています。どうぞ、私には不要なものですから」
汐音はソファーの上に置いてあった一冊の本を紅莉に手渡した。
それは青色の表紙に『手に刻まれた過去』と書かれた、アルバムサイズの本だった。
紅莉がパラパラと開き、さっそく中身を確認していく。
「……たしかに。これは洋一さんが持っていた、悪魔の愛読書だね」
手相について書かれただけあって、どのページにも手の平の写真や絵があった。写真の横には、手の持ち主のプロファイルがされている。生まれや学歴、性格や嗜好などを詳細に調べ上げたようだ。
さらに洋一の手書きと見られる字で、手相から読み取れる考察が小さな文字でビッシリと記載されていた。いわば、これは手相についての研究ノートだったのだろう。
だが、彼がこの本を仕事の現場で使うことはなかった。
あくまで手相の知識はすべて、彼の頭の中に入っていたのだから。
なにより、彼はこの本を秘匿したがっていた。
自室に隠し部屋まで作り、絶対に妹の目に触れないようにしていたのだ。
彼が秘密にしたかったのは、星廻や禍星の子についてだけではない。
自身と、汐音の親を手に掛けたという罪の記憶も一緒に封印されていた。
だがそれも、今はこうして悠真たちの前に曝け出されてしまっている。
もちろん、本を見たところで悠真たちは洋一が過去に何をしたかまでは分からないだろう。
彼の秘密は、汐音だけが握っている。
「紅莉さん、今すぐこの館から離れてください」
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