85 / 87
聖杯の章
♡12 悪夢と悪魔
しおりを挟む
「起きて、悠真くん……」
誰かの声に導かれるように、悠真はゆっくりと覚醒していく。
んん、と何回か身じろぎをした。
目蓋がやたらと重たく感じる。というより全身が物凄く怠い。それに……なんだだろう。どこかで嗅いだことのある甘酸っぱい匂いが、ツンと鼻を刺した。
「まぶしい……」
太陽の光が差し込んでいるのか、眩しい。視界がぼんやりとしている。
逆光になっているが、誰かが自分を見下ろしているようなシルエットが目に入った。
……そうだ。前にも似たようなことがあった。あれはたしか、公園で――。
「あか、り……?」
そうだ、間違いない。あの時のように、紅莉が俺を起こしてくれたんだ……。
まばたきを何度か繰り返り返しているうちに、悠真はようやく意識がハッキリとしてきた。
俺は何で寝ているんだ?
胸を刺された紅莉を助けようとして、俺は化け物女を……それから……それから、どうした!?
「紅莉っ!?」
がばっと上体を起き上がらせる。
俺は気を失っていたのか?
いや、誰かが俺達を助けてくれたんだ。だって目の前にいるのは――!!
彼女の無事を確かめようと、目を良く凝らす。だが、そこに居たのは――紅莉ではなかった。
「女神の……像?」
まだ幾らか眩んでいる頭を片手で押さえながら、辺りを見回してみる。
どうやらここは教会の礼拝堂のようだ。自分は祭壇の前に寝かされている。
そして紅莉だと思っていたのは、祭壇にある女神の像だった。面影は似ているが、断じて彼女ではない。
「あれは……マルコ? どうしてここに……」
礼拝堂には自分の他に一人しか人の影は無かった。
マルコは長椅子に足を組んで座り、平和そうなニコニコとした表情でこちらを眺めていた。
「どうしてって、まだ寝ぼけているのかい悠真クン。ここはボクの教会だよ?」
「いや、それは……俺は、いったい……?」
「君は丸二日も寝ていたんだ。ボクがその間の世話をしていたんだよ」
「二日も!? って、紅莉はどうなったんだ!? アイツ、胸を刺されて――」
「残念だけど、ボクが見付けた時には紅莉はもう亡くなっていたよ」
マルコは本当につらそうな表情でそう告げた。だが悠真はその言葉の意味を理解できなかった。
「は……? し、死んだ……?」
「満足そうな、安らかな死に顔だったよ。まったく、自分勝手で酷いよね~」
死んだ。紅莉が、死んだ……?
俺が見た時には、まだ生きていたはずだ。病院に連れて行けば助かったはずだ。
それを、目の前の悪魔は『死んだ』だって?
「おい、お前は何を呑気に言っているんだよ!! そ、そうだ。神の眷属なら、どうにかできるだろ!? 紅莉を生き返らせてくれよ!」
「残念ながら、死んだ魂を元に戻すことはできないんだ。時を巻き戻せないのと同じくね」
「そんな馬鹿なことがあってたまるか! お前だって紅莉が好きだったんだろ! どうして助けないんだよ!!」
「――それに、だ。紅莉はそんなことを望んじゃいなかった」
そんな馬鹿な。
紅莉は俺と一緒に居たいと言っていた。
生きて、これからもっともっと楽しいことを分かち合うはずだったのに!!
「気付いていないようだから、代わりにボクが教えてあげよう。これは全て、紅莉が望んだことなんだ。最初から、ね」
「はぁ? 最初からって、どういうことだマルコ!」
「簡単に言えば、キミは最初から紅莉に騙されていたんだ。――正直言って、キミは紅莉のことを何にも分かっちゃいなかったんだ」
「お前に俺の何が分かるっていうんだ!!」
なんなんだ。紅莉が望んだって。
そんなわけがあるわけがない。この数日間、俺と一緒に生き延びるために必死で呪いに抗って来たじゃないか。
「キミは覚えているかい? 紅莉がここでキミの運勢をタロットで占った時のことを」
誰かの声に導かれるように、悠真はゆっくりと覚醒していく。
んん、と何回か身じろぎをした。
目蓋がやたらと重たく感じる。というより全身が物凄く怠い。それに……なんだだろう。どこかで嗅いだことのある甘酸っぱい匂いが、ツンと鼻を刺した。
「まぶしい……」
太陽の光が差し込んでいるのか、眩しい。視界がぼんやりとしている。
逆光になっているが、誰かが自分を見下ろしているようなシルエットが目に入った。
……そうだ。前にも似たようなことがあった。あれはたしか、公園で――。
「あか、り……?」
そうだ、間違いない。あの時のように、紅莉が俺を起こしてくれたんだ……。
まばたきを何度か繰り返り返しているうちに、悠真はようやく意識がハッキリとしてきた。
俺は何で寝ているんだ?
胸を刺された紅莉を助けようとして、俺は化け物女を……それから……それから、どうした!?
「紅莉っ!?」
がばっと上体を起き上がらせる。
俺は気を失っていたのか?
いや、誰かが俺達を助けてくれたんだ。だって目の前にいるのは――!!
彼女の無事を確かめようと、目を良く凝らす。だが、そこに居たのは――紅莉ではなかった。
「女神の……像?」
まだ幾らか眩んでいる頭を片手で押さえながら、辺りを見回してみる。
どうやらここは教会の礼拝堂のようだ。自分は祭壇の前に寝かされている。
そして紅莉だと思っていたのは、祭壇にある女神の像だった。面影は似ているが、断じて彼女ではない。
「あれは……マルコ? どうしてここに……」
礼拝堂には自分の他に一人しか人の影は無かった。
マルコは長椅子に足を組んで座り、平和そうなニコニコとした表情でこちらを眺めていた。
「どうしてって、まだ寝ぼけているのかい悠真クン。ここはボクの教会だよ?」
「いや、それは……俺は、いったい……?」
「君は丸二日も寝ていたんだ。ボクがその間の世話をしていたんだよ」
「二日も!? って、紅莉はどうなったんだ!? アイツ、胸を刺されて――」
「残念だけど、ボクが見付けた時には紅莉はもう亡くなっていたよ」
マルコは本当につらそうな表情でそう告げた。だが悠真はその言葉の意味を理解できなかった。
「は……? し、死んだ……?」
「満足そうな、安らかな死に顔だったよ。まったく、自分勝手で酷いよね~」
死んだ。紅莉が、死んだ……?
俺が見た時には、まだ生きていたはずだ。病院に連れて行けば助かったはずだ。
それを、目の前の悪魔は『死んだ』だって?
「おい、お前は何を呑気に言っているんだよ!! そ、そうだ。神の眷属なら、どうにかできるだろ!? 紅莉を生き返らせてくれよ!」
「残念ながら、死んだ魂を元に戻すことはできないんだ。時を巻き戻せないのと同じくね」
「そんな馬鹿なことがあってたまるか! お前だって紅莉が好きだったんだろ! どうして助けないんだよ!!」
「――それに、だ。紅莉はそんなことを望んじゃいなかった」
そんな馬鹿な。
紅莉は俺と一緒に居たいと言っていた。
生きて、これからもっともっと楽しいことを分かち合うはずだったのに!!
「気付いていないようだから、代わりにボクが教えてあげよう。これは全て、紅莉が望んだことなんだ。最初から、ね」
「はぁ? 最初からって、どういうことだマルコ!」
「簡単に言えば、キミは最初から紅莉に騙されていたんだ。――正直言って、キミは紅莉のことを何にも分かっちゃいなかったんだ」
「お前に俺の何が分かるっていうんだ!!」
なんなんだ。紅莉が望んだって。
そんなわけがあるわけがない。この数日間、俺と一緒に生き延びるために必死で呪いに抗って来たじゃないか。
「キミは覚えているかい? 紅莉がここでキミの運勢をタロットで占った時のことを」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる