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第1話 魔王様、ご褒美です

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「良くやった、勇者ストラゼスよ。我が国を脅かす凶悪な魔王を、よくぞ討ち取ってくれた! はーっはっはっは!」

 ――なんで人間って、こうも醜いかなぁ。

 冷たい床でひざまずいていた俺は、豪華な玉座で高笑いをする王様を見上げながら、そんなことを考えていた。

 民を高額な税で苦しませ、自分はふんぞり返って贅沢三昧。

 挙句の果てには、その税が払えない国民を魔族との戦争に駆り出している。

 アンタの言う凶悪な魔王様の方が、よっぽど謙虚堅実でクリーンな政治をしていましたよ?


「これで我が国は安泰だ! 勇者ストラゼスよ! 貴殿こそ我が王国の救世主である!」

 ……はいはい、ありがたき幸せ~ってね。

 その救世主の中身が魔王とすり替わっているとも知らずに、まったくもって能天気だこと。


 しかし救世主ねぇ。

 周りの人々は、デブで性格の悪い『ゲス豚勇者』って呼んでいるそうで。

 国中の嫌われ者って有名じゃないですか。

 そんなことを胸の中で呟く俺に、さらに王は言葉を続ける。


「さて、お主に褒美を与えようと思うのだが」

「陛下の寛大な心遣いに、感謝いたします」

「ぬほほほっ。構わぬ構わぬ。それでその内容というのがな――おい、騎士団長よ。姫を連れてまいれ」

 王の命令にハッ、という短い返事をした騎士団長は、颯爽と王座の間から退室していく。

 ほどなくして戻って来た彼の背後には、ある人物の姿があった。


「我が娘にして、この国の第一王女。ミレーユだ。この者を勇者の妻として与えようではないか」

 父親に紹介を受けたその人物は、玉座の前にて優雅な淑女の礼をとった。

 その姿を見た俺が思ったことはただ1つ。

 ――うわ、これ絶対めんどくせぇ展開だ。


 そんな俺の胸中を知ってか知らずか、目の前の人物は頭を下げたまま言葉を発する。

「わたくしがミレーユにございます。ふつつか者ですが、どうか可愛がってくださいませ」

 自身でもミレーユと名乗ったその女性。

 サラサラの長い金髪に透き通った青い瞳。

 顔はもちろんのこと、服からアクセサリーまで何もかもが一級品。

 それらがまた彼女の魅力を引き立てていた。

 事前に聞いていた情報では俺と同じか、あるいは1つか2つ年下だったかな?

 どこか儚げな印象を受けるのもまた、男ウケが良さそう。

 だが彼女も、俺に嫌悪感を持っていることは丸分かりだった。

 さっきから目を合わせようともしないしな。


「加えて、お主には王国騎士団の指南役になってもらいたい」

「指南役、ですか……」

「魔王を倒したとはいえ、魔族のゴミ共はまだ多い。これからもお主には活躍の場を与えたいのだ。どうだ、破格の提案であろう? はぁーっはっはっは!」

 高らかに笑う王。

 その隣で、騎士団長がけわしい表情を浮かべている。


 ……ふむ、やはりそうきたか。

 この国王は戦争を続けるつもりだ。

 魔族を根絶やしにするまで、止まらない。


 まあそれもそうだろう。

 平和になれば税を取れる理由が減るし。

 戦争に勝ち続けることで、王の威信を高めたい狙いもあるんだろう。

 この王様、意外と頭が回るらしい。

 というわけで俺の返答はもちろん――


「丁重にお断りさせてください」

「あい、分かった。――えっ、なんで!?」


→第2話 魔王様、セルフ追放
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