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第31話 魔王様、仲直りです
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やはりクリムは強かった。
かなり卑怯な手を使ってしまったが、そうでもしなきゃ奴を止めるなんて無理だった。さすが四天王だ、と褒めたいところだけど――。
「何をどうしたら、俺の村に来る流れになるんだよ……」
なぜか俺は今、クリムと一緒にプルア村の温泉に浸かっていた。
デブ豚な俺の一回り以上も大きいガチムチなクリムが居ると、ただでさえ狭いウチの温泉がさらに窮屈に感じる。
「ははは、良いではないか。昨日の敵は今日の友、と言うだろう?」
「昨日っていうか、まだ一時間も経っていないんだけど……」
森での殺し合いに決着がついたあと、俺はすぐに剣をおさめた。
当然ながら、俺がクリムと戦うことに何のメリットも無いし。まぁそれでも諦めずに殺そうとしてくるなら……俺は自分の正体をバラすつもりだった。
大事な元部下の命を奪ってまで、嘘をつき続ける価値なんて無いしな。
そんな俺の心配を余所に、クリムはあっさりと負けを認めた。
それどころか「貴様の村を見てみたい」ということで、温泉でちょっと休憩することになったのだ。
なんだろう。
仲直りというか、休戦状態?
「しかし貴様の住む村は良いところだ。周囲は自然が豊かだし、空気が澄んでいる。温泉も気持ちがいいし、それに――」
焔色の髪を揺らしながら、クリムは優しい目つきで温泉の端に視線を向ける。そこには居眠りをする聖獣ミラ様と、その周囲で仲良く丸まる獣人三姉妹の姿が。
俺にとってはもはや見慣れた光景だが、彼にとっては新鮮に映ったことだろう。
「やはりこの村に来て良かったぞ。貴様が女子供に、非道な真似をしていないと分かったからな」
「最初から、そんなことしないって言っただろ……まぁ、アンタが納得してくれたようで良かったよ」
「ガハハハッ。すまんな、昔から自分の目で確かめんと気がすまん性分なんだ。だが村を守るために戦う――貴様の志は気に入ったぞ」
「襲ってきた奴が言うと、なんだか説得力がないな……」
「ガハハッ! 本当にな」
まぁ生真面目なクリムならそうするかもなって、予感はしていたけどさ。
でも実際に来てみてビックリしただろうな。なにしろ住人の半分が、獣人やら聖獣といったモフモフで溢れているんだから。
魔王時代にも見たことが無いような和やかな笑みを浮かべるクリムを見て、思わず俺も笑ってしまう。
「でもなんだか、この雰囲気が懐かしいな」
「ん? なんか言ったかストラ殿?」
「いや、なんでもないさクリム」
少しだけ打ち解けた俺たちは、他愛もない話をしながら、のんびりと風呂を堪能する。
たまにはこういうのも良いもんだな……。そんなことを思っていると、不意にクリムが口を開いた。
「これなら、我が村との交流も可能だろうな」
「……え? 交流??」
「森で茶を飲んだ際にも話したと思うが、俺はこの近くに魔族の村を持っていてな」
あぁ、たしかナバーナ村っていう村だっけ。
紅茶とバンナの実を使ったケーキが絶品だった。
「あー、なるほどな? それで俺の人柄を見極めていたってことか」
「そういうことだ」
クリムは真剣な表情でそう語った。
しかし交流って、このプルア村とか?
「この寂れた村を再び活気づけるには、色々と人の手が必要だろう?」
「まぁ、俺の魔法にも限界はあるしな」
「ナバーナ村は孤児と年寄りばかりだが、技術者も多い。住居の建築や生活の知恵を授けてくれるだろう」
おぉっ!? それは有り難い。
畑や料理の知識はあっても、建築関係の知識は無かったんだ。
どこかで人材を引っ張ってくる必要はあるな~とは思っていたんだが。まさかのクリムが渡りに船になるとは思わなかったぜ。
「うーん、だがなぁ。こちらからナバーナ村に差し出せるものが無い」
こういうのはギブアンドテイクが大切だ。
いずれこの村の特産品を売り出せるようになれば、ある程度の恩は返せると思うが……。
だがクリムは首を横に振った。
「ひとつだけ。俺の個人的な願いを叶えてくれれば、自分のポケットマネーで支援しよう」
「……は?」
何だよ、個人的な願いって。
そう訊ねると彼は珍しく頬を染めて、恥ずかしそうに答えた。
「実はその、もふもふが大好きなんだ。だからどうか頼む、俺に聖獣様をモフらせてくれないか!?」
クリムよ、お前ももふもふ愛好家だったのか……。
――――――――――――――――――
「なに? 『ファンタジー大賞』だと?」
「なんだよ急に。クリムは関係ないだろ」
「何を言っておる。『投票』をすれば、俺のもふもふが本になるかもしれないんだろ!?」
「いや、お前のもふもふではないぞ」
「むっ、だが……」
「なんだか変なオッサンが増えたのニャ……」
「でもムキムキでカッコ良いです!」
「クーは筋肉ダルマが好みなのー?」
「どんどん変人ばかりが集まってきますね」
「すまん、姫様には苦労ばかりかけて……」
「ふふっ。賑やかで私は楽しいですよ?」
「おい、『投票』はどこでできる! 早く教えろストラ殿!!」
「あー、作品のトップページにあるらしい。……まぁ、もし良かったら俺からも頼むよ」
「私からもお願いします。読者様の優しい応援をお待ちしておりますね!」
かなり卑怯な手を使ってしまったが、そうでもしなきゃ奴を止めるなんて無理だった。さすが四天王だ、と褒めたいところだけど――。
「何をどうしたら、俺の村に来る流れになるんだよ……」
なぜか俺は今、クリムと一緒にプルア村の温泉に浸かっていた。
デブ豚な俺の一回り以上も大きいガチムチなクリムが居ると、ただでさえ狭いウチの温泉がさらに窮屈に感じる。
「ははは、良いではないか。昨日の敵は今日の友、と言うだろう?」
「昨日っていうか、まだ一時間も経っていないんだけど……」
森での殺し合いに決着がついたあと、俺はすぐに剣をおさめた。
当然ながら、俺がクリムと戦うことに何のメリットも無いし。まぁそれでも諦めずに殺そうとしてくるなら……俺は自分の正体をバラすつもりだった。
大事な元部下の命を奪ってまで、嘘をつき続ける価値なんて無いしな。
そんな俺の心配を余所に、クリムはあっさりと負けを認めた。
それどころか「貴様の村を見てみたい」ということで、温泉でちょっと休憩することになったのだ。
なんだろう。
仲直りというか、休戦状態?
「しかし貴様の住む村は良いところだ。周囲は自然が豊かだし、空気が澄んでいる。温泉も気持ちがいいし、それに――」
焔色の髪を揺らしながら、クリムは優しい目つきで温泉の端に視線を向ける。そこには居眠りをする聖獣ミラ様と、その周囲で仲良く丸まる獣人三姉妹の姿が。
俺にとってはもはや見慣れた光景だが、彼にとっては新鮮に映ったことだろう。
「やはりこの村に来て良かったぞ。貴様が女子供に、非道な真似をしていないと分かったからな」
「最初から、そんなことしないって言っただろ……まぁ、アンタが納得してくれたようで良かったよ」
「ガハハハッ。すまんな、昔から自分の目で確かめんと気がすまん性分なんだ。だが村を守るために戦う――貴様の志は気に入ったぞ」
「襲ってきた奴が言うと、なんだか説得力がないな……」
「ガハハッ! 本当にな」
まぁ生真面目なクリムならそうするかもなって、予感はしていたけどさ。
でも実際に来てみてビックリしただろうな。なにしろ住人の半分が、獣人やら聖獣といったモフモフで溢れているんだから。
魔王時代にも見たことが無いような和やかな笑みを浮かべるクリムを見て、思わず俺も笑ってしまう。
「でもなんだか、この雰囲気が懐かしいな」
「ん? なんか言ったかストラ殿?」
「いや、なんでもないさクリム」
少しだけ打ち解けた俺たちは、他愛もない話をしながら、のんびりと風呂を堪能する。
たまにはこういうのも良いもんだな……。そんなことを思っていると、不意にクリムが口を開いた。
「これなら、我が村との交流も可能だろうな」
「……え? 交流??」
「森で茶を飲んだ際にも話したと思うが、俺はこの近くに魔族の村を持っていてな」
あぁ、たしかナバーナ村っていう村だっけ。
紅茶とバンナの実を使ったケーキが絶品だった。
「あー、なるほどな? それで俺の人柄を見極めていたってことか」
「そういうことだ」
クリムは真剣な表情でそう語った。
しかし交流って、このプルア村とか?
「この寂れた村を再び活気づけるには、色々と人の手が必要だろう?」
「まぁ、俺の魔法にも限界はあるしな」
「ナバーナ村は孤児と年寄りばかりだが、技術者も多い。住居の建築や生活の知恵を授けてくれるだろう」
おぉっ!? それは有り難い。
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どこかで人材を引っ張ってくる必要はあるな~とは思っていたんだが。まさかのクリムが渡りに船になるとは思わなかったぜ。
「うーん、だがなぁ。こちらからナバーナ村に差し出せるものが無い」
こういうのはギブアンドテイクが大切だ。
いずれこの村の特産品を売り出せるようになれば、ある程度の恩は返せると思うが……。
だがクリムは首を横に振った。
「ひとつだけ。俺の個人的な願いを叶えてくれれば、自分のポケットマネーで支援しよう」
「……は?」
何だよ、個人的な願いって。
そう訊ねると彼は珍しく頬を染めて、恥ずかしそうに答えた。
「実はその、もふもふが大好きなんだ。だからどうか頼む、俺に聖獣様をモフらせてくれないか!?」
クリムよ、お前ももふもふ愛好家だったのか……。
――――――――――――――――――
「なに? 『ファンタジー大賞』だと?」
「なんだよ急に。クリムは関係ないだろ」
「何を言っておる。『投票』をすれば、俺のもふもふが本になるかもしれないんだろ!?」
「いや、お前のもふもふではないぞ」
「むっ、だが……」
「なんだか変なオッサンが増えたのニャ……」
「でもムキムキでカッコ良いです!」
「クーは筋肉ダルマが好みなのー?」
「どんどん変人ばかりが集まってきますね」
「すまん、姫様には苦労ばかりかけて……」
「ふふっ。賑やかで私は楽しいですよ?」
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