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第46話 魔王様、ざまぁみろです

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「父上、勇者殿をお連れしました」

 ジャンミス姫が片膝を付きこうべれる。俺もそれにならった。

「よくぞ参った。おもてを上げよ」

 声に従い顔を上げる。
 この光景を見るのも1か月ぶりだ。

 相変わらず王様は玉座からはみ出そうな体型をしている。いや、前に見た時よりもさらに太ったか?


 その隣では、顔を真っ赤にした騎士団長がこちらをキッと睨んでいる。別にこの人に何かした覚えはないんだが……相変わらず嫌われたもんだ。

 そして視界の隅では、第一王女のミレーユ姫がたたずんでいた。
 なんだ? 目を大きく開けて、わなわなと震えている。しかも俺を指差して口をパクパクさせやがって……相変わらず失礼な奴だな。

 一方で笑顔の王様は、たるんだ頬の肉を揺らしながら言葉を続けた。


「久方ぶりだな、勇者ストラゼスよ」
「ご無沙汰ぶさたしております、陛下」

 頭を下げつつ、王様の言葉を待つ。
 予想なら以前のように、調子のいい自慢話を始めるんじゃないか――と思ったのだが、そうはならず。僅かな無言の間が過ぎたあと、王様は興味深そうな視線を俺に向けた。


「元気そうで何よりじゃ。しかしお主……随分と痩せたな?」
「……辺境での暮らしは、厳しいものがありますので」

 やっぱりそう来たか――。あえて自分では触れなかった部分を突っ込まれ、俺は思わず苦笑いを浮かべてしまう。


「たしかに質素な暮らしでは、体つきも変わろう。だがそれだけでは――」
「どういうことなのよ、アナタ!」

 おっと。王様のセリフをさえぎって、ミレーユ姫が悲鳴みたいな声を上げた。いくら姫でも、相手は国王だぞ? そんなことをしたら不敬だ。


「こ、こんな――その、あんな醜かった勇者が瘦せ細って……本当にアナタが“勇者ストラゼス”だって言うのっ!?」
「……ミレーユ、皆の前でそう取り乱すでない」

 王様が眉を寄せる。だが他の騎士やジャンミス姫もミレーユ姫と同じく困惑気味だ。

 まぁほんの一か月前まで、白豚と揶揄やゆされるくらいのデブだったもんな。今の俺が別人に見えても仕方ないか。


「しかし、ミレーユの言う通り。見れば見るほど……ううむ……」
「そうでしょうっ!? お顔だって全然違うではありませんか! こんなに美形なら、私が彼と結婚したかっ……はっ、いえ。い、今のは……」

 おいおいおい、やめてくれ。
 姫さんが余計なことを口走ったせいで、騎士団長の顔が怒りの赤を通り越して、赤黒くなってるぞ。
 そのうち頭の血管がキレて死ぬんじゃないか?
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