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さあ、競売の時が来た
「ダルネスの女を買うものは居ないか!」
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「さあ! この私、ダルネスの女を買うものは居ないか!」
柔らかく降り注ぐ陽の元、ダルネス・キルスティン男爵の意気揚々とした声は、広場に響いた。連れられた妻・リュネットの表情は冷静を落としたように動かない。
白銀の髪・神秘を宿したような、深き紫の瞳に宿る、覚悟の色。
沸き立つ熱気・耳に届く噂話。
集まる好機の視線・蔑みの眼差し。
ざわめいていた群衆がぴたりと止んだ。
水を打ったように静まり返った広場を一望し、ダルネスはもう一度声を張る。
「なに、遠慮することはない! 男爵であるわたしの御墨付きだぞ!」
「誰も手すら上げないなんてぇ、リュネット様かわいそぅ~」
『これで自由になれる! ほら、手を挙げろ愚民ども!』と言わんばかりのダルネス。その腕に絡みつくナルシアの、嘲笑を帯びた笑みが厭らしく光った。
しかし、集められた主たちは動かない。
その目線だけが冷たくダルネスたちを射抜く。
ダルネスの額にうっすら汗が滲む。
なんだこれは。
「どうした! お前たちにとって、絶好の機会だぞ!」
声を荒げる。が、その言葉は虚空に消えていくばかり。
何かがおかしい! そう感じはするが理由がわからない。
妻の競売など、いつもは大盛り上がりのはずだ。
男どもが好色の目で女を見定め、嬉々として金を出すのが普通じゃないのか!
──そう、瞳を動転させるダルネスの隣、見かねたナルシアが愛想笑いで声を投げた。
「皆さん、遠慮なさらずに!」
ナルシアとて、ここでリュネットに買い手がつかないのはマズい。彼女を売った金で支払いを済ませる算段なのだ。そのつもりで高価なドレスを仕立てたというのに。
その焦りは、ナルシアの口から「失言」となって飛び出していった。
「この女、サルペント商会の元娘よ!? ほらぁ! 庶民じゃ到底手が出ない女を売ってやろうッて言うんだから、っていうかなんで黙ってるのよ!? なんなのよこの空気!」
「「「…………」」」
壇上の中央で、騒ぎ立てるはダルネスとナルシアのみ。
店主たちは眉一つ動かさず、じっとナルシアを見つめている。
その空気に気づき、ようやくナルシアは青ざめた。
(なに? なに? なに? この空気は何?)と混乱のナルシアの隣で、ぼそっとダルネスの声がする。「……待て、この顔ぶれ、見覚えが……」
喉から絞り出したような呟きが、凍てつく空気に溶けた時。
その静寂を破ったのは、広場後方に立つ一人の老店主だった。
「……神への冒涜が許されるとでも思っているのか?」
その低く重みのある声に、全員の視線が集まる。
「カルデウス神を裏切ったおめえに、誰が金なんか払うか!」
「背信行為で家庭を汚し、領を支える我らを愚弄するとは!」
別の店主が声を上げた。
それを皮切りに、次々と怒りの声が広がる。
「お前たちのような輩に、我らの大切なものを預けられると思うか!」
「恥を知れ! 領主どころか人間としての資格すらない!」
次第に怒声は増え、収拾がつかないほどに膨れ上がる。ダルネスとナルシアは次第に後ずさり、顔面蒼白となった。
「まて!まて! なぜお前ら庶民が不貞行為を知っている……!? ナルシアはただの侍女だ! 決してそんな、痴れ女ではない!」
「嘘つくんじゃねえ!」
「知ってんだぞ馬鹿野郎!」
「見せつけたんだってなあ!!」
「不貞を隠すならまだしも晒すとは、何考えてんだバカ領主!」
「「──な……!?」」
ダルネス・ナルシア声が重なる。
ぐるりと歪み蘇る、『自分たちの行い』。
確かに見せつけた。
妻の前で行う行為は最高に高揚し、何度もむさぼり合ったのを忘れたわけではない。
しかしそれは、リュネットの前でしか行っていないのに!
ダルネスは、震える瞳で妻を見た。
この女、この女……!
「リュネット!! 貴様、まさか……!?」
「──あら。あんなものを見せたのはダルネスさまではありませんか」
恥と怒りで真っ赤に染まるダルネスに、リュネットは顔色一つ変えずに一瞥をくれると、
「『夫の行為』など見せられて、わたくしが黙って暮らすと思われていたようですね。舐められたものです。わたくし、あのような痴態を見せつけられ、許せるほど器量よしではございません」
「貴様あああああああああ! 言いふらしやがったな!? ヒトの皮を被った悪魔め!!」
「まさか! 言いふらすだなんて下品な行いは致しませんわ。……ただ──、わたくしは、神に聞いて頂いていただけです」
棘を宿して彼女はにっこりと微笑んだ。
そう。
彼女は毎日、足しげく通った礼拝堂にて、神の前で懺悔を繰り返したのだ。
「神よ、夫に裏切られ、誓いを護れぬ私をお許しください」
「夫は若き女に夢中で、私のことなど見向きも致しません」
「目の前で情事にいそしむ夫らを、私はどのように許せばよかったのでしょう?」
「ああ、神よ、お導きを。若き妻に、まるで赤子のように甘え行為を行う夫を、それに戸惑う妻を、どうか、どうか」
彼女の告白は懺悔室を通じて徐々に広まり、礼拝堂の壁を超えて町の隅々にまで届いた。
そもそも娯楽に飢えた民草にとって、『男爵の性趣向および浮気女の性癖』など、格好の娯楽である。瞬く間に民の話題を掻っ攫い、町中に知れ渡ることになった。
リュネットがそれを知らなかったはずがない。
それでも彼女は冷然と白を切る。
彼女は空を仰ぎ、静かに手を組んで微笑むと、あたかも自らの潔白を神に誓うように告げた。
「不思議ですわね。神にお導きを頂いておりましただけですのに。町中に知れ渡って。これも神の悪戯でしょうか?」
「きっ……貴様! ふざけるな! このダルネスに恥をかかせやがって!! 死刑だ! 極刑だ! 売り飛ばすなど生ぬるい! 貴様、地獄に落としてやる!」
「……寝言は寝て言え、ダルネス男爵」
「……プ、プレニウス公……!?」
広場全体が一瞬で凍りついた。
舞台隅から、威厳に満ちた足音と共に現れたのは、クルード・フォン・プレニウス伯爵。
その姿はまるで一閃の刃のごとく。
民衆はざわめきをあげながらも、鋭い視線と凛とした佇まいに飲まれ、誰も声を上げられなかった。
ゆっくりと舞台へ歩みを進めるクルード。その足音が、静まり返った会場に規則正しく響き渡る。
「ダルネス・ドル・キルスティン男爵。貴様にネラ地区の販路を使い、ヴィハン帝国へ武器を流していたこと、そしてそれにより利益を得ていた事実は、既に調査済みだ。それが国王陛下への背信であると解っていての行いだろう? 答えろ、男爵」
その冷厳な声には一切の隙がなく、反論の余地すら与えない。会場は静寂に包まれ、ただ彼の言葉だけが強く響いた。
「領地を守るどころか、己の欲に溺れ国を裏切った貴様の行いは断じて許されるものではない。神と国王陛下の名の下に、相応の裁きを受けてもらおう」
「……ッ!」
ダルネスは目を見開き、口を震わせた。その顔には恐怖と怒り、そして追い詰められた者特有の焦燥が浮かび上がる。
そんな彼を尻目に、民衆は一斉にクルードを見上げ、その圧倒的な存在感に息を呑む中。
「やぁん、プレニウス様ぁ~!」場違いな甘えた声が場に響いた。
声の主はナルシアだ。まるで状況を理解していないかのように身をくねらせ、クルードに向かって駆け寄ると、
「助けてください! あたし、無理やり抱かれたんですぅ」
「寄るな、痴れ者が!」
クルードの冷たい声が彼女を制した。
びくんと震え止まるナルシアに、クルードは侮蔑の表情を向け述べる。
「貴様、不貞の女だな。この世で最も愚かしい愚図が、人の言葉をしゃべるな!」
「はぁああ? ちょっとなんなのえらっそーに!!」
瞬時。
開き直るように喚いたのはナルシアだった。
先ほどまでの甘えた表情を消し去り、醜く歪んだ表情そのまま、感情的に言い返す!
「神? 半身? はっ! ばっかみたい! そんなもんいるわけないじゃない!」
彼女の叫びに周囲は答えない。
民衆の視線がますます冷たくなる中、ナルシアの叫び声だけが響く。
「どこにいるのよ! 見せなさいよ! ほら! いるっていうなら出しなさいよ! ほら! 出せないでしょ! 居ないって証拠じゃない! 馬鹿馬鹿しい!」
「…………滑稽な」
「宜しいではありませんか」
酷く、冷たく一蹴したクルードを諫めるように、冷静な声を響かせたのはリュネットだ。
彼女はその場に一歩躍り出ると、冷たさの中に慈悲を宿した面持ちで述べる。
「──カルドールの民とはいえど、全ての民が神を信じ崇めているわけではございません。中にはこうして背くものも居るでしょう……。姿が見えませんもの、致し方ありません。神祖カルデウスもお許しになられるでしょう」
その言葉には皮肉が込められており、ナルシアだけでなくダルネスの顔にも影を落としゆく。
「──けれど。」と、リュネットの次なる声が広場に響き、視線を集める中。彼女は言うのだ。
「神に背いたあなたたちを──、カルドールの民々が、領主として認め従うとお思いですか?」
ざわりと広がる民衆の囁き声が、静寂の広場に緊張を孕んで響き渡る。民々の視線が冷たい鋭さを増し、次第に静まり返っていく。
それが答えだった。
水を打ったような静けさの中。クルード・フォン・プレニウス伯爵は冷ややかな視線でダルネスを睨み据え、僅かに冷笑を浮かべた。
「……無様だな、ダルネス男爵。これが貴様の愚行の果てだ。理解したか?」
「……ちがう、ちがうのです、伯爵公……!」
縋りつく男爵を見下すクルード。
しかし男爵は続けた。
「わたしは、わたしは、領のために、国のために、彼ら庶民にも気を配り心を削って……!」
ほう、国のために? 身を削ったと。
「不貞は謝ります! プレニウス公、これはすべて領民のため……いや、国家のために仕方なく! わたしは領民のために! 彼らを導くために!」
「……尽くしてきた、と言いたいのか」
「はい!」
ダルネスは気付けない。
クルードの問いの裏に潜んだ、静かな怒気に。
クルードの瞳に、抑えきれぬ激情が蠢いていること。
人知れずリュネットが息を呑み見守る中、彼の問いはダルネスを撃つ。
「下々の者も愛し丁重に扱ってきた、と?」
「はいッ!」
「──ならば問おう。サラ・マクラベルを覚えているか」
その問いは、今までのどんなものより重く、固く、その場に響いた。クルードは確かめようとしていた。しかし、ダルネスはぽかんと口を開けるばかり。
「……さ、さら……?」
その存在すら知らないと言わんばかりに首を傾げるダルネスに、直後。狂気を怒りで抑えた笑いは、クルードから放たれたのである。
「──く……! ははははは! 覚えても居ないか! キルスティン! 貴様に犯され凌辱された挙句、ローズ家に落ち延びた私の妹だ!」
息を呑むダルネス。みるみる顔色を変えるローズ。
逃がさないと言わんばかりにリュネットが彼女を射抜き、言い放った。
「ナルシア・ド・ローズ。貴女も、サラに嫌がらせの限りを尽くしたそうですね。わたしに行ったように」
怯えるナルシアの顔が語る、「赦して、許して」。
しかしそんなことは関係ない。
「……サラはその後、命を絶ったのです。あなたたちの快楽と享楽の犠牲となったのです。さあ皆さん。彼らのどこが『領を導く立派な為政者』でしょうか?」
『すべてを白日に晒し、取り戻すため』。
彼女は最後の問いを投げるのだ。
ダルネスに切られ販路を失った、かつての同胞たちに。
「お集まりいただきました、元サルペントの販路を担う者たちよ! もう一度問います! この方々を領主夫妻として、税を納め敬えますか?」
リュネットの言葉に、最初は誰も口を開かない。
しかし、誰かが低い声で呟いた。
「許せるわけがない……!」
その声は瞬く間に波紋のように広がり、罵声の荒らしを引き起こす。
「神を裏切った背信者が!」
「領を滅ぼす愚者どもめ!」
「恥を知れ!」
憤怒の声が波紋のように広がる中、広場はまるで嵐の前の海のごとく荒れ狂い始めた。その怒りは、裏切り者への失望と神への忠誠心が交錯し、一人一人の心を燃やしていく。
しかしそんな中で、青ざめたダルネスが、今もまだみじめに体裁を取り繕おうとしている。
「待ちたまえ! わ、私は領主だ!」
「国王陛下には私の方から直々に伝えておく。荷を纏め出ていく準備をしておけ、男爵」
──それは、事実上の追放宣告。
愕然と膝をつくダルネスの脇から、そっと逃げ出そうとするナルシアを、クルードは逃がさなかった。
「貴様もだ。ナルシア・ド・ローズ。神に背いた罰、その身をもって知るがいい」
◇
◇
終わった。
混乱の中で飛び交った怒号も、彼らを断罪する言葉も、今では静寂の中に消え去っていた。
リュネットは広場の中央でひとり、薄暗く曇った空を見上げた。
「……終わった、やっと……」
緊張の糸がぷつりと切れたように零していた。
気づけば頬を伝う涙の感触。
手に触れた水滴に目を見張り、リュネットは痛烈に眉を寄せて膝をついた。
ああ、肩は小さく震えている。
視界がゆがむ。
瞼のふちが熱い。
誇り高く気丈であろうとしてきたが、今だけは何もかも忘れ、心が解き放たれた気分だった。
終わったのだ。
ダルネスのもとで虐げられる日常も、ナルシアの振る舞いに惨めを噛みしめる日々も。
ダルネスは今後、不貞と反逆の罪に問われ、裁きを受けるだろう。「競売に出された妻」であることは逃れられなかったが、混乱に乗じて買い手もつかなかった自分は、この後──どうしたら良いのだろう?
リュネットはそこで初めて気が付いた。
報復に心を燃やし、クルードと手を組み成し遂げたが、何も残ってはいないことに。
サルペントを立て直すにしても、途方のない時間と労力が必要となる。今の自分には、なにも──……
「……リュネット?」
後ろから響いた声に息を呑み顔を上げた。
クルードの声に心臓が跳ね上がる。
瞬時、涙をぬぐい、気を律した。
──泣き顔など見られたくはない。
「──はい」張った声で答えた。音は少し震えていた。
足音が近づいてくる。
広場に残る冷たい風に目を細め、気づかれまいと努めて表情を整えるものの、肩の震えまでは止められない。
ああ、見られてしまうのだろうか。こんな無防備な自分を──
そう思うと胸が苦しい。
しかし、そんなリュネットを揺さぶるように、低く優しい声が届く。
「……泣いているのか?」
「いいえ」
短く、けれどぎこちなく答えた。
するとクルードは彼女の視界にゆっくりと現れると、一拍。すぐに視線を反らして口を開いた。
「……そうか。雨でも降ったか」
淡々とした声。
ぎこちなく空を見上げる彼。
「体が冷える。」
──ふ……。
不器用な気遣いに、リュネットはかすかに噴き出していた。
彼の存在が心強い。
武骨な優しさに心が震える。
彼が伯爵でなければ、わたくしが「烙印付き」でなければ、この方の隣にいる未来もあったのかしら。
──そう、苦く甘く広がる痛みに、彼女が自嘲気味の笑みを浮かべた時。
そっと肩を抱かれてよろめいた。
遠慮がちの大きな手。暖かく優しい温もりに、リュネットは一瞬目を閉じ、心の奥から湧き上がる涙を飲み込む。
「おまえは、一人で全てを背負いすぎだ。だが、それができるおまえだから、俺はこの手を放すつもりはない」
リュネットは驚いたように顔を上げた。信じられない。
「……クルード様? それは……」
揺れる声に応えるように、クルードの眼差しが返ってくる。
紺碧の瞳に宿るは、確固たる意志と、あたたかな色。
「禊を終えたら、婚約しよう。俺のそばで生きてほしい」
一瞬、時が止まったように感じた。
リュネットの瞳に映るクルードの表情は、今まで見たどの顔とも違う。冷静で毅然とした伯爵ではなく、彼女だけを見つめる、一人の男の顔。
ふと、リュネットは唇にかすかな笑みが浮かべた。
涙に濡れた顔のまま、彼女は首を軽く傾け、冗談めかした口調でこう述べた。
「……ふふ、わたくし、売られた妻ですのよ?」
「構うものか。俺の心は、おまえのものだ」
柔らかく降り注ぐ陽の元、ダルネス・キルスティン男爵の意気揚々とした声は、広場に響いた。連れられた妻・リュネットの表情は冷静を落としたように動かない。
白銀の髪・神秘を宿したような、深き紫の瞳に宿る、覚悟の色。
沸き立つ熱気・耳に届く噂話。
集まる好機の視線・蔑みの眼差し。
ざわめいていた群衆がぴたりと止んだ。
水を打ったように静まり返った広場を一望し、ダルネスはもう一度声を張る。
「なに、遠慮することはない! 男爵であるわたしの御墨付きだぞ!」
「誰も手すら上げないなんてぇ、リュネット様かわいそぅ~」
『これで自由になれる! ほら、手を挙げろ愚民ども!』と言わんばかりのダルネス。その腕に絡みつくナルシアの、嘲笑を帯びた笑みが厭らしく光った。
しかし、集められた主たちは動かない。
その目線だけが冷たくダルネスたちを射抜く。
ダルネスの額にうっすら汗が滲む。
なんだこれは。
「どうした! お前たちにとって、絶好の機会だぞ!」
声を荒げる。が、その言葉は虚空に消えていくばかり。
何かがおかしい! そう感じはするが理由がわからない。
妻の競売など、いつもは大盛り上がりのはずだ。
男どもが好色の目で女を見定め、嬉々として金を出すのが普通じゃないのか!
──そう、瞳を動転させるダルネスの隣、見かねたナルシアが愛想笑いで声を投げた。
「皆さん、遠慮なさらずに!」
ナルシアとて、ここでリュネットに買い手がつかないのはマズい。彼女を売った金で支払いを済ませる算段なのだ。そのつもりで高価なドレスを仕立てたというのに。
その焦りは、ナルシアの口から「失言」となって飛び出していった。
「この女、サルペント商会の元娘よ!? ほらぁ! 庶民じゃ到底手が出ない女を売ってやろうッて言うんだから、っていうかなんで黙ってるのよ!? なんなのよこの空気!」
「「「…………」」」
壇上の中央で、騒ぎ立てるはダルネスとナルシアのみ。
店主たちは眉一つ動かさず、じっとナルシアを見つめている。
その空気に気づき、ようやくナルシアは青ざめた。
(なに? なに? なに? この空気は何?)と混乱のナルシアの隣で、ぼそっとダルネスの声がする。「……待て、この顔ぶれ、見覚えが……」
喉から絞り出したような呟きが、凍てつく空気に溶けた時。
その静寂を破ったのは、広場後方に立つ一人の老店主だった。
「……神への冒涜が許されるとでも思っているのか?」
その低く重みのある声に、全員の視線が集まる。
「カルデウス神を裏切ったおめえに、誰が金なんか払うか!」
「背信行為で家庭を汚し、領を支える我らを愚弄するとは!」
別の店主が声を上げた。
それを皮切りに、次々と怒りの声が広がる。
「お前たちのような輩に、我らの大切なものを預けられると思うか!」
「恥を知れ! 領主どころか人間としての資格すらない!」
次第に怒声は増え、収拾がつかないほどに膨れ上がる。ダルネスとナルシアは次第に後ずさり、顔面蒼白となった。
「まて!まて! なぜお前ら庶民が不貞行為を知っている……!? ナルシアはただの侍女だ! 決してそんな、痴れ女ではない!」
「嘘つくんじゃねえ!」
「知ってんだぞ馬鹿野郎!」
「見せつけたんだってなあ!!」
「不貞を隠すならまだしも晒すとは、何考えてんだバカ領主!」
「「──な……!?」」
ダルネス・ナルシア声が重なる。
ぐるりと歪み蘇る、『自分たちの行い』。
確かに見せつけた。
妻の前で行う行為は最高に高揚し、何度もむさぼり合ったのを忘れたわけではない。
しかしそれは、リュネットの前でしか行っていないのに!
ダルネスは、震える瞳で妻を見た。
この女、この女……!
「リュネット!! 貴様、まさか……!?」
「──あら。あんなものを見せたのはダルネスさまではありませんか」
恥と怒りで真っ赤に染まるダルネスに、リュネットは顔色一つ変えずに一瞥をくれると、
「『夫の行為』など見せられて、わたくしが黙って暮らすと思われていたようですね。舐められたものです。わたくし、あのような痴態を見せつけられ、許せるほど器量よしではございません」
「貴様あああああああああ! 言いふらしやがったな!? ヒトの皮を被った悪魔め!!」
「まさか! 言いふらすだなんて下品な行いは致しませんわ。……ただ──、わたくしは、神に聞いて頂いていただけです」
棘を宿して彼女はにっこりと微笑んだ。
そう。
彼女は毎日、足しげく通った礼拝堂にて、神の前で懺悔を繰り返したのだ。
「神よ、夫に裏切られ、誓いを護れぬ私をお許しください」
「夫は若き女に夢中で、私のことなど見向きも致しません」
「目の前で情事にいそしむ夫らを、私はどのように許せばよかったのでしょう?」
「ああ、神よ、お導きを。若き妻に、まるで赤子のように甘え行為を行う夫を、それに戸惑う妻を、どうか、どうか」
彼女の告白は懺悔室を通じて徐々に広まり、礼拝堂の壁を超えて町の隅々にまで届いた。
そもそも娯楽に飢えた民草にとって、『男爵の性趣向および浮気女の性癖』など、格好の娯楽である。瞬く間に民の話題を掻っ攫い、町中に知れ渡ることになった。
リュネットがそれを知らなかったはずがない。
それでも彼女は冷然と白を切る。
彼女は空を仰ぎ、静かに手を組んで微笑むと、あたかも自らの潔白を神に誓うように告げた。
「不思議ですわね。神にお導きを頂いておりましただけですのに。町中に知れ渡って。これも神の悪戯でしょうか?」
「きっ……貴様! ふざけるな! このダルネスに恥をかかせやがって!! 死刑だ! 極刑だ! 売り飛ばすなど生ぬるい! 貴様、地獄に落としてやる!」
「……寝言は寝て言え、ダルネス男爵」
「……プ、プレニウス公……!?」
広場全体が一瞬で凍りついた。
舞台隅から、威厳に満ちた足音と共に現れたのは、クルード・フォン・プレニウス伯爵。
その姿はまるで一閃の刃のごとく。
民衆はざわめきをあげながらも、鋭い視線と凛とした佇まいに飲まれ、誰も声を上げられなかった。
ゆっくりと舞台へ歩みを進めるクルード。その足音が、静まり返った会場に規則正しく響き渡る。
「ダルネス・ドル・キルスティン男爵。貴様にネラ地区の販路を使い、ヴィハン帝国へ武器を流していたこと、そしてそれにより利益を得ていた事実は、既に調査済みだ。それが国王陛下への背信であると解っていての行いだろう? 答えろ、男爵」
その冷厳な声には一切の隙がなく、反論の余地すら与えない。会場は静寂に包まれ、ただ彼の言葉だけが強く響いた。
「領地を守るどころか、己の欲に溺れ国を裏切った貴様の行いは断じて許されるものではない。神と国王陛下の名の下に、相応の裁きを受けてもらおう」
「……ッ!」
ダルネスは目を見開き、口を震わせた。その顔には恐怖と怒り、そして追い詰められた者特有の焦燥が浮かび上がる。
そんな彼を尻目に、民衆は一斉にクルードを見上げ、その圧倒的な存在感に息を呑む中。
「やぁん、プレニウス様ぁ~!」場違いな甘えた声が場に響いた。
声の主はナルシアだ。まるで状況を理解していないかのように身をくねらせ、クルードに向かって駆け寄ると、
「助けてください! あたし、無理やり抱かれたんですぅ」
「寄るな、痴れ者が!」
クルードの冷たい声が彼女を制した。
びくんと震え止まるナルシアに、クルードは侮蔑の表情を向け述べる。
「貴様、不貞の女だな。この世で最も愚かしい愚図が、人の言葉をしゃべるな!」
「はぁああ? ちょっとなんなのえらっそーに!!」
瞬時。
開き直るように喚いたのはナルシアだった。
先ほどまでの甘えた表情を消し去り、醜く歪んだ表情そのまま、感情的に言い返す!
「神? 半身? はっ! ばっかみたい! そんなもんいるわけないじゃない!」
彼女の叫びに周囲は答えない。
民衆の視線がますます冷たくなる中、ナルシアの叫び声だけが響く。
「どこにいるのよ! 見せなさいよ! ほら! いるっていうなら出しなさいよ! ほら! 出せないでしょ! 居ないって証拠じゃない! 馬鹿馬鹿しい!」
「…………滑稽な」
「宜しいではありませんか」
酷く、冷たく一蹴したクルードを諫めるように、冷静な声を響かせたのはリュネットだ。
彼女はその場に一歩躍り出ると、冷たさの中に慈悲を宿した面持ちで述べる。
「──カルドールの民とはいえど、全ての民が神を信じ崇めているわけではございません。中にはこうして背くものも居るでしょう……。姿が見えませんもの、致し方ありません。神祖カルデウスもお許しになられるでしょう」
その言葉には皮肉が込められており、ナルシアだけでなくダルネスの顔にも影を落としゆく。
「──けれど。」と、リュネットの次なる声が広場に響き、視線を集める中。彼女は言うのだ。
「神に背いたあなたたちを──、カルドールの民々が、領主として認め従うとお思いですか?」
ざわりと広がる民衆の囁き声が、静寂の広場に緊張を孕んで響き渡る。民々の視線が冷たい鋭さを増し、次第に静まり返っていく。
それが答えだった。
水を打ったような静けさの中。クルード・フォン・プレニウス伯爵は冷ややかな視線でダルネスを睨み据え、僅かに冷笑を浮かべた。
「……無様だな、ダルネス男爵。これが貴様の愚行の果てだ。理解したか?」
「……ちがう、ちがうのです、伯爵公……!」
縋りつく男爵を見下すクルード。
しかし男爵は続けた。
「わたしは、わたしは、領のために、国のために、彼ら庶民にも気を配り心を削って……!」
ほう、国のために? 身を削ったと。
「不貞は謝ります! プレニウス公、これはすべて領民のため……いや、国家のために仕方なく! わたしは領民のために! 彼らを導くために!」
「……尽くしてきた、と言いたいのか」
「はい!」
ダルネスは気付けない。
クルードの問いの裏に潜んだ、静かな怒気に。
クルードの瞳に、抑えきれぬ激情が蠢いていること。
人知れずリュネットが息を呑み見守る中、彼の問いはダルネスを撃つ。
「下々の者も愛し丁重に扱ってきた、と?」
「はいッ!」
「──ならば問おう。サラ・マクラベルを覚えているか」
その問いは、今までのどんなものより重く、固く、その場に響いた。クルードは確かめようとしていた。しかし、ダルネスはぽかんと口を開けるばかり。
「……さ、さら……?」
その存在すら知らないと言わんばかりに首を傾げるダルネスに、直後。狂気を怒りで抑えた笑いは、クルードから放たれたのである。
「──く……! ははははは! 覚えても居ないか! キルスティン! 貴様に犯され凌辱された挙句、ローズ家に落ち延びた私の妹だ!」
息を呑むダルネス。みるみる顔色を変えるローズ。
逃がさないと言わんばかりにリュネットが彼女を射抜き、言い放った。
「ナルシア・ド・ローズ。貴女も、サラに嫌がらせの限りを尽くしたそうですね。わたしに行ったように」
怯えるナルシアの顔が語る、「赦して、許して」。
しかしそんなことは関係ない。
「……サラはその後、命を絶ったのです。あなたたちの快楽と享楽の犠牲となったのです。さあ皆さん。彼らのどこが『領を導く立派な為政者』でしょうか?」
『すべてを白日に晒し、取り戻すため』。
彼女は最後の問いを投げるのだ。
ダルネスに切られ販路を失った、かつての同胞たちに。
「お集まりいただきました、元サルペントの販路を担う者たちよ! もう一度問います! この方々を領主夫妻として、税を納め敬えますか?」
リュネットの言葉に、最初は誰も口を開かない。
しかし、誰かが低い声で呟いた。
「許せるわけがない……!」
その声は瞬く間に波紋のように広がり、罵声の荒らしを引き起こす。
「神を裏切った背信者が!」
「領を滅ぼす愚者どもめ!」
「恥を知れ!」
憤怒の声が波紋のように広がる中、広場はまるで嵐の前の海のごとく荒れ狂い始めた。その怒りは、裏切り者への失望と神への忠誠心が交錯し、一人一人の心を燃やしていく。
しかしそんな中で、青ざめたダルネスが、今もまだみじめに体裁を取り繕おうとしている。
「待ちたまえ! わ、私は領主だ!」
「国王陛下には私の方から直々に伝えておく。荷を纏め出ていく準備をしておけ、男爵」
──それは、事実上の追放宣告。
愕然と膝をつくダルネスの脇から、そっと逃げ出そうとするナルシアを、クルードは逃がさなかった。
「貴様もだ。ナルシア・ド・ローズ。神に背いた罰、その身をもって知るがいい」
◇
◇
終わった。
混乱の中で飛び交った怒号も、彼らを断罪する言葉も、今では静寂の中に消え去っていた。
リュネットは広場の中央でひとり、薄暗く曇った空を見上げた。
「……終わった、やっと……」
緊張の糸がぷつりと切れたように零していた。
気づけば頬を伝う涙の感触。
手に触れた水滴に目を見張り、リュネットは痛烈に眉を寄せて膝をついた。
ああ、肩は小さく震えている。
視界がゆがむ。
瞼のふちが熱い。
誇り高く気丈であろうとしてきたが、今だけは何もかも忘れ、心が解き放たれた気分だった。
終わったのだ。
ダルネスのもとで虐げられる日常も、ナルシアの振る舞いに惨めを噛みしめる日々も。
ダルネスは今後、不貞と反逆の罪に問われ、裁きを受けるだろう。「競売に出された妻」であることは逃れられなかったが、混乱に乗じて買い手もつかなかった自分は、この後──どうしたら良いのだろう?
リュネットはそこで初めて気が付いた。
報復に心を燃やし、クルードと手を組み成し遂げたが、何も残ってはいないことに。
サルペントを立て直すにしても、途方のない時間と労力が必要となる。今の自分には、なにも──……
「……リュネット?」
後ろから響いた声に息を呑み顔を上げた。
クルードの声に心臓が跳ね上がる。
瞬時、涙をぬぐい、気を律した。
──泣き顔など見られたくはない。
「──はい」張った声で答えた。音は少し震えていた。
足音が近づいてくる。
広場に残る冷たい風に目を細め、気づかれまいと努めて表情を整えるものの、肩の震えまでは止められない。
ああ、見られてしまうのだろうか。こんな無防備な自分を──
そう思うと胸が苦しい。
しかし、そんなリュネットを揺さぶるように、低く優しい声が届く。
「……泣いているのか?」
「いいえ」
短く、けれどぎこちなく答えた。
するとクルードは彼女の視界にゆっくりと現れると、一拍。すぐに視線を反らして口を開いた。
「……そうか。雨でも降ったか」
淡々とした声。
ぎこちなく空を見上げる彼。
「体が冷える。」
──ふ……。
不器用な気遣いに、リュネットはかすかに噴き出していた。
彼の存在が心強い。
武骨な優しさに心が震える。
彼が伯爵でなければ、わたくしが「烙印付き」でなければ、この方の隣にいる未来もあったのかしら。
──そう、苦く甘く広がる痛みに、彼女が自嘲気味の笑みを浮かべた時。
そっと肩を抱かれてよろめいた。
遠慮がちの大きな手。暖かく優しい温もりに、リュネットは一瞬目を閉じ、心の奥から湧き上がる涙を飲み込む。
「おまえは、一人で全てを背負いすぎだ。だが、それができるおまえだから、俺はこの手を放すつもりはない」
リュネットは驚いたように顔を上げた。信じられない。
「……クルード様? それは……」
揺れる声に応えるように、クルードの眼差しが返ってくる。
紺碧の瞳に宿るは、確固たる意志と、あたたかな色。
「禊を終えたら、婚約しよう。俺のそばで生きてほしい」
一瞬、時が止まったように感じた。
リュネットの瞳に映るクルードの表情は、今まで見たどの顔とも違う。冷静で毅然とした伯爵ではなく、彼女だけを見つめる、一人の男の顔。
ふと、リュネットは唇にかすかな笑みが浮かべた。
涙に濡れた顔のまま、彼女は首を軽く傾け、冗談めかした口調でこう述べた。
「……ふふ、わたくし、売られた妻ですのよ?」
「構うものか。俺の心は、おまえのものだ」
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