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1章1部 異世界転生!?
異世界ライフの始まり
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「――はっ!? ここは?」
シンヤが目を開けると、生い茂る森の開けた場所の光景が広がっていた。見上げればすがすがしいほど青く澄みきった空が。そして耳をすますと小鳥のさえずりや、近くに川があるみたいでかすかに水の流れる音が聞こえてくる。周囲にはだれもおらず、のどかな森にぽつんとシンヤが突っ立っている状況であった。
「身体が思い通りに動く……。うん?」
手足を軽く動かし自身の状態を確認していると、地面にカバー付きのナイフが落ちていた。なのでそのナイフを拾い、刃の部分を抜いてみる。
「これがオレ? ふむ、なかなかのイケメン。あとけっこう若いな十七、十八ぐらいか?」
ナイフの刃にはシンヤの顔が映っている。ここで驚くのは、好青年感あふれる整った顔立ちの少年が映っていたこと。どうやらこれが女神が新たに用意してくれた身体らしい。あちこち触ってみると筋肉もついているみたいで、身体が軽く感じた。
「気に入りましたか? せっかくなので私好みの、いえ、サービスである程度かっこいい外見にしておきましたよ。あとあの少女に合わせて、年齢も若めにしておきました」
すると脳裏に女神の声が聞こえてくる。
「あ、女神さま」
「ところであなた、何者なんですか? まさかあれほどの強力なスキルを引き当てるなんて」
女神がなにやら畏怖の念を込めて問うてきた。
「どういうことですか?」
「毎回転生させるときに、その人特有の力を目覚めさせているんです。その種類は強いのから弱いのまでさまざまあって、旅立った勇者たちには私が干渉し確定で魔を滅する光の力。極光のスキルを手に入れられるようにしているんです。ただ今回は私に残された力の関係上、ノータッチ。なのであなたが引き当てるのは、しょぼい力なんだろうなとほとんど期待していなかったのですが」
「それひどくないですか!?」
あまりの散々な言いように、ツッコミを入れるしかない。
「しかたありませんよ。力の目覚めは、その人のこれまでの生き方が大きくかかわります。なのでごく普通に生きていたら、戦闘に役に立たないような平凡なスキルになってしまう。ここで先ほどの話にもどるのですが、あなたは歴戦の戦士かなにかだったんですか?」
「はい?」
予想外の言葉に、首をひねるしかない。
シンヤはこれまで平凡に生きてきただけ。だというのにどうして歴戦の戦士というワードが出てくるのだろうか。
「あなたが手に入れたのは、予知のスキル。この力が目覚めるには幾度の戦場で戦い抜き、最適な未来を望み続けてないと手に入れられない代物です」
(幾度の戦場? も、もしかしてゲームのことなのか?)
思い当たる節は一つ。シンヤはこれまでずっと銃を打ち合うFPSのゲームにはまって、やり続けていた。あのゲームは一瞬の判断がものを言わす。なので反射神経はもちろん、いかに相手の動きを予測して動くのかが勝利の鍵。それゆえシンヤは毎度毎度、敵の動きを予測して相手の裏をかき続けてきた。もはや撃ち勝つため、ほんの一瞬でも先の未来が見えたらとどれだけ思ったことか。もしかするとその経験が、レアなスキルを引き当てたのかもしれない。
「まだ予知のレベルが弱いですが、成長すればきっと化ける。これなら勇者の補佐役として申し分ない。くす、うれしい誤算ですね」
「話をまとめると、オレは女神さまのお目にかなったってことでいいんですか?」
「はい、なのであなたには期待していますよ。その力を持って勇者を導いてあげてください。もうすぐもう一つの力も使えるようになるので」
「もう一つの力?」
「各々のスキルとは別に、私が餞別として与えている力です。ただあなたの場合急きょ用意した身体なので、まだ力がなじんでいない様子。二、三日したら使えるようになると思うので、楽しみにしといてくださいね」
「まじっすか! それは俄然やる気がでてきましたよ!」
予知のスキルだけでもすごそうなのに、さらにもう一つ力をもらえるとは。うまくいけば当初の期待通り、無双できたりするのではないか。
「そろそろ話しかけるのも限界のようです。では行きなさい。最後の希望の星よ……」
そして最後の激励の言葉とともに、女神の声が聞こえなくなった。
「――さてと、なにはともあれ」
こうして一人になったシンヤはというと。
「――はは、ははは、ははははは! なんかツッコミどころ満載の状況だが、とりあえずオレ復活! うだうだ考えていてもしかたないし、この世界で生きていくぞー!」
両腕を上げ、思いっきりさけぶ。
いろいろ思うところはある。しかし話をまとめると、シンヤはもう死んでしまったのだ。よってこれまでの人生とは完全におさらば。どれだけ感傷に浸ったり悔いたりしたところで、もはやどうすることもできない。それに今はラッキーなことに、かつての記憶を保持したまま転生させてもらったのだ。ゆえに過去にとらわれるよりも、今の生。切り替えるべきだと判断した。そもそもの話これまでの人生にとくに未練や執着はなかったため、すんなり切り替えられたという。
「いやー、それにしても漫画やアニメのことが、現実で起こるなんてなー。ははは、でもぜんぜんわるくない! むしろつまらない人生から脱却できて、大バンザイだ! ふむ、なになに。与えられた情報によると、ここは魔法があったり魔物がいたりするいわゆるファンタジー系の世界か。いいねー、この先なにが待ち受けているのか! もう想像するだけでわくわくしてくるぜ!」
ガッツポーズしながら、これからの人生に胸をはずませる。もはや死んでしまったショックなど、忘れてしまうほどのテンションのバク上がりようである。
ちなみにこの世界について、ある程度の知識が頭に入っていた。言語についてもわかっており、これなら不自由なく生きていけそうだ。
「えっと、なになに、この子が勇者のトワちゃんか。へぇ、ビルの屋上で見たときも思ったけど、かわいい子じゃないか」
ふと頭の中に銀髪の美少女の姿が浮かぶ。彼女は髪の色が変わっているだけで、ビルの屋上で出会ったはかなげな雰囲気をまとう少女であった。女神から与えられた情報によると、彼女の名前はトワというらしい。
「うーん、なんか女神さまからは勇者の補佐とか頼まれてたけど、そんなの無視して好き放題生きてもいいかもな! あの子はなんかすごい力をもらってたみたいだし、世界の命運は彼女に任せてオレは気ままに異世界転生ライフをって感じに! はははははは!」
調子のいいことを考えながら、声高らかに笑う。
彼女のせいで死んでしまったといっても、過言ではないシンヤなのだ。なので少しぐらいなら罰は当たらないだろうと。
「ガルルルルーーーー」
「え? 犬? なわけないよな、――ははは……」
鳴き声に視線を移すと、近くに四足歩行のケモノの姿が。見た感じはオオカミっぽく数は三匹。彼らは威嚇しながら、じりじりシンヤに詰め寄っていた。
「あれってもしかしてウルフって呼ばれてる魔物か? え? これまずくないか!? もしかして今の発言を聞いて、女神さまが怒ったとか!? すみません女神さま! つい出来心で!? だからどうかお助けを!」
手を合わせ、必死に謝る。
もはやシャレになってない状況だ。予知のスキルの使い方はわからず、さらにもう一つの力も二、三日後といわれていた。そのため現状満足に戦える状況ではない。このままではウルフに食べられる未来しかなく、ただ祈るしかなかった。
「ガルルルルーーッ!」
だがそんなお願いもむなしく、ウルフの一匹がとびかかってきて。
シンヤが目を開けると、生い茂る森の開けた場所の光景が広がっていた。見上げればすがすがしいほど青く澄みきった空が。そして耳をすますと小鳥のさえずりや、近くに川があるみたいでかすかに水の流れる音が聞こえてくる。周囲にはだれもおらず、のどかな森にぽつんとシンヤが突っ立っている状況であった。
「身体が思い通りに動く……。うん?」
手足を軽く動かし自身の状態を確認していると、地面にカバー付きのナイフが落ちていた。なのでそのナイフを拾い、刃の部分を抜いてみる。
「これがオレ? ふむ、なかなかのイケメン。あとけっこう若いな十七、十八ぐらいか?」
ナイフの刃にはシンヤの顔が映っている。ここで驚くのは、好青年感あふれる整った顔立ちの少年が映っていたこと。どうやらこれが女神が新たに用意してくれた身体らしい。あちこち触ってみると筋肉もついているみたいで、身体が軽く感じた。
「気に入りましたか? せっかくなので私好みの、いえ、サービスである程度かっこいい外見にしておきましたよ。あとあの少女に合わせて、年齢も若めにしておきました」
すると脳裏に女神の声が聞こえてくる。
「あ、女神さま」
「ところであなた、何者なんですか? まさかあれほどの強力なスキルを引き当てるなんて」
女神がなにやら畏怖の念を込めて問うてきた。
「どういうことですか?」
「毎回転生させるときに、その人特有の力を目覚めさせているんです。その種類は強いのから弱いのまでさまざまあって、旅立った勇者たちには私が干渉し確定で魔を滅する光の力。極光のスキルを手に入れられるようにしているんです。ただ今回は私に残された力の関係上、ノータッチ。なのであなたが引き当てるのは、しょぼい力なんだろうなとほとんど期待していなかったのですが」
「それひどくないですか!?」
あまりの散々な言いように、ツッコミを入れるしかない。
「しかたありませんよ。力の目覚めは、その人のこれまでの生き方が大きくかかわります。なのでごく普通に生きていたら、戦闘に役に立たないような平凡なスキルになってしまう。ここで先ほどの話にもどるのですが、あなたは歴戦の戦士かなにかだったんですか?」
「はい?」
予想外の言葉に、首をひねるしかない。
シンヤはこれまで平凡に生きてきただけ。だというのにどうして歴戦の戦士というワードが出てくるのだろうか。
「あなたが手に入れたのは、予知のスキル。この力が目覚めるには幾度の戦場で戦い抜き、最適な未来を望み続けてないと手に入れられない代物です」
(幾度の戦場? も、もしかしてゲームのことなのか?)
思い当たる節は一つ。シンヤはこれまでずっと銃を打ち合うFPSのゲームにはまって、やり続けていた。あのゲームは一瞬の判断がものを言わす。なので反射神経はもちろん、いかに相手の動きを予測して動くのかが勝利の鍵。それゆえシンヤは毎度毎度、敵の動きを予測して相手の裏をかき続けてきた。もはや撃ち勝つため、ほんの一瞬でも先の未来が見えたらとどれだけ思ったことか。もしかするとその経験が、レアなスキルを引き当てたのかもしれない。
「まだ予知のレベルが弱いですが、成長すればきっと化ける。これなら勇者の補佐役として申し分ない。くす、うれしい誤算ですね」
「話をまとめると、オレは女神さまのお目にかなったってことでいいんですか?」
「はい、なのであなたには期待していますよ。その力を持って勇者を導いてあげてください。もうすぐもう一つの力も使えるようになるので」
「もう一つの力?」
「各々のスキルとは別に、私が餞別として与えている力です。ただあなたの場合急きょ用意した身体なので、まだ力がなじんでいない様子。二、三日したら使えるようになると思うので、楽しみにしといてくださいね」
「まじっすか! それは俄然やる気がでてきましたよ!」
予知のスキルだけでもすごそうなのに、さらにもう一つ力をもらえるとは。うまくいけば当初の期待通り、無双できたりするのではないか。
「そろそろ話しかけるのも限界のようです。では行きなさい。最後の希望の星よ……」
そして最後の激励の言葉とともに、女神の声が聞こえなくなった。
「――さてと、なにはともあれ」
こうして一人になったシンヤはというと。
「――はは、ははは、ははははは! なんかツッコミどころ満載の状況だが、とりあえずオレ復活! うだうだ考えていてもしかたないし、この世界で生きていくぞー!」
両腕を上げ、思いっきりさけぶ。
いろいろ思うところはある。しかし話をまとめると、シンヤはもう死んでしまったのだ。よってこれまでの人生とは完全におさらば。どれだけ感傷に浸ったり悔いたりしたところで、もはやどうすることもできない。それに今はラッキーなことに、かつての記憶を保持したまま転生させてもらったのだ。ゆえに過去にとらわれるよりも、今の生。切り替えるべきだと判断した。そもそもの話これまでの人生にとくに未練や執着はなかったため、すんなり切り替えられたという。
「いやー、それにしても漫画やアニメのことが、現実で起こるなんてなー。ははは、でもぜんぜんわるくない! むしろつまらない人生から脱却できて、大バンザイだ! ふむ、なになに。与えられた情報によると、ここは魔法があったり魔物がいたりするいわゆるファンタジー系の世界か。いいねー、この先なにが待ち受けているのか! もう想像するだけでわくわくしてくるぜ!」
ガッツポーズしながら、これからの人生に胸をはずませる。もはや死んでしまったショックなど、忘れてしまうほどのテンションのバク上がりようである。
ちなみにこの世界について、ある程度の知識が頭に入っていた。言語についてもわかっており、これなら不自由なく生きていけそうだ。
「えっと、なになに、この子が勇者のトワちゃんか。へぇ、ビルの屋上で見たときも思ったけど、かわいい子じゃないか」
ふと頭の中に銀髪の美少女の姿が浮かぶ。彼女は髪の色が変わっているだけで、ビルの屋上で出会ったはかなげな雰囲気をまとう少女であった。女神から与えられた情報によると、彼女の名前はトワというらしい。
「うーん、なんか女神さまからは勇者の補佐とか頼まれてたけど、そんなの無視して好き放題生きてもいいかもな! あの子はなんかすごい力をもらってたみたいだし、世界の命運は彼女に任せてオレは気ままに異世界転生ライフをって感じに! はははははは!」
調子のいいことを考えながら、声高らかに笑う。
彼女のせいで死んでしまったといっても、過言ではないシンヤなのだ。なので少しぐらいなら罰は当たらないだろうと。
「ガルルルルーーーー」
「え? 犬? なわけないよな、――ははは……」
鳴き声に視線を移すと、近くに四足歩行のケモノの姿が。見た感じはオオカミっぽく数は三匹。彼らは威嚇しながら、じりじりシンヤに詰め寄っていた。
「あれってもしかしてウルフって呼ばれてる魔物か? え? これまずくないか!? もしかして今の発言を聞いて、女神さまが怒ったとか!? すみません女神さま! つい出来心で!? だからどうかお助けを!」
手を合わせ、必死に謝る。
もはやシャレになってない状況だ。予知のスキルの使い方はわからず、さらにもう一つの力も二、三日後といわれていた。そのため現状満足に戦える状況ではない。このままではウルフに食べられる未来しかなく、ただ祈るしかなかった。
「ガルルルルーーッ!」
だがそんなお願いもむなしく、ウルフの一匹がとびかかってきて。
応援ありがとうございます!
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