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1章4部 トワの答え
トワvsガルディアス
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フローラが神殿の奥へと向かい、残るシンヤとトワは戦闘を開始していた。トワは魔人であるガルディアスと。そしてシンヤはウルフの集団ざっと十五匹とだ。
シンヤは襲いかかるウルフに対し、予知のスキルによる攻撃察知能力で敵の攻撃を見抜く。あとはそれにしたがい回避しながら、一匹ずつ確実にリボルバーで撃ち抜いていった。
「この動き、もしかしてウルフのやつら時間稼ぎが狙いか?」
きっとガルディアスの指示なのだろう。ウルフの集団は一斉に襲いかかってこず、少数の部隊で仕掛けてくるのだ。しかも攻撃より回避を優先した動きで。どうやらウルフたちの役目は、シンヤを引き付けておくこと。カルディアスとトワとの戦いに、横やりを入れさせないように。これにより一気に敵を倒せず、トワの加勢になかなかいけない状況が続いていた。
「はぁぁぁぁぁ!」
「それにしてもトワのやつ、なんて戦いっぷりだ」
ウルフの集団と戦闘しながらも、トワたちの戦いを横目にして思わず息をのんでしまう。
止まることを知らない極光の斬撃の嵐が、ガルディアス目掛けて放たれ続けているのだ。しかもその一撃一撃どれもが重く、精度も高い見事な代物。それをあそこまで怒涛にくり出されては、受ける方はたまったものじゃない。それはガルディアスも同じで、なんとか黒雷の剣や違う魔法で凌いではいるが、さばくので精一杯といった感じだ。しかも敵が距離をとり体勢を整えようとしても、トワがまたたく間に距離を詰めくらいつく。それゆえガルディアスは彼女の剣戟から逃れることができず、ひたすら斬撃を受けるはめに。
もはやトワはあの強大なガルディアスと真っ向からぶつかるだけでなく、完全に押していた。それも極光のスキルの要因が大きいといっていい。本来魔人であるガルディアスには驚異的回復能力があるため、多少の攻撃は気にしていない様子。しかしそれが魔を払う極光となると、話は別だろう。下手すれば致命傷になりかねないゆえ、極力くらいたくないのは当然のこと。現にガルディアスはトワの斬撃に細心の注意を払っており、防御よりの戦いであった。
「ちっ、黒雷の閃光よ!」
ガルディアスが後方に跳躍して距離をとりながらも、魔法で迎撃。距離を詰めようとするトワへ、一直線に標的を貫く黒い雷光を放った。
「闇に染まったマナで生み出す魔法なんて、この極光の前では無力」
しかしトワは敵の攻撃魔法を極光をまとった剣で斬り払い、消滅させる。
そう、なんと極光の光の前に、ガルディアスの魔法はたちまち飲みこまれその力を失ってしまうという。そのためさっきから彼の攻撃魔法はどれも、トワに防がれてばかり。彼女の突っ込む勢いを少し弱める、時間稼ぎ程度しかなっていなかった。
そんな極光のスキルはもちろんだが、彼を一番苦しめているのはやはりトワのあの変わりようだろう。今の彼女はゴーレムを倒した時のように、一切の恐れや迷いがない。そう、頭にあるのは魔を滅することだけ。その証拠にトワの戦いはあまりに苛烈。愚直といっていいほどに敵へと突っ込み、剣を振り続ける。その様は与えられた命令をこなす機械のよう。ただただ無慈悲に、容赦なく敵を斬り伏せるのみ。そんな怒涛の戦い方に、もはや戦慄を覚えずにはいられなかった。
「押してるけど、このまま続けたら……」
勝てそうな展開だが、並々ならぬ不安がこみ上げてきてしかたない。
というのもトワは自身が傷つくことなどお構いなし。敵を斬り伏せられたらそれでいいと、攻撃を受けることさえいとわないでいるのだ。そんな無茶な戦いをするものだから、彼女にはあちこちダメージのあとが。それは斬り合いだったり、敵の攻撃魔法を斬り払ったときの余波だったり。どれも軽傷で戦いに支障はなさそうだが、いつ深手をおってしまってもおかしくない状況。もはや危なっかしすぎて、見ていられないほどであった。
(早くザコを片づけて、援護しにいかないと!)
襲いくるウルフの攻撃をかわしつつ、リボルバーをぶっ放していく。
「これで最後だ!」
「ガルルルル!?」
そしてようやく最後の一匹をしとめることに成功。リロードしながら、トワの加勢に行こうとすると。
「はぁっ!」
「グッ!? おのれ!?」
なんと渾身の極光の斬撃がガルディアスの黒雷の剣を四散させ、さらに相手の胴体にも深手を負わせたのだ。
その衝撃でガルディアスは後方に吹き飛ばされる形に。膝をつき、傷口を押さえながらうずくまる。
「これで決める! 極光よ! 斬り裂け!」
敵は完全に無防備状態。それゆえトワは剣を大きく振りかぶり、ガルディアスへと突撃。とどめの一撃を放とうと。そんな彼女の剣にはこれまで一、まばゆくでかい極光の輝きが。もはや極大の光で葬る気なのだろう。
(よし、いける! トワの勝ちだ!)
トワの勝利を確信したまさにそのとき。
「まだこんなところで終われん! 黒雷の閃光よ!」
ここで緊急事態が。なんとガルディアスが最後の力を振り絞ってか、とっさに腕を前に突き出し魔法を放ったのだ。
「なっ!?」
そして押し寄せるイヤな予感。そう、トワはあの一撃をもろに喰らう。もともとダメージを受けることなどいとわず突っ込み、敵を倒すことを最優先にしているバーサーク状態の彼女なのだ。そんなトワゆえ必殺の一撃を、防御に使うという選択肢はない。肉を切らせて骨を断つ勢いで、ダメージを受けながらも攻撃し確実に倒すことを優先するはず。
「間に合ってくれ!」
気づけばすでに足が動いていた。
このままいけばガルディアスは倒せるだろう。彼女は攻撃を受けながらも止まらず、敵を斬り伏せる。だがそれと引き換えに大ダメージを受け最悪、命を失う危険性が。ここにきてこれまで感じていたトワの危うさが現実に。
「え?」
そしてトワの心底驚いた声がすぐそばで聞こえた。
次の瞬間、黒い雷撃がシンヤに直撃し。
「し、シンヤ!?」
彼女の泣き叫ぶような声とともに、シンヤの意識は闇に落ちるのであった。
シンヤは襲いかかるウルフに対し、予知のスキルによる攻撃察知能力で敵の攻撃を見抜く。あとはそれにしたがい回避しながら、一匹ずつ確実にリボルバーで撃ち抜いていった。
「この動き、もしかしてウルフのやつら時間稼ぎが狙いか?」
きっとガルディアスの指示なのだろう。ウルフの集団は一斉に襲いかかってこず、少数の部隊で仕掛けてくるのだ。しかも攻撃より回避を優先した動きで。どうやらウルフたちの役目は、シンヤを引き付けておくこと。カルディアスとトワとの戦いに、横やりを入れさせないように。これにより一気に敵を倒せず、トワの加勢になかなかいけない状況が続いていた。
「はぁぁぁぁぁ!」
「それにしてもトワのやつ、なんて戦いっぷりだ」
ウルフの集団と戦闘しながらも、トワたちの戦いを横目にして思わず息をのんでしまう。
止まることを知らない極光の斬撃の嵐が、ガルディアス目掛けて放たれ続けているのだ。しかもその一撃一撃どれもが重く、精度も高い見事な代物。それをあそこまで怒涛にくり出されては、受ける方はたまったものじゃない。それはガルディアスも同じで、なんとか黒雷の剣や違う魔法で凌いではいるが、さばくので精一杯といった感じだ。しかも敵が距離をとり体勢を整えようとしても、トワがまたたく間に距離を詰めくらいつく。それゆえガルディアスは彼女の剣戟から逃れることができず、ひたすら斬撃を受けるはめに。
もはやトワはあの強大なガルディアスと真っ向からぶつかるだけでなく、完全に押していた。それも極光のスキルの要因が大きいといっていい。本来魔人であるガルディアスには驚異的回復能力があるため、多少の攻撃は気にしていない様子。しかしそれが魔を払う極光となると、話は別だろう。下手すれば致命傷になりかねないゆえ、極力くらいたくないのは当然のこと。現にガルディアスはトワの斬撃に細心の注意を払っており、防御よりの戦いであった。
「ちっ、黒雷の閃光よ!」
ガルディアスが後方に跳躍して距離をとりながらも、魔法で迎撃。距離を詰めようとするトワへ、一直線に標的を貫く黒い雷光を放った。
「闇に染まったマナで生み出す魔法なんて、この極光の前では無力」
しかしトワは敵の攻撃魔法を極光をまとった剣で斬り払い、消滅させる。
そう、なんと極光の光の前に、ガルディアスの魔法はたちまち飲みこまれその力を失ってしまうという。そのためさっきから彼の攻撃魔法はどれも、トワに防がれてばかり。彼女の突っ込む勢いを少し弱める、時間稼ぎ程度しかなっていなかった。
そんな極光のスキルはもちろんだが、彼を一番苦しめているのはやはりトワのあの変わりようだろう。今の彼女はゴーレムを倒した時のように、一切の恐れや迷いがない。そう、頭にあるのは魔を滅することだけ。その証拠にトワの戦いはあまりに苛烈。愚直といっていいほどに敵へと突っ込み、剣を振り続ける。その様は与えられた命令をこなす機械のよう。ただただ無慈悲に、容赦なく敵を斬り伏せるのみ。そんな怒涛の戦い方に、もはや戦慄を覚えずにはいられなかった。
「押してるけど、このまま続けたら……」
勝てそうな展開だが、並々ならぬ不安がこみ上げてきてしかたない。
というのもトワは自身が傷つくことなどお構いなし。敵を斬り伏せられたらそれでいいと、攻撃を受けることさえいとわないでいるのだ。そんな無茶な戦いをするものだから、彼女にはあちこちダメージのあとが。それは斬り合いだったり、敵の攻撃魔法を斬り払ったときの余波だったり。どれも軽傷で戦いに支障はなさそうだが、いつ深手をおってしまってもおかしくない状況。もはや危なっかしすぎて、見ていられないほどであった。
(早くザコを片づけて、援護しにいかないと!)
襲いくるウルフの攻撃をかわしつつ、リボルバーをぶっ放していく。
「これで最後だ!」
「ガルルルル!?」
そしてようやく最後の一匹をしとめることに成功。リロードしながら、トワの加勢に行こうとすると。
「はぁっ!」
「グッ!? おのれ!?」
なんと渾身の極光の斬撃がガルディアスの黒雷の剣を四散させ、さらに相手の胴体にも深手を負わせたのだ。
その衝撃でガルディアスは後方に吹き飛ばされる形に。膝をつき、傷口を押さえながらうずくまる。
「これで決める! 極光よ! 斬り裂け!」
敵は完全に無防備状態。それゆえトワは剣を大きく振りかぶり、ガルディアスへと突撃。とどめの一撃を放とうと。そんな彼女の剣にはこれまで一、まばゆくでかい極光の輝きが。もはや極大の光で葬る気なのだろう。
(よし、いける! トワの勝ちだ!)
トワの勝利を確信したまさにそのとき。
「まだこんなところで終われん! 黒雷の閃光よ!」
ここで緊急事態が。なんとガルディアスが最後の力を振り絞ってか、とっさに腕を前に突き出し魔法を放ったのだ。
「なっ!?」
そして押し寄せるイヤな予感。そう、トワはあの一撃をもろに喰らう。もともとダメージを受けることなどいとわず突っ込み、敵を倒すことを最優先にしているバーサーク状態の彼女なのだ。そんなトワゆえ必殺の一撃を、防御に使うという選択肢はない。肉を切らせて骨を断つ勢いで、ダメージを受けながらも攻撃し確実に倒すことを優先するはず。
「間に合ってくれ!」
気づけばすでに足が動いていた。
このままいけばガルディアスは倒せるだろう。彼女は攻撃を受けながらも止まらず、敵を斬り伏せる。だがそれと引き換えに大ダメージを受け最悪、命を失う危険性が。ここにきてこれまで感じていたトワの危うさが現実に。
「え?」
そしてトワの心底驚いた声がすぐそばで聞こえた。
次の瞬間、黒い雷撃がシンヤに直撃し。
「し、シンヤ!?」
彼女の泣き叫ぶような声とともに、シンヤの意識は闇に落ちるのであった。
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