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2章1部 アルスタリアへ
レティシア
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「お嬢ちゃんたち、そんなガキ放っておいて、俺たちと一緒にこないかい?」
からんできたのはチンピラっぽい、三
「シンヤ、なんか怖い人が!?」
「えっと、シンヤさん、どうしましょう?」
トワとリアは不安そうにたずねてくる。
「うーん、いかにもめんどくさそうな相手だし、どうするかねー」
どう対応しても穏便には済まなさそうなため、頭を悩ませるしかない。
「ああん? 余裕ぶりやがって、このガキが。ヤロウども、少し身のほどをわきまえさせてやろうぜ」
「へい、親分!」
シンヤの反応が癪に触ったらしく、男たちは拳をポキポキならしながら詰め寄ってきた。
「うわ、やっぱりこうなるのかよ。――はぁ……、しかたない」
こうなってしまっては、やるしかないようだ。幸い敵はただのチンピラみたいなので、シンヤの愛銃であるリボルバーで軽く蹴散らせるだろう。とりあえず銃弾の威力を抑えておけば、そこまで大事にならないはずだ。
シンヤの腕に抱き着いている二人にどいてもらい、前に出ようとしたまさにそのとき。
「ちょっと待ったー! 」
シンヤたちの後方から、猫を抱えた一人の少女が割り込んできた。
「げっ!? レティシア!?」
「あんたたちまた人様に迷惑をかけてるの? ほんと懲りないやつらね」
レティシアと呼ばれた少女は、大きく肩をすくめる。
彼女は長い青髪をポニーテールにしており、見るからに明るく活発そうな17歳ぐらいの少女。いかにもお人よしそうで、誰とでも仲良くなれそうな親しげな雰囲気をまとっていた。
そんな彼女が装備しているのは、シンヤたちの世界でおなじみの日本刀のような形状の刀。少し武骨な造りであるが、細身の鋭利な刀身がさやにおさまっている代物であった。
「てめーには関係ねーだろ! さっさと失せやがれ!」
「街の風紀を乱してるあんたたちを、放っておけるわけないでしょ! ほら、今ならまだ許してあげるから、この人たちに謝ってさっさとどっか行きなさい!」
レティシアはチンピラの圧にまったくひるまず、きっぱりと言い放つ。
「親分、ここは退きましょうぜ。あの女とやり合うのはマズイですって」
「ふざけんな! いつまでもおめおめと引き下がってられるか! 今日という今日は、痛い目に合わせてやる!」
「ふん、そっちがその気なら、ケンカを買ってあげる! 覚悟なさい!」
啖呵を切るチンピラに、涼しい顔で応えるレティシア。
彼女は抱きかかえていた猫を地面におろし、そして刀に手をかけた。
そして。
「フッ」
(速い!?)
レティシアは地を蹴り、放たれた弾丸のごとく疾走。拳を振り上げ襲い掛かろうとしたリーダー格の男へ、またたく間に接近。距離を詰めて。
「はい、まだ続ける? それなら本当に痛い目にあってもらうけど?」
気づけばレティシアの刀の刃が、リーダー格の男の首元に突きつけられていた。
その一手は、まさに一瞬の出来事。彼女の剣のウデがどれほどすさまじいか、容易にわかる光景であった。
「く、クソ! 覚えてやがれー!」
刃を突きつけられ固まっていたリーダー格の男であったが、すぐさま捨て台詞を吐いて逃げ出していく。
「待ってくだせい! 親分!」
それに続き彼の取り巻きの男たちも、血相を変えて逃げていった。
そしてそんなレティシアの活躍を見て、周りにいた人々は拍手と歓声を。
「ふう、これで一件落着っと!」
レティシアは刀をさやにしまい、手をパンパン払う。
「ありがとう、助かったよ」
「気にしないで。こういうのには慣れっこだから。それはそうと……」
「うん?」
「あなた少し自重したほうがいいんじゃない。こんな往来でそんなふうに女の子二人を侍らせていたら、さすがにヘイトを買うってもんでしょ」
レティシアがシンヤを指さし、ジト目で告げてくる。
「――ははは……、おっしゃる通りで……。ほら、ふたりとも離れた、離れた」
「えへへ、少しはしゃぎすぎましたね」
「え? わたしも!?」
すんなり離れてくれるリアと、イヤそうにするトワ。
ただトワの場合はこうしないと心の平静が保てないため、しかたがないといえばしかたがないのだろう。
「とりあえず今は手をつなぐ程度でがまんしとけ」
「――う、うん……」
トワはシンヤの差し出した手を、不安そうにぎゅっとつかんだ。
「まあ、そのぐらいなら、まだほほえましいレベルね。一応わけありみたいだし」
レティシアは肩を軽くすくめながら、ほほえましげに笑う。
「さてと、アタシはこれでおさらばしてっと。あれ? 迷子のネコは? いない?」
辺りをキョロキョロ見回し、首をかしげてきょとんとするレティシア。
「あのあの、さっきのネコでしたら、お姉さんがおろしたあと向こうの方に走って逃げていきましたけど」
するとリアが猫が逃げた方向を指さす。
「はぁ!? うそでしょ!? せっかくつかまえたと思ったのにー!? こうしちゃいられない! 早く追わないと!」
そしてレティシアは教えてもらった方向に、慌ただしく駆けていく。
「行っちまったな。まあ、とりあえず気を取り直して、街の散策を再開するか」
嵐のように過ぎ去っていくレティシアを見送りながら、シンヤたちは再び歩き出すのであった。
からんできたのはチンピラっぽい、三
「シンヤ、なんか怖い人が!?」
「えっと、シンヤさん、どうしましょう?」
トワとリアは不安そうにたずねてくる。
「うーん、いかにもめんどくさそうな相手だし、どうするかねー」
どう対応しても穏便には済まなさそうなため、頭を悩ませるしかない。
「ああん? 余裕ぶりやがって、このガキが。ヤロウども、少し身のほどをわきまえさせてやろうぜ」
「へい、親分!」
シンヤの反応が癪に触ったらしく、男たちは拳をポキポキならしながら詰め寄ってきた。
「うわ、やっぱりこうなるのかよ。――はぁ……、しかたない」
こうなってしまっては、やるしかないようだ。幸い敵はただのチンピラみたいなので、シンヤの愛銃であるリボルバーで軽く蹴散らせるだろう。とりあえず銃弾の威力を抑えておけば、そこまで大事にならないはずだ。
シンヤの腕に抱き着いている二人にどいてもらい、前に出ようとしたまさにそのとき。
「ちょっと待ったー! 」
シンヤたちの後方から、猫を抱えた一人の少女が割り込んできた。
「げっ!? レティシア!?」
「あんたたちまた人様に迷惑をかけてるの? ほんと懲りないやつらね」
レティシアと呼ばれた少女は、大きく肩をすくめる。
彼女は長い青髪をポニーテールにしており、見るからに明るく活発そうな17歳ぐらいの少女。いかにもお人よしそうで、誰とでも仲良くなれそうな親しげな雰囲気をまとっていた。
そんな彼女が装備しているのは、シンヤたちの世界でおなじみの日本刀のような形状の刀。少し武骨な造りであるが、細身の鋭利な刀身がさやにおさまっている代物であった。
「てめーには関係ねーだろ! さっさと失せやがれ!」
「街の風紀を乱してるあんたたちを、放っておけるわけないでしょ! ほら、今ならまだ許してあげるから、この人たちに謝ってさっさとどっか行きなさい!」
レティシアはチンピラの圧にまったくひるまず、きっぱりと言い放つ。
「親分、ここは退きましょうぜ。あの女とやり合うのはマズイですって」
「ふざけんな! いつまでもおめおめと引き下がってられるか! 今日という今日は、痛い目に合わせてやる!」
「ふん、そっちがその気なら、ケンカを買ってあげる! 覚悟なさい!」
啖呵を切るチンピラに、涼しい顔で応えるレティシア。
彼女は抱きかかえていた猫を地面におろし、そして刀に手をかけた。
そして。
「フッ」
(速い!?)
レティシアは地を蹴り、放たれた弾丸のごとく疾走。拳を振り上げ襲い掛かろうとしたリーダー格の男へ、またたく間に接近。距離を詰めて。
「はい、まだ続ける? それなら本当に痛い目にあってもらうけど?」
気づけばレティシアの刀の刃が、リーダー格の男の首元に突きつけられていた。
その一手は、まさに一瞬の出来事。彼女の剣のウデがどれほどすさまじいか、容易にわかる光景であった。
「く、クソ! 覚えてやがれー!」
刃を突きつけられ固まっていたリーダー格の男であったが、すぐさま捨て台詞を吐いて逃げ出していく。
「待ってくだせい! 親分!」
それに続き彼の取り巻きの男たちも、血相を変えて逃げていった。
そしてそんなレティシアの活躍を見て、周りにいた人々は拍手と歓声を。
「ふう、これで一件落着っと!」
レティシアは刀をさやにしまい、手をパンパン払う。
「ありがとう、助かったよ」
「気にしないで。こういうのには慣れっこだから。それはそうと……」
「うん?」
「あなた少し自重したほうがいいんじゃない。こんな往来でそんなふうに女の子二人を侍らせていたら、さすがにヘイトを買うってもんでしょ」
レティシアがシンヤを指さし、ジト目で告げてくる。
「――ははは……、おっしゃる通りで……。ほら、ふたりとも離れた、離れた」
「えへへ、少しはしゃぎすぎましたね」
「え? わたしも!?」
すんなり離れてくれるリアと、イヤそうにするトワ。
ただトワの場合はこうしないと心の平静が保てないため、しかたがないといえばしかたがないのだろう。
「とりあえず今は手をつなぐ程度でがまんしとけ」
「――う、うん……」
トワはシンヤの差し出した手を、不安そうにぎゅっとつかんだ。
「まあ、そのぐらいなら、まだほほえましいレベルね。一応わけありみたいだし」
レティシアは肩を軽くすくめながら、ほほえましげに笑う。
「さてと、アタシはこれでおさらばしてっと。あれ? 迷子のネコは? いない?」
辺りをキョロキョロ見回し、首をかしげてきょとんとするレティシア。
「あのあの、さっきのネコでしたら、お姉さんがおろしたあと向こうの方に走って逃げていきましたけど」
するとリアが猫が逃げた方向を指さす。
「はぁ!? うそでしょ!? せっかくつかまえたと思ったのにー!? こうしちゃいられない! 早く追わないと!」
そしてレティシアは教えてもらった方向に、慌ただしく駆けていく。
「行っちまったな。まあ、とりあえず気を取り直して、街の散策を再開するか」
嵐のように過ぎ去っていくレティシアを見送りながら、シンヤたちは再び歩き出すのであった。
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