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2章5部 ミルゼ教の儀式
フローラの旅立ち
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フローラとシュミットがいるのは、ユーリアナ王国の首都であるエルゼアナ。そこにそびえ立つユーリアナ城の入口前の、エントランス広場。ここは城の玄関口だけあって大きな噴水や立派な銅像が立ち並んでおり、あちこち芸術的なデザインがほどこされているのだ。
先ほどまでこの場で歩きながら現状について話していたのだが、途中伝令が報告しに来たのであった。
「では自分はこれで」
報告を終え、伝令が去っていく。
「ミルゼ教信者たちが魔物を使役できるように。さらにかつて倒された災禍の六大魔獣を復活させるとは。やはり邪神の眷属、恐るべき相手だ。このまま放っておけば、向こうの戦力が膨れ上がってしまう。こちらも早く手を打たなければ」
シュミットは先ほどの報告に対し、アゴに手を当て思考をめぐらせる。
彼は物腰が柔らかく気品があり、現国王の父を持つ青年であった。
「フォルスティア教会やアルマティナが力を入れている、勇者がいるとウワサの邪神の眷属対策チーム。まずはそこへ助力するとして」
「その役目、私が引き受けようかしら」
フローラが胸に手を当て、名乗り出る。
「フローラが?」
「ええ、勇者の子とその補佐役くんとは、封印の地で共闘して仲良くなったもの。こっちに戻ってからも、ずっと彼女たちの力になってあげたいと思っていたから、ちょうどいいわ。それに私なら立場的にも、適任でしょ?」
シュミットに意味ありげな視線を送る。
「確かに、フローラ、頼めるかい?」
「ふふふ、まかせて」
「その間、ユーリアナ王国のことは僕が責任を持って守り通しておくよ」
「じゃあ、安心していけるわね」
シュミットは武芸だけでなく、知略にも長けた非常に優秀な青年。彼がユーリアナ王国を見ていてくれるなら、フローラがいなくてもなにも心配はいらないだろう。
「くれぐれも気を付けるんだよ」
「はい、いってきます。シュミットお兄さま」
フローラは兄であるシュミットに見送られ、この場を去る。
「ふふふ、まさかこんなにも早く再会できそうだなんて♪ あっ……」
そこでふと気づいてしまう。表情がにやけていることに。どうやら自分は内心かなりはしゃいでいるようだ。事態が事態だけに少し不謹慎かもしれないが、シンヤたちと一緒に行動できることがすごく楽しみなのである。
「ちょっと気がゆるみすぎかしら?」
思い出すのは、シンヤと出会ってすぐの魔人ガルディアスから逃げ切ったあの場面。彼がフローラを旅に誘ってくれたときだ。本当はついていきたかったが、自分の立場的にそれはマズイと断ってしまった。しかし今それが、まさに叶おうとしているのだ。これが胸をはずませずにいられようか。
「これは一応、公務でもあるから、もう少し気を引き締めないとね」
両ほおをたたき、己に喝を入れる。
「待っててね、シンヤくん、トワちゃん」
そして軽い足取りでアルスタリアに向かう準備をしに行く、フローラなのであった。
先ほどまでこの場で歩きながら現状について話していたのだが、途中伝令が報告しに来たのであった。
「では自分はこれで」
報告を終え、伝令が去っていく。
「ミルゼ教信者たちが魔物を使役できるように。さらにかつて倒された災禍の六大魔獣を復活させるとは。やはり邪神の眷属、恐るべき相手だ。このまま放っておけば、向こうの戦力が膨れ上がってしまう。こちらも早く手を打たなければ」
シュミットは先ほどの報告に対し、アゴに手を当て思考をめぐらせる。
彼は物腰が柔らかく気品があり、現国王の父を持つ青年であった。
「フォルスティア教会やアルマティナが力を入れている、勇者がいるとウワサの邪神の眷属対策チーム。まずはそこへ助力するとして」
「その役目、私が引き受けようかしら」
フローラが胸に手を当て、名乗り出る。
「フローラが?」
「ええ、勇者の子とその補佐役くんとは、封印の地で共闘して仲良くなったもの。こっちに戻ってからも、ずっと彼女たちの力になってあげたいと思っていたから、ちょうどいいわ。それに私なら立場的にも、適任でしょ?」
シュミットに意味ありげな視線を送る。
「確かに、フローラ、頼めるかい?」
「ふふふ、まかせて」
「その間、ユーリアナ王国のことは僕が責任を持って守り通しておくよ」
「じゃあ、安心していけるわね」
シュミットは武芸だけでなく、知略にも長けた非常に優秀な青年。彼がユーリアナ王国を見ていてくれるなら、フローラがいなくてもなにも心配はいらないだろう。
「くれぐれも気を付けるんだよ」
「はい、いってきます。シュミットお兄さま」
フローラは兄であるシュミットに見送られ、この場を去る。
「ふふふ、まさかこんなにも早く再会できそうだなんて♪ あっ……」
そこでふと気づいてしまう。表情がにやけていることに。どうやら自分は内心かなりはしゃいでいるようだ。事態が事態だけに少し不謹慎かもしれないが、シンヤたちと一緒に行動できることがすごく楽しみなのである。
「ちょっと気がゆるみすぎかしら?」
思い出すのは、シンヤと出会ってすぐの魔人ガルディアスから逃げ切ったあの場面。彼がフローラを旅に誘ってくれたときだ。本当はついていきたかったが、自分の立場的にそれはマズイと断ってしまった。しかし今それが、まさに叶おうとしているのだ。これが胸をはずませずにいられようか。
「これは一応、公務でもあるから、もう少し気を引き締めないとね」
両ほおをたたき、己に喝を入れる。
「待っててね、シンヤくん、トワちゃん」
そして軽い足取りでアルスタリアに向かう準備をしに行く、フローラなのであった。
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