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1章 第2部 幼馴染の少女
24話 幼馴染との再会
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陣と灯里は神代特区内の海沿いにある、軍の神代基地に来ていた。この敷地内には飛行場や港もあり、兵器も完備。神代特区防衛のため駐在する兵士も多く、かなり本格的な軍事基地となっているのであった。
現在軍という組織は星葬機構によりほぼ一つに統合され、世界全体の防衛に努めているのだ。その主な役割は魔法や星詠みによる人々への被害を、最小限に抑えるというもの。ようは人々に被害が及ばないように避難をうながしながら、彼らを守るのが役目だ。
基本星葬機構はその圧倒的力を持って鎮圧し、軍がそのサポートをする構図。ゆえに当然星葬機構の方が権限が強く、軍は常に指揮下に。絶対遵守ということで、彼らの無茶にいつも付き合わされているといっていい。そのため各国の政府側同様、星葬機構には不満しかないとか。
ちなみに今の時代、国同士の争いは星葬機構により禁止されていた。というのも戦争すれば近代兵器より、魔法や星詠みが勝る。よってどこもさらなる力を求め魔道の道に手を染めていくのはもはや明白。そんなこと星詠みを殲滅対象としている星葬機構が、許すはずがない。なので強大な権力を利用し、とっくの昔に国同士の戦争という概念を潰しているのであった。
「えっと、呼び出された部屋はここだよな」
陣は神代基地本部の建物に向かい、事前に知らされていた部屋のドアノブに手をかける。ちなみに灯里はというと、神代基地入口近くで待ってもらっていた。
そしてノックをして部屋に入ると、中には二人の男女が。ここは軍の客間。もともとVIP用の客間らしく、高級感あふれる家具が立ち並んでいる。あとここが軍の施設ゆえ、どこか重々しい厳格な雰囲気がにじみでていたといっていい。そんな中、少女と青年がソファーに向かい合いながら座り、話し合いをしていた。
「率直な意見を言わせてもらうと、神代特区の防衛は手薄すぎる! 魔法のある程度の自由化を押しているせいで、その分星詠みによる被害の可能性が高まっているのよ! だから軍では役不足! もっと星葬機構の戦力を配置するべきよ!」
どこか見覚えのあるきれいな少女が、高圧的な態度で主張を。
実はこの神代特区の防衛のメインは星葬機構でなく軍なのだ。というのもこの場所はいわば神代の本拠地。ゆえにできれば敵である星葬機構側の人間を入れたくないので、軍の方に防衛を依頼。星葬機構側は必要ないと、最小限しか駐在を許していないのであった。
「クレハさんの言い分も、一理あるかもしれません」
クレハ・レイヴァ―スと相対する、すがすがしい好青年は神代正也。彼もまた神代の血族であり奈月とは親戚の関係。さらには陣と奈月の兄貴分といっていい人物であった。
そんな正也はなんと神代特区の防衛をつかさどる軍と、クロノス側のパイプ役。なので神代特区内の治安維持に関して、かなり重要な立ち位置にいるといっていい。よってその立場上、彼には軍を動かせる権限が与えられていた。
「確かに軍の戦力は近代兵器と最小限の魔法しかない。ですがここ近年では我ら神代の開発した魔法兵器により、戦力面が大幅に強化されています。なので相手が暴走した創星術師であろうと、多少は時間を稼げるぐらいなんですよ」
軍とクロノスの関係は、政府側と同じようにかなり密接といっていい。
その理由は軍の戦力問題。なぜなら軍が所有する銃器だと魔法は鎮圧できるかもしれないが、星詠み相手には分が悪すぎる。一応軍も魔法で応戦できる権限は持っているが、星葬機構に制限を設けられており、最低限の魔法しか使えないのだ。このため軍は常に厳しい状況で防衛活動に、徹しなければならない。
その問題の解決策こそ、クロノスが開発する魔法を利用した兵器。これに関していえばしょせんは武器ゆえ、星葬機構がさだめる魔道の制限に当てはまらない。よって軍はなにも気にせずクロノス側から兵器を購入し、使用することが可能に。その関係もあって軍とクロノスには昔から深いつながりが。さらには政府側と同じく軍自身も星葬機構に不満があるということで、クロノスを勝たせようと様々な援助をしているとか。
「もはや我々にはそれで十分。あとの鎮圧の方は我々クロノス側の戦力で事足ります。なのでわざわざ星葬機構の方々の力を借りるほどではありません。そもそもこれは我らがまいた種ゆえ、このような離れた場所まで起こし頂くのは非常に心苦しいんですよ」
「詭弁ね。神代特区内に入れたくないだけのいいわけで、心にもないことを」
「ハハハ、耳が痛いですね。すみません、これも神代側の意向なので」
クレハの鋭いツッコミに、正也は笑ってごまかしながら対応を。そして話題を自然な流れで別の方向へと。
「さて、警備上の話はこれくらいにしておきましょう。その件でのくわしい書類は星葬機構側に送っていますので、また目を通しておいてください。では最後に今日の案内役の件についてです」
「ふん、別に必要ないけどね」
クレハがぷいっと顔をそむけながら告げる。
「まあ、まあ、そういわず。レイヴァースの姫君が来られたというのにおもてなしの一つもしないとなると、神代のメンツに関わるので。今回こちらが用意した四条陣なら案内はもちろん、荒事もこなせるのでいい働きをするはずですよ」
正也は手で制しながらもうまいこと説得を。そして陣をクレハに紹介した。
「というわけでよろしくな、クレハ」
「――陣……、フフフ、もちろん却下。謹んでお引き取り願うから」
あいさつに対し、クレハは髪を払いながらきっぱり断ってきた。
陣と同い歳の彼女の名前はクレハ・レイヴァース。いかにも生真面目そうで、凛とした雰囲気を放つ少女である。陣とは幼馴染の関係であり、六年ぶりの再会であった。
「おい」
「だって陣に任せたらどうせ途中で放りだしていなくなるか、面倒事に首を突っ込んでワタシを巻き込むかだもの。そんな役割をまっとうできないいい加減な人間、こちらから願いさげよ」
腕を組みながら、遠慮なくズケズケと言い放ってくるクレハ。
「おいおい、信頼なさすぎだろ。あのな、今のオレはクロノスの裏の仕事やシリウスの依頼をこなす、超できる人間なんだからな」
「ふーん、にわかに信じられない話ね。昔の陣はまさに唯我独尊。周りを顧みず自分のしたいことを第一に、好き放題ばっかしてたじゃない。そんなあんたのお目付け役だったワタシが、どれだけ大変な思いをしてきたか」
クレハは思い出すだけで頭が痛くなると、ジト目でかたってきた。
さすがよく一緒にいた幼馴染。陣のことを的確に把握している。
「あー、そういえばクレハって、昔からオレについてきてお小言ばかり言いまくってたよな。真面目というか正義感が強すぎるというか、よくもまあ、ああもしつこく。お前はオレの母親かって、ずっと思ってたよ」
さっきから散々の言われようなので、負けじと言い返す。
そう、小さいころから彼女は陣の保護者的立ち位置だったといっていい。陣が問題を起こさないよう毎回後ろについてきて、注意をうながしてきたのだ。もはや好き勝手する陣にどれだけ口を挟んで止めてきたことか。
ただその程度で止まる陣でもなく、よく彼女の注意を聞かず突き進んだもの。しかしクレハもクレハでまったく退かず、最後まで止めながら後ろを離れなかったという。そして結局共犯者となってしまい、よく一緒に怒られたのがかつての懐かしい思い出であった。
「ふん、すべては陣を公正し、まっとうな人間にするためよ! その野望は今だあきらめてないんだから!」
陣に指を突き付け宣言するクレハ。
そんな昔と変わってない様子のクレハに対し、ため息をこぼすしかない。
「――はぁ……、成長してこんなにもかわいくなったというのに、中身はまったく変わらずか……。少しは女の子らしくなってるのを期待したんだが」
「――か、かわいいって……、なにを急に……」
陣のただなんとなくの感想に過剰に反応してか、クレハは顔を真っ赤にしながら髪をいじり始めた。
「ん、なんだ? まさかいっちょまえにテレてるのか?」
「う、うるさいっ!」
「ははは、いくらかわいくても、中身がすべて台無しにしてるけどな。この分だと恋人とか絶対できなさそうだ」
「陣ー!」
笑いながら軽口をたたきまくる陣に対し、クレハはぶんすか怒りをあらわにしながら立ち上がった。
実のところ昔もこうやって、堅物のクレハをからかい楽しんでいたのであった。
「へぇ、これは驚いた。陣とクレハさんは面識どころか、すごく仲がいいんだな。あまりの仲睦まじさに、話しに割り込むのがはばかられるほどだったよ」
正也は陣とクレハのやり取りをほほえましそうに眺めながら、感想を述べてきた。
「――な、なに!? そのほほえましいものを見る視線は……。――べ、別にワタシと陣は仲良くなんてないし、したいとも……。ええ、だれがこんなやつと! ワタシはただ陣を野放しにすると問題ばかり起こすから、常に目を光らせてるだけ! 幼馴染の腐れ縁として仕方なく、かまってるだけなんだから!」
クレハは一瞬動揺を見せたが、すぐに聞きづてならないと陣を指さし猛抗議を。
「そうそう、幼馴染の腐れ縁ってだけの関係だ。こっちとしてはガミガミうるさい奴に付きまとわれて、困ってるほどなんだからさ」
「――じ、陣……、あんたね……」
納得がいかないと、うらみがましそうな視線を向けてくるクレハ。
なにか言いたげな感じである。おそらく文句を言いたいのだろうが、初めに自分が強く言ってしまったため、素直に口に出せないみたいだ。
「ハハハ、なに言ってやがる、陣。こんなかわいいお嬢さんが幼馴染なんて、贅沢にもほどがあるだろ。しかもお前のことを、今も気にかけてくれるいい子ときたもんだ。これは攻略しない手はないんじゃないか? 見た感じ脈がありそうだぞ?」
正也が意味ありげに目くばせしてくる。
「な、ななな、なにを言ってるのよ!?」
するとクレハが頭から湯気を出す勢いで、取り乱しだした。
「いやー、失敬、失敬。なんだか甘酸っぱい青春を感じたものでついね」
「も、もう、いい! ではワタシはこれで失礼させてもらうから! 陣、行こう!」
相変わらずほほえましそうにする正也に、クレハは居心地がわるくなったのか逃げようと。
「おーい、オレってお役御免じゃ、なかったのかー?」
「つべこべ言わずに来るの! 幼馴染の縁で特別に許可してあげるんだから、光栄に思ってよね!」
クレハは胸にどんっと手を当て、有無を言わさない勢いで主張を。そしてさっさと部屋を出ていってしまった。
「どうやら陣に任せて正解だったようだな。じゃあ、お姫様のエスコートは任せたぞ」
「ははは、了解、正也さん。ちょっとばかし、腐れ縁の困ったお姫様に振り回されてくるよ」
陣は肩をすくめながらも、クレハのあとを追うのであった。
現在軍という組織は星葬機構によりほぼ一つに統合され、世界全体の防衛に努めているのだ。その主な役割は魔法や星詠みによる人々への被害を、最小限に抑えるというもの。ようは人々に被害が及ばないように避難をうながしながら、彼らを守るのが役目だ。
基本星葬機構はその圧倒的力を持って鎮圧し、軍がそのサポートをする構図。ゆえに当然星葬機構の方が権限が強く、軍は常に指揮下に。絶対遵守ということで、彼らの無茶にいつも付き合わされているといっていい。そのため各国の政府側同様、星葬機構には不満しかないとか。
ちなみに今の時代、国同士の争いは星葬機構により禁止されていた。というのも戦争すれば近代兵器より、魔法や星詠みが勝る。よってどこもさらなる力を求め魔道の道に手を染めていくのはもはや明白。そんなこと星詠みを殲滅対象としている星葬機構が、許すはずがない。なので強大な権力を利用し、とっくの昔に国同士の戦争という概念を潰しているのであった。
「えっと、呼び出された部屋はここだよな」
陣は神代基地本部の建物に向かい、事前に知らされていた部屋のドアノブに手をかける。ちなみに灯里はというと、神代基地入口近くで待ってもらっていた。
そしてノックをして部屋に入ると、中には二人の男女が。ここは軍の客間。もともとVIP用の客間らしく、高級感あふれる家具が立ち並んでいる。あとここが軍の施設ゆえ、どこか重々しい厳格な雰囲気がにじみでていたといっていい。そんな中、少女と青年がソファーに向かい合いながら座り、話し合いをしていた。
「率直な意見を言わせてもらうと、神代特区の防衛は手薄すぎる! 魔法のある程度の自由化を押しているせいで、その分星詠みによる被害の可能性が高まっているのよ! だから軍では役不足! もっと星葬機構の戦力を配置するべきよ!」
どこか見覚えのあるきれいな少女が、高圧的な態度で主張を。
実はこの神代特区の防衛のメインは星葬機構でなく軍なのだ。というのもこの場所はいわば神代の本拠地。ゆえにできれば敵である星葬機構側の人間を入れたくないので、軍の方に防衛を依頼。星葬機構側は必要ないと、最小限しか駐在を許していないのであった。
「クレハさんの言い分も、一理あるかもしれません」
クレハ・レイヴァ―スと相対する、すがすがしい好青年は神代正也。彼もまた神代の血族であり奈月とは親戚の関係。さらには陣と奈月の兄貴分といっていい人物であった。
そんな正也はなんと神代特区の防衛をつかさどる軍と、クロノス側のパイプ役。なので神代特区内の治安維持に関して、かなり重要な立ち位置にいるといっていい。よってその立場上、彼には軍を動かせる権限が与えられていた。
「確かに軍の戦力は近代兵器と最小限の魔法しかない。ですがここ近年では我ら神代の開発した魔法兵器により、戦力面が大幅に強化されています。なので相手が暴走した創星術師であろうと、多少は時間を稼げるぐらいなんですよ」
軍とクロノスの関係は、政府側と同じようにかなり密接といっていい。
その理由は軍の戦力問題。なぜなら軍が所有する銃器だと魔法は鎮圧できるかもしれないが、星詠み相手には分が悪すぎる。一応軍も魔法で応戦できる権限は持っているが、星葬機構に制限を設けられており、最低限の魔法しか使えないのだ。このため軍は常に厳しい状況で防衛活動に、徹しなければならない。
その問題の解決策こそ、クロノスが開発する魔法を利用した兵器。これに関していえばしょせんは武器ゆえ、星葬機構がさだめる魔道の制限に当てはまらない。よって軍はなにも気にせずクロノス側から兵器を購入し、使用することが可能に。その関係もあって軍とクロノスには昔から深いつながりが。さらには政府側と同じく軍自身も星葬機構に不満があるということで、クロノスを勝たせようと様々な援助をしているとか。
「もはや我々にはそれで十分。あとの鎮圧の方は我々クロノス側の戦力で事足ります。なのでわざわざ星葬機構の方々の力を借りるほどではありません。そもそもこれは我らがまいた種ゆえ、このような離れた場所まで起こし頂くのは非常に心苦しいんですよ」
「詭弁ね。神代特区内に入れたくないだけのいいわけで、心にもないことを」
「ハハハ、耳が痛いですね。すみません、これも神代側の意向なので」
クレハの鋭いツッコミに、正也は笑ってごまかしながら対応を。そして話題を自然な流れで別の方向へと。
「さて、警備上の話はこれくらいにしておきましょう。その件でのくわしい書類は星葬機構側に送っていますので、また目を通しておいてください。では最後に今日の案内役の件についてです」
「ふん、別に必要ないけどね」
クレハがぷいっと顔をそむけながら告げる。
「まあ、まあ、そういわず。レイヴァースの姫君が来られたというのにおもてなしの一つもしないとなると、神代のメンツに関わるので。今回こちらが用意した四条陣なら案内はもちろん、荒事もこなせるのでいい働きをするはずですよ」
正也は手で制しながらもうまいこと説得を。そして陣をクレハに紹介した。
「というわけでよろしくな、クレハ」
「――陣……、フフフ、もちろん却下。謹んでお引き取り願うから」
あいさつに対し、クレハは髪を払いながらきっぱり断ってきた。
陣と同い歳の彼女の名前はクレハ・レイヴァース。いかにも生真面目そうで、凛とした雰囲気を放つ少女である。陣とは幼馴染の関係であり、六年ぶりの再会であった。
「おい」
「だって陣に任せたらどうせ途中で放りだしていなくなるか、面倒事に首を突っ込んでワタシを巻き込むかだもの。そんな役割をまっとうできないいい加減な人間、こちらから願いさげよ」
腕を組みながら、遠慮なくズケズケと言い放ってくるクレハ。
「おいおい、信頼なさすぎだろ。あのな、今のオレはクロノスの裏の仕事やシリウスの依頼をこなす、超できる人間なんだからな」
「ふーん、にわかに信じられない話ね。昔の陣はまさに唯我独尊。周りを顧みず自分のしたいことを第一に、好き放題ばっかしてたじゃない。そんなあんたのお目付け役だったワタシが、どれだけ大変な思いをしてきたか」
クレハは思い出すだけで頭が痛くなると、ジト目でかたってきた。
さすがよく一緒にいた幼馴染。陣のことを的確に把握している。
「あー、そういえばクレハって、昔からオレについてきてお小言ばかり言いまくってたよな。真面目というか正義感が強すぎるというか、よくもまあ、ああもしつこく。お前はオレの母親かって、ずっと思ってたよ」
さっきから散々の言われようなので、負けじと言い返す。
そう、小さいころから彼女は陣の保護者的立ち位置だったといっていい。陣が問題を起こさないよう毎回後ろについてきて、注意をうながしてきたのだ。もはや好き勝手する陣にどれだけ口を挟んで止めてきたことか。
ただその程度で止まる陣でもなく、よく彼女の注意を聞かず突き進んだもの。しかしクレハもクレハでまったく退かず、最後まで止めながら後ろを離れなかったという。そして結局共犯者となってしまい、よく一緒に怒られたのがかつての懐かしい思い出であった。
「ふん、すべては陣を公正し、まっとうな人間にするためよ! その野望は今だあきらめてないんだから!」
陣に指を突き付け宣言するクレハ。
そんな昔と変わってない様子のクレハに対し、ため息をこぼすしかない。
「――はぁ……、成長してこんなにもかわいくなったというのに、中身はまったく変わらずか……。少しは女の子らしくなってるのを期待したんだが」
「――か、かわいいって……、なにを急に……」
陣のただなんとなくの感想に過剰に反応してか、クレハは顔を真っ赤にしながら髪をいじり始めた。
「ん、なんだ? まさかいっちょまえにテレてるのか?」
「う、うるさいっ!」
「ははは、いくらかわいくても、中身がすべて台無しにしてるけどな。この分だと恋人とか絶対できなさそうだ」
「陣ー!」
笑いながら軽口をたたきまくる陣に対し、クレハはぶんすか怒りをあらわにしながら立ち上がった。
実のところ昔もこうやって、堅物のクレハをからかい楽しんでいたのであった。
「へぇ、これは驚いた。陣とクレハさんは面識どころか、すごく仲がいいんだな。あまりの仲睦まじさに、話しに割り込むのがはばかられるほどだったよ」
正也は陣とクレハのやり取りをほほえましそうに眺めながら、感想を述べてきた。
「――な、なに!? そのほほえましいものを見る視線は……。――べ、別にワタシと陣は仲良くなんてないし、したいとも……。ええ、だれがこんなやつと! ワタシはただ陣を野放しにすると問題ばかり起こすから、常に目を光らせてるだけ! 幼馴染の腐れ縁として仕方なく、かまってるだけなんだから!」
クレハは一瞬動揺を見せたが、すぐに聞きづてならないと陣を指さし猛抗議を。
「そうそう、幼馴染の腐れ縁ってだけの関係だ。こっちとしてはガミガミうるさい奴に付きまとわれて、困ってるほどなんだからさ」
「――じ、陣……、あんたね……」
納得がいかないと、うらみがましそうな視線を向けてくるクレハ。
なにか言いたげな感じである。おそらく文句を言いたいのだろうが、初めに自分が強く言ってしまったため、素直に口に出せないみたいだ。
「ハハハ、なに言ってやがる、陣。こんなかわいいお嬢さんが幼馴染なんて、贅沢にもほどがあるだろ。しかもお前のことを、今も気にかけてくれるいい子ときたもんだ。これは攻略しない手はないんじゃないか? 見た感じ脈がありそうだぞ?」
正也が意味ありげに目くばせしてくる。
「な、ななな、なにを言ってるのよ!?」
するとクレハが頭から湯気を出す勢いで、取り乱しだした。
「いやー、失敬、失敬。なんだか甘酸っぱい青春を感じたものでついね」
「も、もう、いい! ではワタシはこれで失礼させてもらうから! 陣、行こう!」
相変わらずほほえましそうにする正也に、クレハは居心地がわるくなったのか逃げようと。
「おーい、オレってお役御免じゃ、なかったのかー?」
「つべこべ言わずに来るの! 幼馴染の縁で特別に許可してあげるんだから、光栄に思ってよね!」
クレハは胸にどんっと手を当て、有無を言わさない勢いで主張を。そしてさっさと部屋を出ていってしまった。
「どうやら陣に任せて正解だったようだな。じゃあ、お姫様のエスコートは任せたぞ」
「ははは、了解、正也さん。ちょっとばかし、腐れ縁の困ったお姫様に振り回されてくるよ」
陣は肩をすくめながらも、クレハのあとを追うのであった。
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