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1章 第2部 幼馴染の少女
25話 クレハ・レイヴァ―ス
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あれから陣とクレハは一言も口を聞かないまま、軍施設の出口まで来ていた。
クレハの急ぎ足で出ようとしているところを見るに、あまり敵地に身を置いておきたくなかったのだろう。一応軍は権力によって星葬機構の言いなりだが、裏でクロノス側と手を結んでいるため信用できないというわけだ。
「――ふう、やっと外ね。――さてと、こうして二人きりになれたところで」
クレハは外に出たことで、重ぐるしい空気からやっと解放されたと一息つく。
そして。
「陣、あの時はよくもワタシの言葉を無視して、飛び出して行ってくれたよね! しかも向かった先が、ワタシたちと敵対してる神代って! 昔からバカとは思ってたけど、まさかここまでバカだったとは思いもしなかった! ほんと、今すぐそのイカレタ思考回路をたたきのめしてやりたいほどよ!」
陣の方にグイッと詰め寄り、さっそく文句をいい放ってきた。もはやあふれ出る怒りのあまり、攻撃が飛んできそうな勢いでだ。
「――あの別れから今度再会した時、問い詰められそうとは思ってたがやっぱりか……」
「当然! あのね断罪者の家系は本来星葬機構、もといレイヴァースの家系にしたがうものなのよ! ワタシたちはまさに主君と猟犬の関係。命令は絶対だし、裏切るなんてもはや言語道断! それを陣はこのワタシ、クレハ・レイヴァースの目の前で破っていったんだから、怒るのは当たり前でしょ!」
指を突きつけ、問答無用と言いたげに主張するクレハ。
今まで貯めていた怒りが爆発したのか、ヒートアップが止まらない。このままでは小一時間ぐらい説教の嵐になるのは明白。ゆえに陣の言い分を主張することに。
「懇願
するクレハの話をろくに聞かず去っていったんだから、怒るのも無理はない。だけどオレにも、星葬機構と手を切りたかった理由がだな」
「理由ってなによ?」
「正直な話、星葬機構そのものがオレには合わなかったんだよ。ああいう飼いならされるみたいな堅苦しいのは、まじ勘弁だったからさ」
肩をすくめながら本音をかたる。
星詠みを求めるのに制限を掛けられていたこともそうだが、猟犬として首輪をつながれる縛られた生き方に耐えられなかったのもあった。陣はアウトロー派なので、家の地位や断罪者の責務といった重ぐるしいものにはまったく興味がない。ただ自分が求めるままに魔道を求めたいだけなのだから。
「なにその理由は! こっちの気も知らないで! 本来なら陣を立派なワタシの騎士になるよう公正し、ずっとそばで支えてもらおうと思ってたのに!」
涙目になりながら自身の胸をたたき、必死に訴えかけてくるクレハ。
「――お前、なんて恐ろしいことを……。逃げ出して正解だったな。というか騎士ってどんだけメルヘンな妄想を抱いて……」
「う、うるさい! どう思っていようと勝手でしょ! ――ほんとデリカシーのない奴。――はぁ……、どうしてこんな奴を、理想の騎士様に当てはめてたんだろう。小さいころの自分に、今すぐ考え直すよう説得しに行きたい気分よ……」
クレハは腕を組み、そっぽを向いてしまった。それからぶつぶつと、恨めしそうにつぶやきだす。
「――騎士様ね……。だから最後に呼び止めに来た時、あんなにも必死だったのか。泣きついてきそうな勢いだったから、マジでビビったぞ」
「なに言ってるのよ。あの時は騎士がどうこうとかいう問題じゃなくて、幼馴染がどこか遠いところへ行こうとしてたのよ。陣のことをただ純粋に案じてたに、決まってるじゃない! もしかしたら魔道に堕ちた陣を、ワタシが殺す事になるかもしれなかったんだから……。そんなことになったら、ワタシは……」
クレハは悲痛げに目を伏せ、切実に自身の想いを告げてくる。
それだけでどれだけ彼女が陣のことを案じていたのかが、痛いほどわかってしまう。
彼女はレイヴァースの血筋。ゆえに与えられた責務をまっとうするため、役目をこなさなければならない。その対象がかつて仲の良かった幼馴染だったとしてもだ。それこそレイヴァース家に生まれた者のさだめなのだから。
その想いの告白に対し、さすがの陣も茶化せず感動を覚えてしまう。
「――クレハ、お前そんなにオレのことを想って……」
「――ふ、ふん、腐れ縁の幼馴染を殺すのは、目覚めがわるかっただけよ。なによりセナやいろはが悲しむもの! ええ、そうよ、別にワタシはなんとも……」
クレハは髪をいじりながら、念を押して言い直す。
「――まあ、今はその考えも変わってきてるけどね。なんたってセナがあんたの影響を受けて、蓮杖
の家を飛び出そうとしてるんだから。早く元凶を取り除き、あの子の考えを改めさせないとってね。で、陣、この件について、なにか弁解はある?」
「――うっ、そこを突かれるのはさすがに痛いか……」
ジト目で痛いところを突いてくるクレハに、分がだんだんわるくなっていく陣。
陣にとっては珍しく、セナに関しては妹分のため少し責任を感じてしまっているのだ。ゆえにこの話題だと、なかなかいつものように強気には出れなかった。
「これはこれは陣くん、お困りのようですなー。ここは優秀な助手さんの出番かなー」
クレハに押されていると、そこに救いの天使の声が。
振り返るとさっきまで外で待たせていた灯里が、陣たちに気付きすぐそばまで来ていたのだ。
クレハの急ぎ足で出ようとしているところを見るに、あまり敵地に身を置いておきたくなかったのだろう。一応軍は権力によって星葬機構の言いなりだが、裏でクロノス側と手を結んでいるため信用できないというわけだ。
「――ふう、やっと外ね。――さてと、こうして二人きりになれたところで」
クレハは外に出たことで、重ぐるしい空気からやっと解放されたと一息つく。
そして。
「陣、あの時はよくもワタシの言葉を無視して、飛び出して行ってくれたよね! しかも向かった先が、ワタシたちと敵対してる神代って! 昔からバカとは思ってたけど、まさかここまでバカだったとは思いもしなかった! ほんと、今すぐそのイカレタ思考回路をたたきのめしてやりたいほどよ!」
陣の方にグイッと詰め寄り、さっそく文句をいい放ってきた。もはやあふれ出る怒りのあまり、攻撃が飛んできそうな勢いでだ。
「――あの別れから今度再会した時、問い詰められそうとは思ってたがやっぱりか……」
「当然! あのね断罪者の家系は本来星葬機構、もといレイヴァースの家系にしたがうものなのよ! ワタシたちはまさに主君と猟犬の関係。命令は絶対だし、裏切るなんてもはや言語道断! それを陣はこのワタシ、クレハ・レイヴァースの目の前で破っていったんだから、怒るのは当たり前でしょ!」
指を突きつけ、問答無用と言いたげに主張するクレハ。
今まで貯めていた怒りが爆発したのか、ヒートアップが止まらない。このままでは小一時間ぐらい説教の嵐になるのは明白。ゆえに陣の言い分を主張することに。
「懇願
するクレハの話をろくに聞かず去っていったんだから、怒るのも無理はない。だけどオレにも、星葬機構と手を切りたかった理由がだな」
「理由ってなによ?」
「正直な話、星葬機構そのものがオレには合わなかったんだよ。ああいう飼いならされるみたいな堅苦しいのは、まじ勘弁だったからさ」
肩をすくめながら本音をかたる。
星詠みを求めるのに制限を掛けられていたこともそうだが、猟犬として首輪をつながれる縛られた生き方に耐えられなかったのもあった。陣はアウトロー派なので、家の地位や断罪者の責務といった重ぐるしいものにはまったく興味がない。ただ自分が求めるままに魔道を求めたいだけなのだから。
「なにその理由は! こっちの気も知らないで! 本来なら陣を立派なワタシの騎士になるよう公正し、ずっとそばで支えてもらおうと思ってたのに!」
涙目になりながら自身の胸をたたき、必死に訴えかけてくるクレハ。
「――お前、なんて恐ろしいことを……。逃げ出して正解だったな。というか騎士ってどんだけメルヘンな妄想を抱いて……」
「う、うるさい! どう思っていようと勝手でしょ! ――ほんとデリカシーのない奴。――はぁ……、どうしてこんな奴を、理想の騎士様に当てはめてたんだろう。小さいころの自分に、今すぐ考え直すよう説得しに行きたい気分よ……」
クレハは腕を組み、そっぽを向いてしまった。それからぶつぶつと、恨めしそうにつぶやきだす。
「――騎士様ね……。だから最後に呼び止めに来た時、あんなにも必死だったのか。泣きついてきそうな勢いだったから、マジでビビったぞ」
「なに言ってるのよ。あの時は騎士がどうこうとかいう問題じゃなくて、幼馴染がどこか遠いところへ行こうとしてたのよ。陣のことをただ純粋に案じてたに、決まってるじゃない! もしかしたら魔道に堕ちた陣を、ワタシが殺す事になるかもしれなかったんだから……。そんなことになったら、ワタシは……」
クレハは悲痛げに目を伏せ、切実に自身の想いを告げてくる。
それだけでどれだけ彼女が陣のことを案じていたのかが、痛いほどわかってしまう。
彼女はレイヴァースの血筋。ゆえに与えられた責務をまっとうするため、役目をこなさなければならない。その対象がかつて仲の良かった幼馴染だったとしてもだ。それこそレイヴァース家に生まれた者のさだめなのだから。
その想いの告白に対し、さすがの陣も茶化せず感動を覚えてしまう。
「――クレハ、お前そんなにオレのことを想って……」
「――ふ、ふん、腐れ縁の幼馴染を殺すのは、目覚めがわるかっただけよ。なによりセナやいろはが悲しむもの! ええ、そうよ、別にワタシはなんとも……」
クレハは髪をいじりながら、念を押して言い直す。
「――まあ、今はその考えも変わってきてるけどね。なんたってセナがあんたの影響を受けて、蓮杖
の家を飛び出そうとしてるんだから。早く元凶を取り除き、あの子の考えを改めさせないとってね。で、陣、この件について、なにか弁解はある?」
「――うっ、そこを突かれるのはさすがに痛いか……」
ジト目で痛いところを突いてくるクレハに、分がだんだんわるくなっていく陣。
陣にとっては珍しく、セナに関しては妹分のため少し責任を感じてしまっているのだ。ゆえにこの話題だと、なかなかいつものように強気には出れなかった。
「これはこれは陣くん、お困りのようですなー。ここは優秀な助手さんの出番かなー」
クレハに押されていると、そこに救いの天使の声が。
振り返るとさっきまで外で待たせていた灯里が、陣たちに気付きすぐそばまで来ていたのだ。
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