創星のレクイエム

有永 ナギサ

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1章 第2部 幼馴染の少女

30話 ロリコン疑惑

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 陣たちがいるのは神代かみしろ特区にそびえる一番高い建造物。巨大な電波塔であるクロノスタワーの展望台。ここの高さは相当なもので、神代特区全体を一望できることで有名な観光名所である。

「わー! すごい! クレハ、クレハ! 見て! 見て! 神代特区が一望できるよー! 周りには見渡す限りの海だし、絶景ですなー!」

 灯里は広がる絶景を何度も指さし、ぴょんぴょん飛び跳ねる。
 彼女がはしゃぐのも無理はない。展望台から見える光景はまさに絶景の一言。神代特区の街並みを見下ろせるのはもちろん、さらにその先。さんさんと輝く太陽の光をキラキラと反射させる海が、どこまでも広がっているのだ。その水平線のかなたの光景は思わず息を飲むほど圧巻といっていい。夜の街中の光が輝く夜景も格別だか、晴れ晴れとした青空のもと見る果てしない海もまた爽快感があってとてもよかった。
 ちなみにここには主に、観光が目的で来ていた。というのもすでに今日のクレハの用事は済んでおり、あとは自由に過ごせるとのこと。それを聞いた灯里がぜひともこの場所をおとずれたいとせがんだため、足を運んだのであった。

「ヤバイ奴らが居座る魔境まきょうだけど、この景色だけはほめてあげられるかもね」

 もはやすっかり仲良くなっている灯里とクレハ。絶景を見ながら楽しそうにおしゃべりを。
 そんな二人を後ろから見守っていると、突然声をかけられる。

「ねえ、お兄さん! お兄さん! 名前はなんて言うの?」

 振り向くと、そこには目を輝かせる九歳くらいの少女がいた。
 年相応のあどけなさに、天真爛漫てんしんらんまんといった雰囲気をまとっている少女である。

「なんだ。お嬢ちゃん、ナンパかい?」
「うん、そう! レンね、お兄さんを一目見てピーンときたの! この人こそレンの運命の相手だってね! だからお名前を教えてほしいなぁ!」

 冗談で言った言葉に、レンと名乗る少女は目をキラキラさせてぎゅーっと抱き着いてきた。
 あまり関わりたくなかったが、ここで追い払うのもかわいそうな気が。なのでとりあえず、少しだけ付き合ってやることに。

「――マジか、それは光栄というかなんというか。オレの名前は四条しじょう陣だ」
「陣お兄さんだね! レンはレンって言うの! じゃあ、さっそく二人でお茶をしよう! まずはお互いのことを知らないとだよね!」

 ぱぁぁっと顔をほころばせ、陣の顔を見上げてくるレン。

「ははは、レンはなかなか積極的な女の子だな。まあ、なんだ。オレを誘うなら、もう少し大人のレディになってからだ。ほら、そういうことでさっさと親のところに戻りな」

 この歳でいきなりお茶に誘ってくるとは、たいしたませガキである。
 一応レンはかなりかわいらしい少女なので、お茶に付き合うのもわるくはないかもしれない。だがさすがに子供相手にそれをすれば、周りから変な目で見られる恐れが。ゆえに適当にあしらっておくことにした。

「ぶー、陣お兄さん、レンを子供扱いしてるー。レンは立派なレディなんだから、ちゃんとエスコートしてよねー」

 するとレンは両腰に手を当てながら、不服そうにほおを膨らませてきた。

「――はぁ……、めんどくさいませガキに出会ってしまったような気が……」
「つべこべ言わず、レンと一緒に! 出発進行!」

 そしてレンは問答無用と、陣の腕をグイグイ引っ張りだす。
 もちろん小さな女の子の引っ張る力ゆえ、すぐに振りほどくことはできる。だが一生懸命どこか楽しげに腕を引くレンへ、それをやるのはどうかと。よって陣はすぐさま助けを求めることに。

「灯里、クレハ、この子をなんとかしてくれ」
「なにロリコン?」

 するとクレハがジト目で、とんでもないことを言い放ってきた。

「おい、クレハ、誰がロリコンだ?」
「ふん、あんたに決まっているでしょ。それにしてもまさか陣の趣味が、そういう幼女だったなんて知らなかった。これは警察に通報するべき案件ね」

 クレハはまるで犯罪者を見るような厳しい目を向け、携帯を取り出す。

「いやー、陣くん、いくらロリコンだったとしても、実際に小さい子を口説くのはどうかと思うよー? まあ、犯罪だろうといとわない、その意気込みは買うけどね!」

 さらに灯里もクレハと同じノリで、話に参加してくる。最後には親指を立てて、応援してくる始末でだ。

「お前らの目は節穴ふしあなか。連れてかれようとしてるのは、オレだからな。そういうことで灯里」
「うん? なになに? 別に陣くんがきっすいのロリコンだったとしても、灯里さんは見捨てたりしないよ。親友として、暖かい目で見守ってあげる! いろいろ面白そうだしね!」
「特別ボーナスを出すぞ、バイトの」

 生あたたかい視線を向けケラケラと笑ってくる灯里に、陣は起死回生の一言を。

「さっ、レンちゃん、お姉さんとこっちで遊ぼうね!」

 その直後灯里はからかうのを止め、レンの方へ。そしてひざを曲げ、レンに視線を合わせながら話しかける。

「わー! 陣お兄さんとレンの仲をこうとする、悪者が来たー!?」

 レンは陣の後ろにササッと隠れ、警戒心をあらわに。
 そんな彼女に灯里は優しくほほえみながら、説得を。

「あはは、なにを言いますか! 灯里さんはレンちゃんの味方だよー! ほら、陣くんは見るからにガードが堅そうでしょ? だから私が彼を落とす方法をレクチャーしてあげよー! 押してダメなら、引いてみてってね! そしてもっともっと陣くんを困らせて……、ふふふ」

 だが灯里は次第に小悪魔的な笑みを浮かべだし、悪だくみを働かそうとする。

「おい、本音が出てるぞ」
「やだなー、陣くん! 気のせいだって! 愉快な種を咲かせようなんて、全然思ってないよ! ほら、レンちゃんを引き付けるために、致し方なくなんだから!」

 陣の文句に、灯里は笑いながら調子のいいことを口に。
 いい案だと思ったが、完全に裏目に出てしまったようだ。

「――こいつ……」
「レン! 灯里について行く! そして陣お兄さんをメロメロにする術を、マスターするよ!」
「よしよーし、じゃあ、向こうで作戦会議だ!」

 灯里は目を輝かせて食いつくレンを連れ、レイジたちから離れていった。

「完全に人選をミスったな、これは……」

 絶対この後、灯里に入れ知恵をされたレンが猛アタックしてくるはず。
 そのことで頭を悩ませていると、再び乱入者が。

「陣、僕はきみがロリコンであろうと、幼馴染の縁を切ったりしないよ。だから幼女と末永すえながく幸せに」

 カナメは陣の背中にぽんっと手を置き、生あたたかいまなざしを向けてくる。
 現れたのはクレハと同じ陣の幼馴染、雨宮カナメであった。

「おい、カナメ、どっからわいてきやがった」
「いやー、陣とクレハが会うと聞いて、心配になって駆けつけたんだよ。もしなにかしらの修羅場になってたら、誰かが止めに入らないといけないだろ?」

 肩をすくめながら、ウィンクしてくるカナメ。

「まったく、相変わらずのお節介だな」
「ハハハ、まあ、今の陣とクレハの様子を見るに、杞憂きゆうだったみたいだけどね」

 カナメは陣とクレハを見比べ、意味ありげに笑った。

「カナメ、なにが言いたいのよ?」
「言葉通りの意味だよ。よかったね、クレハ。陣と再び仲のいい関係に戻れて。この前まで陣に会ったらどうしようって、あたふたしまくってたから心配だったんだよ」
「そのことは内緒だってあれほど!?」

 急なカミングアウトに対し、クレハはあわててカナメに詰め寄り止めようと。

「なんだ? クレハの奴、そんなこと心配してたのか?」
「そうだよ。キミは知らないかもしれないけど、クレハは僕やいろはに泣きついて散々相談してきたんだから。ハハハ、あれはもう、恋人との初デートにどうするかレベルのそわそわ感だったね」

 腹を抱えながら笑うカナメ。
 まさかカナメだけでなく、陣の妹のいろはにまで。確かにいろはなら陣のことをよく熟知しているため、いい判断であろう。だがまさかクレハがこの神代特区に来るまでに、そんなことになっていたとは。

「カナメ! あんたね!」
「おっと、さすがにこれ以上続けると、お姫様に殺されかねないね。じゃあね、二人とも。また学園が始まったら会おう」

 カナメはぷんすか怒りをあらわにするクレハに、退散の意志を。そして手をひらひらさせながら、この場を去っていった。

「カナメのやつ、今度会ったら覚えておきなさい……」

 クレハは彼の後ろ姿を恨めしそうに見つめながら、拳を鳴らしだす。
 そうこうしていると、再び後ろの方から元気な声が。

「陣お兄さん! お待たせ! 灯里に一杯攻略の手ほどきを受けてきたよ!」
「ふっふっふっ、陣くん! 灯里さんのプロデュース! とくとご覧あれ!」

 不敵にウィンクしてくるレンと、腕をバッと前に出し得意げに宣言してくる灯里。

「――はぁ……、もう戻ってきやがった……」

 そんな二人の登場に、深いため息をつく陣なのであった。

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