33 / 114
1章 第2部 幼馴染の少女
33話 クレハの願い
しおりを挟む
時刻は夕暮れ。空が黄昏に染まっていく中、陣たち三人は最後に星海学園へと来ていた。
すでに学園長の春風栞には連絡を入れており、学園内を歩き回ってもいい許可を。なので今後通うであろう星海学園を、軽く見回っているのであった。ちなみに学園は現在春休みなため部活や魔道の研究にいそしんでいる者たちぐらいしかおらず、スムーズに見学できていたという。そして高等部の校舎内を軽く一周し、最後に灯里の提案で学園の屋上へと足を運んだのであった。
屋上ではほかに生徒もおらず、完全に貸切り状態。遠くの方では、夕日が沈んでいく光景が見える。海面がオレンジ色の光をキラキラ反射し、なかなか目を奪われる光景が広がっていた。
「四月になったら、みんなでこの星海学園に通うんだよね! いやー、楽しみですなー! ね! 陣くん! クレハ!」
灯里は屋上の手すりに身を乗り出しながら、期待を膨らませる。
「ははは、オレとしては奈月に無理やり行かされてるだけで、そこまで感慨がないんだけどな」
「ここに来るのは主に公務のためだから、遊びに来たわけじゃないんだけど」
「もー! 二人とも、ノリが悪いー! というか全然なってないよー! 私たちの年ごろは、ただ純粋に学園生活を謳歌することだけを考えていればいいの! 青春は待ってくれないんだから、精一杯今を楽しむ! わかった?」
陣とクレハのあまり気乗りしない発言に、灯里は両腕を上げながら抗議を。そして人差し指を立てながら、ビシッと言い聞かせてきた。
「まあ、一理あるな。灯里みたいな面白い奴がいれば、そう退屈しない学園生活が送れるかもしれん」
「フフフ、そうね。灯里という友達ができたんだもの。せっかくだし少しは公務を忘れて、普通の学園生活を送るのもわるくはないかも。――そ、それに陣もいることだしね……、うん……」
クレハも陣同様考えを改めたようだ。口元をゆるめこの先の学園生活に想いをはせだす。最後には少しテレながら、陣の方を見てだ。
「あー、そうか、クレハも学園に通うんだった。――はぁ……、もしかするとまた耳が痛い、お小言三昧の日々が……」
「ちょっと!? そこは少しぐらいうれしがりなさいよ! もぉ!」
憂鬱そうに肩をすくめる陣の反応に、クレハ腕を組みながらそっぽを向いてしまう。
「うんうん、いい心意気だよー! 私のバラ色の学園生活が待ってるんだから、二人には頑張ってもらわないと!」
「おーい、灯里、いい話しだしたと思ったら、自分のためかよ」
「ちっちっちっ、その分私も盛り上げまくって、みんなの学園生活を彩らせてみせるから期待しといてー! ふっふっふ、今から腕がなりますなー」
指を左右に揺らしながら、不敵な笑みを浮かべる灯里。そしてガッツポーズをとり、目を輝かせる。
「おかしい。なんだかワタシの学園生活に、不穏な陰が見えたような……」
するとクレハは嫌な予感を抱いたようで、一歩下がった。おそらくまた灯里にからかわれまくり、おもちゃにされる未来でも浮かべたのだろう。
「あはは、気のせい! 気のせい! では新たな学園生活の前祝に乾杯でも! って、あれ……、あんなところに……、ごめん! ちょっと待ってて! すぐ戻ってくるから!」
灯里はクレハの不安を笑い飛ばし、そのまま音頭をとろうと。しかし彼女はなにかに気付いたようで、あわてて校舎内に走っていってしまった。
「フフフ、灯里ったら、本当に騒がしい子ね。でもちょうどよかった。これで陣と過激な話ができる」
そのあわただしくてはちゃめちゃな灯里に対し、ほほえましげに笑うクレハ。そして陣に意味合りげな言葉を投げかけてきた。
「ちっ、しまった。防波堤がどっかに行きやがったってことか。――はぁ……、どうやら観念するしかないようだぜ」
陣が観念したのを確認し、クレハは屋上の手すりの方へ歩いて行く。そして遠い海のかなたを見つめながら、かたり始めた。
「――ねぇ、陣はこの神代特区が好き?」
「ここは知ってのとおり、魔道に手を染めた者たちのたまり場だ。表向きは星葬機構の影響をうけず、自由に魔法と向き合えるいいイメージ。だが裏では神代の非合法な研究、星魔教の星詠みに対する信仰活動など日常茶判事。だから刺激のある日々を過ごすにはもってこいの場所ということで、気に入ってるな」
「陣はやっぱりそっち側の人間なのね。ワタシには自分たちの求めるままに世界を荒らす、あなたたちの考えがまったくわからない。その求めた果てに、なにが待ってるというの? 結局、自身を破滅に追い込むだけじゃない」
クレハは自身の腕を抱きしめながら、切実な疑問を口に。
「ははは、クレハは正しいぜ。それがまっとうな人間の価値観だ。だけどオレたちはそんな当たり前のことがわからなくなってるほど、力に心を奪われてしまってるのさ。だから近づけば身を焦がすと知りながらも、求めずにはいられない」
彼女の正論に、もはや苦笑しか浮かばない。
自身の魂を恒星と化し、星詠みを求めた先にいったいなにが待っているのか。おそらくほぼすべての創星術師がわかっていない謎であろう。だがみなそれでも求めずにはいられないのだ。その果てにある真理を、結末を知りたいがために。
「ねえ、陣はこっちに戻ってこれないの? 人々のため、正義のため、世界に混沌をまき散らす創星術師を亡ぼす道へ。あなたが力を貸してくれれば、きっとレイヴァースの悲願は叶う。だからワタシのもとへ」
クレハは胸にバッと手を当て、必死にうったえてくる。それはまるで懇願するかのよう。六年前、陣が四条家を出ていく時と同じく、今にも泣き出しそうな勢いでだ。
そんな悲痛げなクレハのお願いであったが、陣の答えは決まっていた。
「無理だな。そもそもの話、オレはそっち側にいたことなんてない。物心ついた時から力におぼれ、魔道の道に足を踏み入れていたんだ。クレハだってそれはずっとわかってたはずだろ? だから戻る道なんてなにひとつない。オレは元あるレールを、ただひたすら進むことしかできないのさ」
「それが陣の答えなのね」
「ああ、そうだ。クレハ・レイヴァ―ス」
もはや道が交わることはないと、きっぱり言い切る。
少しかわいそうな気もするが、こういう生き方しか陣にはできないのだ。ゆえに今一度、決別の言葉を伝えたのだ。
「――わかった。じゃあ、これで完全に決別ね。レイヴァースは星詠みという禁忌に、手を伸ばす者たちを許さない。レーヴェンガルトであろうと、神代であろうと。ええ、たとえかつての幼馴染であろうともね」
クレハの万感の思いを込めた宣言。そこには彼女の譲れない信念の炎が垣間見れた。ただどこか悲しさのようなものが影を落としていたが。
「ははは、それでこそオレの好きなクレハだよ。正義観が強く、どこまでもまっすぐな女の子だ」
「す、好き!? ななな、なにを言って!?」
陣の素直な感想に、クレハは顔を真っ赤にしながら取り乱し始める。
「もちろんラブじゃなく、ライクのほうのな」
「――じ、陣ー! せっかくかっこよく決めてたのにー!」
クレハはからかわれたことで、悔しそうに抗議を。
少しいつもの彼女に戻ったところで、陣は話をまとめることにした。
「ははは、話はこれでおわりだな。今度会う時、クレハはレイヴァース側の大将。オレは神代のお姫様につく付き人。お互い敵同士だから、どちらが勝っても恨みっこなしってな」
「ふん、望むところよ。――でも、まあ、ここまで言っておいてなんだけど、陣はまだ創星術師じゃない。だから要注意人物ってだけで、必ずしも仕留めにいかなくてもいいのよね。今はまだ……」
「おい、きれいにしめてやったのに、まだこの話を続けるのか?」
腐れ縁の幼馴染とあって、あまり彼女の悲痛げな顔は見たくないのだ。なのでさっさと話を切り上げたいのだが、クレハはまだなにか言いたそうであった。
「これで最後だから心して聞きなさい。クレハ・レイヴァースから、幼馴染の陣に対する一生のお願いよ。そうやって魔道を求めるのはいい。だけど創星術師だけにはならないで。それさえ守ってくれれば、ワタシは大切な幼馴染を討たなくて済むんだから……」
クレハは胸をぎゅっと押さえながら、切実にうったえてきた。
「――クレハ……」
「わかってる。どうせ陣がこの願いを聞き届けてくれないことは……。でも、言わずにはいられなかったの……。――ふぅ、話に付き合ってくれてありがと、陣。ワタシはもう帰るから、灯里が戻って来たらよろしく伝えといて」
クレハは言いたいことが言えて満足したのか、この場を去っていく。
そんな彼女の後ろ姿を、陣はただだまって見つめるしかないのであった。
「――創星術師にならないでか……」
陣は帰りしなに、ぽつりと夕暮れの空に向かってつぶやいた。
あれから灯里と合流し、そのまま解散の流れに。よって今陣は帰宅の途中である。しかし本来なら真っ直ぐに帰るのだが、今はどこか遠回りしたい気分。なので今日のことをしみじみと思い返しながら、がらにもなく感慨にふけって人通りが少ない道を歩いていた。
「もしその願いを聞き届けたら、オレはクレハや灯里たちと本当になにげない学園生活を送れるのかもな……」
もしもの未来を想像して、思わず笑ってしまう。
不思議とあの灯里がいれば、退屈しない日々が過ごせそうな気がするのだ。しかも心のどこかで、それも悪くないかもしれないと思う自分がいた。
「ふふっ、ようやく見つけたんだよ。キミこそわたしの手をとるにふさわしい」
物思いにふけっていると、ふと見知らぬ少女の声が聞こえた。
振り向くと、そこには十歳ぐらいだろうか。長い銀色の髪の、白いワンピースに身を包んだ少女が。
「ッ!?」
「ねぇ、キミはこの世界の最果てに行きたくないかな?」
銀髪の少女は陣に手を差し出し、意味ありげなまなざしを向けてくる。
だが今の陣にはそんな言葉どうでもよかった。なぜなら気付いてしまったのだ。彼女こそ四条陣が求めていたものであると。
「――やっと見つけた……、オレの輝き……」
すでに学園長の春風栞には連絡を入れており、学園内を歩き回ってもいい許可を。なので今後通うであろう星海学園を、軽く見回っているのであった。ちなみに学園は現在春休みなため部活や魔道の研究にいそしんでいる者たちぐらいしかおらず、スムーズに見学できていたという。そして高等部の校舎内を軽く一周し、最後に灯里の提案で学園の屋上へと足を運んだのであった。
屋上ではほかに生徒もおらず、完全に貸切り状態。遠くの方では、夕日が沈んでいく光景が見える。海面がオレンジ色の光をキラキラ反射し、なかなか目を奪われる光景が広がっていた。
「四月になったら、みんなでこの星海学園に通うんだよね! いやー、楽しみですなー! ね! 陣くん! クレハ!」
灯里は屋上の手すりに身を乗り出しながら、期待を膨らませる。
「ははは、オレとしては奈月に無理やり行かされてるだけで、そこまで感慨がないんだけどな」
「ここに来るのは主に公務のためだから、遊びに来たわけじゃないんだけど」
「もー! 二人とも、ノリが悪いー! というか全然なってないよー! 私たちの年ごろは、ただ純粋に学園生活を謳歌することだけを考えていればいいの! 青春は待ってくれないんだから、精一杯今を楽しむ! わかった?」
陣とクレハのあまり気乗りしない発言に、灯里は両腕を上げながら抗議を。そして人差し指を立てながら、ビシッと言い聞かせてきた。
「まあ、一理あるな。灯里みたいな面白い奴がいれば、そう退屈しない学園生活が送れるかもしれん」
「フフフ、そうね。灯里という友達ができたんだもの。せっかくだし少しは公務を忘れて、普通の学園生活を送るのもわるくはないかも。――そ、それに陣もいることだしね……、うん……」
クレハも陣同様考えを改めたようだ。口元をゆるめこの先の学園生活に想いをはせだす。最後には少しテレながら、陣の方を見てだ。
「あー、そうか、クレハも学園に通うんだった。――はぁ……、もしかするとまた耳が痛い、お小言三昧の日々が……」
「ちょっと!? そこは少しぐらいうれしがりなさいよ! もぉ!」
憂鬱そうに肩をすくめる陣の反応に、クレハ腕を組みながらそっぽを向いてしまう。
「うんうん、いい心意気だよー! 私のバラ色の学園生活が待ってるんだから、二人には頑張ってもらわないと!」
「おーい、灯里、いい話しだしたと思ったら、自分のためかよ」
「ちっちっちっ、その分私も盛り上げまくって、みんなの学園生活を彩らせてみせるから期待しといてー! ふっふっふ、今から腕がなりますなー」
指を左右に揺らしながら、不敵な笑みを浮かべる灯里。そしてガッツポーズをとり、目を輝かせる。
「おかしい。なんだかワタシの学園生活に、不穏な陰が見えたような……」
するとクレハは嫌な予感を抱いたようで、一歩下がった。おそらくまた灯里にからかわれまくり、おもちゃにされる未来でも浮かべたのだろう。
「あはは、気のせい! 気のせい! では新たな学園生活の前祝に乾杯でも! って、あれ……、あんなところに……、ごめん! ちょっと待ってて! すぐ戻ってくるから!」
灯里はクレハの不安を笑い飛ばし、そのまま音頭をとろうと。しかし彼女はなにかに気付いたようで、あわてて校舎内に走っていってしまった。
「フフフ、灯里ったら、本当に騒がしい子ね。でもちょうどよかった。これで陣と過激な話ができる」
そのあわただしくてはちゃめちゃな灯里に対し、ほほえましげに笑うクレハ。そして陣に意味合りげな言葉を投げかけてきた。
「ちっ、しまった。防波堤がどっかに行きやがったってことか。――はぁ……、どうやら観念するしかないようだぜ」
陣が観念したのを確認し、クレハは屋上の手すりの方へ歩いて行く。そして遠い海のかなたを見つめながら、かたり始めた。
「――ねぇ、陣はこの神代特区が好き?」
「ここは知ってのとおり、魔道に手を染めた者たちのたまり場だ。表向きは星葬機構の影響をうけず、自由に魔法と向き合えるいいイメージ。だが裏では神代の非合法な研究、星魔教の星詠みに対する信仰活動など日常茶判事。だから刺激のある日々を過ごすにはもってこいの場所ということで、気に入ってるな」
「陣はやっぱりそっち側の人間なのね。ワタシには自分たちの求めるままに世界を荒らす、あなたたちの考えがまったくわからない。その求めた果てに、なにが待ってるというの? 結局、自身を破滅に追い込むだけじゃない」
クレハは自身の腕を抱きしめながら、切実な疑問を口に。
「ははは、クレハは正しいぜ。それがまっとうな人間の価値観だ。だけどオレたちはそんな当たり前のことがわからなくなってるほど、力に心を奪われてしまってるのさ。だから近づけば身を焦がすと知りながらも、求めずにはいられない」
彼女の正論に、もはや苦笑しか浮かばない。
自身の魂を恒星と化し、星詠みを求めた先にいったいなにが待っているのか。おそらくほぼすべての創星術師がわかっていない謎であろう。だがみなそれでも求めずにはいられないのだ。その果てにある真理を、結末を知りたいがために。
「ねえ、陣はこっちに戻ってこれないの? 人々のため、正義のため、世界に混沌をまき散らす創星術師を亡ぼす道へ。あなたが力を貸してくれれば、きっとレイヴァースの悲願は叶う。だからワタシのもとへ」
クレハは胸にバッと手を当て、必死にうったえてくる。それはまるで懇願するかのよう。六年前、陣が四条家を出ていく時と同じく、今にも泣き出しそうな勢いでだ。
そんな悲痛げなクレハのお願いであったが、陣の答えは決まっていた。
「無理だな。そもそもの話、オレはそっち側にいたことなんてない。物心ついた時から力におぼれ、魔道の道に足を踏み入れていたんだ。クレハだってそれはずっとわかってたはずだろ? だから戻る道なんてなにひとつない。オレは元あるレールを、ただひたすら進むことしかできないのさ」
「それが陣の答えなのね」
「ああ、そうだ。クレハ・レイヴァ―ス」
もはや道が交わることはないと、きっぱり言い切る。
少しかわいそうな気もするが、こういう生き方しか陣にはできないのだ。ゆえに今一度、決別の言葉を伝えたのだ。
「――わかった。じゃあ、これで完全に決別ね。レイヴァースは星詠みという禁忌に、手を伸ばす者たちを許さない。レーヴェンガルトであろうと、神代であろうと。ええ、たとえかつての幼馴染であろうともね」
クレハの万感の思いを込めた宣言。そこには彼女の譲れない信念の炎が垣間見れた。ただどこか悲しさのようなものが影を落としていたが。
「ははは、それでこそオレの好きなクレハだよ。正義観が強く、どこまでもまっすぐな女の子だ」
「す、好き!? ななな、なにを言って!?」
陣の素直な感想に、クレハは顔を真っ赤にしながら取り乱し始める。
「もちろんラブじゃなく、ライクのほうのな」
「――じ、陣ー! せっかくかっこよく決めてたのにー!」
クレハはからかわれたことで、悔しそうに抗議を。
少しいつもの彼女に戻ったところで、陣は話をまとめることにした。
「ははは、話はこれでおわりだな。今度会う時、クレハはレイヴァース側の大将。オレは神代のお姫様につく付き人。お互い敵同士だから、どちらが勝っても恨みっこなしってな」
「ふん、望むところよ。――でも、まあ、ここまで言っておいてなんだけど、陣はまだ創星術師じゃない。だから要注意人物ってだけで、必ずしも仕留めにいかなくてもいいのよね。今はまだ……」
「おい、きれいにしめてやったのに、まだこの話を続けるのか?」
腐れ縁の幼馴染とあって、あまり彼女の悲痛げな顔は見たくないのだ。なのでさっさと話を切り上げたいのだが、クレハはまだなにか言いたそうであった。
「これで最後だから心して聞きなさい。クレハ・レイヴァースから、幼馴染の陣に対する一生のお願いよ。そうやって魔道を求めるのはいい。だけど創星術師だけにはならないで。それさえ守ってくれれば、ワタシは大切な幼馴染を討たなくて済むんだから……」
クレハは胸をぎゅっと押さえながら、切実にうったえてきた。
「――クレハ……」
「わかってる。どうせ陣がこの願いを聞き届けてくれないことは……。でも、言わずにはいられなかったの……。――ふぅ、話に付き合ってくれてありがと、陣。ワタシはもう帰るから、灯里が戻って来たらよろしく伝えといて」
クレハは言いたいことが言えて満足したのか、この場を去っていく。
そんな彼女の後ろ姿を、陣はただだまって見つめるしかないのであった。
「――創星術師にならないでか……」
陣は帰りしなに、ぽつりと夕暮れの空に向かってつぶやいた。
あれから灯里と合流し、そのまま解散の流れに。よって今陣は帰宅の途中である。しかし本来なら真っ直ぐに帰るのだが、今はどこか遠回りしたい気分。なので今日のことをしみじみと思い返しながら、がらにもなく感慨にふけって人通りが少ない道を歩いていた。
「もしその願いを聞き届けたら、オレはクレハや灯里たちと本当になにげない学園生活を送れるのかもな……」
もしもの未来を想像して、思わず笑ってしまう。
不思議とあの灯里がいれば、退屈しない日々が過ごせそうな気がするのだ。しかも心のどこかで、それも悪くないかもしれないと思う自分がいた。
「ふふっ、ようやく見つけたんだよ。キミこそわたしの手をとるにふさわしい」
物思いにふけっていると、ふと見知らぬ少女の声が聞こえた。
振り向くと、そこには十歳ぐらいだろうか。長い銀色の髪の、白いワンピースに身を包んだ少女が。
「ッ!?」
「ねぇ、キミはこの世界の最果てに行きたくないかな?」
銀髪の少女は陣に手を差し出し、意味ありげなまなざしを向けてくる。
だが今の陣にはそんな言葉どうでもよかった。なぜなら気付いてしまったのだ。彼女こそ四条陣が求めていたものであると。
「――やっと見つけた……、オレの輝き……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる