創星のレクイエム

有永 ナギサ

文字の大きさ
34 / 114
1章 第3部 運命の出会い

34話 謎の少女との出会い

しおりを挟む

 時刻は午後十四時ごろで、空はみ切った青空が広がっている。
 灯里やクレハと過ごしたのが昨日であり、現在陣は海沿いの道を一人で歩いているところ。ここは工場地帯に近く、大きな店もとくにないため人通りが少ない。辺りは波の音が響き渡るだけであり、なにか考え事をしながら歩くのにはなかなか最適な場所であった。今のところとくに仕事など予定は入っておらず、完全にフリーの状態。そんな中陣はじっとしていられなかったため、こうやって外をぶらついているのであった。

「ダメだ。落ち着かない。ははは、これは昨日のあれが原因なんだろうな」

 陣は歩みを止めないまま、昨日の灯里たちと別れたあとの出来事を思い返していく。






 夕日が沈みかけている中、陣は人通りの少ない路地裏の奥へと進んでいた。
 突然現れた謎の銀髪の少女であったが、話しかけようとした瞬間ふと消えてしまったのだ。ただその時感じた並々ならぬ気配が、足跡のように路地裏の奥へと続いていたのである。まるで陣を誘いこんでいるかのように。

「ふふっ、やっぱり来ちゃうんだ。ほんと、キミは面白い男の子だね」

 あとを追っていると、少し開けたところに出た。
 するとそこには先程の銀髪の少女が。歳はやはり十歳ぐらいだろうか。透き通るような長い銀色の髪で、白いワンピースに身を包んでいる。非常にかわいらしい顔立ちの女の子だが、どこかはかなげそうな雰囲気を感じられた。

「オレを呼んだのはあんたか?」
「うーんと、そうだねー。確かにキミに興味がいて誘う形になったけど、実際のところはその逆。ジンくんがわたしを呼んでいたから、会いに来たって感じかな?」

 少女はアゴに手を当てながらかわいらしく首をかしげ、意味ありげな言葉を口にする。

「オレがだと? 何者だあんた?」
「ふふっ、とりあえず今は、通りすがりの占い師とでも言っておこうかな? リルって呼んでくれたらいいよ」

 少女はリルと名乗り、いたずらっぽくほほえんでくる。

「ははは、胡散臭さ満天だな。それでその占い師様がなんのようだ? 変な宗教の勧誘とかならお断りだぞ?」
「信じてないなー。なら、その証拠を見せてあげるんだよ」

 リルは陣の上着を両手でぎゅっとにぎりしめながら、まっすぐに見つめてくる。
 まるでこちらの瞳の奥から、四条しじょう陣のすべてを見透かすように。

「ジンくんは力が欲しいんだよね。そのかわきをうるおすことができるほどの、常識では計り知れないなにかを……」
「ッ!?」
「ふふっ、図星かな? ジンくんは普通の人々が見てる世界のさらに向こう。本来観測できない裏側が見えてしまってる。だから常識にとらわれた程度の力では満足できない。求めるのは自身の身を焦がし、滅ぼすかもしれないぐらい強大な力の源泉。そう、まさに世界の真理そのものだよね?」

 自分のすべてを見透かされていることに、軽く恐怖を覚えてしまう。もちろん彼女とは初めて会ったばかり。ゆえにリルは陣のことを知るよしもないはずなのだが、ここまで正確にこちらの心情を読み取ってしまうとは。
 もはやただ者ではないリルに、陣は臨戦態勢を。

「もう一度、問う? あんたは何者だ? 返答次第では、ただじゃ済まさないぞ」
「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。わたしはジンくんの敵じゃない。むしろ味方であり、キミが求める答えそのものだよ」

 するとリルは陣から数歩離れ、迎えるように両腕を広げながらほほえみかけてきた。
 彼女の言う通り敵意や、はめようとする策略めいたものがなにひとつ感じられない。ただ陣を気にかける、慈愛のようなものだけだ。どうやら害はなさそうなので、とりあえず警戒を解くことに。

「――はぁ……、わかった。相変わらず怪しさは半端ないが、嘘を付いてる気配はないしその言葉を信じてやるよ。たとえなにか企んでいたとしても、こんないかにもぼけーとしたトロそうなガキに、遅れをとるとは思えないしな」
「このミステリアスさあふれるわたしの、どこからそんなイメージが出てくるのかな!?」

 陣の素直な感想に、リルは目を丸くし腕をブンブン振りながら抗議を。
 この状況も相まって、彼女から出るミステリアスさは本物。だがそれ以上にリルからにじみ出るゆるふわ感が半端ないのだ。

「そうか? こうしてリルを改めて観察してみると、抜けてる感じがにじみ出てるぞ。どことなく残念属性というものがな」
「ちょっと、ジンくん、お姉さんに向かって失礼じゃないかな!? たとえ見抜いていたとしても、そこは言わない優しさをだね!?」
「ははは、背伸びしたい気持ちはわかるが、年齢的に少し無理があるぞ。お嬢ちゃん」

 リルの頭にポンポンと手を置き、笑ってさとしてやる。
 かわいらしい少女の背伸びはほほえましく話を合わせてやりたくもなるが、さすがに年齢的に厳しいだろう。

「年下じゃないもん! これでも一つ年上!」

 むねにバッと手を当て、涙目でうったえてくるリル。

「いやいや、冗談も休み休み言えよ。こんなちんちくりんなガキが、オレより年上だって? ははは、ありえないな」
「この外見にはわけがあるんだもん! 本当は大人びた、はかなげふうの美少女なんだからー!」

 リルは陣の上着を両手でぎゅっとつかみ、ぴょんぴょん飛び跳ねながらくい下がってくる。
 なんだかその光景は彼女の愛くるしい外見から、あまりにほほえましく感じてしまう。だが今思うとそんな話、陣にとってはどうでもよかったことに気付いた。なのでさっさと話を進めていくことに。

「あー、はいはい、お姉さんぶってる子供とかそんなのどうでもいいから、それよりさっきの話の続きをだな」
「――ど、どうでもいいって……。――はぁ……、ジンくんのあまりの容赦なさに、心が折れそうだよ……。これは少しあの件を考え直した方が……。あれ?」

 リルはショックのあまり、がっくりうなだれる。だがすぐになにかに気付いたのか、陣とは別の方を向き始めた。

「どうした?」
「えっとね、そろそろお別れの時間みたいなんだよ。思ってたより、止まっていてくれなかったようだから。そういうことでバイバイ、ジンくん」

 なにやら別れを告げ、リルは後ろを振り向こうとする。
 おそらくこのままだと、さっきのように姿を消してしまうだろう。ゆえにすぐさま呼び止めた。

「おい、待て。まだ話はおわってないぞ!」
「大丈夫、ジンくんがわたしを求める限り、きっと運命はわたしたちをむすび合わせてくれるんだよ。そして願わくは、キミが彼女のもとにたどり着き、すべての決着をつけるまでにいたってほしい。わたしのマスターとして、ね……」

 リルはいのるように手を組み、慈愛に満ちた瞳を向けて伝えてくる。まるで心からの願いと言いたげに、万感の思いを込めてだ。

「ッ!?」

 次の瞬間ふと強い風が。それにより一瞬リルから視線を外してしまう。

「――いない……、か……」

 再び目を開けると、そこにリルの姿は消えているのであった。
 







「結局、あいつはなんだったんだ? オレにあそこまで興味をいだかせるだなんて……」

 陣は昨日出会ったリルのことを考えながら、歩みを進めていた。
 彼女はどこからどう見ても、ただ者ではない。そもそも陣の直観が告げているのだ。リルこそ求め続けた答えなのかもしれないと。

「まあ、もう一度会って、確かめればいいか。そのためにわざわざこうやって、探し回ってるんだから」

 実は陣が歩き回っているのは、リルにもう一度会うためといっていい。
 もちろん、当てはなかった。だがそれでも、会わなければならない気がして止まないのだ。心が、たましいが彼女を求めて仕方がないゆえに。

「――まったく……、なんとなく、いるような気がして足を運んでみたんだが……」

 ただ自分の勘だけを頼りに歩き回っていると、前方に海を眺める銀色の髪の小さな少女の姿が。

「ははは、まさか本当にいるとはな。これは運命か、それとも前回と同じで誘われたか……。まっ、どっちでもいいか。今度こそ、その正体を見きわめてやる」

 こうして陣は、再びリルに話しかけに行くのであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...