創星のレクイエム

有永 ナギサ

文字の大きさ
38 / 114
1章 第3部 運命の出会い

38話 陣の妹

しおりを挟む
「ところで陣兄さん、この方はお知り合いですか?」

 ふと、いろはが隣にいる灯里について、興味津々とたずねてくる。

「まあな。つい先日知り合ったんだ」
「ほう、先日とは。短い間にここまで仲良くなっているなんて、さすが陣兄さん。相変わらず女の子の扱いがうまいようですね」

 いろははジト目で、なにやら人聞きの悪いことを主張しだす。

「なんだその眼は?」
「いえいえ、別になんでもありませんよ。陣兄さんの手の早さに感心しているだけです。奈月さんや琴音ことねさんといった神代方々とも、ずいぶん仲良くしているみたいですしね」

 やれやれ肩をすくめながら、少しとげのある口調で告げてくるいろは。

「わーお! もしかして私、陣くんにてごめにされてるのかなー! このままだとお持ち帰りされちゃう? キャー」

 するとやっかいなことに、灯里がこの話題に乗ってくる。彼女は口元を両手で押さえながらいたずらっぽく笑って、黄色い声をあげてきた。

「おい、お前ら、なに人聞きの悪いこと言ってるんだ。バカのこと言ってないで、適当にあいさつでもしとけ」
「はーい。では改めまして、どもどもー! 陣くんの親友である、水無瀬みなせ灯里あかりだよー!」

 灯里は手を上げながら、明るく元気いっぱいにあいさつを。

「私は四条しじょういろはです」
「セナは蓮杖れんじょうセナって言うんだぁ! よろしくねぇ、あかりさん!」

 いろはは礼儀正しくお辞儀して。セナは灯里に負けないくらい元気に自己紹介する。

「うんうん、よろしくー! いろはちゃん、セナちゃん! ところで気になってたんだけど、二人って陣くんの妹さん?」
「セナは妹じゃなくて、じんお兄ちゃんの幼馴染だよぉ!」

 セナは陣の腕をつかみながら、得意げに宣言を。

「セナに関しては、小さいころからいろはと一緒に面倒みてやってたから、兄のように慕われてるな。問題は慕われすぎてるせいか、あこがれの対象になっててオレの影響をもろに受けてるんだよな、これが。な、セナ」
「うん! その通り! 必ずセナはじんお兄ちゃんみたいな、かっこいいエージェントになってみせるんだぁ!」

 両手をぐっとにぎりしめながら、ぴょんぴょん飛び跳ねるセナ。その姿はまるで小さな子供が、将来の夢を抱くように輝いていたといっていい。

「うわー、セナちゃん、なんてきれいなまなざしを。陣くん、すごいね! ここまであこがれられてて! まあ、じゃっかんセナちゃんの教育にわるいような気もするけど」
「オレもできれば止めたいんだが、セナの頑固さは筋金入りなんだよな、ははは……。――でだ、妹の方はこっちのいろはだ」

 苦笑しながら、灯里の意見に同意せざるを得ない。そして後ろからいろはの肩に手を置き、改めて彼女に紹介してやる。 

「どうも、陣兄さんの妹です」
「いろはちゃんが陣くんの妹かー。あはは、なんだかすごくしっかりしたご令嬢さんぽいんだけど、本当に陣くんの妹さん?」

 灯里はほおに指を当てながら、うーんと小首をかしげた。

「まあ、疑うのも無理はない。たぶんいい加減すぎる兄が反面教師になったのか、こんなしっかり者の妹に育ったんだよな。文武両道、さらには真面目でみんなに頼られる星海ほしみ学園中等部、生徒会長。それがいろはだ」

 うんうんと腕を組み、誇らしげにかたる。
 もはや灯里の意見はもっともだ。破天荒すぎる陣と違って、灯里はまさに優等生タイプ。しかも優秀な生徒会長として、星海学園中等部では慕われているのだ。なので本当に兄妹なのかとよく聞かれることがあるのであった。

「そんな感じしてたけど、ほんとにすごい子だった!?」
「なにをいいますか。陣兄さんは立派なお方ですよ。なんでもできて、頼りになる、まさに私が一番尊敬する人物なんですから」

 いろはは胸に手を当てながら、陣に負けじと称賛の言葉を。
 そこにはお世辞などまったくなく、心から陣のことを尊敬しているのがよくわかった。

「おまけにこんなにも兄想い。泣けてくるほどよくできた妹だ。家がらみをすべて押し付けて、本来なら恨まれててもおかしくはないというのに」

 いろはの頭をやさしくなでながら、しみじみと本音をもらす。

「ふふふ、私は兄さんの味方ですよ。まあ、とはいってもさすがに次期当主の立場がありますから、面と向かって四条家の顔にどろを塗ることはできません。ですがばれない程度なら、喜んで力を貸させてもらいます」

 いろはは凛としたおもむきで、頼もしい宣言をしてくれる。

「ははは、気持ちだけ受け取っておくぜ。もう、次期当主の件を押し付けてしまってるんだから、これ以上迷惑かけるわけにはいかないさ。第一、妹に助けをこうほど、落ちぶれていないしな」

 だが陣は笑い飛ばしながらも、断りを入れておいた。
 いろはには四条家次期当主の立場があるため、さすがに無理をさすわけにはいかないのだ。

「――むう、私としては、陣兄さんに頼ってもらった方がうれしいのですが……」

 するといろははどこか子供っぽくすねだす。
 もっともっと力になりたくてしかたがないみたいだ。

「あはは、なにはともあれ、ステキな子たちと知りあえて灯里さんうれしいなー! えっと、二人はこれから街を満喫するんでしょ? それなら私たちも混ぜてもらっていい?」

 そんなやり取りをしていると、灯里がさぞご満悦の様子で話を進めだした。

「もちろん、いいよぉ! セナ、あかりさんと仲よくなりたい!」
「はい、大歓迎です」
「おーい、盛り上がってるところわるいが、灯里。お前、用事があるんじゃなかったのか?」

 二人に歓迎されている中、陣は正論を口に。

「え? そういえば、そうだった……。でも、せっかくだから、ここは二人と交友を!」
「さ、行くぞ。オレを巻き込んだからには、最後まで果たしてもらわないと。正直、気になるし。そういうことだからまた今度な、セナ、いろは」

 開き直ろうとする灯里の意見を、問答無用で却下した。陣としてはセナやいろはと遊ぶより、今追っている事件の方が興味があるのだから。
 ゆえに灯里をズルズル引っ張りながら、セナ達に別れを告げてこの場を立ち去ろうと。

「えー!? そんなー!?」

 そして灯里はセナたちに手を伸ばしながらも、陣に引きずられていくのであった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...