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1章 第3部 運命の出会い
38話 陣の妹
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「ところで陣兄さん、この方はお知り合いですか?」
ふと、いろはが隣にいる灯里について、興味津々とたずねてくる。
「まあな。つい先日知り合ったんだ」
「ほう、先日とは。短い間にここまで仲良くなっているなんて、さすが陣兄さん。相変わらず女の子の扱いがうまいようですね」
いろははジト目で、なにやら人聞きの悪いことを主張しだす。
「なんだその眼は?」
「いえいえ、別になんでもありませんよ。陣兄さんの手の早さに感心しているだけです。奈月さんや琴音さんといった神代方々とも、ずいぶん仲良くしているみたいですしね」
やれやれ肩をすくめながら、少しとげのある口調で告げてくるいろは。
「わーお! もしかして私、陣くんにてごめにされてるのかなー! このままだとお持ち帰りされちゃう? キャー」
するとやっかいなことに、灯里がこの話題に乗ってくる。彼女は口元を両手で押さえながらいたずらっぽく笑って、黄色い声をあげてきた。
「おい、お前ら、なに人聞きの悪いこと言ってるんだ。バカのこと言ってないで、適当にあいさつでもしとけ」
「はーい。では改めまして、どもどもー! 陣くんの親友である、水無瀬灯里だよー!」
灯里は手を上げながら、明るく元気いっぱいにあいさつを。
「私は四条いろはです」
「セナは蓮杖セナって言うんだぁ! よろしくねぇ、あかりさん!」
いろはは礼儀正しくお辞儀して。セナは灯里に負けないくらい元気に自己紹介する。
「うんうん、よろしくー! いろはちゃん、セナちゃん! ところで気になってたんだけど、二人って陣くんの妹さん?」
「セナは妹じゃなくて、じんお兄ちゃんの幼馴染だよぉ!」
セナは陣の腕をつかみながら、得意げに宣言を。
「セナに関しては、小さいころからいろはと一緒に面倒みてやってたから、兄のように慕われてるな。問題は慕われすぎてるせいか、あこがれの対象になっててオレの影響をもろに受けてるんだよな、これが。な、セナ」
「うん! その通り! 必ずセナはじんお兄ちゃんみたいな、かっこいいエージェントになってみせるんだぁ!」
両手をぐっとにぎりしめながら、ぴょんぴょん飛び跳ねるセナ。その姿はまるで小さな子供が、将来の夢を抱くように輝いていたといっていい。
「うわー、セナちゃん、なんてきれいなまなざしを。陣くん、すごいね! ここまであこがれられてて! まあ、じゃっかんセナちゃんの教育にわるいような気もするけど」
「オレもできれば止めたいんだが、セナの頑固さは筋金入りなんだよな、ははは……。――でだ、妹の方はこっちのいろはだ」
苦笑しながら、灯里の意見に同意せざるを得ない。そして後ろからいろはの肩に手を置き、改めて彼女に紹介してやる。
「どうも、陣兄さんの妹です」
「いろはちゃんが陣くんの妹かー。あはは、なんだかすごくしっかりしたご令嬢さんぽいんだけど、本当に陣くんの妹さん?」
灯里はほおに指を当てながら、うーんと小首をかしげた。
「まあ、疑うのも無理はない。たぶんいい加減すぎる兄が反面教師になったのか、こんなしっかり者の妹に育ったんだよな。文武両道、さらには真面目でみんなに頼られる星海学園中等部、生徒会長。それがいろはだ」
うんうんと腕を組み、誇らしげにかたる。
もはや灯里の意見はもっともだ。破天荒すぎる陣と違って、灯里はまさに優等生タイプ。しかも優秀な生徒会長として、星海学園中等部では慕われているのだ。なので本当に兄妹なのかとよく聞かれることがあるのであった。
「そんな感じしてたけど、ほんとにすごい子だった!?」
「なにをいいますか。陣兄さんは立派なお方ですよ。なんでもできて、頼りになる、まさに私が一番尊敬する人物なんですから」
いろはは胸に手を当てながら、陣に負けじと称賛の言葉を。
そこにはお世辞などまったくなく、心から陣のことを尊敬しているのがよくわかった。
「おまけにこんなにも兄想い。泣けてくるほどよくできた妹だ。家がらみをすべて押し付けて、本来なら恨まれててもおかしくはないというのに」
いろはの頭をやさしくなでながら、しみじみと本音をもらす。
「ふふふ、私は兄さんの味方ですよ。まあ、とはいってもさすがに次期当主の立場がありますから、面と向かって四条家の顔に泥を塗ることはできません。ですがばれない程度なら、喜んで力を貸させてもらいます」
いろはは凛とした趣で、頼もしい宣言をしてくれる。
「ははは、気持ちだけ受け取っておくぜ。もう、次期当主の件を押し付けてしまってるんだから、これ以上迷惑かけるわけにはいかないさ。第一、妹に助けをこうほど、落ちぶれていないしな」
だが陣は笑い飛ばしながらも、断りを入れておいた。
いろはには四条家次期当主の立場があるため、さすがに無理をさすわけにはいかないのだ。
「――むう、私としては、陣兄さんに頼ってもらった方がうれしいのですが……」
するといろははどこか子供っぽくすねだす。
もっともっと力になりたくてしかたがないみたいだ。
「あはは、なにはともあれ、ステキな子たちと知りあえて灯里さんうれしいなー! えっと、二人はこれから街を満喫するんでしょ? それなら私たちも混ぜてもらっていい?」
そんなやり取りをしていると、灯里がさぞご満悦の様子で話を進めだした。
「もちろん、いいよぉ! セナ、あかりさんと仲よくなりたい!」
「はい、大歓迎です」
「おーい、盛り上がってるところわるいが、灯里。お前、用事があるんじゃなかったのか?」
二人に歓迎されている中、陣は正論を口に。
「え? そういえば、そうだった……。でも、せっかくだから、ここは二人と交友を!」
「さ、行くぞ。オレを巻き込んだからには、最後まで果たしてもらわないと。正直、気になるし。そういうことだからまた今度な、セナ、いろは」
開き直ろうとする灯里の意見を、問答無用で却下した。陣としてはセナやいろはと遊ぶより、今追っている事件の方が興味があるのだから。
ゆえに灯里をズルズル引っ張りながら、セナ達に別れを告げてこの場を立ち去ろうと。
「えー!? そんなー!?」
そして灯里はセナたちに手を伸ばしながらも、陣に引きずられていくのであった。
ふと、いろはが隣にいる灯里について、興味津々とたずねてくる。
「まあな。つい先日知り合ったんだ」
「ほう、先日とは。短い間にここまで仲良くなっているなんて、さすが陣兄さん。相変わらず女の子の扱いがうまいようですね」
いろははジト目で、なにやら人聞きの悪いことを主張しだす。
「なんだその眼は?」
「いえいえ、別になんでもありませんよ。陣兄さんの手の早さに感心しているだけです。奈月さんや琴音さんといった神代方々とも、ずいぶん仲良くしているみたいですしね」
やれやれ肩をすくめながら、少しとげのある口調で告げてくるいろは。
「わーお! もしかして私、陣くんにてごめにされてるのかなー! このままだとお持ち帰りされちゃう? キャー」
するとやっかいなことに、灯里がこの話題に乗ってくる。彼女は口元を両手で押さえながらいたずらっぽく笑って、黄色い声をあげてきた。
「おい、お前ら、なに人聞きの悪いこと言ってるんだ。バカのこと言ってないで、適当にあいさつでもしとけ」
「はーい。では改めまして、どもどもー! 陣くんの親友である、水無瀬灯里だよー!」
灯里は手を上げながら、明るく元気いっぱいにあいさつを。
「私は四条いろはです」
「セナは蓮杖セナって言うんだぁ! よろしくねぇ、あかりさん!」
いろはは礼儀正しくお辞儀して。セナは灯里に負けないくらい元気に自己紹介する。
「うんうん、よろしくー! いろはちゃん、セナちゃん! ところで気になってたんだけど、二人って陣くんの妹さん?」
「セナは妹じゃなくて、じんお兄ちゃんの幼馴染だよぉ!」
セナは陣の腕をつかみながら、得意げに宣言を。
「セナに関しては、小さいころからいろはと一緒に面倒みてやってたから、兄のように慕われてるな。問題は慕われすぎてるせいか、あこがれの対象になっててオレの影響をもろに受けてるんだよな、これが。な、セナ」
「うん! その通り! 必ずセナはじんお兄ちゃんみたいな、かっこいいエージェントになってみせるんだぁ!」
両手をぐっとにぎりしめながら、ぴょんぴょん飛び跳ねるセナ。その姿はまるで小さな子供が、将来の夢を抱くように輝いていたといっていい。
「うわー、セナちゃん、なんてきれいなまなざしを。陣くん、すごいね! ここまであこがれられてて! まあ、じゃっかんセナちゃんの教育にわるいような気もするけど」
「オレもできれば止めたいんだが、セナの頑固さは筋金入りなんだよな、ははは……。――でだ、妹の方はこっちのいろはだ」
苦笑しながら、灯里の意見に同意せざるを得ない。そして後ろからいろはの肩に手を置き、改めて彼女に紹介してやる。
「どうも、陣兄さんの妹です」
「いろはちゃんが陣くんの妹かー。あはは、なんだかすごくしっかりしたご令嬢さんぽいんだけど、本当に陣くんの妹さん?」
灯里はほおに指を当てながら、うーんと小首をかしげた。
「まあ、疑うのも無理はない。たぶんいい加減すぎる兄が反面教師になったのか、こんなしっかり者の妹に育ったんだよな。文武両道、さらには真面目でみんなに頼られる星海学園中等部、生徒会長。それがいろはだ」
うんうんと腕を組み、誇らしげにかたる。
もはや灯里の意見はもっともだ。破天荒すぎる陣と違って、灯里はまさに優等生タイプ。しかも優秀な生徒会長として、星海学園中等部では慕われているのだ。なので本当に兄妹なのかとよく聞かれることがあるのであった。
「そんな感じしてたけど、ほんとにすごい子だった!?」
「なにをいいますか。陣兄さんは立派なお方ですよ。なんでもできて、頼りになる、まさに私が一番尊敬する人物なんですから」
いろはは胸に手を当てながら、陣に負けじと称賛の言葉を。
そこにはお世辞などまったくなく、心から陣のことを尊敬しているのがよくわかった。
「おまけにこんなにも兄想い。泣けてくるほどよくできた妹だ。家がらみをすべて押し付けて、本来なら恨まれててもおかしくはないというのに」
いろはの頭をやさしくなでながら、しみじみと本音をもらす。
「ふふふ、私は兄さんの味方ですよ。まあ、とはいってもさすがに次期当主の立場がありますから、面と向かって四条家の顔に泥を塗ることはできません。ですがばれない程度なら、喜んで力を貸させてもらいます」
いろはは凛とした趣で、頼もしい宣言をしてくれる。
「ははは、気持ちだけ受け取っておくぜ。もう、次期当主の件を押し付けてしまってるんだから、これ以上迷惑かけるわけにはいかないさ。第一、妹に助けをこうほど、落ちぶれていないしな」
だが陣は笑い飛ばしながらも、断りを入れておいた。
いろはには四条家次期当主の立場があるため、さすがに無理をさすわけにはいかないのだ。
「――むう、私としては、陣兄さんに頼ってもらった方がうれしいのですが……」
するといろははどこか子供っぽくすねだす。
もっともっと力になりたくてしかたがないみたいだ。
「あはは、なにはともあれ、ステキな子たちと知りあえて灯里さんうれしいなー! えっと、二人はこれから街を満喫するんでしょ? それなら私たちも混ぜてもらっていい?」
そんなやり取りをしていると、灯里がさぞご満悦の様子で話を進めだした。
「もちろん、いいよぉ! セナ、あかりさんと仲よくなりたい!」
「はい、大歓迎です」
「おーい、盛り上がってるところわるいが、灯里。お前、用事があるんじゃなかったのか?」
二人に歓迎されている中、陣は正論を口に。
「え? そういえば、そうだった……。でも、せっかくだから、ここは二人と交友を!」
「さ、行くぞ。オレを巻き込んだからには、最後まで果たしてもらわないと。正直、気になるし。そういうことだからまた今度な、セナ、いろは」
開き直ろうとする灯里の意見を、問答無用で却下した。陣としてはセナやいろはと遊ぶより、今追っている事件の方が興味があるのだから。
ゆえに灯里をズルズル引っ張りながら、セナ達に別れを告げてこの場を立ち去ろうと。
「えー!? そんなー!?」
そして灯里はセナたちに手を伸ばしながらも、陣に引きずられていくのであった。
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