創星のレクイエム

有永 ナギサ

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1章 第3部 運命の出会い

37話 仲良しコンビ

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「なあ、灯里、さっきの話、本当なのかよ」

 陣はふと灯里あかりに問うた。
 現在灯里と共に、街中をぶらぶら歩いているところ。というのも先程灯里の頼みを聞き入れ、彼女に付き合ってあげている真っ最中なのだ。

「もっちろん! 今この神代かみしろ特区で、よからぬ事が起ころうとしてるの! だから勇者である灯里さんが、なんとかしようと奮闘してるのだよ!」

 灯里はむねをどんっとたたき、どこか芝居しばいがかったように事情をかたる。
 彼女いわくこの上代特区でなにかが起こっているとのこと。そのため先程、陣にこの件の調査を手伝ってくれないかとお願いしてきたというわけだ。今日に関しては仕事の依頼もなく、ちょうどヒマしていたところ。そこになにやら面白そうな話が飛び込んできたため、灯里に付き合ってやることにしたのである。

「それはご苦労なことで。だげど手掛かりがなく、ただぶらぶら歩いてるだけって。もしヒマじゃなければ、こんなこと付き合ってられないぞ」

 ただ今のところ、具体的なことはなに一つ教えてもらっていない。しかも目的地もなく辺りを適当に歩いているだけときた。なので陣としては正直飽きてきたといってよかった。

「あはは、陣くん! なにを言いますか! 灯里さんと街を歩けるってだけで、幸せってもんでしょ?」

 灯里ははずむような足取りで前へ。そしてくるりと回りながら、両腕をバッと横に広げ満面の笑顔を向けてくる。

「――はぁ……、帰ろっかな」
「えー!? そういわずにもう少しだけ付き合ってよー! このままだとすぐ飽きてしまいそうなんだからー!」

 きびすを返そうとすると、灯里が陣の腕をつかんで一生懸命頼み込んできた。

「――いや、飽きるって……、ははは、とんだ勇者様だな」
「だってこれボランティアみたいなもんだしー、正直言ってそこまで乗り気じゃないんだよねー、あはは……」

 陣のツッコミに、視線をそらしながら困った笑みを浮かべる灯里。
 そんなやり取りをしていると、別の声が聞こえてきた。

「陣兄さん?」
「じんお兄ちゃんだぁ!」
「なんだ、いろはとセナか。二人でお出かけか?」

 声の方を振り向くと、そこには二人の少女が。一人は陣の幼馴染であり、妹分の蓮杖れんじょうセナ。そしてもう一人りんとした物腰の、生真面目そうな少女の姿が。彼女こそ正真正銘陣の妹である四条しじょういろはであった。

「そうだよぉ! いろはと一緒に街をぶらついて、遊んでるんだぁ! せっかくの春休みなんだし、お買い物やスイーツめぐりを存分に堪能たんのうしないとねぇ! 目標は春休みがおわるまでに、神代特区の目白押しのお店を攻略し尽くすことだよぉ! ね! いろは!」

 セナは両腕を上げながら、目を輝かせる。
 その姿はもはや遠足を楽しみにして寝れない子供みたいで、実にほほえましかった。

「セナ、同意を求められても、そんな話初耳」
「えっへへ、だって今決めたんだもん! あー、いろはと街巡り、楽しみだなぁ!」

 セナはいろはの手をとり、ブンブン振りながら顔をほころばせる。

「もう、知らない間に行くこと、決定されているんですけど?」

 すると少し困ったようにほほえむいろは。

「えー、もしかしていろは、いかないのぉ?」
「もちろん、行きますよ。だって私が断っても、セナは一人で行くんでしょ? なら面倒を見るため、ついて行かないと」

 不安げに首をかしげるセナに、いろははやれやれといった感じで了承を。

「さっすが、いろは! セナのこと、よくわかってるよぉ。一度決めたことは、貫き通すのがセナの信条だもん!」
「ははは、いろは、セナのお守り任せたぞ。こいつはまさに好奇心の塊。一度興味を示したら、目を輝かせて熱中しだすからな。一人だと絶対道草しまくって、帰ってこなくなるぞ」

 ふふんと得意げに胸を張るセナの頭をポンポンしながら、いろはにたくす。
 そう、セナは小さいころから好奇心が非常に旺盛おうせい。気になることがあると、目を輝かせてのめり込むクセがあるのだ。昔陣たち幼馴染メンバーと遊んでいる時も、よくそうやってはしゃぎ目当てのものに飛びついていたのを思い出す。

「ふふふ、まったく、陣兄さん、だれにものを言ってるんですか? これまでセナの暴れっぷりに、どれだけ付き合ってきたことか。――はぁ……、ほんとセナの疑うことを知らない、無垢むくすぎる性格は考えものですね。そこがセナの美徳でもあるんですが、子供並の好奇心と合わさると危なっかしくて仕方ありません」

 いろははなにを今さらと、不敵な笑みを浮かべさぞ当然のように返してきた。そしてほおに手を当て、まるで保護者のようにセナの身を案じだす。

「えっへへ、いろはには、いつもお世話になりっぱなしだよねぇ。ありがとぉ!」

 するとセナは満面の笑顔で、いろはにぎゅーっと抱きついていった。

「いえいえ、私が好きにやっていることですから。セナは私の大切な幼馴染であり親友。苦に思ったことなんて、一度もありませんよ」

 そんなセナの髪をやさしくなでながら、いとおしげにほほえむいろは。

「ははは、お前らほんと昔から仲がいいよな。学園でも、休日でもほとんど一緒につるんでるし」

 あまりの仲むつまじい二人の姿に、ほほえましい気持ちいっぱいになってしまう。
 彼女たちの付き合いは、きわめて長い。幼馴染として小さいころからずっと一緒にいたのはもちろんのこと、同い年のため学園でも一緒。もはや四六時中つるんでいるイメージが。好奇心旺盛で危なっかしいセナを、しっかり者のいろはがサポートする。そんな仲のいい相性抜群の名コンビといってよかった。

「えっへへ、当然だよぉ! いろはとセナは無二の親友なんだから!」
「ふふふ、そうですね。セナとは切っても切れないきずなで結ばれてますから」

 セナといろは手を取り合い、にっこり笑いあう。

「いやー、仲むつまじくてほほえましいですなー! ということで陣くん、私たちも対抗して仲のよさをアピールしないと! はい、手を取り合って、イエーイ!」

 するとさっきまで陣たちのやり取りを見ていた灯里が、話に加わりだす。そして彼女は陣の手をとり、テンション高く笑いかけてきた。

「――あー、そうだなー、――イエーイ……」
「ちょっとー! なにその見事な棒読みはー?」

 陣の棒読みでの盛り上がりに、灯里はすぐさまツッコミを。

「いやー、オレたちそこまで仲が良かったのかと思ってな」
「うわーん! そりゃないよー! 陣くんー!」

 陣の正論に、灯里は両目をこすりながら悲しさをアピールしてきた。


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