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1章 第4部 契約内容
45話 作戦会議
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時刻は朝方。陣、灯里、リルはサイファス・フォルトナーの擬似恒星を所有する創星術師を追うため、四階建てのテナントビル内にあるシリウスの事務所に集合していた。事務所内は相変わらず物がなく、あるとしても奈月の私物ばかり。ただ最近ではセナがよく来るため、彼女の小物やぬいぐるみといった私物が置かれ始めていた。
「じゃあ、全員集まったところで、作戦会議を始めるぞ」
「えー、堅苦しい話は嫌だなー。ねーねー、昨日みたいに歩き回るのはどう! いろいろ街中を探検できるし、きっと楽しいよ!」
来客用のソファーに座っていた灯里が、足をばたばたさせ主張を。
「却下だ。また脱線する恐れがあるし、なにより手当たり次第探し回るのは効率がわるい。だからほかの手を打つべきだろ? ということでまず今回のターゲットの情報を、まとめるとしよう。まずは昨日のクレハから得た情報だ」
そんな灯里の意見を切り捨て、陣は話を進めた。
実は昨日クレハと別れる時、少し話を聞いていたのである。よってまずはそこから分析し、例の創星術師のアプローチを考えることに。
「えっと、クレハさんが言うには、街を歩いてるところで星詠みの余波を感知。それを追ってあの場所まで来たらしいね」
灯里の隣に座っていたリルが、昨日得た情報をおさらいしてくれる。
「ああ、その間、挑発してるのか戦意をむき出しだったらしいな。このことから考えられるのは、主に二つ。まず一つはターゲットが魔道の求道のため、戦いたかったということだな」
「はーい、陣くん。戦うのと、魔道の求道は関係があるの?」
灯里は手を上げながら質問を。
「大ありだ。創星術師が自身の星を強化するのに手っ取り早いのは、実際に星詠みを使って戦うこと。その力を限界まで行使することで、星は成長し輝きを増していくんだ。だから創星術師には闘争を好み、強者と戦うことに明け暮れる物騒な連中もいる。なんたってリスクは大きいが、その分の飛躍は計り知れないからな」
魔道の求道において、闘争は非常に重要なファクター。人と同じく星もまた戦うことで研ぎ澄まされ、成長していくのである。そのため魔道を求道する者はみずからほかの創星術師がいるであろう、ロストポイントなどに向かい戦いを仕掛けるのはよくある話だ。危険な方法だが死力を尽くすことで現状の限界を超え、星をさらなる高みへと進化させることが可能ゆえに。なので圧倒的強者である断罪者を狙ったり、名の知れた創星術師に決闘を挑んだりすることもわりと起こり得るのだ。創星術師の多くは自身の命より、魔道の求道を優先するがために。
よって今回クレハを狙ったのも、さらなる闘争を求めて挑んだ可能性が浮上するのだ。
「へえ、そんな方法があるんだー」
「でだ、ターゲットはこのタイプの可能性が高いんだが、一つ気がかりなことがある。今回、狙ったのがレイヴァース当主だったという事実だ。相手は星葬機構のトップ。そんな大物に手を出せばどうなるかなんて、考えなくてもわかるだろ?」
武力行使を許された魔法使いや、創星使い。さらには猟犬である断罪者。星葬機構のトップに手をだしたとなれば、彼らが一斉に押し寄せてくるといっても過言ではない。たとえそれが魔道の求道のためだったとしても、そこから応じるリスクは計り知れないだろう。もはや自殺行為といってもいいほどである。
「名を知らしめたかったバカか、ただ単に知らなかっただけなのか。それとも……」
「あえてクレハさんを狙ったかだね」
陣の言いたかったことを、リルが意味ありげに続けた。
「そうだ。となるとこの件、ただのサイファス・フォルトナーの擬似恒星どころの話じゃなくなる。下手すると戦争の引き金を引く、大事件に発展するかもしれないぞ」
「え? 陣くん、それどういうこと?」
灯里はほおに指を当てながら、首をかしげてくる。
「レイヴァース当主にケンカを売る奴なんて、今の世の中そういない。いるとするなら神代。それかかつて世界に混沌をまき散らした、レーヴェンガルトってことになるだろ?」
今は表舞台から姿を消しているが、パラダイスロスト以前に猛威を振るっていた一大勢力、レーヴェンガルト。その戦力は星葬機構やクロノスに匹敵するほど。彼らならば仇敵のレイヴァースの血筋を狙ってもおかしくない。
「レーヴェンガルトってあの?」
「ああ、奴らが関わってるなら、クレハを狙うのもうなずける。世界を自分たちのものにしようと、星葬機構に宣戦布告する気なのかもしれない。最近奴らが再び動き出そうとしてるって情報もあるし、ありえない話じゃないぜ」
先日カーティス神父から、レーヴェンガルト側の情勢を教えてもらったことを思い出す。
なんでも最有力当主候補だった人物が、世界をレーヴェンガルトのものにしようと裏で動き始めているとか。よって最悪今回の件は、その計画の一環という可能性があるのだ。
「できれば外れていてほしい予想だね」
リルは深刻そうに目をふせる。
「ははは、だな。最悪レーヴェンガルト側まで、相手しないといけなくなるんだから。まあ、さすがにこの線はないと思うが、一応調べてみる価値はあるだろ。もし当たってた場合、それはそれでターゲットを追う手掛かりになるはずだし」
「ジンくん、当てはあるのかな?」
「とりあえずその辺にくわしい奴に、一回聞いてみようと思う。あまり気乗りはしないが、ちょうどそれに適した人材に心当たりがあるからな」
今回の騒動がレーヴェンガルト案件なのか調べるため、陣はある人物に連絡を入れることに。
「じゃあ、全員集まったところで、作戦会議を始めるぞ」
「えー、堅苦しい話は嫌だなー。ねーねー、昨日みたいに歩き回るのはどう! いろいろ街中を探検できるし、きっと楽しいよ!」
来客用のソファーに座っていた灯里が、足をばたばたさせ主張を。
「却下だ。また脱線する恐れがあるし、なにより手当たり次第探し回るのは効率がわるい。だからほかの手を打つべきだろ? ということでまず今回のターゲットの情報を、まとめるとしよう。まずは昨日のクレハから得た情報だ」
そんな灯里の意見を切り捨て、陣は話を進めた。
実は昨日クレハと別れる時、少し話を聞いていたのである。よってまずはそこから分析し、例の創星術師のアプローチを考えることに。
「えっと、クレハさんが言うには、街を歩いてるところで星詠みの余波を感知。それを追ってあの場所まで来たらしいね」
灯里の隣に座っていたリルが、昨日得た情報をおさらいしてくれる。
「ああ、その間、挑発してるのか戦意をむき出しだったらしいな。このことから考えられるのは、主に二つ。まず一つはターゲットが魔道の求道のため、戦いたかったということだな」
「はーい、陣くん。戦うのと、魔道の求道は関係があるの?」
灯里は手を上げながら質問を。
「大ありだ。創星術師が自身の星を強化するのに手っ取り早いのは、実際に星詠みを使って戦うこと。その力を限界まで行使することで、星は成長し輝きを増していくんだ。だから創星術師には闘争を好み、強者と戦うことに明け暮れる物騒な連中もいる。なんたってリスクは大きいが、その分の飛躍は計り知れないからな」
魔道の求道において、闘争は非常に重要なファクター。人と同じく星もまた戦うことで研ぎ澄まされ、成長していくのである。そのため魔道を求道する者はみずからほかの創星術師がいるであろう、ロストポイントなどに向かい戦いを仕掛けるのはよくある話だ。危険な方法だが死力を尽くすことで現状の限界を超え、星をさらなる高みへと進化させることが可能ゆえに。なので圧倒的強者である断罪者を狙ったり、名の知れた創星術師に決闘を挑んだりすることもわりと起こり得るのだ。創星術師の多くは自身の命より、魔道の求道を優先するがために。
よって今回クレハを狙ったのも、さらなる闘争を求めて挑んだ可能性が浮上するのだ。
「へえ、そんな方法があるんだー」
「でだ、ターゲットはこのタイプの可能性が高いんだが、一つ気がかりなことがある。今回、狙ったのがレイヴァース当主だったという事実だ。相手は星葬機構のトップ。そんな大物に手を出せばどうなるかなんて、考えなくてもわかるだろ?」
武力行使を許された魔法使いや、創星使い。さらには猟犬である断罪者。星葬機構のトップに手をだしたとなれば、彼らが一斉に押し寄せてくるといっても過言ではない。たとえそれが魔道の求道のためだったとしても、そこから応じるリスクは計り知れないだろう。もはや自殺行為といってもいいほどである。
「名を知らしめたかったバカか、ただ単に知らなかっただけなのか。それとも……」
「あえてクレハさんを狙ったかだね」
陣の言いたかったことを、リルが意味ありげに続けた。
「そうだ。となるとこの件、ただのサイファス・フォルトナーの擬似恒星どころの話じゃなくなる。下手すると戦争の引き金を引く、大事件に発展するかもしれないぞ」
「え? 陣くん、それどういうこと?」
灯里はほおに指を当てながら、首をかしげてくる。
「レイヴァース当主にケンカを売る奴なんて、今の世の中そういない。いるとするなら神代。それかかつて世界に混沌をまき散らした、レーヴェンガルトってことになるだろ?」
今は表舞台から姿を消しているが、パラダイスロスト以前に猛威を振るっていた一大勢力、レーヴェンガルト。その戦力は星葬機構やクロノスに匹敵するほど。彼らならば仇敵のレイヴァースの血筋を狙ってもおかしくない。
「レーヴェンガルトってあの?」
「ああ、奴らが関わってるなら、クレハを狙うのもうなずける。世界を自分たちのものにしようと、星葬機構に宣戦布告する気なのかもしれない。最近奴らが再び動き出そうとしてるって情報もあるし、ありえない話じゃないぜ」
先日カーティス神父から、レーヴェンガルト側の情勢を教えてもらったことを思い出す。
なんでも最有力当主候補だった人物が、世界をレーヴェンガルトのものにしようと裏で動き始めているとか。よって最悪今回の件は、その計画の一環という可能性があるのだ。
「できれば外れていてほしい予想だね」
リルは深刻そうに目をふせる。
「ははは、だな。最悪レーヴェンガルト側まで、相手しないといけなくなるんだから。まあ、さすがにこの線はないと思うが、一応調べてみる価値はあるだろ。もし当たってた場合、それはそれでターゲットを追う手掛かりになるはずだし」
「ジンくん、当てはあるのかな?」
「とりあえずその辺にくわしい奴に、一回聞いてみようと思う。あまり気乗りはしないが、ちょうどそれに適した人材に心当たりがあるからな」
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