創星のレクイエム

有永 ナギサ

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2章 第2部 陽だまりへの誘い

61話 リルの追及

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「奈月、またなにか情報が入ったら、連絡してくれ」
「わかったわ。陣、気をつけてね。」

 クレハとの密会みっかいの帰り道。誰もいない海岸沿いの道を歩きながら、奈月にあれから起こったことの顛末てんまつを報告した。彼女には引き続き情報を集めてもらい、例の創星術師を倒すまでのサポートをお願いしていたのである。
 すると後ろの方で声が。

「あーあ、ほんとにこれでよかったのかなー……」

 視線を移すと、リルがほおにポンポン指を当てながら悩ましそうにぼやいていた。

「なんだ? リル。不服そうだな?」
「当然なんだよ。誰かさんが裏切ってくれたからねー。これでアカリになにかあったら、どうしてくれるのかな?」

 リルはジト目で痛いところを突いてくる。
 すでにリルには取り引きを止めると伝えていた。初めは引きとめてきたが、昨日の一件もあり最後はしぶしぶ納得してくれたのだ。

「ははは、心配するな。やっかいごとは全部オレがどうにかしてやる。リルだって本当は、灯里と一緒にいたいんだろ?」
「――うっ、まぁ、否定はしないんだよ。灯里との日々はすごく新鮮で楽しいし、なんだか普通の女の子になった気分を味わえるから」

 リルは視線をそらしながら、テレくさそうに告白する。
 陣の選択を否定しながらも、やはり本心では灯里との日々を望んでいるようだ。

「なら、ここはオレに任せて、なにげない日常を楽しんどけ」
「うーん、いいのかなー?」
「前にも言ったが、ガキが小難しいこと考えてるんじゃねーよ。面倒事は全部こっちに任せて、ただ無邪気に満喫しとけ」

 首をひねるリルの髪をくしゃくしゃとなで、笑いかける。

「あっ、えへへ、――って、子供じゃないもん! わたしはジンくんよりも、お姉さんなんだからー!」

 目を細めるリルであったが、すぐさま子供扱いされていることに気付き両腕を上げながら抗議を。

「あー、ハイハイ、リルはお姉さん、お姉さん」
「なに!? そのアカリみたいに、仕方なくあやす感じは!?」

 十歳ぐらいの外見のせいで、背伸びしている微笑ましさがぬぐえない。なので適当に相づちをしてしまっていた。

「――はぁ、でもわかった。少し納得がいかない点もあるけど、ここはジンくんに甘えることにするんだよ」

 そして説得のすえ、リルは自分の負けだと折れてくれた。

「それでいい」
「でも、まさかジンくんがこんな選択をするなんて、以外すぎないかな」
「ははは、自分でもびっくりだよ」

 彼女の感想はもっともだろう。なぜなら今だ自分でも、こんな選択をしたことに驚いているのだ。これまで求めていたものより、優先することができたことに。

「すべてはアカリのため?」
「まあな。灯里とは同じ境遇きょうぐうのためか、いろいろ肩入れしちまうんだよな。いうなればもう一人の自分を見ているみたいなか」

 灯里の姿を思い浮かべ、しみじみとかたる。
 自身と同じ境遇の少女ゆえ、他人事とは思えない。強いシンパシーを感じてしまっているのだ。それゆえ無意識に、彼女の力になってやりたくてたまらなかったといっていい。

「だから灯里が目指す道を応援してやりたいし、その叶った未来を見てみたい。オレのあったかもしれない、もう一つの結末を……」

 陣にとって、灯里の選択は尊くもまぶしすぎるもの。内から湧き出るどうしようもないかわきに支配されながらも、それでも陽だまりの日々を求めた少女。それはまさに決められた運命に抗うがごとく。おそらく陣はそんな彼女の答えを、心のどこかでうらやましく思っているのだろう。陣では決して届かない輝きゆえに。だからこそ水無瀬灯里の答えの先に、どんな結末が待っているのか知りたくてたまらないのだ。

「そのためにもオレは、灯里の陽だまりの日常を守ってみせる。そこにリルがいるなら、お前もついでにな」

 リルの頭に手をぽんっと置き、決意を宣言する。

「――ジンくん……」
「ただ今回ばかりは少し力を借りるぞ。灯里から借りた、このリル・フォルトナーの擬似恒星を使わせてもらう。さすがにあの創星術師とやり合うとなると、丸腰はきついからな」

 灯里から借りたロケット式のペンダント。リル・フォルトナーの擬似恒星を手にとる。
このペンダントを改めて観察すると、なにかをはめ込む構造をしており、きれいに装飾された代物であった。
 これは昨日の夜、灯里から渡されたもの。この件が片付くまで貸してくれるとのこと。相手はあのサイファス・フォルトゥーナの擬似恒星を持つ、創星術師。ただの魔法では歯が立たないのは明白ゆえ、対抗策として貸してくれたのだ。 

「うん! 任せてほしいんだよ! わたしも全力でサポートするから!」

 リルは胸をとんっとたたき、力強くほほえんでくる。

「そういえば聞きたかったんだが、リルの星はどういう輝きなんだ?」

 そこでふと疑問が。リル・フォルトナーの星の輝きが、今だわからなかったのである。
 以前使った時はほとんどマナをそそいだだけ。複雑な工程は擬似恒星。リルに任せていたのだ。

「ふふっ、それは秘密なんだよ。もしジンくんがわたしの正式な所有者になってくれれば、教えてあげる」

 リルは陣の上着を両手でぎゅっとにぎり、上目づかいでかわいらしくウィンクしてくる。

「おい、もったいぶらず教えろよ」
「だってわたしの星はかなり確信をついてるからねー。下手するとネタバレどころじゃなくなるし、おいそれ公言するわけにはいかないんだよ」

 陣から離れ、くすくすと意味ありげにほほえむリル。

「だが使うとなると、星の特性を理解しといた方がいいだろ?」

 創星使いの強さは、所有する擬似恒星との同調率も大きく関係してくる。宿やどる星の輝きを理解し、扱う精度を上げる。これによりさらなる出力を、引き出せるようになるのだ。

「マナをそそいでくれたら、わたしがその分全力でやるから大丈夫なんだよ。だからジンくんはなにも心配せずに使えばいい」

 陣の正論に、リルはにっこり笑いかけてくる。

「くっ、取り付く島なしか」
「ふふっ、どうするのかな? わたしとの取り引きを再開する?」

 リルは小首をかしげながら、いじわるっい笑みを浮かべてくる。

「いいさ、いずれ自分でたどり着いてやるから」

 灯里の陽だまりを守るため、その選択は飲みこめない。ゆえにいさぎよくことわりを入れた。

「そっか、残念だね」

 すると断られるのがわかっていたのか、軽く流すリルなのであった。
 
 
 
 
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