創星のレクイエム

有永 ナギサ

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3章 第2部 学園生活の始まり

96話 星海学園のカリュキュラム

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 星海学園の講堂内。現在高等部の入学式が行われており、主役である陣たち一年生は並べられた席に座りながら話を聞いていた。

「最近、学園の中庭や庭園を散歩していると、気持ちのいいポカポカ陽気に思わず笑みがこぼれてしまいますよねー」

 そして今は学園長の春風しおりが演台の方で、あいさつをしている真っ最中だ。
 普通こういった学園長の話は長くて、退屈しがち。しかし栞の話しはとてもゆるふわでほほえましいものばかり。生徒たちはみな癒されていたという。

日向ひなたぼっこしながら、ピクニックやお昼寝したいなーって常々思っちゃいますよ。そういえばこの前、中庭でベンチに座ってたら子ネコがすり寄ってきて」
「学園長、そろそろ」
「ごめんなさい。ついつい話し過ぎちゃいました。ではみなさんの新たな学園生活を楽しんでくださいね。ではここから教頭のカーティス先生から、星海学園のカリュキュラムについてお話してもらいます」

 栞と入れ替わり、カーティスが演台に立つ。
 実は彼、星魔教の神父をしながら、星海学園の教頭の立ち位置でもあるのだ。

「みなさん、おはようございます。教頭のカーティスです。まず星海学園の理念は、優秀な魔法使いを育成し社会に貢献こうけんできる人材を育成すること。ゆえにみなさんには学業と並行して、魔法に理解を深め研究してもらうことになります。この星海学園では、クロノスの全面的なバックアップにより設備が充実しています。さらにカリュキュラムは魔道系をメインとし、個々の伸ばしたい分野のコースを受けることができるのです。まず戦闘訓練コースでは通常科目の護身術の授業とは別に、より高度な戦闘技術や知識をレクチャーし、対魔法戦のウデを磨いてもらいます。なので将来人々を守る職につきたい人向けですね」

 通常科目の護身術の授業に、さらに踏み込むのがこの戦闘訓練コース。戦闘の知識や技術のレクチャーは、軍やロンギヌスで行われている育成カリュキュラムを応用されていて、かなり本格的。演習などもあるらしく、卒業後になると軍やロンギヌスのエリート兵になれるぐらい成長できるのだとか。

「そして次は魔法工学コース。魔法の源であるマナ、さらには魔法工学の技術といったさまざまな専門知識を身につけてもらいます。将来クロノスなどの魔法工学系の仕事に就きたい人向けですね」

 魔法工学とは最先端技術でマナに影響を与え、様々な現象を生み出すこと。エネルギー問題の解決だったり、最近では兵器開発や生活家電などにも応用されてきているという。
 そんな魔法工学コースでは厳選された教材や資料を使い、有名な魔法工学の研究者の講義や研究所への社会見学など。若いころから専門知識に触れ、研究職についたあと即戦力になれることを目的にしているらしい。

「最後に魔道コース。魔法を研究することを目的とし、質の高い資料やデータをもとに魔道の理解をさらに深めていってもらいます。こちらは魔法をより探求したい人、将来どの道に進むかまだ決めてない人向けですね」

 この魔道コースが一番主流であり、内容もほかのコースと比べかなりフランクなものになっている。資料や先達たちのレポートを使い話あったり、実験形式で魔法に触れたり、様々な観点から魔法の見識を深めることを目的としていた。ちなみに授業の中では星詠みにも触れ、ひそかに創星術師へ誘導とかもしてるとか。

「これらのカリュキュラムのほかにこの学園には、多くの先達者やこの学園の先輩たちが残した資料、研究成果などを閲覧できる魔道図書館もあり、みなさんに多くの恩恵を与えることでしょう」

 星海学園には図書室とは別で、魔道図書館という大きな建物が造られている。ここには魔道に関する教材や文献ぶんけん、先達たちの研究成果の資料。さらには星詠みがらみの禁忌レベルのものまで保管されており、閲覧できるのだ。しかし閲覧するには権限レベルが必要であり、学年、成績、身分、功績などでその人物に見合った権限が与えられるのである。魔道図書館の中は権限のランク別に入れる区画が決まっており、高ランクほど奥にある質の高い文献や資料を閲覧できるのであった。

「もちろん部活動もありますので、放課後は青春を謳歌おうかしてください。あと星海学園には研究室制度というものがあります。これは研究内容をまとめ、学園側に申請することで、その研究に見合った場所、援助金、レクチャーなどのいろいろなサポートをさせてもらいます。興味のある方は、研究とうへ気軽に話を聞きにきてください」

 研究室制度はほかの学園にはない、かなりユニークなもの。なんと魔法に関する研究をしたい場合、学園側へ申請することで場所と資金を用意してくれるのである。しかもそれだけでなく知恵を貸してくれたり、必要ならばその分野の専門家にも協力を取り次いでくれるとか。そのため学生でありながら研究室を持ち、仲間と共に独自の研究に精を尽くすことができるという。過去、星海学園の生徒たちがこの制度を利用し、さまざまな実績を残していったらしい。中には魔法工学の発展に、多大な一石を投じたこともあったとか。
 この制度は生徒の魔法に対する自主性を尊重し、その芽を開花させることを目的としているとのこと。その費用はクロノス側が惜しみなく出してくれているため、研究室の審査がかなり緩い。レベルの低い研究でも、すんなり通してくれるらしい。

「くわしいことはお渡ししたパンフレットや、先生方が改めて説明してくれるでしょう。あまり長く話すぎるのもアレなので、ワタシからの話はここまでとさせてもらいます。みなさん、ご入学おめでとうございます。これから魔道の探求をがんばってくださいね」

 そしてカーティスの説明が終わり、入学式がつつがなく進んでいく。





 陣たちは入学式を終え、クラスへと戻っていた。今日は授業がないため、このあとホームルームをして解散という流れである。

「この星海学園、ちょっとやり過ぎじゃない? こんなことほかの学園とかがやってたら、即星葬機構が解体して、関係者全員厳罰ものよ」

 そんな中、クレハが配られた学園のカリュキュラムの資料を、けわしい顔で見返していた。

「――はぁ……、本当に葬星機構はおかたすぎてあきれるわ。これが今の世の本来のあり方だというのにね」

 そこへ奈月が肩をすくめ、大きなため息をつく。

「なんですって?」
「あなたたちが過度に魔道を縛るから、優秀な魔法使いや魔法工学の研究者たちが育たず、人材不足になってるのよ」

 魔道コースはもちろんのこと、戦闘訓練コース、魔法工学コースの内容も、星葬機構の規定から大幅に逸脱しているのだ。それほどまでに星葬機構の規定は厳しく、人々に必要最低限の魔法しか触れさせたくないのである。しかもそれは大人になってからも同じ。普通の軍や魔法工学の職についてからも、その分野に関する魔法の必要最低限のことしか学べない規則になっている。それすら星海学園のコースで学べる初期ぐらいという徹底さ。ゆえに学生は当たり前のこと、大人になってからも優秀な人材は育たないまま。正規のところだと、魔法のスキルは上げられないという。ちなみにクロノス側は星葬機構の魔法の規定を無視して、戦争上等で自社の人材を育成しまくっているそうだ。

「そんなの平和な世のためなら、些細な問題よ。魔法に触れる機会が多ければ多いほど、人々は力に取りつかれていく。そしてその欲は膨れ上がり、いづれは星詠みに手を伸ばすかもしれない。そのリスクを考えれば、魔法にできるだけ触れさせないようにするのは至極当然のことでしょ」
「それ逆効果なんじゃないかしら? 抑圧がより強いほど、その反発も大きくなるというものよ。現に魔法や星詠みの事件が、あとを立たないし。それにそこから応じる被害が大きい要因の一つは、魔法に対し素人しろうとだから。考えが甘くなりがちで、力が制御できず暴走して被害を拡大してしまう。結局のところ魔法に触れる機会を多く作ったほうが、力に対する耐性が付いて暴走するリスクが減るだけでなく、力への理解から非行にも走りにくくなると思わない?」
「――くっ……、そんなことあるわけ……」

 奈月の反論に、言葉が詰まるクレハ。

「だから星海学園はそこらも含め、力に耐性のある優秀な魔法使いを育て上げ、社会貢献も兼ねている。まっとうな育成機関なのよ」
「ははは……、まっとうか。実際はアウトすぎてもう目が当てられないレベルなんだけどな」

 奈月の主張に、思わず小声でツッコミを入れてしまう。
 すると近くにいた灯里に聞こえたらしく、食いついてきた。

「そうなの?」
「ああ、星海学園は裏で星魔教主体でやってる、大規模な星詠みのコミュニティがあるんだ。そこに参加すれば星詠みの講義やレクチャーを受けられ、そっち方面の資料も閲覧できる。よくメンバーで集まって豪勢な交流会とかもやってるな」
「それ学園側は知ってるの?」
「知ってるもなにも、その学園側が力を入れて運営してるんだ。表向きは非公式ということにしてさ」

 星魔教からしても神代かみしろ側からしても、星詠みに足を踏み入れてもらうのは非常に喜ばしいこと。なので目をつぶるだけじゃなく、率先してコミュニティの運営に力を入れているという。もし星葬機構の目がなければ研究室制度のように、学園の目玉政策としてやりたいぐらいだとか。

「うわー、大胆だね。でもそんな大掛かりでやってたら、学園に通ってる断罪者の人たちとかにバレたりしないの?」
「だってさ、カナメ」
「ハハハ、また答えにくい質問を振ってくるね。ここだけの話、学園での星詠みや星魔教関連は見て見ぬふりをする取り決めになってるんだ。その見返りに、学園側はボクらの魔道の求道にいろいろ便宜を計ってくれてるわけさ」

 カナメが少し困った笑みを浮かべながら、肩をすくめる。
 ちなみに星海学園側だけじゃなく、神代特区側とも同じような取り決めを結んでいるらしい。見逃す代わりに、断罪者側の魔道の求道をサポートしてほしいと。お互い理に叶っているため、これがもはや暗黙の了解となっているのだ。

「まあ、そもそもの話、断罪者の家計の学生からしてみれば、星海学園がつぶれたらすごく困るんだよ。こんな魔道に触れられる理想的な場所、ここ以外に存在しないんだからね」
「こんな感じで神代側に丸め込まれてるんだよな」
「クレハには内緒にしといてくれよ。大事になってしまうからさ」

 カナメは手を合わせ、灯里に小声で頼み込む。

「そこらへんはマジでタブーな話だから、むやみに振れないほうがいいぞ。最悪消されかねないからな」
「こ、こわー、聞かなかったことにしとこっと、――あはは……」

 さすがの灯里も、この件には茶化したりすることは出来なかったようだ。

「とりあえず、小難しい話をされてもおもしろくないし、あの二人を止めてくるねー。クレハ! 奈月! そういうのは華の女子高生がする話じゃないよー。もっとゆるふわトークしよー」

 灯里はクレハと奈月の肩にがばっと手を回し、駄々をこねだす。

「ちょっと灯里!?」
「くす、しかたないわね」

 灯里の突然のおねだりに、二人はやれやれと矛先を下ろし普通のおしゃべりを。

「相変わらずすごいな灯里。あの二人に物おじせず、あんなしたしげにからめるなんてさ」
「ハハハ、彼女すごい大物だね」

 見事二人の言い争いを収める灯里の手腕に、感心する陣たちなのであった。 
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