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3章 第4部 創星クラブ
106話 いざ創星クラブへ
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カーティスから依頼され、数日が経ったとある放課後。ここは星海学園内に存在する、とあるひっそりとした空き教室。そこには隠し通路があり、奥へ進むとエレベーターがあるのだ。そしてエレベーター内で認証番号を打ち込むと、地下にある創星クラブのフロアへ降りていけるという。ちなみに普通にエレベーターを使うと、カモフラージュ用の教材や資材の保管室にたどりつくらしい。
陣とクラスメイトの末緒、そして付き添いできた灯里は、エレベーターを出て無機質な廊下を歩いていく。しばらくすると創星クラブと書かれた扉前へとたどりついた。
「この先が創星クラブ。き、緊張するよー。あ、そうだ、四条くんは創星クラブのことどのぐらい知ってるの?」
ソワソワ落ち着かない様子の末緒が、陣へたずねてくる。
「見学だけでもって誘われたことはあったが、結局行かなかったからな。そんなにくわしくはないな。ただあそこは星魔教が管理してるところだし、ちゃんとしてるはずだ。入れば外の星魔教の施設やサポートも受けられるらしいし、いって損はないと思うぞ」
「それなら安心そうだね」
ほっと胸をなでおろす末緒。
「でもまさか里村が星詠みに興味があったなんて……、意外だ」
「えへへー、わたしちいさいころから、魔法がすごく好きだったんだ。キラキラしてて、とても神秘的で。子供のころダメだとわかっていてもがまんできず、こっそり練習してたぐらいなの。そんなわたしだから、その魔法の上位の力にも少なからず興味があって」
彼女は胸をぎゅっと押さえながら瞳を閉じ、なつかしそうに子供のころを思い返す。
「その気持ちを、カーティス先生に見透かされちゃったんだ。そしていろいろ話を聞いてもらって、背中を押されちゃった。この学園で魔法さえ求道できればいいと思ってたけど、触れられる機会があるならちょっと手を出してみるのもありかなって。ちょうど創星クラブという、星詠みの入門に打ってつけの場所もあるみたいだし」
「そっか」
「それにしてもカーティス先生ってすごいよね。わたしのこのあこがれを一瞬で見抜いて、親身に相談に乗ってくれながら、迷いまで晴らしてくれたんだもん。尊敬しちゃうなー」
末緒はあこがれのまなざしで、カーティスをほめたたえる。
「ははは、それがあの人の本職みたいなものだからな」
(でもさすがカーティス神父。魔道への素質があるとわかれば、すかさず誘いを入れ堕としてみせるとは。――いや、というかそもそも末緒にここまでしたのって、たまたまじゃないはず。わりとがっつり意図してやったんだろうな。オレをうまく創星クラブに関わらせるように)
あえて末緒を選ぶことで、陣が無視できないようにしたのだろう。灯里は彼女の友達ゆえ、見過ごせずこの件に関わってくる可能性が高い。そうなると灯里を心配して、陣も関わらずにはいられないという状況を作ったはず。
それに今まで興味がなかった創星クラブへ陣がいきなり行くと怪しいので、末緒や灯里の関係性を利用し、自然な口実になる狙いもあったに違いない。
(しかもヘタしたらこれ、オレはエサとして放りこまれてるかもしれないんだよな。あの切れ者のカーティス神父なら、全然ありうる、ははは……)
怪しいから調べてきてほしいだけならまだいいが、もしかすると敵の動きを見るために陣を向かわせた可能性もあるのだ。もしそうなら厄介ごとが降りかかる可能性が高く、常に警戒しておいたほうがいいだろう。
「それで灯里も本当について来る気なのか?」
陽だまりの日常を選んだ灯里からしてみれば、創星クラブみたいな場所に足を踏み入れたくないはず。それでもついて来ようとしてるということは、よほど末緒のことを心配しているのだろう。
「もちろん! 友達をそんな危険なところへ、一人行かせられないもん! せめて末緒を任せていいところか、見極めてからじゃないとね!」
「灯里ちゃん、ありがとう」
「ねー、末緒、そっち方面に手を出すのはあまりおすすめしないよ。あれは身を滅ぼす代物。ヘタしたら、末緒の人生がめちゃくちゃになっちゃうかも……」
灯里は末緒の腕をつかみ、なんとか説得を試みる。
「安心して、灯里ちゃん。わたしも創星術師になろうとは思ってないから。ただ一回どういうものなのか、見て触れてみたいなって。ちょうど疑似恒星の貸し出しもやってるみたいだから」
「まー、それぐらいなら大丈夫かなー……」
末緒の遊び感覚の考えを聞いて、引き下がる灯里。とはいえまだまだ不安そうだ。
「なにはともあれ見学してみようぜ。ダメそうなら、入らなければいいだけの話だし。じゃあ、行くぞ」
陣は創星クラブの扉を開き、みなで中へと。
陣とクラスメイトの末緒、そして付き添いできた灯里は、エレベーターを出て無機質な廊下を歩いていく。しばらくすると創星クラブと書かれた扉前へとたどりついた。
「この先が創星クラブ。き、緊張するよー。あ、そうだ、四条くんは創星クラブのことどのぐらい知ってるの?」
ソワソワ落ち着かない様子の末緒が、陣へたずねてくる。
「見学だけでもって誘われたことはあったが、結局行かなかったからな。そんなにくわしくはないな。ただあそこは星魔教が管理してるところだし、ちゃんとしてるはずだ。入れば外の星魔教の施設やサポートも受けられるらしいし、いって損はないと思うぞ」
「それなら安心そうだね」
ほっと胸をなでおろす末緒。
「でもまさか里村が星詠みに興味があったなんて……、意外だ」
「えへへー、わたしちいさいころから、魔法がすごく好きだったんだ。キラキラしてて、とても神秘的で。子供のころダメだとわかっていてもがまんできず、こっそり練習してたぐらいなの。そんなわたしだから、その魔法の上位の力にも少なからず興味があって」
彼女は胸をぎゅっと押さえながら瞳を閉じ、なつかしそうに子供のころを思い返す。
「その気持ちを、カーティス先生に見透かされちゃったんだ。そしていろいろ話を聞いてもらって、背中を押されちゃった。この学園で魔法さえ求道できればいいと思ってたけど、触れられる機会があるならちょっと手を出してみるのもありかなって。ちょうど創星クラブという、星詠みの入門に打ってつけの場所もあるみたいだし」
「そっか」
「それにしてもカーティス先生ってすごいよね。わたしのこのあこがれを一瞬で見抜いて、親身に相談に乗ってくれながら、迷いまで晴らしてくれたんだもん。尊敬しちゃうなー」
末緒はあこがれのまなざしで、カーティスをほめたたえる。
「ははは、それがあの人の本職みたいなものだからな」
(でもさすがカーティス神父。魔道への素質があるとわかれば、すかさず誘いを入れ堕としてみせるとは。――いや、というかそもそも末緒にここまでしたのって、たまたまじゃないはず。わりとがっつり意図してやったんだろうな。オレをうまく創星クラブに関わらせるように)
あえて末緒を選ぶことで、陣が無視できないようにしたのだろう。灯里は彼女の友達ゆえ、見過ごせずこの件に関わってくる可能性が高い。そうなると灯里を心配して、陣も関わらずにはいられないという状況を作ったはず。
それに今まで興味がなかった創星クラブへ陣がいきなり行くと怪しいので、末緒や灯里の関係性を利用し、自然な口実になる狙いもあったに違いない。
(しかもヘタしたらこれ、オレはエサとして放りこまれてるかもしれないんだよな。あの切れ者のカーティス神父なら、全然ありうる、ははは……)
怪しいから調べてきてほしいだけならまだいいが、もしかすると敵の動きを見るために陣を向かわせた可能性もあるのだ。もしそうなら厄介ごとが降りかかる可能性が高く、常に警戒しておいたほうがいいだろう。
「それで灯里も本当について来る気なのか?」
陽だまりの日常を選んだ灯里からしてみれば、創星クラブみたいな場所に足を踏み入れたくないはず。それでもついて来ようとしてるということは、よほど末緒のことを心配しているのだろう。
「もちろん! 友達をそんな危険なところへ、一人行かせられないもん! せめて末緒を任せていいところか、見極めてからじゃないとね!」
「灯里ちゃん、ありがとう」
「ねー、末緒、そっち方面に手を出すのはあまりおすすめしないよ。あれは身を滅ぼす代物。ヘタしたら、末緒の人生がめちゃくちゃになっちゃうかも……」
灯里は末緒の腕をつかみ、なんとか説得を試みる。
「安心して、灯里ちゃん。わたしも創星術師になろうとは思ってないから。ただ一回どういうものなのか、見て触れてみたいなって。ちょうど疑似恒星の貸し出しもやってるみたいだから」
「まー、それぐらいなら大丈夫かなー……」
末緒の遊び感覚の考えを聞いて、引き下がる灯里。とはいえまだまだ不安そうだ。
「なにはともあれ見学してみようぜ。ダメそうなら、入らなければいいだけの話だし。じゃあ、行くぞ」
陣は創星クラブの扉を開き、みなで中へと。
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