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2章 第4部 尋ね人との再会
111話 制御権の破壊
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アリスに続いて結月たちも巫女の間へとたどり着く。
内部ではすでにレイジとアリスが、アーネストと激闘を繰り広げていた。森羅とリネットは事前の話通り、後方で巫女の制御権の破壊作業をしているようだ。彼女たちが触れている巨大な水晶の中には、結月の親友であるカノンの姿が。おそらくあの水晶そのものが今回のターゲットである制御権なのだろう。
(さっき久遠くんが、カノンの名前をさけんでた気がしたんだけど、あれはいったい……)
ここに駆けつける前、レイジがなぜかカノンの名前を呼んでいたような気がした。彼がカノンの名前を知っていたのは、那由他辺りに聞いたかもしれないのでまだわかる。しかしあそこまで切実に名前を叫ぶだろうか。まるでずっと会いたかったみたいに。
「十六夜タワーの件では活躍できなかった分、ここで汚名を返上してやるー! そしてあのいけ好かない幻惑の人形師を、今度こそぶちのめしてやるもん! まな! いくぞぉ!」
不思議に思っていると、ゆきがやる気十分といった感じに前へ。実は十六夜タワーの一件後、森羅たちの計画をあまり妨害できずすごく悔しがっていたのだ。なので今回はリベンジに燃えているのだろう。
「はい、ゆきねえさま、エデンの巫女の力で、必ずや巫女の制御権を破壊してみせますぅ!」
白い子猫のガーディアンとゆきは周りにいくつもの画面を表示し、改ざんを始めた。
「よぉし、まずはあの制御権との間にラインを作ったから、ここから災禍の魔女たちの改ざんに割り込むよぉ。なゆた、いけるー?」
「ふっふっふっ、お任せあれ! 美少女エージェント那由他ちゃんのチートが火を噴きますよー! 制御権へ強制アクセス! これでゆきちゃんもシステムをいじれるはずなのでお願いします!」
二人は作戦通り、巫女の制御権の破壊を開始したようだ。
ちなみに今回の件が終わるまで、アポルオンの巫女であるカノンがこの場所に来ることはない。本来なら彼女がエデンにリンクするとあの水晶から出てくる感じになるらしいが、今は制御権に森羅と那由他たちが干渉しているため入ってこれないとか。
結月は後方に注意を払いながら、今回の作戦を振り返った。
「じゃあ、ここからはエデンの巫女の協力を得て、レイジくんたちが無事巫女の間にたどり着けた時の話をするね!」
場所は一昨日アリスと会った廃ビルの屋上。
ゆきがこちら側に足を踏み入れることを決断してから、森羅は事前準備であるエデンの巫女やルナへの交渉の話をおえ、いよいよ作戦の本筋部分を説明しだした。
「今回の作戦のかなめはエデンの巫女の力。だけど相手は巫女の制御権というセフィロトのシステムの中でも、特に厳重なセキュリティがほどこされてる存在。だから破壊するとなると、彼女一人ではさすがに厳しいと思うの。そこで森羅ちゃんや、剣閃の魔女、そして柊那由他の出番よ!」
「ゆきはわかるが、那由他もなのか?」
「ええ、柊那由他も森羅ちゃんには及ばないけど、それなりのチートじみた力を持ってるからね! 」
どうやら那由他も森羅に近しい力を持っているらしい。
確かに普段の彼女を見ていると、チートの一つや二つ持っていてもおかしくなさそうなので妙に納得してしまう自分がいた。
「そんなあの子だからこそ、今回の作戦が成り立つの! ほら、本来リネットも剣閃の魔女も、セフィロトのおおもとのシステムに干渉なんてできないでしょ?」
「まぁ、人が神のさだめた法則に手を出すようなものだからねぇ。どれだけの電子の導き手を集めたとしても不可能な話ー。ほんとその力うらやましいかぎりだよぉ」
電子の導き手の改ざんは、セフィロトがさだめた制約そのものに干渉することができないといわれている。なんでもセフィロト自身が敷いている絶対不可侵のセキュリティにより、触れることさえ叶わないそうだ。ゆえにゆきみたいな高ランクの電子の導き手が何人協力しようと、まったく歯がたたないのである。
「リネットがアビスエリア解放の件で、セフィロトのシステムをいじれていたのは森羅ちゃんのおかげ。だから今回剣閃の魔女は柊那由他の力を使ってセフィロトのシステムに干渉し、リネットと制御権の所有権を奪い合ってもらうね!」
実はゆきが十六夜タワーの戦いにおいて裏で細工ができたのは、森羅がリネットのために作ったラインに割り込んだから。そのため本来できるはずがないセフィロトのシステムに、干渉することができたらしい。
「そういうことかぁ。ようは奪い合うことでシステムそのものに負荷をかけまくり、ショート寸前のところをエデンの巫女の力で一気にたたくってことだろぉ?」
ゆきは両手をポン合わせ納得を。
本来制御権に干渉するなど不可能。だが森羅の災禍の魔女の力といったチートを使い、無理やり改ざんを可能にしているのだ。そのためシステム内部では相当の負荷がかかっているに違いない。しかも今回森羅だけでなく、那由他も同じことを。二人がかりで強制的にアクセスされ、さらには所有件を書き換え合うとなるとその負荷の規模は計り知れないだろう。
もはやそれだけでも破壊できそうなのに、そこへエデンの巫女の力が襲う。多大な負荷によってセキュリティが弱まっているところに、破壊するためのとどめの一撃をお見舞いするのが今回の流れというわけだ。
「くす、これならエデンの巫女も破壊しやすいでしょ! 問題は剣閃の魔女と柊那由他が、あたしとリネットのコンビに太刀打ちできるかね。森羅ちゃんは立場的な問題もあるから、全力で阻止しにいかないといけないし」
今回できるだけ負荷をかけるためにも、所有権の書き換え合いが拮抗するのがベスト。あっさりリネットに負けてしまえば負荷を限界まで与えられず、マナの破壊工作がうまくいかなくなってしまう恐れが。なのでゆきと那由他には彼女たちに打ち勝つほどの勢いで、事に当たってもらわなければならなかった。
「ふん、剣閃の魔女であるゆきの腕を舐なめるなよぉ。相手が幻惑の人形師や災禍の魔女であろうと、まとめてひねり潰してあげるもん!」
そんな森羅の徴発じみた発言に、ゆきは胸に手を当て自信ありげに言い放つ。
「くす、それなら安心ね。制御権にできるだけ負荷をかけるためにも、森羅ちゃんの力をフルに使った方がいいから、手加減はなしよ!」
「望むところだぁ! これまでお前らには好き勝手やられてるから、今度こそ目にものをみせてあげるー! 首を洗って待っていやがれぇ!」
不敵に笑う森羅に、ゆきは手をにぎりしめながら反対の手の指を突き付け宣言を。
(ここまではすべて順調ね。ゆきと那由他ならたぶんいけると思うから、あとは……)
アーネストと激し戦闘を繰り広げているレイジとアリスに視線を移す。
残る問題はレイジとアリスがアーネストを止められ続けるかどうか。もし突破されれば、彼との戦闘で制御権の破壊どころではなくなってしまうはず。ゆえにレイジたちにこの戦いの命運がかかっているといっていい。
「がんばってね、久遠くん、アリス……」
結月はレイジたちの勝利をただただ願うのであった。
内部ではすでにレイジとアリスが、アーネストと激闘を繰り広げていた。森羅とリネットは事前の話通り、後方で巫女の制御権の破壊作業をしているようだ。彼女たちが触れている巨大な水晶の中には、結月の親友であるカノンの姿が。おそらくあの水晶そのものが今回のターゲットである制御権なのだろう。
(さっき久遠くんが、カノンの名前をさけんでた気がしたんだけど、あれはいったい……)
ここに駆けつける前、レイジがなぜかカノンの名前を呼んでいたような気がした。彼がカノンの名前を知っていたのは、那由他辺りに聞いたかもしれないのでまだわかる。しかしあそこまで切実に名前を叫ぶだろうか。まるでずっと会いたかったみたいに。
「十六夜タワーの件では活躍できなかった分、ここで汚名を返上してやるー! そしてあのいけ好かない幻惑の人形師を、今度こそぶちのめしてやるもん! まな! いくぞぉ!」
不思議に思っていると、ゆきがやる気十分といった感じに前へ。実は十六夜タワーの一件後、森羅たちの計画をあまり妨害できずすごく悔しがっていたのだ。なので今回はリベンジに燃えているのだろう。
「はい、ゆきねえさま、エデンの巫女の力で、必ずや巫女の制御権を破壊してみせますぅ!」
白い子猫のガーディアンとゆきは周りにいくつもの画面を表示し、改ざんを始めた。
「よぉし、まずはあの制御権との間にラインを作ったから、ここから災禍の魔女たちの改ざんに割り込むよぉ。なゆた、いけるー?」
「ふっふっふっ、お任せあれ! 美少女エージェント那由他ちゃんのチートが火を噴きますよー! 制御権へ強制アクセス! これでゆきちゃんもシステムをいじれるはずなのでお願いします!」
二人は作戦通り、巫女の制御権の破壊を開始したようだ。
ちなみに今回の件が終わるまで、アポルオンの巫女であるカノンがこの場所に来ることはない。本来なら彼女がエデンにリンクするとあの水晶から出てくる感じになるらしいが、今は制御権に森羅と那由他たちが干渉しているため入ってこれないとか。
結月は後方に注意を払いながら、今回の作戦を振り返った。
「じゃあ、ここからはエデンの巫女の協力を得て、レイジくんたちが無事巫女の間にたどり着けた時の話をするね!」
場所は一昨日アリスと会った廃ビルの屋上。
ゆきがこちら側に足を踏み入れることを決断してから、森羅は事前準備であるエデンの巫女やルナへの交渉の話をおえ、いよいよ作戦の本筋部分を説明しだした。
「今回の作戦のかなめはエデンの巫女の力。だけど相手は巫女の制御権というセフィロトのシステムの中でも、特に厳重なセキュリティがほどこされてる存在。だから破壊するとなると、彼女一人ではさすがに厳しいと思うの。そこで森羅ちゃんや、剣閃の魔女、そして柊那由他の出番よ!」
「ゆきはわかるが、那由他もなのか?」
「ええ、柊那由他も森羅ちゃんには及ばないけど、それなりのチートじみた力を持ってるからね! 」
どうやら那由他も森羅に近しい力を持っているらしい。
確かに普段の彼女を見ていると、チートの一つや二つ持っていてもおかしくなさそうなので妙に納得してしまう自分がいた。
「そんなあの子だからこそ、今回の作戦が成り立つの! ほら、本来リネットも剣閃の魔女も、セフィロトのおおもとのシステムに干渉なんてできないでしょ?」
「まぁ、人が神のさだめた法則に手を出すようなものだからねぇ。どれだけの電子の導き手を集めたとしても不可能な話ー。ほんとその力うらやましいかぎりだよぉ」
電子の導き手の改ざんは、セフィロトがさだめた制約そのものに干渉することができないといわれている。なんでもセフィロト自身が敷いている絶対不可侵のセキュリティにより、触れることさえ叶わないそうだ。ゆえにゆきみたいな高ランクの電子の導き手が何人協力しようと、まったく歯がたたないのである。
「リネットがアビスエリア解放の件で、セフィロトのシステムをいじれていたのは森羅ちゃんのおかげ。だから今回剣閃の魔女は柊那由他の力を使ってセフィロトのシステムに干渉し、リネットと制御権の所有権を奪い合ってもらうね!」
実はゆきが十六夜タワーの戦いにおいて裏で細工ができたのは、森羅がリネットのために作ったラインに割り込んだから。そのため本来できるはずがないセフィロトのシステムに、干渉することができたらしい。
「そういうことかぁ。ようは奪い合うことでシステムそのものに負荷をかけまくり、ショート寸前のところをエデンの巫女の力で一気にたたくってことだろぉ?」
ゆきは両手をポン合わせ納得を。
本来制御権に干渉するなど不可能。だが森羅の災禍の魔女の力といったチートを使い、無理やり改ざんを可能にしているのだ。そのためシステム内部では相当の負荷がかかっているに違いない。しかも今回森羅だけでなく、那由他も同じことを。二人がかりで強制的にアクセスされ、さらには所有件を書き換え合うとなるとその負荷の規模は計り知れないだろう。
もはやそれだけでも破壊できそうなのに、そこへエデンの巫女の力が襲う。多大な負荷によってセキュリティが弱まっているところに、破壊するためのとどめの一撃をお見舞いするのが今回の流れというわけだ。
「くす、これならエデンの巫女も破壊しやすいでしょ! 問題は剣閃の魔女と柊那由他が、あたしとリネットのコンビに太刀打ちできるかね。森羅ちゃんは立場的な問題もあるから、全力で阻止しにいかないといけないし」
今回できるだけ負荷をかけるためにも、所有権の書き換え合いが拮抗するのがベスト。あっさりリネットに負けてしまえば負荷を限界まで与えられず、マナの破壊工作がうまくいかなくなってしまう恐れが。なのでゆきと那由他には彼女たちに打ち勝つほどの勢いで、事に当たってもらわなければならなかった。
「ふん、剣閃の魔女であるゆきの腕を舐なめるなよぉ。相手が幻惑の人形師や災禍の魔女であろうと、まとめてひねり潰してあげるもん!」
そんな森羅の徴発じみた発言に、ゆきは胸に手を当て自信ありげに言い放つ。
「くす、それなら安心ね。制御権にできるだけ負荷をかけるためにも、森羅ちゃんの力をフルに使った方がいいから、手加減はなしよ!」
「望むところだぁ! これまでお前らには好き勝手やられてるから、今度こそ目にものをみせてあげるー! 首を洗って待っていやがれぇ!」
不敵に笑う森羅に、ゆきは手をにぎりしめながら反対の手の指を突き付け宣言を。
(ここまではすべて順調ね。ゆきと那由他ならたぶんいけると思うから、あとは……)
アーネストと激し戦闘を繰り広げているレイジとアリスに視線を移す。
残る問題はレイジとアリスがアーネストを止められ続けるかどうか。もし突破されれば、彼との戦闘で制御権の破壊どころではなくなってしまうはず。ゆえにレイジたちにこの戦いの命運がかかっているといっていい。
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