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2章 第4部 尋ね人との再会
116話 再会の時
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「――ハァ、ハァ、か、勝った……。――うっ……」
アーネストはレイジに斬り伏せられ、その場で剣を支えに膝をついている。
あとはエデンに意識をつなぎ止めるので限界であろう、彼にとどめを刺すだけ。しかし今までの激しい戦闘での精神的負担と、破壊のアビリティの反動が倒したことで気がゆるんだレイジに押し寄せてくる。もはや今すぐにでも倒れ込みたい気分であり、足がおぼつかない状態であった。
「マナ、今だぁ! いっけぇー!」
「これで最後ですぅ!」
すると後方でマナとゆきの奮闘する声が聞こえてくる。
次の瞬間、カノンがいる水晶に大きな亀裂が。どうやら制御権の破壊の方はうまくいったらしい。
「レイジ! あとはあの水晶をその剣で直接破壊してください! そうすれば制御権を完全に破壊できるはず!」
「ッ!? ――カノン……」
那由他の言葉に意識がはっきりし、レイジはフラフラな身体に喝を。そして最後の力を振り絞り、今一度破壊のアビリティを起動した。
漆黒の炎をまとう刀をにぎる手に力を入れ、レイジはカノンのもとへとただひた走る。
そこへ。
「一体なにがどうなってるの!? えぇい、もう! とりあえずここから先には行かせない!」
水晶の真横にいたリネットが状況についてこれず、動揺しながらもレイジの行く手を阻もうと前へ。
しかしすぐ隣にいる森羅が伸ばした静止の手によって、リネットの動きは遮られた。
「さぁ、レイジくん、受け取りなさい。これがあなたが求め続けていたモノの一つ。そしていづれすべての答えを得て、勝利の女神である森羅ちゃんのもとにたどり着いてね……」
森羅は心から愛おしそうにレイジを見つめ、告げてくる。
柊森羅という少女の万感の想いを込めて。
「リネット、いったん退くよ。感動の再会に水を差しちゃ悪いでしょ?」
「え? ちょっと!?」
リネットは森羅に引っ張られ、そのまま後方へと下がっていった。
これでレイジとカノンの間に立ちふさがる障害がすべてなくなった。
あとはこの破壊のアビリティをもちいた刀で制御権を破壊し、彼女を解放するだけだ。
近づいて行くほど、彼女への様々な想いが反芻してきた。九年前の誓い合った光景や、カノンにたどり着けないと明け暮れた狩猟兵団時代だったり、彼女を追い続けたアイギス時代など。さらにはその誓いへの道が絶たれ、カノンへの騎士になることができなくなった絶望さえも。
そしてとうとうレイジは、カノンがいる水晶の目の前にたどり着く。
「わるい、待たせすぎた。そしてごめんな……。今のオレじゃあ、もうカノンの騎士になれそうにないや……」
レイジは罪悪感の想いを噛みしめながら、刀を振りかぶる。
「――だけどせめてキミの力だけには……、ハァッ!」
破壊の業火をまとった刃が、亀裂の入った水晶を斬り裂いた。
すると水晶は無数の欠片となってはじけ飛び、宙をきれいに舞い落ちていく。それと同時にカノンのデュエルアバターが、ゆっくりと降下してきて。
レイジは刀を投げ捨て、そんな彼女をお姫様だっこの要領で抱きとめた。
「――カノン……」
その大切な者の重みを感じとり、ようやく彼女のもとへたどり着けたと実感する。うれしさが込み上げ、思わず泣いてしまいそうであった。
「――うぅ……」
感動に打ち震えていると、カノンがそのきれいな瞳を見開いた。
どうやら制御権によるいざこざがなくなったため、現実からエデンに入れたみたいだ。
「――え……、――れ、レージ……、くん……、ど、どうしてここに……」
「カノン、ようやくキミのもとにたどり着けたよ……」
信じられないとものを見たと、目を見開きたずねてくるカノン。
そんな彼女に今できる精一杯の笑顔を向ける。
「――え……、え? これって夢……、だよね? だってレージくんが、私の目の前に現れるはずないんだから……。――あれ? でも私、今、普通にエデンに入ってきたところだよね。――ということは、まさか……」
状況がまったくつかめず混乱しているようだ。まあ、無理もない。目を開けたらいきなり九年前に誓いを交わした少年がいるのだから。
レイジとしてはここで彼女の混乱を解くため、なにか口にするべきところ。しかしあまりの感動とうれしさに、なかなか言葉が出てこない。
「――えっと、だな、カノン……」
「――ハッ!? 今気付いたけど、私レージくんにお姫様だっこされてる!?」
「そういえば落下するのを助けようとして、こんな形になってたな。今下ろすから」
顔を真っ赤に染めあわあわするカノンを、ゆっくり地上に下ろす。
「――あ、ありがとう……、あの、ごめんね、少し状況を整理させてほしいなぁ……。――ま、まずレージくんがどうしてここにいるのかを……。――ううん、それも大事だけど今は……」
カノンは息を整え、モジモジしながら目をふせる。だがそれもつかの間、後方にいるアーネストや森羅たちに視線を向けた。
確かに今の状況からして、まずはこの場をどうにかするのが先決だろう。
カノンはきらびやかに装飾された剣を、アイテムストレージから取り出す。
そして。
「これ以上の狼藉はアポルオンの巫女であるカノン・アルスレインが許さないんだよ! 革新派は今すぐ、この場所から撤退してもらうね!」
カノンは剣を振りかざし、凛々しく宣言する。これ以上問題を起こすなら、自分が相手になると。
こうして彼女の宣言により、この巫女の間での戦いは完全に幕を閉じるのであった。
アーネストはレイジに斬り伏せられ、その場で剣を支えに膝をついている。
あとはエデンに意識をつなぎ止めるので限界であろう、彼にとどめを刺すだけ。しかし今までの激しい戦闘での精神的負担と、破壊のアビリティの反動が倒したことで気がゆるんだレイジに押し寄せてくる。もはや今すぐにでも倒れ込みたい気分であり、足がおぼつかない状態であった。
「マナ、今だぁ! いっけぇー!」
「これで最後ですぅ!」
すると後方でマナとゆきの奮闘する声が聞こえてくる。
次の瞬間、カノンがいる水晶に大きな亀裂が。どうやら制御権の破壊の方はうまくいったらしい。
「レイジ! あとはあの水晶をその剣で直接破壊してください! そうすれば制御権を完全に破壊できるはず!」
「ッ!? ――カノン……」
那由他の言葉に意識がはっきりし、レイジはフラフラな身体に喝を。そして最後の力を振り絞り、今一度破壊のアビリティを起動した。
漆黒の炎をまとう刀をにぎる手に力を入れ、レイジはカノンのもとへとただひた走る。
そこへ。
「一体なにがどうなってるの!? えぇい、もう! とりあえずここから先には行かせない!」
水晶の真横にいたリネットが状況についてこれず、動揺しながらもレイジの行く手を阻もうと前へ。
しかしすぐ隣にいる森羅が伸ばした静止の手によって、リネットの動きは遮られた。
「さぁ、レイジくん、受け取りなさい。これがあなたが求め続けていたモノの一つ。そしていづれすべての答えを得て、勝利の女神である森羅ちゃんのもとにたどり着いてね……」
森羅は心から愛おしそうにレイジを見つめ、告げてくる。
柊森羅という少女の万感の想いを込めて。
「リネット、いったん退くよ。感動の再会に水を差しちゃ悪いでしょ?」
「え? ちょっと!?」
リネットは森羅に引っ張られ、そのまま後方へと下がっていった。
これでレイジとカノンの間に立ちふさがる障害がすべてなくなった。
あとはこの破壊のアビリティをもちいた刀で制御権を破壊し、彼女を解放するだけだ。
近づいて行くほど、彼女への様々な想いが反芻してきた。九年前の誓い合った光景や、カノンにたどり着けないと明け暮れた狩猟兵団時代だったり、彼女を追い続けたアイギス時代など。さらにはその誓いへの道が絶たれ、カノンへの騎士になることができなくなった絶望さえも。
そしてとうとうレイジは、カノンがいる水晶の目の前にたどり着く。
「わるい、待たせすぎた。そしてごめんな……。今のオレじゃあ、もうカノンの騎士になれそうにないや……」
レイジは罪悪感の想いを噛みしめながら、刀を振りかぶる。
「――だけどせめてキミの力だけには……、ハァッ!」
破壊の業火をまとった刃が、亀裂の入った水晶を斬り裂いた。
すると水晶は無数の欠片となってはじけ飛び、宙をきれいに舞い落ちていく。それと同時にカノンのデュエルアバターが、ゆっくりと降下してきて。
レイジは刀を投げ捨て、そんな彼女をお姫様だっこの要領で抱きとめた。
「――カノン……」
その大切な者の重みを感じとり、ようやく彼女のもとへたどり着けたと実感する。うれしさが込み上げ、思わず泣いてしまいそうであった。
「――うぅ……」
感動に打ち震えていると、カノンがそのきれいな瞳を見開いた。
どうやら制御権によるいざこざがなくなったため、現実からエデンに入れたみたいだ。
「――え……、――れ、レージ……、くん……、ど、どうしてここに……」
「カノン、ようやくキミのもとにたどり着けたよ……」
信じられないとものを見たと、目を見開きたずねてくるカノン。
そんな彼女に今できる精一杯の笑顔を向ける。
「――え……、え? これって夢……、だよね? だってレージくんが、私の目の前に現れるはずないんだから……。――あれ? でも私、今、普通にエデンに入ってきたところだよね。――ということは、まさか……」
状況がまったくつかめず混乱しているようだ。まあ、無理もない。目を開けたらいきなり九年前に誓いを交わした少年がいるのだから。
レイジとしてはここで彼女の混乱を解くため、なにか口にするべきところ。しかしあまりの感動とうれしさに、なかなか言葉が出てこない。
「――えっと、だな、カノン……」
「――ハッ!? 今気付いたけど、私レージくんにお姫様だっこされてる!?」
「そういえば落下するのを助けようとして、こんな形になってたな。今下ろすから」
顔を真っ赤に染めあわあわするカノンを、ゆっくり地上に下ろす。
「――あ、ありがとう……、あの、ごめんね、少し状況を整理させてほしいなぁ……。――ま、まずレージくんがどうしてここにいるのかを……。――ううん、それも大事だけど今は……」
カノンは息を整え、モジモジしながら目をふせる。だがそれもつかの間、後方にいるアーネストや森羅たちに視線を向けた。
確かに今の状況からして、まずはこの場をどうにかするのが先決だろう。
カノンはきらびやかに装飾された剣を、アイテムストレージから取り出す。
そして。
「これ以上の狼藉はアポルオンの巫女であるカノン・アルスレインが許さないんだよ! 革新派は今すぐ、この場所から撤退してもらうね!」
カノンは剣を振りかざし、凛々しく宣言する。これ以上問題を起こすなら、自分が相手になると。
こうして彼女の宣言により、この巫女の間での戦いは完全に幕を閉じるのであった。
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