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4章 第2部 それぞれの想い
168話 ルナの相談
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目的地である喫茶店にたどりつく。ここは街中にひっそりたたずむ、こじんまりとした喫茶店。中は割と年期が感じられ、さらにレトロな内装から落ち着いたいい雰囲気をかもし出している。
透とルナは奥の席へ。ほかに客はいないらしく、店内は静か。休日だというのにこの客の量で大丈夫なのかと、心配になってくるほどだ。しかしこの貸し切り状態ならば、あまり周りに気を使わず話ができそうだ。
お互い飲み物を注文し、しばらくゆっくりと。それからタイミングを見計らい、ルナが本題へと。
「透、さっそくですが、相談に乗ってもらってもよろしいですか?」
「ああ、ボクでよければいくらでも相談にのるよ」
「ありがとうございます。本来なら自分一人で解決するべきなのですが、私一人では答えが出せそうにないんですよ」
ルナは胸をぎゅっと押さえ、辛そうに目をふせる。
実は今日呼ばれたのは、彼女の悩みを聞いてあげるため。なんでも自分一人では手におえないため、透の意見を聞きたいと昨日の夜に連絡があったのだ。
「深刻そうな悩みのようだね。伊吹にはもう相談したのかい?」
「――いえ、内容が内容だけに、執行機関の立場にいる伊吹には相談しづらくて」
首を横にふり、どこか気まずそうにするルナ。
「なるほど。それなら関係者じゃない、ボクが適任かもしれないね。思う存分ぶちまけてくれ。いくらアポルオンに不都合な内容でも、ボクに報告する義理はない。だからルナのために内密にしておくよ」
どんっときてくれと、優しくほほえみかける。
「助かります。実は私、このままで本当にいいのか迷ってるんです」
するとルナはほっとした顔をし、自身の迷いを打ち明け始めた。
「というと?」
「私は今までサージェンフォード家次期当主として、はじないように生きてきました。当主であるお父さまの言いつけを守り、アポルオンに関わる案件もきちんとこなしてきた。自分でいうのもなんですが、与えられた役目に相応しくあれたと思ってます」
「うん、ルナはすごく立派だと思うよ。まだ短い付き合いだけど、普段のキミを見ていればすぐにわかる。これまでどれだけ頑張ってきたのかをね」
「ありがとうございます。ですがその与えられた役目をこなす生き方は、まるでお人形みたいではありませんか?」
「――それは……」
ルナの悲しげな問いに、言葉が詰まってしまう。
彼女のこれまでが立派であったのは、もはや言うまでもない。与えられた役割をまっとうし、当主である彼女の父親が望む通りに頑張ってきた。だがそれは言ってしまえば、決められたレールの上を歩いてきただけ。わるく言ってしまうと人形のように、自分の意志で動けていないといえるかもしれない。
「少し前に、アポルオン序列八位グランワース家次期当主、シャロンさんに言われたんです。あれは保守派(ほしゅは)に怪しい動きがあると言われ、それでも私は信じ役目をまっとうすると答えた時でした。そのただしたがう生き方、まるでお人形さんみたいねと……。その言葉に反論したかったのですが、なにも言い返せなかったんです。思い返せば私の人生、ある一件を除けば常にしたがってばかりだったのですから……」
ルナは表情を曇らせ、自嘲的に笑う。
「そしてカノンの一件。実は私、アポルオンの巫女の彼女にはあこがれだけでなく、共感も覚えていたんです。小さいころからその責務を背負われ、役目をこなし続けてきた少女。きっと彼女も私のように頑張っている。だから負けていられないと、小さいころからずっと思っていた。そんなあこがれでもあり、共にアポルオンに尽くす同士として陰ながら慕っていたお方。ですが……」
ルナはこれまで秘めていた想いを、感慨深く告白する。
しかしそんな彼女の口調が、次第に悲痛げなものに変わりだす。
「実際は違った。ええ、彼女が私と同じだなんて、思い上がりもはなはだしい。カノンはずっとアポルオンの未来を見据すえ、自身の信じる道を歩み続けていたんですから。私みたいに決められたレールをただ盲目に歩いて来たのと、わけが違う。そのことを思い知らされ、これまでの私のふがいなさに嫌気がさしているんです……」
スカートの裾をぎゅっとにぎりしめ、うつむきながら嘆くルナ。
カノンという少女は、ルナが思っていた以上に高い志をもって生きていた。それはこれまでよきライバルとして肩を並べようとしていた少女が、ずっと先にいたことにほかならない。そう、ルナ・サージェンフォードとカノン・アルスレインでは、見ている景色も行動原理もまったく違っていたのだ。その事実が彼女に大きくのしかかり、今も苦しめているようだ。
「――ねえ、透、私はどうすればいいのでしょうか? このままお父様を、保守派を信じ役目をまっとうし続けるべきなのか? それとも……、カノンのように自分の生きたい道を歩むべきなのでしょうか?」
ルナはすがるようなまなざしで答えを求めてくる。
人形という事実を突きつけられ、そこに追い打ちをかけるかのようなカノンの一件。今のルナはこれまで信じていた根底に裏切られた状況といっていい。よって今の彼女はなにを信じて進めばいいのかわからず、途方に暮れるしかないのだろう。
「ルナ自身はどうしたいんだい?」
「実際、保守派にはシャロンさんが言うように、怪しい動きがあります。胸騒ぎを覚えるほどのなにかが。だがらこれまでのようにただ信じてしたがうのには、正直抵抗があるんです。でも反する道を選んだ場合、お父さまを裏切ることになってしまう。それがとても怖くて……」
彼女はこれまで彼女の父親が示した、次期当主としての道を歩み続けてきた。その意にしたがうことこそ正しいと、ひたすら信じて。ゆえにルナにとって父親はいわば絶対の存在。そんな人物に逆らうのが、どれほど勇気のいることか。
「ことがことだけに、安易に答えられないね。――でも、これだけは言える。その選択でルナの身に危険がせまるものなら、必ずボクが助けるよ」
まっすぐに彼女を見つめ、宣言する。
ルナはサージェンフォード家次期当主という、透の想像をはるかに超える立ち位置にいる。よってその行動がもたらす影響力は計り知れず、最悪取り返しのつかないことになる可能性も。果たして透が口を挟んでいいものなのか。だがそれでも一つだけ言えることがあった。ルナがもし自身で決めた道への一歩を迷っているなら、その背中を押し力になりたいと。
「え? ですが私の私情で、透に迷惑をかけるわけには……」
「はは、ボクはルナの騎士だよ。なら姫君のピンチを、みすみす見逃すわけにはいかないさ。もちろんこれは騎士としての任務を取り消されても、おわらない。ボクはただルナの力に、なってあげたいだけなんだからね」
心配するルナに、やさしくほほえみかけ心からの本音を伝えた。
「ただボクなんかじゃ、頼りないかもしれないけど」
「いえ、全然そんなことはありません! 透が支えてくれるなら、とても心強いです!」
机から身を乗り出し、透の手をとりながら表情を明るくするルナ。
どうやら思っていた以上に信頼されているようだ。
「そうかい? それならよかったよ。まあ、ボクから言えることは、たとえこれまでの道に反したとしても、ルナにはついてきてくれる味方がいるということだ。だから一人じゃない。それだけは忘れないでほしい」
「――一人じゃない……。ふふ、ありがとうございます。透のおかげで少し気が楽になりました」
ルナは胸をぎゅっと押さえながら、瞳を閉じる。そして透の言葉をかみしめ、やわらかくほほえんだ。
「はは、役に立てたみたいだね」
「でも、どうして透はそこまで私の味方になってくれるんですか?」
ルナがちょこんと首をかしげたずねてくる。
彼女のいい分はもっともだ。会って間もないというのに、どうしてここまで力になろうとするのか。ただ透自身、今だその答えに確証がなかった。
「――それは……」
透にとってルナは特別だから。自分でもよくわからないが、なぜかそんな答えがふと頭に浮かぶ。
しかしそれを口にするのはさすがに少しはずかしい。なのでとりあえず誤魔化すことに。
「とりあえず秘密かな?」
「秘密って、すごく気になるじゃないですか」
「はは、また機会があったら言うよ」
興味深々といったルナの追求に、透は笑ってやり過ごすのであった。
透とルナは奥の席へ。ほかに客はいないらしく、店内は静か。休日だというのにこの客の量で大丈夫なのかと、心配になってくるほどだ。しかしこの貸し切り状態ならば、あまり周りに気を使わず話ができそうだ。
お互い飲み物を注文し、しばらくゆっくりと。それからタイミングを見計らい、ルナが本題へと。
「透、さっそくですが、相談に乗ってもらってもよろしいですか?」
「ああ、ボクでよければいくらでも相談にのるよ」
「ありがとうございます。本来なら自分一人で解決するべきなのですが、私一人では答えが出せそうにないんですよ」
ルナは胸をぎゅっと押さえ、辛そうに目をふせる。
実は今日呼ばれたのは、彼女の悩みを聞いてあげるため。なんでも自分一人では手におえないため、透の意見を聞きたいと昨日の夜に連絡があったのだ。
「深刻そうな悩みのようだね。伊吹にはもう相談したのかい?」
「――いえ、内容が内容だけに、執行機関の立場にいる伊吹には相談しづらくて」
首を横にふり、どこか気まずそうにするルナ。
「なるほど。それなら関係者じゃない、ボクが適任かもしれないね。思う存分ぶちまけてくれ。いくらアポルオンに不都合な内容でも、ボクに報告する義理はない。だからルナのために内密にしておくよ」
どんっときてくれと、優しくほほえみかける。
「助かります。実は私、このままで本当にいいのか迷ってるんです」
するとルナはほっとした顔をし、自身の迷いを打ち明け始めた。
「というと?」
「私は今までサージェンフォード家次期当主として、はじないように生きてきました。当主であるお父さまの言いつけを守り、アポルオンに関わる案件もきちんとこなしてきた。自分でいうのもなんですが、与えられた役目に相応しくあれたと思ってます」
「うん、ルナはすごく立派だと思うよ。まだ短い付き合いだけど、普段のキミを見ていればすぐにわかる。これまでどれだけ頑張ってきたのかをね」
「ありがとうございます。ですがその与えられた役目をこなす生き方は、まるでお人形みたいではありませんか?」
「――それは……」
ルナの悲しげな問いに、言葉が詰まってしまう。
彼女のこれまでが立派であったのは、もはや言うまでもない。与えられた役割をまっとうし、当主である彼女の父親が望む通りに頑張ってきた。だがそれは言ってしまえば、決められたレールの上を歩いてきただけ。わるく言ってしまうと人形のように、自分の意志で動けていないといえるかもしれない。
「少し前に、アポルオン序列八位グランワース家次期当主、シャロンさんに言われたんです。あれは保守派(ほしゅは)に怪しい動きがあると言われ、それでも私は信じ役目をまっとうすると答えた時でした。そのただしたがう生き方、まるでお人形さんみたいねと……。その言葉に反論したかったのですが、なにも言い返せなかったんです。思い返せば私の人生、ある一件を除けば常にしたがってばかりだったのですから……」
ルナは表情を曇らせ、自嘲的に笑う。
「そしてカノンの一件。実は私、アポルオンの巫女の彼女にはあこがれだけでなく、共感も覚えていたんです。小さいころからその責務を背負われ、役目をこなし続けてきた少女。きっと彼女も私のように頑張っている。だから負けていられないと、小さいころからずっと思っていた。そんなあこがれでもあり、共にアポルオンに尽くす同士として陰ながら慕っていたお方。ですが……」
ルナはこれまで秘めていた想いを、感慨深く告白する。
しかしそんな彼女の口調が、次第に悲痛げなものに変わりだす。
「実際は違った。ええ、彼女が私と同じだなんて、思い上がりもはなはだしい。カノンはずっとアポルオンの未来を見据すえ、自身の信じる道を歩み続けていたんですから。私みたいに決められたレールをただ盲目に歩いて来たのと、わけが違う。そのことを思い知らされ、これまでの私のふがいなさに嫌気がさしているんです……」
スカートの裾をぎゅっとにぎりしめ、うつむきながら嘆くルナ。
カノンという少女は、ルナが思っていた以上に高い志をもって生きていた。それはこれまでよきライバルとして肩を並べようとしていた少女が、ずっと先にいたことにほかならない。そう、ルナ・サージェンフォードとカノン・アルスレインでは、見ている景色も行動原理もまったく違っていたのだ。その事実が彼女に大きくのしかかり、今も苦しめているようだ。
「――ねえ、透、私はどうすればいいのでしょうか? このままお父様を、保守派を信じ役目をまっとうし続けるべきなのか? それとも……、カノンのように自分の生きたい道を歩むべきなのでしょうか?」
ルナはすがるようなまなざしで答えを求めてくる。
人形という事実を突きつけられ、そこに追い打ちをかけるかのようなカノンの一件。今のルナはこれまで信じていた根底に裏切られた状況といっていい。よって今の彼女はなにを信じて進めばいいのかわからず、途方に暮れるしかないのだろう。
「ルナ自身はどうしたいんだい?」
「実際、保守派にはシャロンさんが言うように、怪しい動きがあります。胸騒ぎを覚えるほどのなにかが。だがらこれまでのようにただ信じてしたがうのには、正直抵抗があるんです。でも反する道を選んだ場合、お父さまを裏切ることになってしまう。それがとても怖くて……」
彼女はこれまで彼女の父親が示した、次期当主としての道を歩み続けてきた。その意にしたがうことこそ正しいと、ひたすら信じて。ゆえにルナにとって父親はいわば絶対の存在。そんな人物に逆らうのが、どれほど勇気のいることか。
「ことがことだけに、安易に答えられないね。――でも、これだけは言える。その選択でルナの身に危険がせまるものなら、必ずボクが助けるよ」
まっすぐに彼女を見つめ、宣言する。
ルナはサージェンフォード家次期当主という、透の想像をはるかに超える立ち位置にいる。よってその行動がもたらす影響力は計り知れず、最悪取り返しのつかないことになる可能性も。果たして透が口を挟んでいいものなのか。だがそれでも一つだけ言えることがあった。ルナがもし自身で決めた道への一歩を迷っているなら、その背中を押し力になりたいと。
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「はは、ボクはルナの騎士だよ。なら姫君のピンチを、みすみす見逃すわけにはいかないさ。もちろんこれは騎士としての任務を取り消されても、おわらない。ボクはただルナの力に、なってあげたいだけなんだからね」
心配するルナに、やさしくほほえみかけ心からの本音を伝えた。
「ただボクなんかじゃ、頼りないかもしれないけど」
「いえ、全然そんなことはありません! 透が支えてくれるなら、とても心強いです!」
机から身を乗り出し、透の手をとりながら表情を明るくするルナ。
どうやら思っていた以上に信頼されているようだ。
「そうかい? それならよかったよ。まあ、ボクから言えることは、たとえこれまでの道に反したとしても、ルナにはついてきてくれる味方がいるということだ。だから一人じゃない。それだけは忘れないでほしい」
「――一人じゃない……。ふふ、ありがとうございます。透のおかげで少し気が楽になりました」
ルナは胸をぎゅっと押さえながら、瞳を閉じる。そして透の言葉をかみしめ、やわらかくほほえんだ。
「はは、役に立てたみたいだね」
「でも、どうして透はそこまで私の味方になってくれるんですか?」
ルナがちょこんと首をかしげたずねてくる。
彼女のいい分はもっともだ。会って間もないというのに、どうしてここまで力になろうとするのか。ただ透自身、今だその答えに確証がなかった。
「――それは……」
透にとってルナは特別だから。自分でもよくわからないが、なぜかそんな答えがふと頭に浮かぶ。
しかしそれを口にするのはさすがに少しはずかしい。なのでとりあえず誤魔化すことに。
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