224 / 253
5章 第4部 幽霊少女のウワサ
218話 荒野の街と酒場での出会い
しおりを挟む
空を見上げれば炎天下の空が。ここはクリフォトエリアのとある荒野地帯。岩山があちこちにたたずみ、乾いた大地がどこまでも広がっている場所だ。そしてレイジとゆきがいるのはそんな荒野の中にある、シティゾーン。荒れ果てた大地の上に、無理やり建物を建てた感じの街であった。
「暑い、疲れたぁ。こんな炎天下の荒野の街中とか、引きこもりのゆきにとって地獄すぎるだろぉ」
ゆきは歩きながらぐったりうなだれる。
「おいおい、ゆきが聞き込み側に参加してから、まだほとんど時間がたってないぞ」
さんざん歩き回っているような彼女だが、実際のところまだ三十分ぐらいしかたっていない。さっきからずっと歩き回っているレイジならまだしも、根を上げるのが早すぎではないだろうか。
「うるさいなぁ。ゆきはくおんみたいに肉体労働派じゃなく、頭を使って働くタイプなのぉ。だから体力がないのはあたり前なんだもん!」
ゆきはぷいっとそっぽを向いて主張を。
「ならマナのところに残ってればよかったんじゃ?」
「だってゆきがいても、とくに手伝えることがなさそうだったしさぁ。まずは原因の場所をある程度特定しないと、調べようがないって話ー。だからゆきの出番は、まなにもう少し場所の特定をしてもらってからだねぇ」
肩をすくめながら、マナがいるであろう廃墟のビルの屋上に視線を向けるゆき。
現在、バグについて調査しているのだが、かなり難航しているみたいなのだ。なんでも肝心のバグが発生している場所の特定が、うまくいかないとのこと。そのため今はマナ待ち。ある程度場所を絞れてから、レイジたちとゆきの出番というわけだ。
「まあ、闇雲に探しても、疲れるだけだもんな。肝心な時に動けないと、意味がないし」
「それにくおんと一緒に歩きたいなぁって」
ふとゆきがレイジの上着をつかみ、チラチラと上目づかいをしてくる。
「え?」
「っ!? く、くおんが一人だとさびしいと思って、ついてきてあげたんだもん! ありがたくおもってよねぇ!」
だがそれもつかの間、ゆきはビシッと指を突き付けて必死にうったえてくる。
「はぁ、それはどうも」
「でもこれだと残ってた方がよかったかもぉ。とくになにもなかったし、ムダにつかれたぁ」
そしてまたもやぐったりしだすゆき。
「たまには足を使って動くのも、いいものだぞ。いろいろな発見とかできて、楽しいしさ」
「たとえばぁ?」
「うーん、ケンカで強いやつとやりあえるとか?」
「それは戦闘狂のくおんだけだろぉ!」
レイジの正直な答えに、ゆきは両腕をあげながら文句を。
「ははは、それは冗談として、こういった時のだいご味といえば出会いとかじゃないのか?」
「出会いねぇ。人見知りだから、あまりほかの人とは関わりたくないんだけどぉ」
ゆきはみるからに嫌そうな表情をして、目をふせた。
「ははは、そういうなって。物は試しにこういうときの定番、酒場にでも行ってみようぜ」
そんな彼女の肩にポンポン手を置き、酒場の店を指さした。
酒場は出会いはもちろん、なにより情報が集まる場所。そこで聞き込みをすれば、もしかするとレイジたちがほしい情報が手に入るかもしれない。
「ああいうところ苦手なんだけどねぇ。でも、休むならちょうどいい場所だし、しかたなくつきあってあげるよぉ」
あまり乗り気じゃないゆきであったが、休息できるとあってしぶしぶついてくるのであった。
レイジたちが入った店は、まるで西部劇にあるような酒場。古びた木製のテーブル席が並び、カウンター後ろには様々な酒のボトルが立ち並んでいる。廃墟ふうのためあちこち廃れているが、そこがいい感じに雰囲気を出しているといっていい。そんな店内には物騒な雰囲気をただよわせる者たちが、テーブル席で軽い飲食物を取りながら仕事の話や談笑などをしてガヤガヤしていた。
レイジとゆきは空いたテーブル席に座り、さっそく一息つくことに。
「あー、生き返るー。歩き回ったあとのドリンクは格別だよぉ」
ゆきは注文したミルクをぐびぐびと飲み干す。
まさかエデンでもミルクとは、よほど身長関係を気にしているのだろう。ただ現実で飲まなければ、まったく意味がない話だが。
「ゆきの場合、そんなにもだけどな」
「うるさいなぁ。今労働後の至福の一杯を味わってるんだから、水を差さないでよねぇ」
ゆきはコップを勢いよくテーブルに置き、文句を言ってくる。
「ははは、わるい、わるい。とりあえず休憩がてら、状況の整理でもするか。まず今回のバグに関しては、いつもと少し違うらしいな。そのせいで発生源の特定がかなり難しいとか。でだ、ほかに手掛かりがないか現地で情報収集したところ、幽霊の目撃情報があったんだよな」
街で情報を集めたところ、一つ興味深いことが分かったのだ。それこそここ最近の出来事である幽霊の目撃情報。なんでもすぐ近くの荒野のあちこちで、小さい女の子の幽霊が姿を現しているらしい。彼女はふわふわと浮いており、遊ぼうとささやいてすぐ消えてしまうのだとか。
「幽霊なんてエデンにいるわけないし、見間違いじゃないのぉ?」
ゆきはバカらしいと、切り捨てる。
「でもどの目撃者も小さい女の子の幽霊だったって言ってるし、信ぴょう性は高いだろ」
「アビリティを使った、いたずらとかの可能性もあるけどねぇ」
「うっ、確かにその可能性はすてきれないか」
「そうそう、本物の幽霊なんているわけない! いるわけないんだからぁ!」
ゆきは腕を組み、うんうんと深くうなづきながら力説する。
ただ自分に言い聞かせようとしているみたいなのは、気のせいだろうか。
「すごい否定だな。あ、もしかしてお化けが怖いとか?」
「そんなわけがあるかぁ! ゆきは剣閃の魔女さまだぞぉ! お化けが怖いなんてそんな子供みたいな話、あるわけないだろぉ! ふ、ふふん」
つつましい胸をどんっとたたき、少しひきつった顔で主張するゆき。あと目もちょっと泳いでいたといっていい。もしかすると本当は苦手なのかもしれない。
「やっほー、ゆきにレイジ、こんなところで会うなんて、奇遇じゃん!」
そうこうしていると白神相馬の私兵でもある花火が、手を上げてあいさつしてきた。
「あ、はなびだぁ」
「花火? なんでここに?」
「ちょっと相馬さんからのオーダーでさー。エデン財団の動向を追ってるところなんだよねー」
花火はレイジたちの席に腰を下ろし、軽い感じで答えてくる。
「エデン財団だって!?」
「そう、相馬さん、今少しエデン財団上層部に探りを入れていてさー。ここでやつらがなにかを調査していることを、突き止めたんだよねー。それで花火さんが派遣されたってわけ」
「相馬さんも裏で動いているということか」
「そうまにいさん」
「でもまさかこのタイミングでエデン財団上層部が出てくるとはな。ゆき、これってもしかして?」
「うん、ただの偶然とは考えにくいなぁ」
現在この場所周辺は、バグの問題が発生している。こうなってくると彼らの狙いはレイジたちと同じ可能性がでてくるのだ。それにたとえ目的が違ったとしても、それはそれで彼らの動向を探る手がかりとなる。決して無視できるものではなかった。
「きゃはは、ビンゴ! どうやらウチがにらんだ通り、ゆきたちにはやつらの狙いに心あたりがあるみたいだねー。それって白神コンシェルンの最重要機密とも、なにか関係があったりしてー」
鋭い瞳を向けながら、ニヤニヤと笑みを浮かべる花火。
これにはゆきととぼけるしかない。
「ははは、なんのことだ? な、ゆき」
「そうだよぉ。ここには剣閃の魔女の仕事で偶然きただけでぇ」
「きゃはは、とぼけてももう遅いって! というわけでゆきたちに同行させてもらうから、よろしくー」
花火はケラケラ笑いながら、得意げにウィンクしてくる。
「おいおい、なんでそうなる?」
「当然の判断っしょ! 今すごい核心をついてるかもしれない手がかりが、目の前にあるんだから! これに乗らない手はないじゃん!」
「そっちがよくても、こっちになんの得があるんだよ」
「一つは戦力。向こうと目的が同じだった場合、ぶつかる可能性がある。そうなった場合少しでも戦力が多いことに越したことはないっしょ!」
「上層部のエージェントがいるかもしれないし、一理はあるな」
上層部のエージェントである咲、さらにパイロンと名乗っていた化け物じみた青年のことが思い出す。彼女たちにはほとんど歯が立たなかったため、少しでも戦力を増やして対策しておくのは確かに理にかなっていた。
「二つ目。相馬さんに情報を与えておくのも、そうわるくないってこと。相馬さん、最近保守派側に疑念を抱き始めてるから、もしかすると内部からいろいろ対策をとってくれるかもしれないよ?」
「確かに、相馬さんならもしもの時に備えて、いろいろ手を打つはず」
相馬は非常に優秀でさらに極度の野心家。そのため常にさまざまな手を考え、機を狙っているのだ。そんな彼ゆえうまいこと情報を渡せば、こちらのいいように動いてくれる可能性も高かった。
「あまり信用しすぎるのは危険な気がするけど、はなびの言う通りかもしれないねぇ」
「どうするゆき?」
「ここはついてきてもらおうかなぁ。はなびにはSSランクの電子の導き手のウデもあるし、調査が一気にはかどると思うからぁ」
ゆきは考えた結果、花火についてきてもらうことにしたらしい。
確かに彼女は戦力になるだけでなく、SSランクの電子の導き手の力を持つため非常に心強い味方といっていい。
「さっすがゆき、話がわっかるー」
「でもいいのか? 向こうとぶつかることになった場合、相馬さん側の人間がこっちにいてさ」
「きゃはは、そこはどうとでもなるっしょ! ウチは完全にオフで、なにもしらない。ここに来たのもゆきに依頼されて、ただ力を貸してるだけってね!」
花火はとぼけたように肩をすくめ、豪快に笑う。
「それなら大丈夫か」
「じゃあ、よろしくねぇ、はなび」
「まっ、ウチにまかせとけば、万事オッケーってね!」
親指を立てながら、明るい笑顔でウィンクする花火。
こうしてバグの調査に、花火が加わるのであった。
「暑い、疲れたぁ。こんな炎天下の荒野の街中とか、引きこもりのゆきにとって地獄すぎるだろぉ」
ゆきは歩きながらぐったりうなだれる。
「おいおい、ゆきが聞き込み側に参加してから、まだほとんど時間がたってないぞ」
さんざん歩き回っているような彼女だが、実際のところまだ三十分ぐらいしかたっていない。さっきからずっと歩き回っているレイジならまだしも、根を上げるのが早すぎではないだろうか。
「うるさいなぁ。ゆきはくおんみたいに肉体労働派じゃなく、頭を使って働くタイプなのぉ。だから体力がないのはあたり前なんだもん!」
ゆきはぷいっとそっぽを向いて主張を。
「ならマナのところに残ってればよかったんじゃ?」
「だってゆきがいても、とくに手伝えることがなさそうだったしさぁ。まずは原因の場所をある程度特定しないと、調べようがないって話ー。だからゆきの出番は、まなにもう少し場所の特定をしてもらってからだねぇ」
肩をすくめながら、マナがいるであろう廃墟のビルの屋上に視線を向けるゆき。
現在、バグについて調査しているのだが、かなり難航しているみたいなのだ。なんでも肝心のバグが発生している場所の特定が、うまくいかないとのこと。そのため今はマナ待ち。ある程度場所を絞れてから、レイジたちとゆきの出番というわけだ。
「まあ、闇雲に探しても、疲れるだけだもんな。肝心な時に動けないと、意味がないし」
「それにくおんと一緒に歩きたいなぁって」
ふとゆきがレイジの上着をつかみ、チラチラと上目づかいをしてくる。
「え?」
「っ!? く、くおんが一人だとさびしいと思って、ついてきてあげたんだもん! ありがたくおもってよねぇ!」
だがそれもつかの間、ゆきはビシッと指を突き付けて必死にうったえてくる。
「はぁ、それはどうも」
「でもこれだと残ってた方がよかったかもぉ。とくになにもなかったし、ムダにつかれたぁ」
そしてまたもやぐったりしだすゆき。
「たまには足を使って動くのも、いいものだぞ。いろいろな発見とかできて、楽しいしさ」
「たとえばぁ?」
「うーん、ケンカで強いやつとやりあえるとか?」
「それは戦闘狂のくおんだけだろぉ!」
レイジの正直な答えに、ゆきは両腕をあげながら文句を。
「ははは、それは冗談として、こういった時のだいご味といえば出会いとかじゃないのか?」
「出会いねぇ。人見知りだから、あまりほかの人とは関わりたくないんだけどぉ」
ゆきはみるからに嫌そうな表情をして、目をふせた。
「ははは、そういうなって。物は試しにこういうときの定番、酒場にでも行ってみようぜ」
そんな彼女の肩にポンポン手を置き、酒場の店を指さした。
酒場は出会いはもちろん、なにより情報が集まる場所。そこで聞き込みをすれば、もしかするとレイジたちがほしい情報が手に入るかもしれない。
「ああいうところ苦手なんだけどねぇ。でも、休むならちょうどいい場所だし、しかたなくつきあってあげるよぉ」
あまり乗り気じゃないゆきであったが、休息できるとあってしぶしぶついてくるのであった。
レイジたちが入った店は、まるで西部劇にあるような酒場。古びた木製のテーブル席が並び、カウンター後ろには様々な酒のボトルが立ち並んでいる。廃墟ふうのためあちこち廃れているが、そこがいい感じに雰囲気を出しているといっていい。そんな店内には物騒な雰囲気をただよわせる者たちが、テーブル席で軽い飲食物を取りながら仕事の話や談笑などをしてガヤガヤしていた。
レイジとゆきは空いたテーブル席に座り、さっそく一息つくことに。
「あー、生き返るー。歩き回ったあとのドリンクは格別だよぉ」
ゆきは注文したミルクをぐびぐびと飲み干す。
まさかエデンでもミルクとは、よほど身長関係を気にしているのだろう。ただ現実で飲まなければ、まったく意味がない話だが。
「ゆきの場合、そんなにもだけどな」
「うるさいなぁ。今労働後の至福の一杯を味わってるんだから、水を差さないでよねぇ」
ゆきはコップを勢いよくテーブルに置き、文句を言ってくる。
「ははは、わるい、わるい。とりあえず休憩がてら、状況の整理でもするか。まず今回のバグに関しては、いつもと少し違うらしいな。そのせいで発生源の特定がかなり難しいとか。でだ、ほかに手掛かりがないか現地で情報収集したところ、幽霊の目撃情報があったんだよな」
街で情報を集めたところ、一つ興味深いことが分かったのだ。それこそここ最近の出来事である幽霊の目撃情報。なんでもすぐ近くの荒野のあちこちで、小さい女の子の幽霊が姿を現しているらしい。彼女はふわふわと浮いており、遊ぼうとささやいてすぐ消えてしまうのだとか。
「幽霊なんてエデンにいるわけないし、見間違いじゃないのぉ?」
ゆきはバカらしいと、切り捨てる。
「でもどの目撃者も小さい女の子の幽霊だったって言ってるし、信ぴょう性は高いだろ」
「アビリティを使った、いたずらとかの可能性もあるけどねぇ」
「うっ、確かにその可能性はすてきれないか」
「そうそう、本物の幽霊なんているわけない! いるわけないんだからぁ!」
ゆきは腕を組み、うんうんと深くうなづきながら力説する。
ただ自分に言い聞かせようとしているみたいなのは、気のせいだろうか。
「すごい否定だな。あ、もしかしてお化けが怖いとか?」
「そんなわけがあるかぁ! ゆきは剣閃の魔女さまだぞぉ! お化けが怖いなんてそんな子供みたいな話、あるわけないだろぉ! ふ、ふふん」
つつましい胸をどんっとたたき、少しひきつった顔で主張するゆき。あと目もちょっと泳いでいたといっていい。もしかすると本当は苦手なのかもしれない。
「やっほー、ゆきにレイジ、こんなところで会うなんて、奇遇じゃん!」
そうこうしていると白神相馬の私兵でもある花火が、手を上げてあいさつしてきた。
「あ、はなびだぁ」
「花火? なんでここに?」
「ちょっと相馬さんからのオーダーでさー。エデン財団の動向を追ってるところなんだよねー」
花火はレイジたちの席に腰を下ろし、軽い感じで答えてくる。
「エデン財団だって!?」
「そう、相馬さん、今少しエデン財団上層部に探りを入れていてさー。ここでやつらがなにかを調査していることを、突き止めたんだよねー。それで花火さんが派遣されたってわけ」
「相馬さんも裏で動いているということか」
「そうまにいさん」
「でもまさかこのタイミングでエデン財団上層部が出てくるとはな。ゆき、これってもしかして?」
「うん、ただの偶然とは考えにくいなぁ」
現在この場所周辺は、バグの問題が発生している。こうなってくると彼らの狙いはレイジたちと同じ可能性がでてくるのだ。それにたとえ目的が違ったとしても、それはそれで彼らの動向を探る手がかりとなる。決して無視できるものではなかった。
「きゃはは、ビンゴ! どうやらウチがにらんだ通り、ゆきたちにはやつらの狙いに心あたりがあるみたいだねー。それって白神コンシェルンの最重要機密とも、なにか関係があったりしてー」
鋭い瞳を向けながら、ニヤニヤと笑みを浮かべる花火。
これにはゆきととぼけるしかない。
「ははは、なんのことだ? な、ゆき」
「そうだよぉ。ここには剣閃の魔女の仕事で偶然きただけでぇ」
「きゃはは、とぼけてももう遅いって! というわけでゆきたちに同行させてもらうから、よろしくー」
花火はケラケラ笑いながら、得意げにウィンクしてくる。
「おいおい、なんでそうなる?」
「当然の判断っしょ! 今すごい核心をついてるかもしれない手がかりが、目の前にあるんだから! これに乗らない手はないじゃん!」
「そっちがよくても、こっちになんの得があるんだよ」
「一つは戦力。向こうと目的が同じだった場合、ぶつかる可能性がある。そうなった場合少しでも戦力が多いことに越したことはないっしょ!」
「上層部のエージェントがいるかもしれないし、一理はあるな」
上層部のエージェントである咲、さらにパイロンと名乗っていた化け物じみた青年のことが思い出す。彼女たちにはほとんど歯が立たなかったため、少しでも戦力を増やして対策しておくのは確かに理にかなっていた。
「二つ目。相馬さんに情報を与えておくのも、そうわるくないってこと。相馬さん、最近保守派側に疑念を抱き始めてるから、もしかすると内部からいろいろ対策をとってくれるかもしれないよ?」
「確かに、相馬さんならもしもの時に備えて、いろいろ手を打つはず」
相馬は非常に優秀でさらに極度の野心家。そのため常にさまざまな手を考え、機を狙っているのだ。そんな彼ゆえうまいこと情報を渡せば、こちらのいいように動いてくれる可能性も高かった。
「あまり信用しすぎるのは危険な気がするけど、はなびの言う通りかもしれないねぇ」
「どうするゆき?」
「ここはついてきてもらおうかなぁ。はなびにはSSランクの電子の導き手のウデもあるし、調査が一気にはかどると思うからぁ」
ゆきは考えた結果、花火についてきてもらうことにしたらしい。
確かに彼女は戦力になるだけでなく、SSランクの電子の導き手の力を持つため非常に心強い味方といっていい。
「さっすがゆき、話がわっかるー」
「でもいいのか? 向こうとぶつかることになった場合、相馬さん側の人間がこっちにいてさ」
「きゃはは、そこはどうとでもなるっしょ! ウチは完全にオフで、なにもしらない。ここに来たのもゆきに依頼されて、ただ力を貸してるだけってね!」
花火はとぼけたように肩をすくめ、豪快に笑う。
「それなら大丈夫か」
「じゃあ、よろしくねぇ、はなび」
「まっ、ウチにまかせとけば、万事オッケーってね!」
親指を立てながら、明るい笑顔でウィンクする花火。
こうしてバグの調査に、花火が加わるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる