原初のヒーロー

七星北斗

文字の大きさ
11 / 118

ヒーローになるためには10

しおりを挟む
 彼方はバスの中で、男に言われた言葉を繰り返す。

「原初のヒーロー…」

 よくわからないけど、要するに一番最初に生まれたヒーローのこと?

 一番最初に生まれたヒーローを知らない人はいないだろう。

 それって確か、希望ピースのことだよな?

 ピースについて語ると、ピースとはヒーロー界トップに上り詰めた男の2つ名である。

 伝説的な逸話を残したヒーローであり、初めてヒーロー会社を設立させた国民的英雄だ。

 だけど、それが何の関係があるのか?

 まあ、言葉の意味を知るには、ピースのことを調べろってことだよね?

 悩んだ末に、ピースのことをスマホで検索してみることにした。

 彼方はスマホをポケットから取り出し、電源を入れると、待受のミナミゾウアザラシが画面に表示される。

 ウェブ検索システムのK-グルでピースという単語を彼方は、入力した。

 検索ボタンをタップすると、ピースのウェブページが1万件を越えている。

 うーむ、どこから見ていけばいいのか?

 彼方は、右手の人差し指で画面を下にスクロールさせる。

 しばらく下にスクロールすると、おっ?これは!彼方は、ある単語の一文に目に止めた。

 見出しにインパクトのある一文。

『ヒーロー適正のない最弱ヒーローと呼ばれたピースの正体』

 気になった彼方は、タップをしてサイトにアクセスする。

 そのサイトは、白を基調とした、ありふれたシンプルな作りのブログであった。

『ピースは、ヒーロー適正のない最弱ヒーローと噂されているが、それは単なるデマである』

『彼こそがナンバーワンヒーローであり、正義そのものであった』

『戦闘に関しては、拘束術に長けており、誰よりも気の扱い方が優れていた』

『彼が救った人々は敵味方関係がなく、常に弱者の味方であった』

『優しさと強さを併せ持ったまさにヒーロー』

『と思っていたのだが、彼は大きな罪を犯した』

『罪を犯した人間は、罰せねばならない』

『奴は私の娘を見捨てた最低のヒーローだ』

『だから、私がピースを殺した』

 え!?何だこのブログは!

 ピースファンのブログかと思っていたのだが、文字の一文字一文字に執念のようなものを感じて身体中がゾワゾワする。

 見てはいけないものを見てしまった…。彼方の背筋に冷たいものが走る。

 そこにはピースを殺害する様子を事細かに生々しく綴られていた。

 ヤバッ…。ピースって事故死だったはず。通報した方がいいのだろうか?

 もしかしたら単なる狂言殺人の可能性もあるし。

 もう少し調べる必要があるな。

「次は飯○橋駅前でございます。お降りのかたはお知らせください」

 彼方がブログを見ていると、バスのアナウンスが流れた。

 降りるバス停だ、彼方は降車ボタンを押した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...