原初のヒーロー

七星北斗

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答えなき問い8

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 常識を学ぶのはいいが、私がそれで弱くなるのではないかと感じた。 

「でも、世の中は結局、弱肉強食ですよね」

 魔名は、自らの逃げ道になるだろう言葉を述べる。

 そんな魔名に雨蘭は、んー、と唸り口を開いた。

「私はさ、弱肉強食って言葉が嫌いだ」

「どうしてですか?」

 そんなの当たり前でしょ?と言った風に魔名は疑問を口にした。

「要するに「権力」「才能」「能力」「お金」があるなら何してもいいってことでしょ?」

 魔名は、言われてみれば、その通りだと思った。

 今まで普通だと思っていたことを、小分けにして分析してみると、まったく見えてくるものが変わる。

「人間の歴史を紐解けば、ホントにそんなんばっかなんだよね。それがさ、戦争が起きる要因なんだけど」

「ホント怖いよね人間って」

 不意に日九南が口を開いた。

「人間は一つの視点だけで語ることはできないよ」

 しかし雨蘭はそれを否定した。そして怯えた目で日九南を見る。

「それよりも、ベッドで朝起きたら、お前が隣にいたのが怖いんだけど」

「秘書たるもの、社長のおはようからおやすみまで見守るのは当然です」

 雨蘭は呆れた表情で、なに言ってるんだこの人といった風に舌打ちした。そして私、鍵かけてたんだけど、と怯えた顔で震えている。

「愛ゆえの行動です(キリッ)」

「お前の愛はめっちゃくちゃ歪んでんなー」

 雨蘭の突っ込みに、日九南は気にした様子もなかった。

 もう帰っていいかと、問おうと考えていた魔名。まあ、帰る家がないんだけど。

 ずれた会話を軌道修正するために、雨蘭はゴホンと咳払いをする。

 そして魔名に助力することを決めた。

「芦屋魔名。お前帰るとこないだろうし、当分の間は会社に泊まれ」

 と、雨蘭は助け船を出した。

 昨日まで敵だった人間を、普通助けるのか!敵をむざむざ本拠地に迎えるとは、コイツら馬鹿じゃないのか?

 魔名はとても理解することができなかった。なぜヒーローが私に優しくする。

 何人ものお前らの仲間を殺しているんだぞ。

 青井彼方という青年も、わざわざ自分の家族を危険にさらして、私に宿を貸した。

 本当におかしな奴らだ。ヒーローとはみんなこんな人種なのだろうか?

 敵がここにいるんだぞ。なぜ、そんな簡単に信用できる。

 目の前の雨蘭という女は、殺気がまったくない。しかし経験でわかる。私はこの女に勝てない。

 私を出迎えたダンサーのような女性も、位階五位を越えている。

 秘書の日九南からは、強さというものを感じないのだが、別種のヤバさを感じる。

 私程度はすぐに対処できるということか?
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