片翼の翼

七星北斗

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 私は、雲の海を眺めながら一つの絵を描く。

 それだけで心が落ち着く。

 私はこの場所が好きだ。

 美しいものを一心不乱に、ただ描きたかった。

 絵を描くことは、恋に似ている。

 想いをなくして愛情のないものには、一つの完成された作品を作ることはできない。

 私はまだ完成された作品を描けていない。

 集中していると、時が進むのが早い。

 日が暮れて少し肌寒い、そろそろ帰るか。

 私はゆるゆると、代わり映えのない景色を見ながら帰路をたどる。

 家に着くと、私は晩御飯の準備に取りかかった。

 本日のメニューは、天鳥と野菜を煮込んだ簡単スープ。

 五穀米のおにぎり、チーズ入りロールキャベツ。

 うん、我ながら旨い。

 晩御飯を食べ終えた私は、浴室の掃除を済ませて、お湯を張りのんびりとお風呂に浸かった。

 お湯に浸かるのは羽が濡れて嫌だと言う天使もいる。しかし私はむしろ逆でお風呂に浸かるのが好きなのだ。

 20分ほどでお湯から上がると、羽を乾かし、パジャマを着てベッドに横になった。

 そして明日は、どんな日になるだろうかと考えながら、また明日と眠りにつく。

 平凡な毎日であるからこその幸福。しかしそれだけでは、どこか物足りなかった。

 その日はとても不思議な夢を見る。

 黒髪のガラス玉のような大きな瞳。肌は白く、顔立ちの整った人間の少女。

 彼女は神の生け贄にされようとしていた。

 私は彼女を神の生け贄にするのをなんとしてでも止めさせたかったが、結局何もできずに少女は神へ命を捧げる。

 朝、目を覚ますと泣いていた。

 寝汗が酷かったので、シャワーを浴びることにする。

 何でこんな夢を見てしまったのか?夢の中の少女は一体?

 不思議に感じながらも朝御飯を食べてから出社をした。

 いつも通り書類を片付け始める。しかしいつもと違う点があった。

 それは、後輩がため息を吐かないのだ。

 それどころか後輩は、生き生きと仕事をしている。

「どうしたんだアイツ?」

「さあ?ついに仕事に目覚めたんじゃない?」

「別人みたいだな」

「だな?恋人でもできたんじゃない?」

「確かに」

 そんな同僚の天使達の会話が聞こえた。

 昼休みになって、何かあったのか後輩に問いかけると、後輩はニヤニヤする。

 そしてその答えは、仕事が終わるまで答えないと後輩は言う。

 なんでも、仕事とは関係ない話とのことだから、今は話せないと後輩は口を開かない。

 いつもは聞いてもいないのに喋る奴がどうしたんだ?っと疑問に思った。

 昨日の後輩はいつも通りだったんだけどな?
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