十字架を刻まれた少女

七星北斗

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 赤く焼け爛れた火傷の痕、白い透明な肌に不釣り合いな醜い体。

 火傷のヒリヒリする痛みや服を着替える度に思い出してしまう。

『私の体は醜い』

 私はもう、諦めてしまっている。このどうしようもない世界を。

『理不尽』

 その言葉を言葉にしてしまうと、全てを諦めてしまうみたいで嫌いだ。

『死んでしまった方が楽だろうか?』

 あどけなく笑う人が嫌いだ。幸せな人を見ると、その幸せを壊したくなる。

 私は笑い方を忘れてしまった。感情のない空っぽの心で高い空を眺める。

 お金も地位や名誉も、私はいらない。

 しかし両親はお金が好きだし、権力を欲しがる人間であり、目立ちたがり屋だ。

 聖痕やけどを両親に刻まれて、6ヶ月が経過した。

「そろそろ頃合いだ」

「ええ、あなた」

「これで晴れて、俺達は貴族になれる」

「あのには頑張ってもらわないと」

「まったく聖女様々だ」

 そこには自分達の幸福のために、娘を売るがいた。
 
 両親は聖痕が浮かび上がった少女がいると、町に噂を流す。

 それから数日が過ぎた。聖女の噂を聞きつけた人が、一人、また一人と、私の住む家を取り囲んで人だかりができる。

 私は不快感とともに怖かった。私は珍しい動物か何かなのだろうか?

 突然見知らぬ老婆が、玄関から家に入ってきた。老婆は私を見つけると、お供え物?を私の目の前に置いた。

 そして老婆は手を合わせて祈りを捧げる。

『気持ち悪い』

 私は、この状況が気持ち悪くて、今すぐ逃げ出したかった。

 しかし周りの人間に接するときは、聖女らしい振る舞いをするように両親から言われている。

『なぜ私が?』

 宗教とは、こんなに気持ちの悪いものだったのか。

「ご丁寧な品を頂き恐れ入ります。貴女の願いは、今後も善行を繰り返せば、きっと叶うでしょう」

「おお、聖女様。ありがたきお言葉」

 老婆は涙を流して喜んだ。

 そこへ両親が役人を連れて現れた。役人は老婆や家を取り囲む人間達を見て剣を抜いた。

「貴様ら邪魔だ、退かねば斬るぞ」

 家を取り囲んだ野次馬は、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

「聖女がいる家は、ここか?」

「はい、そうです。数日前、私の娘の体に聖痕が浮かび上がりました」

 役人は、家に土足で上がると、値踏みするように私を見る。

 そして「服を脱げ」役人は、こう告げた。

 今さら裸を見られるくらいのことは、どうってことない。

 私が服を脱ぐのは嫌だと言っても、どうせ無理やり脱がされるんでしょ。

 私は、躊躇なく簡素な服を脱ぎ、上半身裸になってみせた。
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