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デジャヴというよりノスタルジー vol.5
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『ねえ、明日そっち行っていい?』
『話したい』
付き合ってから毎日欠かさず行っていたL◯INはケンカの日の朝から止まったままだ。そこに新たな文章を打ち込む。
...無反応
そう、だよな、、、
俺たちは今喧嘩中なんだから、いつもどおりすぐに返信なんかくるはずない。もしかしたら未読無視されてるのかも...
あることないこと考えていたらどんどん気が滅入ってきた...1日のスタートって結構大事だよな。初っ端からこんな暗い気持ちで始めちゃダメだろ。気持ち切り替えてがんば...
ピロン!
「!!」
ピロンピロン!
「!!!!」
おい、タイミング...今頑張ろうって気合入れようとしてたのに...
『わかった』
『明日のお昼過ぎなら来てもいいよ』
『鍵開けとくね』
これで送り主が亜美ではなく何かの広告メールだったら誰もいない部屋に俺のツッコミが響くところだったが...
ひとまず亜美からの返信が来たことにほっとしつつ、同時にスタンプも絵文字もない無機質な文面に胸のあたりがキュッとなる。苦しいような、申し訳ないような、いろんな気持ちが混ざって俺の中をグルグルと回る。やっぱり、怒ってるよな。
そりゃそうか。
『お昼過ぎね!了解』
すぐに返信して既読がついたことを確認し、L◯INを閉じる。昼飯は適当にカップラーメンで済ませた。この辺になってくると一回目に食べたものや着た服がだいぶ曖昧で、おざなりになってしまっていた。
(よし、行くか!)
白いリボンのついた箱は俺の鞄の中で堂々とした存在感を放っている。家を出た時の暑さも胸の高鳴りに掻き消され、それほど気にはならなかった。
インターホンに乗せている指に力を込める。
鍵は開けとくって言われたけど、何も言わず女性の部屋に入るっていうのはさすがにねぇ?
ピンポーン
中でインターホンの音が響いたのが聞こえた。心臓がうるさい。不自然にならないように、あくまでも喧嘩中のカップルとして、俺は彼女の視界に入る。
ドアを開けてリビングへ。彼女は机の前に座っていた。
「おじゃましまーす」
「いらっしゃーい。まあ適当に座って。」
彼女の正面に腰を下ろし、彼女を見据える。お互いに相手が緊張しているのがわかるほど、二人ともなんだかぎこちなかった。
「話って?」
こういう時、女性は強いと常々思う。俺がいつ切り出そうか悩んでいたことをズバッと聞いてくる。
「今日は謝りに来たんだ。」
「なんか私に謝らないといけないことしたの?」
...真顔が怖い。
「この前のこと。なんていうか、軽率な発言しちゃったなって思って。亜美のこととか、これからの俺らのこととか、軽く考えてたわけじゃないんだ。俺...えっと...あの日亜美が俺の話聞いて、戸惑いながらもわかったって言ってくれた時、すげぇ安心したんだよ。嫌われたり、最悪振られたりするんじゃないかって思ってたから。だから、えっと...」
考えていたはずの言葉はどこか遠くへ飛んでいってしまったようだ。
その時、亜美が俺が来てからおそらくはじめてであろう、無表情を崩した。
「ごめん!!」
そして...謝られた。
「え?ちょ...なんで亜美が謝るの?亜美は謝るようなことなんもしてないじゃん。」
もしかして俺、振られるのか?だから「ごめん」なのか?そんなことを思ったが、
「違うの。私もずっと謝りたかったんだけど、なんか一回強く言っちゃったら自分からは晃盛に連絡しづらくてさぁ。」
そして亜美は自分の心の内を語ってくれた。
「私は晃盛がちゃんと話してくれたこと、嬉しかったの。でも、やっぱりすぐに納得はできなくて、でも晃盛の思い尊重したくてわかったって言ったの。でもなんかもう頭ん中ぐちゃぐちゃでさ。違うのはわかってるのに、晃盛は私のことそこまで大事に思ってないんじゃないかとか色々考えちゃって。それで晃盛のこと傷つけた。だから、ごめん。」
あぁ、やっぱり俺は恵まれてる。先生も親友も彼女も、みんな俺のことを考えてくれてる。ならば俺もその思いに全力で応えねば。
鞄に忍ばせていたあの箱を取り出す。
「え、それ何?」
「俺の謝罪と仲直りの証、かな」
「えぇ、なにそれぇ(笑)証とかセリフ臭ぁ」
この頃には互いに顔が綻んでいた。
「今回のことで悪いのは全面的に俺で、なのに亜美に謝らせて、ほんとに最低な奴だと思う。でも、さっきも言った通り亜美のことはめっちゃ大事に思ってて、だから、これからも末永く仲良くしていきたいと思ってます。」
箱を差し出す。白いリボンは心なしか輝いていて。
「受け取ってくれる?」
「うん、すごい嬉しい!ありがと!」
あぁ、幸せだ。中に鎮座するネックレス。シルバーのハート。
「かっわいぃぃ。つけてもいい?」
「うん、もちろん。あ、俺つけようか?」
「つけてくれんの?ありがとー」
彼女の後ろにまわり、ネックレスをつける。やっぱりよく似合う。胸元のハートはまるで元からそこにあったかのように、彼女の胸元で蛍光灯の明かりを反射させていた。
俺の目の前には笑顔の彼女。それだけで俺には生きている価値があるとさえ思えた。
これで一段落だ。今日から事件の日までは比較的平穏に過ごしたはず。ボロは出さずに、それでも亜美との日々を思う存分楽しもうじゃないか。
それが嵐の前の静けさだったとしても。
『話したい』
付き合ってから毎日欠かさず行っていたL◯INはケンカの日の朝から止まったままだ。そこに新たな文章を打ち込む。
...無反応
そう、だよな、、、
俺たちは今喧嘩中なんだから、いつもどおりすぐに返信なんかくるはずない。もしかしたら未読無視されてるのかも...
あることないこと考えていたらどんどん気が滅入ってきた...1日のスタートって結構大事だよな。初っ端からこんな暗い気持ちで始めちゃダメだろ。気持ち切り替えてがんば...
ピロン!
「!!」
ピロンピロン!
「!!!!」
おい、タイミング...今頑張ろうって気合入れようとしてたのに...
『わかった』
『明日のお昼過ぎなら来てもいいよ』
『鍵開けとくね』
これで送り主が亜美ではなく何かの広告メールだったら誰もいない部屋に俺のツッコミが響くところだったが...
ひとまず亜美からの返信が来たことにほっとしつつ、同時にスタンプも絵文字もない無機質な文面に胸のあたりがキュッとなる。苦しいような、申し訳ないような、いろんな気持ちが混ざって俺の中をグルグルと回る。やっぱり、怒ってるよな。
そりゃそうか。
『お昼過ぎね!了解』
すぐに返信して既読がついたことを確認し、L◯INを閉じる。昼飯は適当にカップラーメンで済ませた。この辺になってくると一回目に食べたものや着た服がだいぶ曖昧で、おざなりになってしまっていた。
(よし、行くか!)
白いリボンのついた箱は俺の鞄の中で堂々とした存在感を放っている。家を出た時の暑さも胸の高鳴りに掻き消され、それほど気にはならなかった。
インターホンに乗せている指に力を込める。
鍵は開けとくって言われたけど、何も言わず女性の部屋に入るっていうのはさすがにねぇ?
ピンポーン
中でインターホンの音が響いたのが聞こえた。心臓がうるさい。不自然にならないように、あくまでも喧嘩中のカップルとして、俺は彼女の視界に入る。
ドアを開けてリビングへ。彼女は机の前に座っていた。
「おじゃましまーす」
「いらっしゃーい。まあ適当に座って。」
彼女の正面に腰を下ろし、彼女を見据える。お互いに相手が緊張しているのがわかるほど、二人ともなんだかぎこちなかった。
「話って?」
こういう時、女性は強いと常々思う。俺がいつ切り出そうか悩んでいたことをズバッと聞いてくる。
「今日は謝りに来たんだ。」
「なんか私に謝らないといけないことしたの?」
...真顔が怖い。
「この前のこと。なんていうか、軽率な発言しちゃったなって思って。亜美のこととか、これからの俺らのこととか、軽く考えてたわけじゃないんだ。俺...えっと...あの日亜美が俺の話聞いて、戸惑いながらもわかったって言ってくれた時、すげぇ安心したんだよ。嫌われたり、最悪振られたりするんじゃないかって思ってたから。だから、えっと...」
考えていたはずの言葉はどこか遠くへ飛んでいってしまったようだ。
その時、亜美が俺が来てからおそらくはじめてであろう、無表情を崩した。
「ごめん!!」
そして...謝られた。
「え?ちょ...なんで亜美が謝るの?亜美は謝るようなことなんもしてないじゃん。」
もしかして俺、振られるのか?だから「ごめん」なのか?そんなことを思ったが、
「違うの。私もずっと謝りたかったんだけど、なんか一回強く言っちゃったら自分からは晃盛に連絡しづらくてさぁ。」
そして亜美は自分の心の内を語ってくれた。
「私は晃盛がちゃんと話してくれたこと、嬉しかったの。でも、やっぱりすぐに納得はできなくて、でも晃盛の思い尊重したくてわかったって言ったの。でもなんかもう頭ん中ぐちゃぐちゃでさ。違うのはわかってるのに、晃盛は私のことそこまで大事に思ってないんじゃないかとか色々考えちゃって。それで晃盛のこと傷つけた。だから、ごめん。」
あぁ、やっぱり俺は恵まれてる。先生も親友も彼女も、みんな俺のことを考えてくれてる。ならば俺もその思いに全力で応えねば。
鞄に忍ばせていたあの箱を取り出す。
「え、それ何?」
「俺の謝罪と仲直りの証、かな」
「えぇ、なにそれぇ(笑)証とかセリフ臭ぁ」
この頃には互いに顔が綻んでいた。
「今回のことで悪いのは全面的に俺で、なのに亜美に謝らせて、ほんとに最低な奴だと思う。でも、さっきも言った通り亜美のことはめっちゃ大事に思ってて、だから、これからも末永く仲良くしていきたいと思ってます。」
箱を差し出す。白いリボンは心なしか輝いていて。
「受け取ってくれる?」
「うん、すごい嬉しい!ありがと!」
あぁ、幸せだ。中に鎮座するネックレス。シルバーのハート。
「かっわいぃぃ。つけてもいい?」
「うん、もちろん。あ、俺つけようか?」
「つけてくれんの?ありがとー」
彼女の後ろにまわり、ネックレスをつける。やっぱりよく似合う。胸元のハートはまるで元からそこにあったかのように、彼女の胸元で蛍光灯の明かりを反射させていた。
俺の目の前には笑顔の彼女。それだけで俺には生きている価値があるとさえ思えた。
これで一段落だ。今日から事件の日までは比較的平穏に過ごしたはず。ボロは出さずに、それでも亜美との日々を思う存分楽しもうじゃないか。
それが嵐の前の静けさだったとしても。
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