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デジャヴというよりノスタルジー vol.6
しおりを挟む【11月25日】
ついに、この日がやってきてしまった。仲直りしてから何度か亜美とデートをした。だが、頭の片隅にはやはりこの日のことがうずくまっていて。
「こーせー?」
「!?」
「ビビリすぎ(笑)なんか今日ボーっとしてない?大丈夫?」
「ああ、うん、ダイジョブダイジョブ」
...片言かよ、俺。
やっぱり平常心ってわけにはいかないなぁ。これまで、この日のために色々考えて過ごしてきたんだ。今、目の前には亜美がいる。俺に笑顔を向けている。この幸せを壊してたまるか。
あと2時間と少し。あと2時間と数分であの電車が出発する。やっと終わるんだ。
...いや、違う。ここからまた始めるんだ。
俺は見えないスタートラインに足を掛け、一歩を踏み出す。
「亜美」
「なに?」
「ご飯行こ。今日はレストラン予約してるから。」
「え!楽しみ!どこ行くん?」
「着いてからのお楽しみで(笑)」
「えぇー(笑)」
いつもより少し高めのレストラン。なんやかんやで忘れかけていたが、今日はカレンダー的に言うと付き合って一年目の記念日だ。
一年目の記念日を二回やれるって案外いいかも?なんて呑気なことを考えているうちに俺たちは席に通された。
「ねぇ、なんか高そうなお店だね!」
亜美が小声で囁きかけてきた。全身から“ワクワク”という擬音が出ているかのようだった。
「今日付き合って一年目だからね。ちょっと奮発した(笑)」
「さっすが晃盛~ゴチでーす」
「調子いいな(笑)まあもともとそのつもりだからいいけど」
「やった!」
俺たちは終始なごやかに食事をして一年目の夜を楽しんだ。一度目に来た時にウェイターの人が言っていたことを我が物顔で語り、ドヤってみたりもした。その度にすごいねと言ってくれる亜美がただただ愛おしかった。
「んじゃ、そろそろ帰りますか」
「うん、めっちゃ美味しかった~ありがと!」
「どういたしまして~」
目が会いどちらからともなく笑顔になる。
でも、やっぱり店を出るとき、俺の中に少しの恐怖が湧き上がってきた。もしかしたらうまくいかないんじゃ...いやいやいや!きっと大丈夫だ。なぜかって?そんなの全部わかってるから、に決まってるじゃないか。俺たちはあの日電車に乗っていて不運にも事故に巻き込まれた。何時何分発かもわかっているんだ。それに乗らなければいい。それだけ。
「亜美ー、今日タクシーで帰らない?」
念には念を入れて電車にすら乗らないという選択肢をとった。
「え?なんで?お金かかるよ?」
「今日はひたすら贅沢をする日だから(笑)」
「えー、なにそれ(笑)まあいいけど」
亜美のお許しもいただいたところでタクシーを呼び止め、乗り込む。ここまで来ると俺は安心と脱力でかなりリラックスしていた。
タクシーで流れるラジオが9時半を知らせていた。そろそろだな。思い出すだけで怖気立つ。あの怒号と悲鳴は一生忘れることができないな。
プー‼︎ キキー‼︎ ガシャーン‼︎
耳をつんざくようなクラクション。ブレーキ音。何かが割れた音?
あぁ、そうか。あの電車が今事故ったのか。こんなすごい音してたんだな。そりゃそうか、たくさんの方が死傷したんだ。
『おい!事故だ!』
『誰か救急車!早く!』
『人が倒れてるぞ!』
『おい、アンタ!大丈夫か!?』
ああ、今回は死傷者少なく済むといいな。
...ん?
...........................おかしい...だろ?
...なんで...
なんで声が聞こえてるんだ?いくら大事故だったとはいえ、俺たちは事故現場からはかなり離れているはずで、ここまで声が聞こえるなんてあり得ない。悲鳴ならまだしも、俺に聞こえているのはまさに死傷者の方に声をかけるときのそれだ。
そもそも、
...なんで、俺の目の前には空が広がっているんだ?座席に座っていたはずだろ?
...なんで、顔を覗き込まれているんだ?しかも、知らない奴から。亜美でもない、タクシーの運転手でもない。じゃあ、こいつは一体誰なんだ?
...なんで、体が動かないんだ?怖い記憶が蘇ったから?だとしても、ここまで動かないものなのか?動く動かない以前に体の感覚がない。
...なんで、救急車の音が近づいてきているんだ?事故現場は向こうだろ?
...なんで
...なんで
...なんで
そこで俺の意識はプツリと切れた。
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