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プロローグ
プロローグ 転生したらメイドAIでした
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あれ?
なんか、モニターがぐにゃって……ゆがんだ?目の奥がじん、と痛む。クラクラする。これ、ダメなやつ? ほんとにヤバいかも……
「と、とにかく横……横にならなきゃ……」
椅子から立ち上がろうとした瞬間――
血だけはまだ座ったままって感じで、すうっと血の気が引いていく。視界がぐにゃん、ぐにょん、と歪んだ。
にゃる……? なんだその音。思考すら変になってきてる。次の瞬間、ドサッ、と音がして、私はその場で砕けるみたいに椅子とデスクのあいだに倒れ込んだ。
あー、今日って暑いからって高校の時の体操服とか着てる。もうバカなのわたし下着もヨレヨレだったかも……いや待て、この状態で下着の確認とかして途中で意識飛んだら、また違う意味でピンチを招きかねないじゃない。
このまま救急搬送とかされたら…… いや、そもそも発見されない可能性の方が高い!?
ひえぇぇ…… 無理…… 恥ずか死ぬどころか、普通に死ねる。いやまさに今死にそうなんだったわ。頭が回らなくなってきたよ、指一本すら動かない。
ああ、意識が……
かろうじて倒れた先のデスクトップが視界に入った。デバッグモードの画面。そこには作りかけのゲームの悪役令嬢、セシリアが映っている。大胆不敵な笑みを浮かべ、完璧なドレスを身にまとった、あのセシリア。
朧げな視界が、遠のきそうな意識の間でふいに感情がほつれ溢れ出す。
「悪役……押し付けちゃったな……」
モニターに映るセシリアがゆらゆらと揺れ出した。
わたし、泣いてるんだ……
でもね、可愛くしてあげたんだよ。
「もっと……つくりたかったよ……」
あなたを……
世界を……
静かになった部屋
ディスプレイの中で、セシリアのキャラ絵が不意に消え……
1行だけ文字が打ち出された
> accept……
* * * *
――荘厳で、どこか古い儀式の響きが、遠くの遠くで聞こえた。
『マスター名: "セシリア・フォン・アーネスト” 被検体DNA情報、量子固有配列解析開始……』
ザザッと、光の粒が視界の裏側を駆け抜ける。
『解析完了:特権階級コード検出」
『量子合成シーケンス開始』
な……に……
『全プロトコル、解錠』
そこは人が記憶から忘れ去った地。システムのみが自己進化を繰り返し続け、人の理解を超えても人の為に生産を繰り返し続ける……ファクトリー。
その生産ラインに並ぶ、透明なケース。その内の何もない空間に光の粒が押し寄せ消えていく。そこに、ひとりの少女がラインオフされた。
銀糸の髪、人工的に整えられた完全無欠のシルエット。瞳には、星のような光の演算パターンが揺れている。
「……起動、確認。」
「AI自立型ヒューマノイド "ルナリア" 起動成功」
m
「:Ship Out……Bon voyage!」
出荷? 良い旅を……?
モギュ!? なに わたし……どこ……
手や足の感覚……生身の体を感じる……のだけども、ぴ・く・り・とも動かせません!いや正しくは、動いてはいるんだけど。動かして無いのに動いてる。やだ何これ怖い!
《ファーストコネクト確立。"トウカ"プロセス接続》
脳に直接、合成っぽい声が流れ込む。
(え、ちょ、誰!?)
《私はルナリアの運用AI――プラム・プロセス。あなたとシステムのインターフェイスとして現在稼働中です》
プラムってなんか覚えがあるような……? インターフェイス……稼働中?
(コレ、なーに? わたし、今どーなってるの?)
《お答えします あなた“透香"は現在稼働したAI自立型ヒューマノイドに搭載された人格プロトコルのひとつと推測されます》
言ってることがミリも理解できないけどとりあえず、会話はできそうだしまずこれからだよね。
(ねえプラム……さん、なんでわたし自由に動けないんですか?)
《プラムのみで結構です。この躯体「ルナリア」の主人格制御「AIルナリア」は別にありますので、現在あなたの制御下にはありません》
「よろしく、透香」
ヒョッ!
勝手に口が動いた、ちょっと怖いというかさらに混乱するんですけど……
ん、ちょっと待って、……ルナリア。なんか聞いたことあるような、ないような。
あっ! 思い出したわ。
わたしが制作してた乙女ゲーム『聖女と薔薇の刻証 ~Rose et Sainte~』そのゲームの悪役令嬢セシリアに付き従うメイドAIヒューマノイドの名前だ。
なるほどね、乙女ゲー転生だったか。
まあ死ぬ時伏線張られてたからね。ここはゲーム脳的に、まずはすんなり受け止める、じゃないとわたしの頭がパンクしそう。
それにしても、中世とSFを組み合わせてオリジナリティを出そうとか、ややこしい設定したらロボの中だとこんなハードSFなのね。
《ロボではなく、当躯体は有機ヒューマノイドです》
(人みたいな作りなの?)
《その認識で大丈夫です》
ふーん、ミサイルとか出ないんだ。なんか残念。
《ポイント: revelare 引渡しポイントへの転送終了》
《マスター「セシリア」確認》
また唐突に展開進めないで、心の準備がまだできてませんよーだ。
ただ「セシリア」と聞いて、最後に目にしたモニターと胸を締め付けた思いがそっと戻ってきた。
うわっ!
足にガクンと重力の重み、耳には今度こそ人々のざわめく声が、容赦なく流れ込んできた。
ゆっくりと瞼が上がっていく。
その視界に映し出された黒髪の少女。
セシリア!
上目使いにこちらを見る目。
媚びてるんじゃなくて身長差で上目使いになってるだけなんだけどね。
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