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最終章
最終章:断罪の夜会
建国記念夜会は、その年のどんな催しよりも華やかだった。シャンデリアの光が宝石やシルクに乱反射し、会場はまるで星空を閉じ込めたかのよう。
その中心で、誰よりも眩い光を放っていたのが、アークライト公爵令嬢「ララフィーナ」――ディディアラだった。
彼女は、母アリアンナの肖像画が纏っていたものと同じ、月の光を思わせるドレスを身にまとい、その知性と美貌で次々と貴族たちを魅了していく。
「ララフィーナ様、先日の干ばつへのご提言、父である宰相もいたく感心しておりました」
「まあ、恐れ入ります。領地の民を思うのは、貴族として当然の務めですわ」
その完璧な立ち居振る舞いに、叔父である公爵は満足げに頷き、アレクシス王子は誇らしげに胸を張った。
彼らにとって、それは自らの栄光の証そのものだった。
しかし、宴もたけなわとなった頃、盤上の駒が、静かに動き出す。
最初に叔父に声をかけたのは、王家の財産を管理する、恰幅のいい財務卿だった。彼は、ディディアラが事前に裏帳簿の写しを送っていた人物の一人だ。
「公爵、今宵もご令嬢は星のようだな。ところで、貴領地の東部にある麦畑だが、確か数年前に大規模な病虫害があったと記憶しておる。にもかかわらず、近年の納税額は驚くほどに安定している。何か特別な農法でも見つけられたかな?」
それは、表面上はただの世間話だった。しかし、叔父の背中に、嫌な汗がじわりと滲んだ。その土地の収穫高は、裏帳簿で念入りに改竄していた数字だ。なぜ財務卿がそんな細かいことを?
「は、はは…我が領地の農民が、優秀なだけですよ」
叔父は引きつった笑みで返したが、財務卿は意味深に口の端を上げるだけだった。
そのやり取りを皮切りに、まるで示し合わせたかのように、叔父の周囲に不穏な空気が流れ始める。
次に近づいてきたのは、軍事を司る厳格な将軍。彼もまた、手紙の受け取り手の一人だ。
「公爵。貴殿が納めている軍馬の質が、ここ一年で目に見えて落ちていると、現場から報告が上がっている。だが、帳簿上の購入金額は変わっていない。差額はどこへ消えたのかな?」
「そ、それは…市場価格の変動で…」
「ほう。私の知る限り、馬の価格はむしろ下がっているがな」
逃げ場のない追及。周囲の貴族たちが、面白そうに、あるいは訝しげにこちらを見ているのがわかる。叔父の顔から、みるみる血の気が引いていく。
アレクシス王子も、その異様な雰囲気に気づいていた。愛する「ララフィーナ」が以前、父の様子がおかしいと涙ぐんでいたことを思い出す。まさか…?王子の心に、決定的な疑念が根を下ろした。
そして、とどめを刺すように、国王が玉座から静かに立ち上がった。その一挙手一投足に、喧騒に満ちていた会場が、水を打ったように静まり返る。
「アークライト公爵」
国王の低く、しかしホール全体に響き渡る声が、叔父の名を呼んだ。
「そなたの領地経営に関して、看過できぬ報告がいくつも余の耳に届いている。横領、脱税、そして王家への背任…。何か、釈明はあるかな?」
国王の言葉は、事実上の死刑宣告だった。
叔父は、ガクガクと震える膝で、その場に崩れ落ちそうになるのを必死で堪えた。
弁解しようにも、何から話せばいいのかわからない。頭が真っ白になり、ただ「あ…」「う…」という声しか出てこない。
その、全ての視線が叔父に集中し、彼の破滅が確定した、その瞬間。
今まで聖女のように黙って成り行きを見守っていたララフィーナが、すっと前に進み出た。
彼女は悲痛な表情で、しかし凛とした声で、会場中に響き渡るように告げた。
「陛下。そして、皆様。誠に申し上げにくいことではございますが…その証拠は、わたくしがここに」
彼女は懐から、叔父の裏帳簿そのものを高く掲げた。
「父の罪は、娘であるわたくしが暴き、そして償うのが道理。家の誇りを守るため、断腸の思いでご報告いたします!」
その健気で勇敢な姿に、会場からは賞賛とどよめきの声が上がる。
「なんと気高いご令嬢だ!」
「父親の罪を自ら告発するとは…!」
叔父は、娘に裏切られたという絶望と、なぜ証拠がそこに、という混乱で、もはや正気を保っていられなかった。
叔父が、ガクガクと震える膝で崩れ落ちそうになる。会場の全ての視線が、彼の破滅を固唾をのんで見守っていた。
その時、ララフィーナがもう一歩前へ進み出た。
「陛下。アークライト家の腐敗は、父の不正だけではございません」
その声に、会場は再び静まり返る。アレクシス王子が、たまらず声を上げた。
「ララフィーナ!何を言うのだ!これ以上、家の恥を晒すことはない!」
ララフィーナは、そんな王子を哀れむような目で見つめ、静かに首を振った。
「いいえ、アレクシス様。今ここで、全ての膿を出し切らねば、アークライト家は再興できません。――罪人は、もう一人おります。
長年、その完璧な令嬢という仮面の下で、非道の限りを尽くしてきた者が」
ララフィーナが手を挙げると、ホールの隅から一人の老婆…乳母が、衛兵に付き添われた数名の男女と共に、国王の御前へと進み出た。
「まず、証人として、長年アークライト家に仕えてきた母の乳母より、証言を」
乳母は深々と頭を下げると、震えながらも、しかしはっきりとした声で語り始めた。
「わたくしは、この目で見ておりました。ララフィーナ様が、幼いディディアラ様のドレスを汚し、亡き母君様の形見を隠し、物置に閉じ込める様を…!時には、2階の窓からディディアラ様を突き落としたり、野犬のいる森へ1人で向かわせるなどをし、命に関わる怪我をされたこともございました…!」
次に、一人の元侍女が前に進み出た。
「わたくしは…ララフィーナ様から金銭を渡され、ディディアラ様がララフィーナ様をいじめているように見える工作をするよう、命じられておりました…!恐ろしくて、今まで誰にも言えませんでした…!」
最後にララフィーナは、一通の羊皮紙を取り出した。
「そしてこれは、学園のパーティーで、ララフィーナが自ら階段から転げ落ち、それをわたくしのせいにした事件の折、その真相を目撃していた下級生の令嬢が、勇気を出してわたくしに託してくださった手紙でございます。
ララフィーナの自作自演であったことが、ここに記されております」
次々と明かされる「聖女」の真の姿に、会場は水を打ったように静まりかえり、やがて大きなどよめきへと変わった。
誰もが信じていた完璧な令嬢が、実は陰湿な虐待や更には殺人未遂まで繰り返す悪女だった。その事実は、叔父の横領よりも衝撃的だったかもしれない。
全ての罪が白日の下に晒され、アークライト家の破滅が確定した、その時。
「そして、最後の真実をお見せしましょう」
ララフィーナが瞳を閉じ、再び開いたその瞬間。彼女の体を包んでいた光が収まると、そこに立っていたのは、もはやララフィーナではなかった。
見慣れない、しかし気品に満ちた銀色の髪。そして、何よりも強い意志を宿した、紫水晶のような瞳。彼女自身の、本当の姿だった。
「ディ…ディディアラ…?」
「なっ…!?どういうことだ!?
では…では…ララフィーナは…!?」
「アレクシス様、叔父様。
実は、アレクシス様に婚約破棄をされた翌日から、私の父の一族に伝わる能力を用いて、ララフィーナと入れ替わっておりましたの。
…まあ、本当にララフィーナの本質を見て、愛していたのなら、別人が入れ替わっていたのですから、すぐに気がつくはずですけれど。」
叔父とアレクシス王子が、自分たちが塔で虐待し、心を壊したのが、愛していたはずのララフィーナ本人だったという事実に気づき、血の気を失う。
彼らの内面を駆け巡る絶望と自己嫌悪は、計り知れない。
その地獄絵図を背に、ディディアラは国王の御前へと進み、深く、深くひざまずいた。
「陛下。アークライト公爵家の名は、地に堕ちました。この罪を清め、不当に奪われた母の権利を取り戻し、家を正しく再興させるため、僭越ながら、罪人たちへの処遇をここに奏上いたします。最終的なご判断は、陛下の公正なる御心にお委ねいたします」
その謙虚でありながら、揺るぎない態度に、国王は静かに頷いた。
「まず、父である前公爵は、その罪の重さから、終身刑として鉱山での強制労働に。
そして、我が妹をララフィーナは…その壊れた心を治療することもできましょうが、彼女が犯した罪は、それほど軽いものではございません。
身分を剥奪の上、辺境の救護院にて、名無しの罪人として生涯を送らせることこそが、相応の罰かと存じます。
そして、王子殿下におかれましても、王族としてあるまじき行いがあったことは、明白でございます…」
ディディアラは、決して自ら罰を下さない。ただ、最も効果的で、最も残酷な罰を「提案」するだけだ。
国王は、ディディアラの聡明さと、その提案の妥当性を認め、威厳に満ちた声で裁可を下した。
「アークライト家の継承者として、そなたの意見を尊重しよう。奏上された処遇を、裁可する。アレクシスについては、王位継承権を剥奪の上、王族籍に留めるものの、一切の公務より退けるものとする」
それは、ディディアラが望んだ、完璧な結末だった。
絶望に染まる元凶たちを後に、ディディアラは静かに夜会の会場を去る。
彼女の復讐は、終わった。それは、命を奪うより、財産を奪うより、遥かに残酷で「取り返しのつかない」結末。
加害者たちは、命ある限り、自らが犯した罪の重さと、それがもたらした結果を、毎日、毎時間、毎秒、感じながら生きていくのだ。
ディディアラの本当の人生は、ここから始まる。母と父から受け継いだ全てを胸に、彼女はもう、誰の影でもない、自分自身の道を歩み始めるのだった。
建国記念夜会は、その年のどんな催しよりも華やかだった。シャンデリアの光が宝石やシルクに乱反射し、会場はまるで星空を閉じ込めたかのよう。
その中心で、誰よりも眩い光を放っていたのが、アークライト公爵令嬢「ララフィーナ」――ディディアラだった。
彼女は、母アリアンナの肖像画が纏っていたものと同じ、月の光を思わせるドレスを身にまとい、その知性と美貌で次々と貴族たちを魅了していく。
「ララフィーナ様、先日の干ばつへのご提言、父である宰相もいたく感心しておりました」
「まあ、恐れ入ります。領地の民を思うのは、貴族として当然の務めですわ」
その完璧な立ち居振る舞いに、叔父である公爵は満足げに頷き、アレクシス王子は誇らしげに胸を張った。
彼らにとって、それは自らの栄光の証そのものだった。
しかし、宴もたけなわとなった頃、盤上の駒が、静かに動き出す。
最初に叔父に声をかけたのは、王家の財産を管理する、恰幅のいい財務卿だった。彼は、ディディアラが事前に裏帳簿の写しを送っていた人物の一人だ。
「公爵、今宵もご令嬢は星のようだな。ところで、貴領地の東部にある麦畑だが、確か数年前に大規模な病虫害があったと記憶しておる。にもかかわらず、近年の納税額は驚くほどに安定している。何か特別な農法でも見つけられたかな?」
それは、表面上はただの世間話だった。しかし、叔父の背中に、嫌な汗がじわりと滲んだ。その土地の収穫高は、裏帳簿で念入りに改竄していた数字だ。なぜ財務卿がそんな細かいことを?
「は、はは…我が領地の農民が、優秀なだけですよ」
叔父は引きつった笑みで返したが、財務卿は意味深に口の端を上げるだけだった。
そのやり取りを皮切りに、まるで示し合わせたかのように、叔父の周囲に不穏な空気が流れ始める。
次に近づいてきたのは、軍事を司る厳格な将軍。彼もまた、手紙の受け取り手の一人だ。
「公爵。貴殿が納めている軍馬の質が、ここ一年で目に見えて落ちていると、現場から報告が上がっている。だが、帳簿上の購入金額は変わっていない。差額はどこへ消えたのかな?」
「そ、それは…市場価格の変動で…」
「ほう。私の知る限り、馬の価格はむしろ下がっているがな」
逃げ場のない追及。周囲の貴族たちが、面白そうに、あるいは訝しげにこちらを見ているのがわかる。叔父の顔から、みるみる血の気が引いていく。
アレクシス王子も、その異様な雰囲気に気づいていた。愛する「ララフィーナ」が以前、父の様子がおかしいと涙ぐんでいたことを思い出す。まさか…?王子の心に、決定的な疑念が根を下ろした。
そして、とどめを刺すように、国王が玉座から静かに立ち上がった。その一挙手一投足に、喧騒に満ちていた会場が、水を打ったように静まり返る。
「アークライト公爵」
国王の低く、しかしホール全体に響き渡る声が、叔父の名を呼んだ。
「そなたの領地経営に関して、看過できぬ報告がいくつも余の耳に届いている。横領、脱税、そして王家への背任…。何か、釈明はあるかな?」
国王の言葉は、事実上の死刑宣告だった。
叔父は、ガクガクと震える膝で、その場に崩れ落ちそうになるのを必死で堪えた。
弁解しようにも、何から話せばいいのかわからない。頭が真っ白になり、ただ「あ…」「う…」という声しか出てこない。
その、全ての視線が叔父に集中し、彼の破滅が確定した、その瞬間。
今まで聖女のように黙って成り行きを見守っていたララフィーナが、すっと前に進み出た。
彼女は悲痛な表情で、しかし凛とした声で、会場中に響き渡るように告げた。
「陛下。そして、皆様。誠に申し上げにくいことではございますが…その証拠は、わたくしがここに」
彼女は懐から、叔父の裏帳簿そのものを高く掲げた。
「父の罪は、娘であるわたくしが暴き、そして償うのが道理。家の誇りを守るため、断腸の思いでご報告いたします!」
その健気で勇敢な姿に、会場からは賞賛とどよめきの声が上がる。
「なんと気高いご令嬢だ!」
「父親の罪を自ら告発するとは…!」
叔父は、娘に裏切られたという絶望と、なぜ証拠がそこに、という混乱で、もはや正気を保っていられなかった。
叔父が、ガクガクと震える膝で崩れ落ちそうになる。会場の全ての視線が、彼の破滅を固唾をのんで見守っていた。
その時、ララフィーナがもう一歩前へ進み出た。
「陛下。アークライト家の腐敗は、父の不正だけではございません」
その声に、会場は再び静まり返る。アレクシス王子が、たまらず声を上げた。
「ララフィーナ!何を言うのだ!これ以上、家の恥を晒すことはない!」
ララフィーナは、そんな王子を哀れむような目で見つめ、静かに首を振った。
「いいえ、アレクシス様。今ここで、全ての膿を出し切らねば、アークライト家は再興できません。――罪人は、もう一人おります。
長年、その完璧な令嬢という仮面の下で、非道の限りを尽くしてきた者が」
ララフィーナが手を挙げると、ホールの隅から一人の老婆…乳母が、衛兵に付き添われた数名の男女と共に、国王の御前へと進み出た。
「まず、証人として、長年アークライト家に仕えてきた母の乳母より、証言を」
乳母は深々と頭を下げると、震えながらも、しかしはっきりとした声で語り始めた。
「わたくしは、この目で見ておりました。ララフィーナ様が、幼いディディアラ様のドレスを汚し、亡き母君様の形見を隠し、物置に閉じ込める様を…!時には、2階の窓からディディアラ様を突き落としたり、野犬のいる森へ1人で向かわせるなどをし、命に関わる怪我をされたこともございました…!」
次に、一人の元侍女が前に進み出た。
「わたくしは…ララフィーナ様から金銭を渡され、ディディアラ様がララフィーナ様をいじめているように見える工作をするよう、命じられておりました…!恐ろしくて、今まで誰にも言えませんでした…!」
最後にララフィーナは、一通の羊皮紙を取り出した。
「そしてこれは、学園のパーティーで、ララフィーナが自ら階段から転げ落ち、それをわたくしのせいにした事件の折、その真相を目撃していた下級生の令嬢が、勇気を出してわたくしに託してくださった手紙でございます。
ララフィーナの自作自演であったことが、ここに記されております」
次々と明かされる「聖女」の真の姿に、会場は水を打ったように静まりかえり、やがて大きなどよめきへと変わった。
誰もが信じていた完璧な令嬢が、実は陰湿な虐待や更には殺人未遂まで繰り返す悪女だった。その事実は、叔父の横領よりも衝撃的だったかもしれない。
全ての罪が白日の下に晒され、アークライト家の破滅が確定した、その時。
「そして、最後の真実をお見せしましょう」
ララフィーナが瞳を閉じ、再び開いたその瞬間。彼女の体を包んでいた光が収まると、そこに立っていたのは、もはやララフィーナではなかった。
見慣れない、しかし気品に満ちた銀色の髪。そして、何よりも強い意志を宿した、紫水晶のような瞳。彼女自身の、本当の姿だった。
「ディ…ディディアラ…?」
「なっ…!?どういうことだ!?
では…では…ララフィーナは…!?」
「アレクシス様、叔父様。
実は、アレクシス様に婚約破棄をされた翌日から、私の父の一族に伝わる能力を用いて、ララフィーナと入れ替わっておりましたの。
…まあ、本当にララフィーナの本質を見て、愛していたのなら、別人が入れ替わっていたのですから、すぐに気がつくはずですけれど。」
叔父とアレクシス王子が、自分たちが塔で虐待し、心を壊したのが、愛していたはずのララフィーナ本人だったという事実に気づき、血の気を失う。
彼らの内面を駆け巡る絶望と自己嫌悪は、計り知れない。
その地獄絵図を背に、ディディアラは国王の御前へと進み、深く、深くひざまずいた。
「陛下。アークライト公爵家の名は、地に堕ちました。この罪を清め、不当に奪われた母の権利を取り戻し、家を正しく再興させるため、僭越ながら、罪人たちへの処遇をここに奏上いたします。最終的なご判断は、陛下の公正なる御心にお委ねいたします」
その謙虚でありながら、揺るぎない態度に、国王は静かに頷いた。
「まず、父である前公爵は、その罪の重さから、終身刑として鉱山での強制労働に。
そして、我が妹をララフィーナは…その壊れた心を治療することもできましょうが、彼女が犯した罪は、それほど軽いものではございません。
身分を剥奪の上、辺境の救護院にて、名無しの罪人として生涯を送らせることこそが、相応の罰かと存じます。
そして、王子殿下におかれましても、王族としてあるまじき行いがあったことは、明白でございます…」
ディディアラは、決して自ら罰を下さない。ただ、最も効果的で、最も残酷な罰を「提案」するだけだ。
国王は、ディディアラの聡明さと、その提案の妥当性を認め、威厳に満ちた声で裁可を下した。
「アークライト家の継承者として、そなたの意見を尊重しよう。奏上された処遇を、裁可する。アレクシスについては、王位継承権を剥奪の上、王族籍に留めるものの、一切の公務より退けるものとする」
それは、ディディアラが望んだ、完璧な結末だった。
絶望に染まる元凶たちを後に、ディディアラは静かに夜会の会場を去る。
彼女の復讐は、終わった。それは、命を奪うより、財産を奪うより、遥かに残酷で「取り返しのつかない」結末。
加害者たちは、命ある限り、自らが犯した罪の重さと、それがもたらした結果を、毎日、毎時間、毎秒、感じながら生きていくのだ。
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