デスゲームの『モブ』に転生してしまうなんて…

越知鷹 けい

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第2部

5.

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……ガチャリ。

部屋の扉が開く音が聞こえた。
また、誰かが俺の部屋に入ってきたらしい。

「おい、勝手に入って来るなって言っただろ?」

俺が声をかけると、流し目線で大和が入ってきた。

「真琴は節操がないですからね。仕方ありませんよ」
そう言いながら、大和はベッドに腰掛ける。

「……」

「そんな怖い顔しないでください」
「お前らってさ……」
「はい?」

「いつも俺の部屋に来るけど、暇なのか?」
「いいえ。違いますよ」
「違うのか?」
「はい。私は朔也様に会いに来ているのです」

「……そうですか(監視の間違いじゃないのか?)」

「この一軒家で起こることは何でも知っています。あなたが何を考えているのかも分かります。あなたが何を求めているのかも分かる。あなたにとって一番大切なものは何か……あなたが誰を愛すべきなのかも知っているのです」

「……」

(なんだ、この女性は? さらっと めちゃくちゃ怖いことを 言っているぞ)


「あなたは今、とても不安を感じていますよね?」
「ああ……そうだな」

「真実は、それ自体は醜いが、それを探し求める人にとっては常に好奇心をそそり、美しいものです」

「……」

「この世の中には2種類の人間がいます。『何も知らないまま一生を終える者』と『全てを知っていてもなお生き続ける者』のふたつにね」

「……唐突に語りだしたな」

「あなたは、どちらになりたいですか?」
「俺は……後者でありたいと思っている」

「それは何故ですか?」

「いま、この状況を、きちんと説明して欲しいからだ」
「わかります、そのお気持ち。これから先、自分の身にどんなことが起こるのか知ってしまったら、怖くて、もう一歩前に踏み出すことができなくなるのでしょう?」

「確かに俺は、このままで良いかも? と 変化を拒むときもある」

「でも、あなたが望むなら。恐ろしい未来がやってくるでしょう。それは、あなたが愛せずにはいられない すべてものに対して、あなたは何らかの代償を払わねばならない。あなたは、そのことに気付いているはずです」

「勝手に決めるな。俺の願いは、平凡で普通な人生を歩むことだ」
「自分の主義に あまりにも強く固執するならば、誰かを理解するのは難しいでしょう」

「……おまえがな――」

「教団に入れと言っているわけではありません」
「では、どういう意味なんだ?」

「誰かを愛することの素晴らしさを知ってほしいのです」
「………」
「愛する人のために努力をする喜びを知ることができれば、きっと、あなたは自分のことをもっと好きになれる」

「無理」


俺は即答した。すると、彼女は悲しそうな顔をした。
まるで、捨て猫のような目をしている。
そんな彼女の姿を見て、俺は罪悪感を覚えてしまった。


「ごめんなさい」彼女は言う。


俺は慌てて 首を 横に振った。


「いやいやいやいや! 全然謝ることじゃないから!! むしろ、こっちが申し訳ないというか……何というか……とにかく、悪いのは俺の方だよ」

「……そう。でも、覚えていて欲しいことがあるの。良いアドバイスというのは常に無視されるものです。しかし、それは良いアドバイスを与えない理由にはなりません」

「………………ん?」

大和さんは拳を振り上げて、まるで誰かの名言みたいなことを言い始める。


「人生で本当に重要な瞬間は、手遅れになるまでわからないものです。そして、そのチャンスを逃してしまった人は、その後の人生で後悔します」

弁論に 熱がこもり出す。

「これは私の意見だけど、恋愛はゲームに似ていると思うのよ。まず、相手と親密な関係を築くために、コミュニケーションを取り続けなければならないでしょ?それから、相手の趣味嗜好を把握しておかないと、デートの場所にも困ってしまう。それに、相手に嫌われないように、言動に注意を払う必要がある。そうやって、少しずつ距離を縮めていくのよ。そうして、やっと恋人同士になれたとしても、そこから先が問題なのです。例えば、喧嘩をしてしまったり、すれ違いが起きてしまうこともあるかもしれない。時には、相手を信じられ―――」


「くどい!うるさい!」俺は彼女の言葉を遮るように叫んだ。


すると、彼女は俺を睨む。

「何よ?文句でもあるの?」
「大アリだ!」

「何が不満なの?」
「全部だ!!」

「はぁ?!」

彼女は不機嫌そうな顔をした。

俺は構わずに話を続ける。
すると、彼女は大きなため息をついた。

呆れたように俺を見る。


その目は冷たかった。


どうやら、俺のことを軽蔑したようだ。
まぁ……それも仕方ない。

「あんた、私のこと、覚えてないわけ?」
「……えっ?」
「私が分からないの?」
「……分からない、です」

大和さんの口調の変化に思わず、たじろいでしまう。

「ふざけてるの?」
「いや……マジで……」

「じゃあ、ヒントをあげる。高校のときはギャルをやっていたわ」
「……」
「ちなみに、スリーサイズは上から92・60・88よ」
「……」

「まだ思い出せないの?」
「……もしかして、学年一のギャルとして……」

いつもその大きな胸を揺らしながら胸元のボタンをちょっぴり外し、谷間を見せるように制服を着崩していた。スカートだって短く、生足を見せびらかすような格好をしていた。髪の色は派手で明るい茶色に染めている。化粧は濃かった気がする。

「まさか……あの、天宮城大和か!」
「正解」

「うわ……久しぶりだな」
「そうね」
「高校以来だな」
「そうね」
「一度もしゃべったことはないけど……」
「そうね」
「お前って、こんな奴だったんだな……」
「そうね」

「……」
「……」
「……」
「……」

俺は彼女の中学時代を知らない。でも。これは……、

「……なぁ、お前って、もしかして……」
「……なに?」
「もしかして、今、好きな人がいるのか?」
「いないけど?」

「そうなのか?」
「うん」

大和の頬が朱に染まる。
まるで 小学生向けのアニメ 漫画のようなシチュエーションだ。

「でも、さっきから様子がおかしいぞ?」
「……そんなこと、ない」

「いや、明らかに動揺している」
「そんなこと……ない」
「本当か?」
「……うん」

決められた物語に沿って 会話を進めなければならない気がする。

「もしかして、俺のことが好きなのか?」「……違う」

「そうなのか?」「……ちがう」

「本当に?」「……そう」
「嘘をつくなって」「……ホント」

「なら、なんでこんな事を?」
「……」

誰がなんと言おうと本心からの言葉ではない。
ただ、この流れから逸れるのだけは絶対に阻止しなければならない、ような気がする……。

「黙るのか?」「……ごめんなさい」
「やっぱり、俺のことが好きなんだろ?」
「……」

「言えよ」
「……ごめんなさい」

「そこは、認めるべきだろうが」
「……」

「素直になれよ」俺は、彼女に詰め寄っていく。


彼女は、じりじりと ベッドの隅へ後退していく。

やがて 壁際まで 追い詰めてしまった。

彼女は、俯きながら言った。


その声はとても小さく、震えていた。
顔は真っ赤に染まっている。
耳元まで赤くなっていく。


「へ、へんたい! こっちくんなだし!」


彼女は 涙目になりながら 部屋を出て行ってしまった。

どうやら、調子に乗り過ぎたらしい……。

だが、罪悪感よりも――。

高校を卒業後、大和さんに何があったのか?
俺は、教団の全貌を解明していくことを、強く胸に誓ったのであった。

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