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アドリア王国編
5話 精霊王
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誘拐騒ぎがあってから3ヶ月が経ち、夏を迎えた。
アドリアの王都マルフィスは地中海性気候で湿度が低い為、日陰に入れば結構涼しい。
屋敷の各部屋では魔石を使用した魔導扇風機が稼働しているので快適に過ごすことができる。
最近魔法の練習も進んで多少の攻撃魔法も出すことができるようになったし、風魔法など精霊の加護があるのでは中位のストームを使えるようになっていた。
なぜ風の精霊の加護を受けていたか考えて見ると思い当たる節があった。
魔法を覚え始めた頃に、窓辺のカーテンが風で揺れて小さな羽根付きの小人見えたので眺めていると近づいてきて周りをくるくる回ったりしていた。
一緒になって遊んでいるといつのまにか沢山の風の精霊が遊びに来るようになっていた。
夏になって水辺に行くことが多くなると風の精霊とは違う色の精霊も混じって遊んでいるのが目に付くようになった。
水辺に沢山いる事から水の精霊であろうと思っていたのだが、それは間違っていなかったようだ。
ある日、屋敷の近くにある綺麗な湖に連れて行かれた時に突然目の前の水面が持ち上がり精霊の女王が現れた。
突然だったのでポカンとしていると一方的に話し始めた。
「初めまして、私は水の精霊王です。あなたのことは精霊たちから聞いていますよ。
あなたの周りは居心地が良いと言って精霊が遊びに行っているようですね。
あの子達に悪気はないのですが多くの精霊が行ってしまい迷惑をおかけしていると思いますが、これからも遊んでやってくださいね。
あの子達がお世話になっているお礼に私の加護を差し上げますので受け取ってください」
そう言って俺のひたいに手を当てたと思ったら湖の中に消えて行った。
『なんだったんだ?水の精霊王と言っていたが、俺の話す間も無い位に一方的に話して話して消えて行ったぞ。
ミヤビ、水の精霊王の情報があれば教えてくれ』
『4大精霊の水を司る精霊の王、名前はウンディーネ
性格は温厚だが恥ずかしがり屋で気難しい一面があるので滅多に人前に姿を表すことはありません。
精霊たちを大切にするがあまり、過去には害を与えられた場所の精霊たちを全て他の場所に移動させた為、その場所は砂漠と化してしまった事もあります。
精霊王の加護を与えられたものは過去に数人いましたが、現在はモルト農国の国王一人ですのでマスターは二人目となります』
『なるほど、きっと恥ずかしがり屋だから一方的に話して消えて行ったんだな。
そういえば、モルト農国って初めて聞いたけど、どんな国?』
『モルト農国 はゴンドア大陸の西に位置しており、人口は210万人・国土は286万㎢です。
接する国はアルフヘイムエルフ国・バライカ帝国・スウィード共和国・グスタフ帝国・エイム王国の5カ国です。
過去にグスタフ帝国による侵略を受けましたが、ウンディーネの怒りを買い、グスタフ帝国のあらゆる水が腐り、雨が全く降らなくなった為、侵略開始1ヶ月後にはグスタフ帝国が撤退して賠償金を支払っております。
他の4カ国とは友好関係も良く、農産物の輸入国として取引があるようです。
国王と貴族が存在しますが、初代国王が爵位の順番を変更して上位より男爵・公爵・公爵・伯爵・子爵・庄屋爵と言う変わった物になっています。』
『男爵が一番上なんて、洒落がきいている。
でも初代国王って絶対に転生者でしょ、ついでにモルト農国の特産物って
ジャガイモなんじゃない?』
『モルト王国は冒険者が土地を開拓して住民を集めて建国したのが国の成り立ちです。
主な農産物はジャガイモと乳製品です。
今から200ほど前、どこからともなく現れた冒険者が、あっという間にSSランクの冒険者になり、高ランクの魔獣が跳梁跋扈する地を開拓したと記録に残っています。
記録では冒険者は日本の北海道から転移したチハルという男性だそうです』
『やっぱり転生者だったか、一度見に行ってみたいな。アドリア王国に無い農産物がいっぱいありそうだ』
雅と話していると突然後ろから抱きかかえられた。
「レオちゃん、あまり湖に近づくと危ないよ。
お母さんとお家に戻ってお昼ご飯にしましょう」
馬車に乗せられ家に帰ると屋敷の隅にある小屋から金属を叩く音がしていた。
小屋で何をしているのか気になったのでお昼ご飯を食べるとすぐ歩いて覗きに行った。
小屋のドアや窓は開いていて、屋根の煙突からは煙が上がっている。
リズミカルに金属音が聞こえることからここは鍛冶小屋なのであろう。
中に入ると背は高く無いが筋肉の塊のような男が火戸(火で金属を熱する場所)の中で熱した金属を火箸で掴み上げて金床に乗せ槌で叩いて成型していた。
俺に気がつくと
「坊主、名前は?」
「僕はレオナルド」 お、うまく言えたぞ
「そうか、わしはバルカス。
鍛冶師だ。
見作業をていておもしれーか?
見ていてもいいが、火傷するから触るんじゃねーぞ」
俺はコクンと頷いて周りを見ると神棚があった。
きっと鍛治の神様の神だろう、とりあえず手を合わせて「よろしくお願いします」と挨拶をすると周りの風景が工房から真っ白な部屋に変わり、そこにはバイキングのようながっしりとした風貌の老人がいた。
「初顔合わせじゃな、わしは工業生産の神じゃ。
主神様からお主のことを聞いていたからいつ会えるか楽しみにしておったが、随分早く会うことができたのう。
鍛冶に興味があるようじゃが、将来は鍛冶師になりたいのか?」
「いえ、大きくなったら世界を冒険してみたいと思っています。
冒険をするには自分が思うような武器が欲しいのですが、簡単に見つかるとは思えません。
探す時間が勿体無いので自分で作れるようになろうと思っています」
「そうか、主神様からもお前と関わる事があれば宜しく頼むと言われておるのでな、わしの加護を与えておく、生産が楽になるはずじゃ」
「ありがとうございます」
「よいよい、では頑張るのじゃぞ」
白い風景が消え、目の前には神棚が見えていた。
一礼すると壁際にある椅子によじ登って作業を眺め始めた。
何やら剣を鍛えているようだが、よく見ると握りしめている槌がぼんやりとした紫の光に包まれているように見えた。
鍛えている綱の赤みが消え始めると再び火戸の中に入れられた。
男が火戸の中に空気を送ると再び綱は赤熱し輝き始める。
火戸の中をよく見ると、真っ赤な小人が手を繋いで踊っているのが見えた。
俺の視線を感じたのか一人がこちらに振り向いて愛想笑いをしながら手を振ってきたので俺も手を振ってあげた。
俺が見えているのが分かったのか、全員がジャンプしたり手を振ったりしている。
「今日は火炉の調子が良いな、簡単に火力が上がりやがる。」
鍛治の親方が嬉しそうに火戸に入れた鋼材を取り出し作業を続ける。
空気を送らなくなった火戸の中はさっきまで踊っていた小人たちが木炭の上に腰掛けたり隙間に潜り込んだりしている。
俺をみている子に向かって万歳するとその子も万歳をしたので、頭の上で手を叩いてみせると真似をして手を叩いた。
俺の仕草を真似するのが面白くてしばらく遊んでいると火戸の中の炎が大きく膨れて中から大きなトカゲが現れ、俺の方を見たと思ったら燃え上がり女性の姿へと変化した。
「心地よい波動を感じると妖精たちから聞いて見にきたら可愛い赤ちゃんじゃない。
あらまあ、お口をポカンと開けて、びっくりさせちゃったかしら。
私の姿を見られるなんて凄くレアな事なんだけどその辺もわかってないでしょうね。
私は炎の精霊王サラマンドラ、あなたは鍛治に興味があるのかしら?」
俺はこくんと頷いた。
「こんなに小さいのに意味がわかっているのかしら?
まあ良いか、頷いたんだから興味があるってことにしておきましょう。
こんなに精霊たちが懐くのもあなたの心が優しいからなのかな、あなたならあげて問題ないでしょう」
そう言い掌を広げると握っていたものを俺の方に向かって吹きかけた。
キラキラしてとても綺麗な火の粉のような物は俺に触れたが熱くなかった。
(今の何だったんだろう?)
「加護をあげたのよ、きっと君の役にたつと思うわ
それじゃあまた会いましょう」
そう言うとサラマンドラは揺らめき火戸の中に消えて行った。
(炎の精霊ってトカゲの妖精だと思ったら人型の綺麗な女性だった)
椅子から降りて視線を金床で剣を鍛えている親方に向けると、親方は作業が佳境に達しようとしていたのであろう。
椅子から降りた俺に気がつかないので、気が散らないように俺はこっそりと作業小屋から出て屋敷へと向かった。
庭を歩いているといつもに増して小さな精霊たちがたくさん俺に近寄ってきた。
どう言うわけか精霊たちが俺に寄ってきているようだ。
部屋のレバータイプのドアノブに手を伸ばしてドアを開けて部屋に戻ると靴を脱ぎ捨て壁際のソファに上がりステータスを開いて見た。
【名前】 レオナルド・アストレア
【年齢】 1
【種族】 ヒューマン
【職種】
【称号】 異世界人
【レベル】 1
【HP】 (体力) 183/183
【MP】 (魔力) 6224/6224
【STR】 (力) 205
【DEX】 (敏捷性) 230
【CON】 (体力) 210
【INT】 (知能) 531
【VIT】 (精神) 620
【LUC】 (運) 80
【状態】 正常
【魔法】 全属性適正
【スキル】 飛翔Lv2
鑑定Lv1
マップLv2
状態異常耐性Lv5
心身異常耐性Lv5
【ユニークスキル】 偽装LvMAX
アイテムボックス∞(状態保持可能)
回復力強化Lv5
ナビゲーター
マルチタッチスクリーン
魔法創造
【加護】 始神の加護・主神の加護・工業生産神の加護
風の精霊王の加護・水の精鋭王の加護
火の精霊王の加護・土の精霊王の加護
魔力量が少し増えているのは毎日の鍛錬のおかげなのであろうが、飛翔がLv2、それからマップもLv2に上がっている。
加護がやたらと増えている。
(風は最初に貰って、水と火は今日貰ったから付いているのは分かる。
土の精霊王って何だ? いつの間に加護をくれたんだよ!)
『土の精霊王の加護は鍛治小屋から屋敷に歩いている途中に付与されました。
私が聞いた音声の記録では
「精霊王四人のうち三人がカゴを与えているのに私が与えなかったら意地悪をしていると思われるじゃ無い、失礼しちゃうわね全く。
気難しいウンディーネが加護を与えるくらいだから、良い子なんでしょう。
まぁ、よく見ると可愛らしい子ね。
あらあら、あんなに沢山の精霊に囲まれちゃって楽しそう。
とりあえず加護を与えておきましょう、びっくりする顔を見たいわ~
今度ゆっくり会いに来ようっと。」
記録は以上のようです。』
『ああ、きっと帰り道でものすごい数の精霊が周りに集まった時だな
あれ、LUCが80になってる。誘拐から逃れたのと加護をもらえたのもこれのおかげかな』
『LUCは日頃の行いで上下します。
通常は50前後です』
『と言うことは、悪運が強いってのはこの世界では無いんだね』
『はい、この世界では神が悪行とみなす行為を行う者はLUCが下げられます』
『それじゃあステータスを鑑定してLUCが高い人は善人なの?』
『統計上LUC70以上の人は善人と言って差し支えないと思われます。』
『ふ~ん、良いことを聞いた。
これからは出来るだけ鑑定した方が安全だね』
『黙って鑑定や看破を使うのはマナー違反になりますので、鑑定を行う時はお気をつけください。』
言われてみればその通りである。
自分の秘密を見られて気分を悪くしない者がいるはずがないのだ。
特にレオナルドのような特殊なステータスを持つ者は見られたくないはずである。
『ステータスの鑑定を阻害するようなアイテムってあるのかな?』
『鑑定を阻害する魔法を付与した様々なアイテムが存在していますが、相手の鑑定レベルが高い場合は効果が薄くなります。』
(ん?魔法創造ってのがあるぞ)
スクリーンの魔法創造をタッチすると説明文がポップアップした。
【魔法創造】
主神と4大精霊の加護を受ける事によって得ることができるスキル。
条件が整い、魔力を消費する事で新しい魔法を取得できる。
『条件ってなに?』
『原理や構造を正しく理解し魔法を構成する事です。
地球上での物理や化学の理論を知っているマスターは容易に魔法を取得できると思われます』
『正しく理解するだけで新しい魔法を使えるようになるの?』
『いえ、取得時に多くの魔力を消費しますので、必要な魔力量を持っていなければ取得できません』
『ふ~ん、そうなんだ』
次に工業生産神の加護をタッチしてみた
【工業生産神の加護】
生産系スキルを取得しやすくなる
生産成功率が上昇する
生産物のステータス上昇率が増加
合成及びエンチャント失敗率が低下し失敗時のアイテム破壊回避率上昇
加護の効果は生産系の職人が泣いて喜びそうな内容だった。
新しいスキルが増えていたことや加護が増えた事で嬉しくなり、ステータススクリーンを消すと上機嫌でいつもの鍛錬とを開始した。
最近魔力操作以外に、部屋の中で魔法の練習も始めている。
例えば、小さな火を出して少しずつ大きくし、3㎝位になったら手のひらの上で回転させ、徐々にスピードを上げて10㎝の小さな炎の竜巻に成長させ、その状態から赤い炎が超高温の青白い色になるまで魔力を込めてゆくとか、窓の外を飛ぶハエや蚊を極小の水魔法で撃ち落としたり風魔法で切断して精度を上げたりする練習だ。
今日は新しい練習を試してみるつもりだ。
それは右手と左手に異なる魔法を生成して同時に打ち出す練習だ。
『さて、練習しよ~っと』
レオナルドは他の人が嫌になるような反復練習を苦にせず行う事ができる、実はこれが一番の才能だという事に本人は気がついていなかった。
アドリアの王都マルフィスは地中海性気候で湿度が低い為、日陰に入れば結構涼しい。
屋敷の各部屋では魔石を使用した魔導扇風機が稼働しているので快適に過ごすことができる。
最近魔法の練習も進んで多少の攻撃魔法も出すことができるようになったし、風魔法など精霊の加護があるのでは中位のストームを使えるようになっていた。
なぜ風の精霊の加護を受けていたか考えて見ると思い当たる節があった。
魔法を覚え始めた頃に、窓辺のカーテンが風で揺れて小さな羽根付きの小人見えたので眺めていると近づいてきて周りをくるくる回ったりしていた。
一緒になって遊んでいるといつのまにか沢山の風の精霊が遊びに来るようになっていた。
夏になって水辺に行くことが多くなると風の精霊とは違う色の精霊も混じって遊んでいるのが目に付くようになった。
水辺に沢山いる事から水の精霊であろうと思っていたのだが、それは間違っていなかったようだ。
ある日、屋敷の近くにある綺麗な湖に連れて行かれた時に突然目の前の水面が持ち上がり精霊の女王が現れた。
突然だったのでポカンとしていると一方的に話し始めた。
「初めまして、私は水の精霊王です。あなたのことは精霊たちから聞いていますよ。
あなたの周りは居心地が良いと言って精霊が遊びに行っているようですね。
あの子達に悪気はないのですが多くの精霊が行ってしまい迷惑をおかけしていると思いますが、これからも遊んでやってくださいね。
あの子達がお世話になっているお礼に私の加護を差し上げますので受け取ってください」
そう言って俺のひたいに手を当てたと思ったら湖の中に消えて行った。
『なんだったんだ?水の精霊王と言っていたが、俺の話す間も無い位に一方的に話して話して消えて行ったぞ。
ミヤビ、水の精霊王の情報があれば教えてくれ』
『4大精霊の水を司る精霊の王、名前はウンディーネ
性格は温厚だが恥ずかしがり屋で気難しい一面があるので滅多に人前に姿を表すことはありません。
精霊たちを大切にするがあまり、過去には害を与えられた場所の精霊たちを全て他の場所に移動させた為、その場所は砂漠と化してしまった事もあります。
精霊王の加護を与えられたものは過去に数人いましたが、現在はモルト農国の国王一人ですのでマスターは二人目となります』
『なるほど、きっと恥ずかしがり屋だから一方的に話して消えて行ったんだな。
そういえば、モルト農国って初めて聞いたけど、どんな国?』
『モルト農国 はゴンドア大陸の西に位置しており、人口は210万人・国土は286万㎢です。
接する国はアルフヘイムエルフ国・バライカ帝国・スウィード共和国・グスタフ帝国・エイム王国の5カ国です。
過去にグスタフ帝国による侵略を受けましたが、ウンディーネの怒りを買い、グスタフ帝国のあらゆる水が腐り、雨が全く降らなくなった為、侵略開始1ヶ月後にはグスタフ帝国が撤退して賠償金を支払っております。
他の4カ国とは友好関係も良く、農産物の輸入国として取引があるようです。
国王と貴族が存在しますが、初代国王が爵位の順番を変更して上位より男爵・公爵・公爵・伯爵・子爵・庄屋爵と言う変わった物になっています。』
『男爵が一番上なんて、洒落がきいている。
でも初代国王って絶対に転生者でしょ、ついでにモルト農国の特産物って
ジャガイモなんじゃない?』
『モルト王国は冒険者が土地を開拓して住民を集めて建国したのが国の成り立ちです。
主な農産物はジャガイモと乳製品です。
今から200ほど前、どこからともなく現れた冒険者が、あっという間にSSランクの冒険者になり、高ランクの魔獣が跳梁跋扈する地を開拓したと記録に残っています。
記録では冒険者は日本の北海道から転移したチハルという男性だそうです』
『やっぱり転生者だったか、一度見に行ってみたいな。アドリア王国に無い農産物がいっぱいありそうだ』
雅と話していると突然後ろから抱きかかえられた。
「レオちゃん、あまり湖に近づくと危ないよ。
お母さんとお家に戻ってお昼ご飯にしましょう」
馬車に乗せられ家に帰ると屋敷の隅にある小屋から金属を叩く音がしていた。
小屋で何をしているのか気になったのでお昼ご飯を食べるとすぐ歩いて覗きに行った。
小屋のドアや窓は開いていて、屋根の煙突からは煙が上がっている。
リズミカルに金属音が聞こえることからここは鍛冶小屋なのであろう。
中に入ると背は高く無いが筋肉の塊のような男が火戸(火で金属を熱する場所)の中で熱した金属を火箸で掴み上げて金床に乗せ槌で叩いて成型していた。
俺に気がつくと
「坊主、名前は?」
「僕はレオナルド」 お、うまく言えたぞ
「そうか、わしはバルカス。
鍛冶師だ。
見作業をていておもしれーか?
見ていてもいいが、火傷するから触るんじゃねーぞ」
俺はコクンと頷いて周りを見ると神棚があった。
きっと鍛治の神様の神だろう、とりあえず手を合わせて「よろしくお願いします」と挨拶をすると周りの風景が工房から真っ白な部屋に変わり、そこにはバイキングのようながっしりとした風貌の老人がいた。
「初顔合わせじゃな、わしは工業生産の神じゃ。
主神様からお主のことを聞いていたからいつ会えるか楽しみにしておったが、随分早く会うことができたのう。
鍛冶に興味があるようじゃが、将来は鍛冶師になりたいのか?」
「いえ、大きくなったら世界を冒険してみたいと思っています。
冒険をするには自分が思うような武器が欲しいのですが、簡単に見つかるとは思えません。
探す時間が勿体無いので自分で作れるようになろうと思っています」
「そうか、主神様からもお前と関わる事があれば宜しく頼むと言われておるのでな、わしの加護を与えておく、生産が楽になるはずじゃ」
「ありがとうございます」
「よいよい、では頑張るのじゃぞ」
白い風景が消え、目の前には神棚が見えていた。
一礼すると壁際にある椅子によじ登って作業を眺め始めた。
何やら剣を鍛えているようだが、よく見ると握りしめている槌がぼんやりとした紫の光に包まれているように見えた。
鍛えている綱の赤みが消え始めると再び火戸の中に入れられた。
男が火戸の中に空気を送ると再び綱は赤熱し輝き始める。
火戸の中をよく見ると、真っ赤な小人が手を繋いで踊っているのが見えた。
俺の視線を感じたのか一人がこちらに振り向いて愛想笑いをしながら手を振ってきたので俺も手を振ってあげた。
俺が見えているのが分かったのか、全員がジャンプしたり手を振ったりしている。
「今日は火炉の調子が良いな、簡単に火力が上がりやがる。」
鍛治の親方が嬉しそうに火戸に入れた鋼材を取り出し作業を続ける。
空気を送らなくなった火戸の中はさっきまで踊っていた小人たちが木炭の上に腰掛けたり隙間に潜り込んだりしている。
俺をみている子に向かって万歳するとその子も万歳をしたので、頭の上で手を叩いてみせると真似をして手を叩いた。
俺の仕草を真似するのが面白くてしばらく遊んでいると火戸の中の炎が大きく膨れて中から大きなトカゲが現れ、俺の方を見たと思ったら燃え上がり女性の姿へと変化した。
「心地よい波動を感じると妖精たちから聞いて見にきたら可愛い赤ちゃんじゃない。
あらまあ、お口をポカンと開けて、びっくりさせちゃったかしら。
私の姿を見られるなんて凄くレアな事なんだけどその辺もわかってないでしょうね。
私は炎の精霊王サラマンドラ、あなたは鍛治に興味があるのかしら?」
俺はこくんと頷いた。
「こんなに小さいのに意味がわかっているのかしら?
まあ良いか、頷いたんだから興味があるってことにしておきましょう。
こんなに精霊たちが懐くのもあなたの心が優しいからなのかな、あなたならあげて問題ないでしょう」
そう言い掌を広げると握っていたものを俺の方に向かって吹きかけた。
キラキラしてとても綺麗な火の粉のような物は俺に触れたが熱くなかった。
(今の何だったんだろう?)
「加護をあげたのよ、きっと君の役にたつと思うわ
それじゃあまた会いましょう」
そう言うとサラマンドラは揺らめき火戸の中に消えて行った。
(炎の精霊ってトカゲの妖精だと思ったら人型の綺麗な女性だった)
椅子から降りて視線を金床で剣を鍛えている親方に向けると、親方は作業が佳境に達しようとしていたのであろう。
椅子から降りた俺に気がつかないので、気が散らないように俺はこっそりと作業小屋から出て屋敷へと向かった。
庭を歩いているといつもに増して小さな精霊たちがたくさん俺に近寄ってきた。
どう言うわけか精霊たちが俺に寄ってきているようだ。
部屋のレバータイプのドアノブに手を伸ばしてドアを開けて部屋に戻ると靴を脱ぎ捨て壁際のソファに上がりステータスを開いて見た。
【名前】 レオナルド・アストレア
【年齢】 1
【種族】 ヒューマン
【職種】
【称号】 異世界人
【レベル】 1
【HP】 (体力) 183/183
【MP】 (魔力) 6224/6224
【STR】 (力) 205
【DEX】 (敏捷性) 230
【CON】 (体力) 210
【INT】 (知能) 531
【VIT】 (精神) 620
【LUC】 (運) 80
【状態】 正常
【魔法】 全属性適正
【スキル】 飛翔Lv2
鑑定Lv1
マップLv2
状態異常耐性Lv5
心身異常耐性Lv5
【ユニークスキル】 偽装LvMAX
アイテムボックス∞(状態保持可能)
回復力強化Lv5
ナビゲーター
マルチタッチスクリーン
魔法創造
【加護】 始神の加護・主神の加護・工業生産神の加護
風の精霊王の加護・水の精鋭王の加護
火の精霊王の加護・土の精霊王の加護
魔力量が少し増えているのは毎日の鍛錬のおかげなのであろうが、飛翔がLv2、それからマップもLv2に上がっている。
加護がやたらと増えている。
(風は最初に貰って、水と火は今日貰ったから付いているのは分かる。
土の精霊王って何だ? いつの間に加護をくれたんだよ!)
『土の精霊王の加護は鍛治小屋から屋敷に歩いている途中に付与されました。
私が聞いた音声の記録では
「精霊王四人のうち三人がカゴを与えているのに私が与えなかったら意地悪をしていると思われるじゃ無い、失礼しちゃうわね全く。
気難しいウンディーネが加護を与えるくらいだから、良い子なんでしょう。
まぁ、よく見ると可愛らしい子ね。
あらあら、あんなに沢山の精霊に囲まれちゃって楽しそう。
とりあえず加護を与えておきましょう、びっくりする顔を見たいわ~
今度ゆっくり会いに来ようっと。」
記録は以上のようです。』
『ああ、きっと帰り道でものすごい数の精霊が周りに集まった時だな
あれ、LUCが80になってる。誘拐から逃れたのと加護をもらえたのもこれのおかげかな』
『LUCは日頃の行いで上下します。
通常は50前後です』
『と言うことは、悪運が強いってのはこの世界では無いんだね』
『はい、この世界では神が悪行とみなす行為を行う者はLUCが下げられます』
『それじゃあステータスを鑑定してLUCが高い人は善人なの?』
『統計上LUC70以上の人は善人と言って差し支えないと思われます。』
『ふ~ん、良いことを聞いた。
これからは出来るだけ鑑定した方が安全だね』
『黙って鑑定や看破を使うのはマナー違反になりますので、鑑定を行う時はお気をつけください。』
言われてみればその通りである。
自分の秘密を見られて気分を悪くしない者がいるはずがないのだ。
特にレオナルドのような特殊なステータスを持つ者は見られたくないはずである。
『ステータスの鑑定を阻害するようなアイテムってあるのかな?』
『鑑定を阻害する魔法を付与した様々なアイテムが存在していますが、相手の鑑定レベルが高い場合は効果が薄くなります。』
(ん?魔法創造ってのがあるぞ)
スクリーンの魔法創造をタッチすると説明文がポップアップした。
【魔法創造】
主神と4大精霊の加護を受ける事によって得ることができるスキル。
条件が整い、魔力を消費する事で新しい魔法を取得できる。
『条件ってなに?』
『原理や構造を正しく理解し魔法を構成する事です。
地球上での物理や化学の理論を知っているマスターは容易に魔法を取得できると思われます』
『正しく理解するだけで新しい魔法を使えるようになるの?』
『いえ、取得時に多くの魔力を消費しますので、必要な魔力量を持っていなければ取得できません』
『ふ~ん、そうなんだ』
次に工業生産神の加護をタッチしてみた
【工業生産神の加護】
生産系スキルを取得しやすくなる
生産成功率が上昇する
生産物のステータス上昇率が増加
合成及びエンチャント失敗率が低下し失敗時のアイテム破壊回避率上昇
加護の効果は生産系の職人が泣いて喜びそうな内容だった。
新しいスキルが増えていたことや加護が増えた事で嬉しくなり、ステータススクリーンを消すと上機嫌でいつもの鍛錬とを開始した。
最近魔力操作以外に、部屋の中で魔法の練習も始めている。
例えば、小さな火を出して少しずつ大きくし、3㎝位になったら手のひらの上で回転させ、徐々にスピードを上げて10㎝の小さな炎の竜巻に成長させ、その状態から赤い炎が超高温の青白い色になるまで魔力を込めてゆくとか、窓の外を飛ぶハエや蚊を極小の水魔法で撃ち落としたり風魔法で切断して精度を上げたりする練習だ。
今日は新しい練習を試してみるつもりだ。
それは右手と左手に異なる魔法を生成して同時に打ち出す練習だ。
『さて、練習しよ~っと』
レオナルドは他の人が嫌になるような反復練習を苦にせず行う事ができる、実はこれが一番の才能だという事に本人は気がついていなかった。
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サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
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