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アドリア王国編
4話 誘拐
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「ガタゴト」「ガラガラガラ」
寝心地の悪さと、周囲の騒音で目が覚めた。
目を開けると見慣れた天井ではなく、薄汚れた幌が見える。
どうやら幌馬車の荷台のようだ。
『あれ、ここはどこ?』
『幌馬車の荷台です』
『なんで幌馬車に乗せられているのかな?』
『どうやらマスターは誘拐されたようです』
俺が誘拐されたというのに、雅の音声はいつもと変わらない冷静なものだった。
俺は起き上がろうとしたが、ふわふわ安定しない上に馬車が振動を吸収する作りになっていないようで踏ん張りがきかないので飛翔を使って少し体を浮かせて立ち上がり周りを見たが荷台には俺一人のようだった。
なにやら御者代で人が話しているようなので聞き耳を立てて見た。
「おい、そろそろ良いだろう。
追っ手が出ていればもう追いつかれている、これだけ来ないという事はまだ気がついていないか、追っ手を巻いたって事だ」
「そうかい、何か嫌な予感がするんだけどねぇ」。
「それはおめえが臆病だからだ、臆病ってのはこの商売やるからにゃ必要だが、臆病すぎると成功する事も失敗してしまうぞ」
『男の声は聞いたことが無いが、女の声は聞き覚えがある。
雅、この声の女は俺の知っている人間か?』
『はい、アストレア家へ2年前から勤めている給仕で名前カリア年齢23ヒューマンです』
『昨日ジェームスが話していた誘拐犯一味だな、一体何人の組織なんだろう?
気になるけど、 このまま寝たふりをしてアジトまで行くのは危険だよね』
『マスターの現在の戦力では対応不可能だと思われますので、気がつかれていないうちに逃げ出すのが良いと思われます』
『確かにそうだね、逃げよう』
こっそり後ろの幌の間から抜け出せることを確認すると小さなファイアーボールをさっきまで寝ていた場所に投げつけて飛翔で50メートル程飛び上がった。
御者台の二人は俺が逃げ出したことに気がついていないようだ。
上空から馬車の様子を見ているとあっという間に燃え上がり御者台から転げ落ちるように逃げ出す二人の姿が見えたので満足して高度を300mくらいまで上げた。
屋敷へ戻る為、マップを出して位置を確認すると北へ30㎞ほど離れた場所だった。
『雅、あの二人をマーキングして追跡することは可能?』
『相手の位置確認や気配察知する探知能力はマスターの能力の範囲を超えることはできませんので現状では不可能です』
『あらら、練習すれば探知範囲は広くなる?』
『はい、十分可能と思われます』
『仕方がない、屋敷に帰ろう』
まだ練習中なので飛行する最高速度は時速60㎞とそれほど速くはない、30分かけて家に戻ると家の中は蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていた。
玄関のドアを手でバンバン叩くと誰かが気が付き、ドアが開けられた。
ドアを開けたのはマリーだったようだ、俺に気がつくとすぐに抱き上げ屋敷の奥に大声を出しながら走り始めた。
ドタドタドタ
「旦那様ー、レオナルド様が
レオナルド様がいらっしゃいましたー!」
「レオちゃーーーーーーん」
お母さんが走って部屋から出てきた、カーブさんとシュートさんそれに父ジェームスは俺を連れ去った犯人がまだ近くにいないか屋敷の周囲の気配を探っている。
「ダメだ、周囲500メートルには気配は感じられん」
「そうか、仕方がない。
どうやら2年前雇った給仕が犯行グループの引き込みだったようだな。
準備に2年もかけるなんて生半可な誘拐グループではないようだな、伯爵家にも知らせて犯行後屋敷をやめた者がいないか確認してみよう。
それにしても、レオナルドはどうやって帰ってきたんだ?」
『ジェームスが俺を見ている、なんとかして誤魔化さなければ!』
アイダに抱かれながらジェームスに答えた
「ゆっくいはしってやから、えいって落ちたの」
「馬車から飛び降りたのか、怪我はしていないか?
痛いところはないか?」
「だいじょぶ」
「そうか、痛かったら言うんだぞ」
気持ちよく飲んでいたアルコールはどこかに吹き飛び、残された手紙を見ながら何かを考えていたようだがこの夜はこれでお開きにし、家中の鍵をかけて親子川の字になって眠った。
夜が明け来客が帰った後しばらくすると騎士団の赤狼騎士隊の隊員が十人やってきた。
「隊長、参りました!」
「ご苦労、詳細はシュートから聞いたか?
よりによって、俺の大事な息子を誘拐しようとした輩がいる
誰も訴え出ていないが他にも被害にあった者もいるだろう。
黒梟騎士団に連絡を取って探らせてくれ。
屋敷は今日より常時八人体制で警備を頼む」
「了解しました」
今日まで知らなかったのだが、父ジェームスは赤狼騎士隊の隊長だった。
家の中に仕事を持って帰らないので知らなかったのだ。
昼行灯だと思っていたのが実力で五千人からの騎士隊員をまとめる隊長だったなんて、カッコ良いではないか。
世襲で親の爵位を注いだだけの男だと思っていたのが騎士隊の隊長と知ってジェームスを見直した。
5日ほどすると諜報部門の黒梟騎士団による調査で主犯やその仲間の名前は分かったのだが時すでに遅く国外へ逃げられた後であった。
この頃あちらこちらの貴族の屋敷のメイドや給仕、コックなど突然失踪すると言う事件が多数発生した。。
どの人間も2年以上屋敷で勤め主人から信頼されているものばかりであった。
寝心地の悪さと、周囲の騒音で目が覚めた。
目を開けると見慣れた天井ではなく、薄汚れた幌が見える。
どうやら幌馬車の荷台のようだ。
『あれ、ここはどこ?』
『幌馬車の荷台です』
『なんで幌馬車に乗せられているのかな?』
『どうやらマスターは誘拐されたようです』
俺が誘拐されたというのに、雅の音声はいつもと変わらない冷静なものだった。
俺は起き上がろうとしたが、ふわふわ安定しない上に馬車が振動を吸収する作りになっていないようで踏ん張りがきかないので飛翔を使って少し体を浮かせて立ち上がり周りを見たが荷台には俺一人のようだった。
なにやら御者代で人が話しているようなので聞き耳を立てて見た。
「おい、そろそろ良いだろう。
追っ手が出ていればもう追いつかれている、これだけ来ないという事はまだ気がついていないか、追っ手を巻いたって事だ」
「そうかい、何か嫌な予感がするんだけどねぇ」。
「それはおめえが臆病だからだ、臆病ってのはこの商売やるからにゃ必要だが、臆病すぎると成功する事も失敗してしまうぞ」
『男の声は聞いたことが無いが、女の声は聞き覚えがある。
雅、この声の女は俺の知っている人間か?』
『はい、アストレア家へ2年前から勤めている給仕で名前カリア年齢23ヒューマンです』
『昨日ジェームスが話していた誘拐犯一味だな、一体何人の組織なんだろう?
気になるけど、 このまま寝たふりをしてアジトまで行くのは危険だよね』
『マスターの現在の戦力では対応不可能だと思われますので、気がつかれていないうちに逃げ出すのが良いと思われます』
『確かにそうだね、逃げよう』
こっそり後ろの幌の間から抜け出せることを確認すると小さなファイアーボールをさっきまで寝ていた場所に投げつけて飛翔で50メートル程飛び上がった。
御者台の二人は俺が逃げ出したことに気がついていないようだ。
上空から馬車の様子を見ているとあっという間に燃え上がり御者台から転げ落ちるように逃げ出す二人の姿が見えたので満足して高度を300mくらいまで上げた。
屋敷へ戻る為、マップを出して位置を確認すると北へ30㎞ほど離れた場所だった。
『雅、あの二人をマーキングして追跡することは可能?』
『相手の位置確認や気配察知する探知能力はマスターの能力の範囲を超えることはできませんので現状では不可能です』
『あらら、練習すれば探知範囲は広くなる?』
『はい、十分可能と思われます』
『仕方がない、屋敷に帰ろう』
まだ練習中なので飛行する最高速度は時速60㎞とそれほど速くはない、30分かけて家に戻ると家の中は蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていた。
玄関のドアを手でバンバン叩くと誰かが気が付き、ドアが開けられた。
ドアを開けたのはマリーだったようだ、俺に気がつくとすぐに抱き上げ屋敷の奥に大声を出しながら走り始めた。
ドタドタドタ
「旦那様ー、レオナルド様が
レオナルド様がいらっしゃいましたー!」
「レオちゃーーーーーーん」
お母さんが走って部屋から出てきた、カーブさんとシュートさんそれに父ジェームスは俺を連れ去った犯人がまだ近くにいないか屋敷の周囲の気配を探っている。
「ダメだ、周囲500メートルには気配は感じられん」
「そうか、仕方がない。
どうやら2年前雇った給仕が犯行グループの引き込みだったようだな。
準備に2年もかけるなんて生半可な誘拐グループではないようだな、伯爵家にも知らせて犯行後屋敷をやめた者がいないか確認してみよう。
それにしても、レオナルドはどうやって帰ってきたんだ?」
『ジェームスが俺を見ている、なんとかして誤魔化さなければ!』
アイダに抱かれながらジェームスに答えた
「ゆっくいはしってやから、えいって落ちたの」
「馬車から飛び降りたのか、怪我はしていないか?
痛いところはないか?」
「だいじょぶ」
「そうか、痛かったら言うんだぞ」
気持ちよく飲んでいたアルコールはどこかに吹き飛び、残された手紙を見ながら何かを考えていたようだがこの夜はこれでお開きにし、家中の鍵をかけて親子川の字になって眠った。
夜が明け来客が帰った後しばらくすると騎士団の赤狼騎士隊の隊員が十人やってきた。
「隊長、参りました!」
「ご苦労、詳細はシュートから聞いたか?
よりによって、俺の大事な息子を誘拐しようとした輩がいる
誰も訴え出ていないが他にも被害にあった者もいるだろう。
黒梟騎士団に連絡を取って探らせてくれ。
屋敷は今日より常時八人体制で警備を頼む」
「了解しました」
今日まで知らなかったのだが、父ジェームスは赤狼騎士隊の隊長だった。
家の中に仕事を持って帰らないので知らなかったのだ。
昼行灯だと思っていたのが実力で五千人からの騎士隊員をまとめる隊長だったなんて、カッコ良いではないか。
世襲で親の爵位を注いだだけの男だと思っていたのが騎士隊の隊長と知ってジェームスを見直した。
5日ほどすると諜報部門の黒梟騎士団による調査で主犯やその仲間の名前は分かったのだが時すでに遅く国外へ逃げられた後であった。
この頃あちらこちらの貴族の屋敷のメイドや給仕、コックなど突然失踪すると言う事件が多数発生した。。
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