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アドリア王国編
11話 家庭教師
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ダイニングルームに入るとテーブルにカーブさんとシュートさんがお供を連れて座っていた。
なんでも騎士団と魔法師団の合同練習の打ち合わせの為に公爵邸にていたのだが、レオナルドの剣と魔法の先生が欲しいとジェームスに頼まれたので打ち合わせ後家に連れてきたそうだ。
ジェームスに紹介して帰ろうとした時に今夜はレッドベアのステーキだと聞いたのでそのまま居座ってご相伴に与かろうとしているらしい。
(とりあえず挨拶しておこう)
「こんばんは~」
「こんばんは、レオナルドくん。
隣にいるのが明日から剣の先生をするロイ・マルケッティだ。
まだ若いが小隊長を任されている。
剣の腕は確かだぞ」
「明日からレオナルド君に剣の使い方を教えさせてもらうロイ・マルケッティです」
(どう見ても未成年だろ、この人高校生にしか見えないぞ。
16歳で成人だから高校生が騎士隊に入っていても問題ないのか。
教え方が上手ければ誰でも良いんだけど、心配だな~)
「レオナルドです、レオと呼んでください。僕は先生のことをロイ先生と呼びます」
「わかった。レオ君、よろしく」
「そちらが済みましたようなので、この子を紹介させて頂いて宜しいですか?」
「あ、はい。こんばんは、シュートさん」
「こんばんは、レオナルド君。
この子がレオナルド君に魔法を教えるサラ・カーチスです
実力は私が保証しますのでしっかり学んでください」
「レオと呼んでください僕はサラ先生と呼びます。
よろしくお願いします」
「サラ・カーチスです。
こちらこそ、よろしくお願いします」
二人の先生に挨拶を済まして席に着くとすぐに食事が始まり、前菜を食べるとメインのレッドベアのステーキがミディアムレアに焼かれて出てくると。カーブさんは待ってましたとばかりに食べ始めた。
「うまい、レッドベアの肉は格別だな。
どこから仕入れたんだ、こんなに新鮮なのを手に入れるのは大変だっただろ」
「この肉か?
これはうちのノワールが今日捕まえてきたんだ」
「ノワール・・・聞かない名前だな、公爵家お抱えの冒険者か?」
「いや、アイダの横に座ってる黒い方だ」
「え・・・あれって犬だよな、1匹で捕まえたのか?」
すくすく成長したので大型犬には見えるが、レッドベアの巨体から比べると遥かに小さく見える犬が仕留めたと聞いてカーブはものすごく驚いた。
「そうだ、仕留めて引きずって帰ってきたみたいだ」
「引きずって・・・・・、500キロ以上あるレッドベアだぞ、信じられん」
「見た俺がまだ信じられないんだ、聞いただけだと絶対に信じられないだろうな」
「騎士団の軍用犬にあんなに毛の長いやつはいないから、軍用犬じゃないんだよな。
どこで手に入れたんだ?
手に入れられるなら欲しいな」
「う~ん、どこでって言われると困るんだ。
あの2頭は、ある朝レオナルドが両手に抱えてダイニングに連れてきたんだ。
どこで見つけたのか全くわからん」
「そうなのか、残念だな。
あんなにモフモフで・・・」
(もしかして、カーブさんもモフフモフ愛好家)
カーブの視線を感じたのか、ノエルとノワールがアイダの後ろに隠れてしまった。
「物欲しそうにジロジロみるから、隠れてしまったじゃない。
ノエル、ノワール、心配しなくても他所にやったりしないからね」
アイダの言葉に安心したのか、その足にくっつくように姿を現し、そこに座った。
(しかし、この子たちどこまで大きくなるんだろう)
自分が大きくなったら乗れなくなってしまうのがとても残念で、もっと大きくなってくれないかと願ったのだ。
家庭教師の紹介を済ませ、目的のレッドベアの肉を堪能したカーブとシュートは食事を済ませると屋敷から引き上げていった。
帰宅するために屋敷を後にした一行の後ろ姿を見ながらジェームスがぼやいている
「あいつら、今日は忙しいから二人を紹介したらすぐに帰るといっていたのに。
レッドベアの肉があると知ると、用事は何時でも出来るとか言い出して、結局食べて帰っちゃったよ」
アイダは本当はジェームスが久しぶりのレッドベアを二人に振る舞いたかったのを理解していた。
「はいはい、そういう事にしておきましょうね
レオちゃん今日はもう遅いから早くおやすみなさい、明日から先生がいらっしゃるから、お寝坊はできませんよ」
「はーい」
**翌朝**
朝食後部屋に戻っているとマリーがやってきた。
「おはようございます、ロイ様がいらっしゃいました」
「今日は剣の練習だね」
動きやすい服を着てその上から剣帯を取り付けて庭に向かうと、そこにはロイが待っていた。
「おはようございます、ロイ先生」
「おはよう、レオ君
早速だが、練習を始めよう」
初日の練習は剣の素振りから始まり、初歩の型を教ところまで進んだ。
**************************************
ロイ視点
「おはよう、レオ君
早速だが、練習を始めよう」
(練習を始めようと言っても、2歳の幼児に何を教えればいいんだ?
まともに剣も振れないんじゃないか)
「レオ君、素振りから始めよう」
そう言ってロングソードの持ち方、足さばき、腰のに練りによる剣撃などを順に説明しながら動きを見せた。
レオナルドは動きを一度見ると、それを直ぐになぞって見せた。
攻撃と防御が一体となった騎士団の剣技は一度見ただけで覚え切れるほど単純なものではなかったがレオナルドはそれができた。
表面上だけだが複雑な動きをやって見せたのだ、まだ鋭さはないが2歳の幼児が動きの意味を理解し、それをやってのけたのだ。
(おいおい、初めに基本的な動きを教え、数ヶ月かけて基本ができたら
次の型を教えようと思っていたのに、なんて事だ)
「まだまだだが、少しは動けるようだね。
今日はその動きがスムーズに出来るようになるまで続けよう」
「はい!」
途中数度の休憩を含みながら昼まで基本動作を繰り返すと、あっという間に練習の時間が終了した。
「今日の練習はここまで。
次回の練習は1週間後だ、その時は型を教えるから基本の練習を毎日欠かさ内容に、いいかい」
「はい、わかりました」
「それじゃあ、また来週」
そう言ってレオナルドに挨拶をすると屋敷を後にした。
(すごく素直でいい子じゃないか、才能もありそうだし。1週間後が待ち遠しいな)
**************************************
翌日の朝
昨日より早い時間にマリーが呼びに来た。
「おはようございます、サラ様がいらっしゃいました、錬武場でお待ちになるそうです」
「はーい。今日は魔法の練習だね」
邸の近くにある錬武舘に行くとサラが錬武舘のテーブルに座って待っており、何やら机の上には本が置かれていた。
僕の姿をみると立ち上がり挨拶をして来た。
「おはよう、レオナルド君。
それでは魔法の練習を始めましょう」
「はい、サラ先生」
テーブルに座ると。魔法の講義が始まった。
いきなり実技をすると思っていたので少し肩透かしを食らった気がしたが、サラ先生は理論的な説明から始めた。
魔力とは、から始まり、地水火風、光闇聖氷雷などの属性や詠唱、それと魔法陣などの概要を初日に教えてもらったが、ナビゲーターの雅《みやび》から属性については聞いていたので詠唱と魔法陣以外は聞いていて退屈だった。
詠唱は魔力を現象に変換させる為の言葉であり、魔法陣は魔力を現象に変換させる為の変換術式で魔力の増幅や使うことができない魔法を使用可能にすることもできるそうだ。
「概要はこれくらいにして、これからの練習方法を考える為に今日は魔力量と適性をを測定します。
ちなみに私の魔力量は863で魔法師団では中の上程度です。
適性は水、氷、光の3つで、他の属性もいくつかは使う事はできますが、効率が落ちてしまう為戦闘時には使えません。
それでは測定しましょう」
『雅最近ステータス見てなかったから、どうなっているか分からない。至急偽装して』
『了解しました、魔法の練習をする為という事なので魔力を少し増やしておきますか?』
『そうだね、それと適正は火と光を入れてね』
『修正しました』
雅と対応している間に皿がポーチから魔法測定道具を取り出し机の上に置いた。
その形状は40㎝程の杖に螺旋状に加工された水晶が取り付けられ先端には8㎝の水晶玉が取り付けられていた。
「使い方は握るだけです。
まず私がやって見ましょう」
サラが測定道具を握ると螺旋状の水晶が光り始め先端の水晶玉に届くと水晶玉に数値と青色・水色・黄色の光点が現れた。
「あら、あ魔力量が少し増えていたみたい」
水晶玉の中には892と表示されていた。
「レオ君、どうぞ」
「はい」
両手で杖を握ると光り始め、水晶の中に数値と光点が現れた。
現れた数値は256、光点は赤と黄それになぜか白い点が現れていた。
「こんなに小さいのに256も魔力がある、適性も火・光・風の3つね。
まだ鍛えていないのにこの魔力量と適正は凄いわね、将来有望よ」
『雅、一つ多くない?』
『風属性は精霊王の加護がありますので外すとおかしな事になってしまいますので、適正に表示されるようにしました』
『あ、忘れてた。さすが雅、抜かりはないね』
『ありがとうございます』
サラは僕の方を見ると
「これだけの魔力量があれば次回からすぐに魔法を練習できるわね、フフフ
今日はこれまで、次は1週間後に来るから、それまでに誰かにこの本を読んでもらって置いてね。
まさか魔法が発動する事はないと思うけど、気をつけてね」
隣で待機していたマリーが「私が読み聞かせておきます」というのでサラは「お願いします」と言って席を立ち屋敷を去って行った。
僕は絵本を自分で見たいと言ってマリーから本を受け取り部屋に持って行った。
マリーもさすがに俺が字を読めるとは思っていないだろう。
部屋に入って本を開くと各属性の基本的な魔法と詠唱呪文、それと魔法陣が描かれていた。
(うわっ、なんだこの中二病みたいな呪文は、無理無理無理、恥ずかしくてこんなの言えない!)
『雅、詠唱なしで魔法を発動させると不味いかな?』
『無詠唱で魔法を発動できるのは魔法師団長クラスかAクラス以上の冒険者にわずかにいる程度です、判断はお任せします』
(判断は僕がするしかないんだな、無詠唱で行こう
幼児のやることだ、何をやっても驚かれるんだから思いっきりやろう)
昼食を屋敷で食べるとレオナルドは無詠唱で魔法を発動することを決め、新しい魔法の練習を始めた。
原理が分かれば新しい魔法を作り出せる気がしたので部屋で実験を開始した。
実はこの新しい魔法の為に大きな姿見鏡を4台準備していたのだ。
まずは前後左右で合わせ鏡を作りその間に入って光魔法のミラージュを発動させて自分の位置がずれて見える事を確認する。
(これは光の屈折で光が曲がっているんだな、これを利用して全方位から特定の
空間を光が迂回して反対側の光が見えるようにすると完成のはずだな)
試行錯誤を繰り返す事数十回、やっと完成した時は夕飯の知らせが来る前であった。
「よっしゃー!
やっと成功だ、新魔法オプティカルカモフラージュ、又の名を光学迷彩」
魔法を発動させ、合わせ鏡の間を通り抜け、自分の姿が見えたり景色が歪んだりしないか確認したが、まるで透明人間が歩いているようだった。
(これでいつでも屋敷を抜け出して魔法の練習ができるようになるな)
その時部屋にマリーが夕飯の知らせにやってきた。
「レオナルド様、お食事の時間です
あれ、いらっしゃいませんか?
どこに行っちゃたのかしら」
僕の姿が見つからなかったので、慌てて階段を降りて行くマリーについて行き、ダイニングの手前で魔法を解き一緒に入った。
「旦那様!レオナルド様に夕食のお知らせをしに行ったのですが、いらっしゃいませんでした」
「マリー、後ろにいるのは誰だ?」
ジェームスに言われて振り返るとそこにはレオナルドの姿があった。
「あれ、いつの間に後ろにいらっしゃったんですか?」
「かくれんぼしてたの」
「まあ、そうだったんですか、姿が見えなかったので心配しましたよ。
驚かせないでください」
「そうだぞレオ、誘拐未遂の件もあるから心配するような事をしちゃダメだぞ」
「はい、ごめんなさい。次からは気をつけます」
心配させた事を素直に謝り、テーブルに着き食事を済ませた。
食事を済ませると今日はノエルが部屋についてきた、先に入って光学迷彩を発動して姿を消すとノエルは部屋の中で周囲をキョロキョロし、見つからないので鼻を高くして匂いを嗅いで探し始めた。
ドアの近くに潜んでいると近づいてきて首を傾げている。
気配を感じて匂いの位置も見つけたが姿が見えないので不思議なようだ。
ベッドに上がって魔法を解くと突然僕の姿が現れたのでびっくりして飛び上がったが、すぐに近づいてきて体をすり寄せてきたので抱きかかえていたのだが、マリーが部屋の明かりを消しにきた時には既に寝息を立てていた。
なんでも騎士団と魔法師団の合同練習の打ち合わせの為に公爵邸にていたのだが、レオナルドの剣と魔法の先生が欲しいとジェームスに頼まれたので打ち合わせ後家に連れてきたそうだ。
ジェームスに紹介して帰ろうとした時に今夜はレッドベアのステーキだと聞いたのでそのまま居座ってご相伴に与かろうとしているらしい。
(とりあえず挨拶しておこう)
「こんばんは~」
「こんばんは、レオナルドくん。
隣にいるのが明日から剣の先生をするロイ・マルケッティだ。
まだ若いが小隊長を任されている。
剣の腕は確かだぞ」
「明日からレオナルド君に剣の使い方を教えさせてもらうロイ・マルケッティです」
(どう見ても未成年だろ、この人高校生にしか見えないぞ。
16歳で成人だから高校生が騎士隊に入っていても問題ないのか。
教え方が上手ければ誰でも良いんだけど、心配だな~)
「レオナルドです、レオと呼んでください。僕は先生のことをロイ先生と呼びます」
「わかった。レオ君、よろしく」
「そちらが済みましたようなので、この子を紹介させて頂いて宜しいですか?」
「あ、はい。こんばんは、シュートさん」
「こんばんは、レオナルド君。
この子がレオナルド君に魔法を教えるサラ・カーチスです
実力は私が保証しますのでしっかり学んでください」
「レオと呼んでください僕はサラ先生と呼びます。
よろしくお願いします」
「サラ・カーチスです。
こちらこそ、よろしくお願いします」
二人の先生に挨拶を済まして席に着くとすぐに食事が始まり、前菜を食べるとメインのレッドベアのステーキがミディアムレアに焼かれて出てくると。カーブさんは待ってましたとばかりに食べ始めた。
「うまい、レッドベアの肉は格別だな。
どこから仕入れたんだ、こんなに新鮮なのを手に入れるのは大変だっただろ」
「この肉か?
これはうちのノワールが今日捕まえてきたんだ」
「ノワール・・・聞かない名前だな、公爵家お抱えの冒険者か?」
「いや、アイダの横に座ってる黒い方だ」
「え・・・あれって犬だよな、1匹で捕まえたのか?」
すくすく成長したので大型犬には見えるが、レッドベアの巨体から比べると遥かに小さく見える犬が仕留めたと聞いてカーブはものすごく驚いた。
「そうだ、仕留めて引きずって帰ってきたみたいだ」
「引きずって・・・・・、500キロ以上あるレッドベアだぞ、信じられん」
「見た俺がまだ信じられないんだ、聞いただけだと絶対に信じられないだろうな」
「騎士団の軍用犬にあんなに毛の長いやつはいないから、軍用犬じゃないんだよな。
どこで手に入れたんだ?
手に入れられるなら欲しいな」
「う~ん、どこでって言われると困るんだ。
あの2頭は、ある朝レオナルドが両手に抱えてダイニングに連れてきたんだ。
どこで見つけたのか全くわからん」
「そうなのか、残念だな。
あんなにモフモフで・・・」
(もしかして、カーブさんもモフフモフ愛好家)
カーブの視線を感じたのか、ノエルとノワールがアイダの後ろに隠れてしまった。
「物欲しそうにジロジロみるから、隠れてしまったじゃない。
ノエル、ノワール、心配しなくても他所にやったりしないからね」
アイダの言葉に安心したのか、その足にくっつくように姿を現し、そこに座った。
(しかし、この子たちどこまで大きくなるんだろう)
自分が大きくなったら乗れなくなってしまうのがとても残念で、もっと大きくなってくれないかと願ったのだ。
家庭教師の紹介を済ませ、目的のレッドベアの肉を堪能したカーブとシュートは食事を済ませると屋敷から引き上げていった。
帰宅するために屋敷を後にした一行の後ろ姿を見ながらジェームスがぼやいている
「あいつら、今日は忙しいから二人を紹介したらすぐに帰るといっていたのに。
レッドベアの肉があると知ると、用事は何時でも出来るとか言い出して、結局食べて帰っちゃったよ」
アイダは本当はジェームスが久しぶりのレッドベアを二人に振る舞いたかったのを理解していた。
「はいはい、そういう事にしておきましょうね
レオちゃん今日はもう遅いから早くおやすみなさい、明日から先生がいらっしゃるから、お寝坊はできませんよ」
「はーい」
**翌朝**
朝食後部屋に戻っているとマリーがやってきた。
「おはようございます、ロイ様がいらっしゃいました」
「今日は剣の練習だね」
動きやすい服を着てその上から剣帯を取り付けて庭に向かうと、そこにはロイが待っていた。
「おはようございます、ロイ先生」
「おはよう、レオ君
早速だが、練習を始めよう」
初日の練習は剣の素振りから始まり、初歩の型を教ところまで進んだ。
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ロイ視点
「おはよう、レオ君
早速だが、練習を始めよう」
(練習を始めようと言っても、2歳の幼児に何を教えればいいんだ?
まともに剣も振れないんじゃないか)
「レオ君、素振りから始めよう」
そう言ってロングソードの持ち方、足さばき、腰のに練りによる剣撃などを順に説明しながら動きを見せた。
レオナルドは動きを一度見ると、それを直ぐになぞって見せた。
攻撃と防御が一体となった騎士団の剣技は一度見ただけで覚え切れるほど単純なものではなかったがレオナルドはそれができた。
表面上だけだが複雑な動きをやって見せたのだ、まだ鋭さはないが2歳の幼児が動きの意味を理解し、それをやってのけたのだ。
(おいおい、初めに基本的な動きを教え、数ヶ月かけて基本ができたら
次の型を教えようと思っていたのに、なんて事だ)
「まだまだだが、少しは動けるようだね。
今日はその動きがスムーズに出来るようになるまで続けよう」
「はい!」
途中数度の休憩を含みながら昼まで基本動作を繰り返すと、あっという間に練習の時間が終了した。
「今日の練習はここまで。
次回の練習は1週間後だ、その時は型を教えるから基本の練習を毎日欠かさ内容に、いいかい」
「はい、わかりました」
「それじゃあ、また来週」
そう言ってレオナルドに挨拶をすると屋敷を後にした。
(すごく素直でいい子じゃないか、才能もありそうだし。1週間後が待ち遠しいな)
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翌日の朝
昨日より早い時間にマリーが呼びに来た。
「おはようございます、サラ様がいらっしゃいました、錬武場でお待ちになるそうです」
「はーい。今日は魔法の練習だね」
邸の近くにある錬武舘に行くとサラが錬武舘のテーブルに座って待っており、何やら机の上には本が置かれていた。
僕の姿をみると立ち上がり挨拶をして来た。
「おはよう、レオナルド君。
それでは魔法の練習を始めましょう」
「はい、サラ先生」
テーブルに座ると。魔法の講義が始まった。
いきなり実技をすると思っていたので少し肩透かしを食らった気がしたが、サラ先生は理論的な説明から始めた。
魔力とは、から始まり、地水火風、光闇聖氷雷などの属性や詠唱、それと魔法陣などの概要を初日に教えてもらったが、ナビゲーターの雅《みやび》から属性については聞いていたので詠唱と魔法陣以外は聞いていて退屈だった。
詠唱は魔力を現象に変換させる為の言葉であり、魔法陣は魔力を現象に変換させる為の変換術式で魔力の増幅や使うことができない魔法を使用可能にすることもできるそうだ。
「概要はこれくらいにして、これからの練習方法を考える為に今日は魔力量と適性をを測定します。
ちなみに私の魔力量は863で魔法師団では中の上程度です。
適性は水、氷、光の3つで、他の属性もいくつかは使う事はできますが、効率が落ちてしまう為戦闘時には使えません。
それでは測定しましょう」
『雅最近ステータス見てなかったから、どうなっているか分からない。至急偽装して』
『了解しました、魔法の練習をする為という事なので魔力を少し増やしておきますか?』
『そうだね、それと適正は火と光を入れてね』
『修正しました』
雅と対応している間に皿がポーチから魔法測定道具を取り出し机の上に置いた。
その形状は40㎝程の杖に螺旋状に加工された水晶が取り付けられ先端には8㎝の水晶玉が取り付けられていた。
「使い方は握るだけです。
まず私がやって見ましょう」
サラが測定道具を握ると螺旋状の水晶が光り始め先端の水晶玉に届くと水晶玉に数値と青色・水色・黄色の光点が現れた。
「あら、あ魔力量が少し増えていたみたい」
水晶玉の中には892と表示されていた。
「レオ君、どうぞ」
「はい」
両手で杖を握ると光り始め、水晶の中に数値と光点が現れた。
現れた数値は256、光点は赤と黄それになぜか白い点が現れていた。
「こんなに小さいのに256も魔力がある、適性も火・光・風の3つね。
まだ鍛えていないのにこの魔力量と適正は凄いわね、将来有望よ」
『雅、一つ多くない?』
『風属性は精霊王の加護がありますので外すとおかしな事になってしまいますので、適正に表示されるようにしました』
『あ、忘れてた。さすが雅、抜かりはないね』
『ありがとうございます』
サラは僕の方を見ると
「これだけの魔力量があれば次回からすぐに魔法を練習できるわね、フフフ
今日はこれまで、次は1週間後に来るから、それまでに誰かにこの本を読んでもらって置いてね。
まさか魔法が発動する事はないと思うけど、気をつけてね」
隣で待機していたマリーが「私が読み聞かせておきます」というのでサラは「お願いします」と言って席を立ち屋敷を去って行った。
僕は絵本を自分で見たいと言ってマリーから本を受け取り部屋に持って行った。
マリーもさすがに俺が字を読めるとは思っていないだろう。
部屋に入って本を開くと各属性の基本的な魔法と詠唱呪文、それと魔法陣が描かれていた。
(うわっ、なんだこの中二病みたいな呪文は、無理無理無理、恥ずかしくてこんなの言えない!)
『雅、詠唱なしで魔法を発動させると不味いかな?』
『無詠唱で魔法を発動できるのは魔法師団長クラスかAクラス以上の冒険者にわずかにいる程度です、判断はお任せします』
(判断は僕がするしかないんだな、無詠唱で行こう
幼児のやることだ、何をやっても驚かれるんだから思いっきりやろう)
昼食を屋敷で食べるとレオナルドは無詠唱で魔法を発動することを決め、新しい魔法の練習を始めた。
原理が分かれば新しい魔法を作り出せる気がしたので部屋で実験を開始した。
実はこの新しい魔法の為に大きな姿見鏡を4台準備していたのだ。
まずは前後左右で合わせ鏡を作りその間に入って光魔法のミラージュを発動させて自分の位置がずれて見える事を確認する。
(これは光の屈折で光が曲がっているんだな、これを利用して全方位から特定の
空間を光が迂回して反対側の光が見えるようにすると完成のはずだな)
試行錯誤を繰り返す事数十回、やっと完成した時は夕飯の知らせが来る前であった。
「よっしゃー!
やっと成功だ、新魔法オプティカルカモフラージュ、又の名を光学迷彩」
魔法を発動させ、合わせ鏡の間を通り抜け、自分の姿が見えたり景色が歪んだりしないか確認したが、まるで透明人間が歩いているようだった。
(これでいつでも屋敷を抜け出して魔法の練習ができるようになるな)
その時部屋にマリーが夕飯の知らせにやってきた。
「レオナルド様、お食事の時間です
あれ、いらっしゃいませんか?
どこに行っちゃたのかしら」
僕の姿が見つからなかったので、慌てて階段を降りて行くマリーについて行き、ダイニングの手前で魔法を解き一緒に入った。
「旦那様!レオナルド様に夕食のお知らせをしに行ったのですが、いらっしゃいませんでした」
「マリー、後ろにいるのは誰だ?」
ジェームスに言われて振り返るとそこにはレオナルドの姿があった。
「あれ、いつの間に後ろにいらっしゃったんですか?」
「かくれんぼしてたの」
「まあ、そうだったんですか、姿が見えなかったので心配しましたよ。
驚かせないでください」
「そうだぞレオ、誘拐未遂の件もあるから心配するような事をしちゃダメだぞ」
「はい、ごめんなさい。次からは気をつけます」
心配させた事を素直に謝り、テーブルに着き食事を済ませた。
食事を済ませると今日はノエルが部屋についてきた、先に入って光学迷彩を発動して姿を消すとノエルは部屋の中で周囲をキョロキョロし、見つからないので鼻を高くして匂いを嗅いで探し始めた。
ドアの近くに潜んでいると近づいてきて首を傾げている。
気配を感じて匂いの位置も見つけたが姿が見えないので不思議なようだ。
ベッドに上がって魔法を解くと突然僕の姿が現れたのでびっくりして飛び上がったが、すぐに近づいてきて体をすり寄せてきたので抱きかかえていたのだが、マリーが部屋の明かりを消しにきた時には既に寝息を立てていた。
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侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
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