淡雪の子守唄

雪桜 モノ

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邂逅

白と赤と灰色

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 ─リィン─リィン─
 
 白い森に高い鈴の音が響く。真っ白な世界にただ一つ一点だけ存在する灰色はゆらりゆらりと揺らぐ。
 
 「ワォーン」
 
 “それ”は狼であった。灰色の毛並みに月色の目をした気高き狼であった。そして“それ”は人鳴きして、その場に倒れ込む。
 
 
 ぼふんとその重さで白がまう。白は次第に赤へと染まり始める。それの腹のしたから白をかいて出てきたのは灰色の毛並みに紅月の瞳をした子狼だった。
 
 
 「ウォン?」
 
 動かなくなった月色に、紅月は寄り添う。やがてその毛も赤く染まり始めて、やっと“彼”は自覚した。
 
 

 赤と、白。悲しいその色の中に消えゆく灰色。小さな小さな紅月は月を探す様に空を見上げ耳を伏せ大きく口をあけて。
 
 
 
 「ウォォーン…ウォーーーーン」
 
 遠吠えをする。それは間違いなく死を悔やむ音だった。白の世界にひびくその音はどこまでも遠く、果まで届けられた。
 
 
 遠くでべしゃりと木から落ちた白が音を立てる。遠吠えをやめた紅月はその音に反応するように耳を立て、目を向ける。
 
 赤い月のような目がぐっと細められ、彼は決死の思い出走り出す。
 
 
 「捕まえろ!」
 
 どこからかその声が聞こえるが。彼は止まること無く走った。白に灰色の足跡が付けられていく。彼は少し迷ったように月色を見る。
 
 先程叫んだ生き物は月色に駆け寄って何かを話している。ぐったりして動かない月色を何かの台にのせる生き物たちは二足歩行をしていた。そして彼へと何かを向けてくる。
 
 
 ビュンッと線を描くように何かが彼に飛んできて、彼はほぼ反射的にそれを避けた。それは木の枝のようだった。トサッ─と音を立て深く白に突き刺さったそれを見て匂いを嗅ぐと彼は走り出す。
 
 
 (月色が、月色が)
 


 (殺された、あの生き物に)
  
 
 それは月色に傷をつけた枝と同じ匂いがした。
 
 
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